ザ・グレート・展開予測ショー

ジークフリードの華麗なる一日 後編


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 4/27)





「3時のお茶の用意が出来ました〜」

3時になると皆でお茶を飲みながら話すのが、パピリオが来てからの習慣となっている
もちろんお茶だけでは、寂しいので下界でお菓子を買っておいたり、
たまにジークがお菓子を作るのがもっぱらのつまみであった。

今日はジークがパピリオの要望でシュークリームを作っていた。

「で、このシュークリームを膨らませるのが大変なんです。」

「へ〜そうなんですか。」

ジークが作り方を喋っているのを、小竜姫は感心したように聞いている。
まあパピリオは作り方など興味は無いらしくひたすら食べている。

「こら、パピリオちょっと食べすぎですよ。夕飯もありますしほどほどにしなさい。」

4個目を取ろうとするパピリオを小竜姫は止める。
だがパピリオはむすっとして文句を言ってきた。

「大丈夫でちゅよ、どこかの誰かさんと違って太ったりしないでちゅ。」

その一言に過剰に反応する人?が一人いた。
小竜姫はパピリオのほっぺを両方からつかむと、横に引っ張る。

「誰が太るんですか、私はこう見えてもちょっとぐらいスタイルには自信があるんです。」

「ひょこひゅまのひゃといひゅきよひひゃいくひぇに。(訳、ヨコシマの雇い主より無いくせに。)」

常人にはなにを言っているのか分からない言葉を、小竜姫にはしっかり伝わったらしい。
ますます力を込めて引っ張りながら、パピリオに顔を近づける。

「あれは、人間として間違っているんです。世間一般では私ぐらいが普通なんです。
神界に居た頃は、それはいろいろと話題になったんですよ。声を掛けられるのを断るのが大変でした。」

そう言ってほっぺをつかんでいた手を放す。
やっと自由になったパピリオは、頬を摩りながら小竜姫に反撃をする。

「ふん、そのわりには長い事生きて、いまだに唇でのキス一つした事が無いくちぇに!!」

「な、なんでそんな事をあなたが知っているんですか!!」

言ってから小竜姫はしまった言う顔になる。
パピリオは顔をにやりとさせると、シュークリームを片手に小竜姫に圧力を掛ける。

「ふっふ〜ん、やはりそうでちゅか、武術一筋に生きてきて男に免疫が無い典型的なタイプでちゅね。」

「パ、パピリオだって無いじゃないですか!」

小竜姫も必死に反撃をするがパピリオに軽くあしらわれる。

「私はまだ生まれて年数が経ってないでちゅ、千年以上を生きてる人と一緒にしないでくだちゃい。
私はこれから恋を覚えるでちゅよ。」

「わ、私だってこの間パピリオたちが邪魔さえしなければ。」

そこまで言って小竜姫ははっと我に返る。危うく余計な事を口走るところだった。
だが、パピリオにはそれで十分だったようだ。

「私たちが邪魔しなければなんでちゅって、言ってくれないと分からないでちゅよ。」

ニヤニヤと笑いながら、パピリオが小竜姫に詰め寄る。
言うに言えない小竜姫としては悔しさだけがつのる。

「く〜〜〜〜、えい!!」

そう言うと、小竜姫はパピリオの手からシュークリームを奪い一口で食べてしまった。
あっと驚いたパピリオは、自分の手から奪われたシュークリームを小竜姫が食べ終わるまで、
声も出せずに呆然としていた。

しだいに自分の状況を理解し始めたパピリオが小竜姫を睨む。

「子供から物を奪うなんて酷いでちゅよ!、シュークリームの敵でちゅ。」

そう言ってパピリオは小竜姫に飛び掛る。
だが小竜姫はそれを綺麗にかわすと戦闘態勢に入った。

「やりますか!、大人をからかう悪い子にはお仕置きをしないといけませんね。」

実際大人子供と言っているが、戦闘力だけならパピリオのほうがいまだに高いかも知れない。
だからパピリオとやり合う時には、小竜姫と言えども気は抜けなかった。

そして居間は戦場と化した。

「見かけだけの年増の癖に〜〜」

ドッカ〜ン

「なんですって〜〜、(怒)
その言葉は撤回しなさい。」

ガッシャ〜ン

その騒ぎの中、ジークは我関せずと言った感じで紅茶を飲んでいる。
やはりミルクを入れるならアッサムだが、ストレートならモバやダージリンが一番だな。

どうせ後で自分が片付けるはめになる現状を、今は必死に見ないで置こうと心に誓う。
しかし、自分が来た時の小竜姫さまはこんなんじゃ無かったはずなのにと、
ここには居ない少年を思い浮かべながら考える。

まあ、良いか・・・




コミュニケーションは部隊の維持には欠かせない方法だ、
妙神山でもそれは重要と考えられ、日々仲間とのふれあいを大切にしている。
それは現在の所問題なく進んでいると私は確信している。
もちろん馴れ合いなど邪魔なだけだ、上下関係ははっきりさせておく事は説明する必要は無いと思う。
その上での連帯感を諸君らにも養って欲しい。

最後に夕食が終了した後、2100時より留学生として月一回の面接を小竜姫さまと行う。
これは正しく留学を出来ているかなど、留学生の精神面や問題点の把握のために行われている。
行われる内容は、先ほども言ったが面接形式による対話式のミッションだ。




「妙神山にはもう慣れましたか?」

小竜姫の書斎の中で、ジークと小竜姫はお茶を片手に向かい合っていた。
小竜姫は自分の机の椅子に座り、ジークは少し離れたソファーに座っている。
少し距離はあるのだが、まあ話す分にはとくに問題は感じられない。

「そうですね、私が来てからここではいろいろな事が多すぎて、
慣れるって言うより気がついたら今になっていた感じです。」

「そうですか。」

ジークの曖昧な答えに、小竜姫はとくに口を出す事はしなかった。

「なら、妙神山は気に入ってもらえましたか?」

今度は少し違った聞き方をする。
その質問にジークは一瞬手元の湯飲みを見つめた後、小竜姫の目を真っ直ぐ見て答える。

「とても気に入りました。
最初はどんなに居心地の悪い所かと心配しましたが、取り越し苦労だったみたいですね。
今ではここを離れたくないぐらