ある青春の日の太陽は。
投稿者名:来栖川のえる
投稿日時:(04/ 4/27)
「ごめん。気持ちは嬉しいけど――――――
私、横島が好きやねん・・・・」
―――――夏は、短い。
7月は蒸し暑く梅雨が大半を占め、8月も下旬になれば夜は涼しさを感じる。遠くに打ち上がる花火に気づく頃、それはもう夏の終わりを知らせる鐘の音のように思われる。心地よい暑さをたずさえた季節は、ほんの2,3週間ほどで終わってしまう。
空。青い空。
空を、白い雲が泳いでいる。ちぎれたり、形を崩したり。
空。青い空。
あんなに変わっているのに、永遠に変わらないもの。
真夏のまぶしい太陽が照りつける昼下がり、私たちは見送りに来ていた。
「銀一君・・絶対に忘れないからね」
「銀ちゃん、いっちゃやだよぅ・・」
クラスのみんなが思い思いにお別れの言葉を言う。
銀ちゃんは人気者で、今日もほとんどクラス全員の子が見送りに来ていた。
「夏子、うちらもあいさつしにいこ」
隣で横島が言う。
「うん・・・」
人ごみをかきわけて、銀ちゃんのところに行く私達。
「夏子・・横っち・・」
私達に気づいた銀ちゃんが私達の名を呼ぶ。
「二人に会えんようになると思うと、なんか寂しくなるなぁ」
「よく三人一緒に遊んだもんね」
「川にザリガニ取りに行ったときとかおもろかったな〜」
「あぁ、夏子が川に落ちちゃったアレねw」
「そうそう、で俺らで必死で川からあげたんだけど、その後泣いちゃってさあ・・」
「むむー、その話はしないでよぉ〜」
・・・・三人の会話。いつもどおりの会話。
こうして話していると今日お別れだなんて、嘘のような気がする。
また明日も、普通に学校で遊んで、いろんなことお話ししているんじゃないだろうか。
三人で。
小学校入ってから三人一緒にずぅっと遊んできたけど、高学年になってからは微妙に違ってきた。
クラスのみんなもだんだん女子と男子が別れて遊ぶようになってきた。
その変化は私達にもちょっとずつ表れて・・・
私が自分の気持ちに気づくまで、そんなに時間はかからなかった。
でも私は三人の関係を壊したくなかったから・・・
ううん、それは言い訳。ほんとは告白する勇気なんてない。
そんな自分がもどかしいけど、どうすることもできない自分がいる。
何かをつかもうとしているのに、つかめないでいる自分。
つかみかけた何かも、するりと自分の手からこぼれ落ちてしまう。
銀ちゃん、勇気出してくれたの・・・・・
ごめんね。
ごめんね。
昨日、あんなこと言ったのに、こうして普通に話してる私はヤな女の子・・?
シュゥゥゥゥ
音とともに、プラットホームに電車が滑り込んできた。
「ほな・・そろそろ行くわ」
「うん・・元気でね・・」
「・・また一緒に、三人で遊ぼうな・・!」
横島の言葉に、うなずく私達。
私たちは、変わっていく。
少しずつ・・少しずつ。
変わることで、つらくなることもある。
変わることで、幸せになることもある。
そうやって私たちは、成長していく。
でも、私たちの今までの思い出は、絶対に消えない。
人は憂いを抱き、狂おしい日々を通過して生きている。
でも、私たちがすごした日々は、絶対に消えない。
それが、真実だから・・・
「○番ホーム、まもなく発車いたします。危険ですので・・・・」
アナウンスが流れ、電車のドアが閉まる。
三人一緒に遊ぶことは、多分もうないだろうということは、なんとなく分かっていた。
でも私は忘れないだろう。
三人一緒に遊んだこと、は。
私たちは、手を振る。
クラスのみんなも、思い思いの言葉と共に手を振る。
銀ちゃんは、笑顔で手、振ってた。
私たちの姿が見えなくなるまで・・・
「行ってもうたな・・・」
今まで振っていた手をそっと下ろしながら、横島が寂しそうにつぶやく。
「そうね・・・・」
クラスのみんなが、帰っていく。
「俺らも帰ろうか・・・」
私たちも駅を出る。
外に出ると、むっとした暑さが私たちを襲う。
ちげれて飛んでいく雲の陰が、私たちの足元に下りる。
真夏の強い日差しが、私たちを焦がした。
―――――さよなら、銀ちゃん―――――
私は、隣を歩く横島の手を、そっと握った。
空。青い空。
空を、白い雲が泳いでいる。ちぎれたり、形を崩したり。
空。青い空。
あんなに変わっているのに、永遠に変わらない・・・・
<どうも、はじめましてorこんにちわ。来栖川のえると申すものです。このごろ自分のHNの多さにしゅーしゅーつかなくなってきていますが。。。確かここでは来栖川のえるっていう名前で投稿してたよね・・。
hazukiさんやトンプソンさんのやうな巨匠が残っていて嬉しい限りです><b。
さてさて、作品解説ですが・・・。何これ(ぇ?いや、まずいだろこれは・・・。一応夏子のお話なんですが・・なんかいろいろ詰め込みすぎてよくわかんない作品になってしまいました。ぇぅ。
でもまあ夏子話が作中にもっとあってもよかったかなぁとか思って書いた作品。
なんか読み方によっては夏子すげえヤな女ですが、決してそんなふうに書きたかったわけではないのであしからず・・・。
小学校のころの青春とか、書きたかったんですよ・・・。
ていうか小学校の頃ってこういうこと考えませんでした?もちろん、言葉では表せることのできない複雑な気持ちとしてですが・・・・
のえる>
追記:関西弁なんてさっぱりわからんので、いっそのこと使わなくていいじゃん!とか思って夏子本人の語り口調なのに全く持って標準語しゃべってます。まあそっちのほうが雰囲気でてそうですし、許して・・・・
今までの
コメント:
- 初めまして。来栖川さんのお名前と作品は拝見しておりました。(^^)
残念ながら私自身の思い出には無縁の情景でしたが、子供時代の終わりの刻が季節感を伴って切なく、鮮明に浮かんできます。
ここでの夏子が嫌な女だなんて、当然、思いません。むしろそんな所まで気を配れる大人びた部分が、彼女がこの季節との決別のお話にて、主人公である説得力を支えてるとさえ思えます。
さりげなく繋いだ手の想いは横島に伝わったのだろうか…彼の回想を見れば伝わらず終いだった様にも思え、じんわりとした痛みも伴う美しさを感じました。 (フル・サークル)
- せつなくていい感じですね。
夏子の気持ちが伝わってきます。
次回も期待しているのでがんばってください。 (青い猫又)
- 男の子と女の子。いつも一緒にいた友達が、いつのまにか異性になってしまって、なんとなく一緒にいづらくなってしまって。それを寂しく思うのに、周りに流されるままに、流れのままに垣根の向こうとこちらに、別れてしまって。ふと久しぶりに顔を会わせた時、“友達”は“男の子”に変わっていて。もう昔のようには遊べなくて……。
憶えがあります。
そうでないといけないと思いますし、そこからでないと始まらない関係もあると思いますけど、やっぱり寂しい気持ちが残りますよね。
なっちゃんも銀ちゃんも、そんな寂しさを振り切って、大人になろうとしてるんですね♪
素敵なお話でした♪ (猫姫)
- おそらくはじめまして、ですね。林原悠と申します。
転校していく銀ちゃんとそれを見送るふたり、ちょっぴり切ない子供心が伝わってきます。
私自身は転校生を見送った経験しかないので、転校する生徒の気持ちってのは想像するしかないのですが、
どうなのでしょうね。 (林原悠)
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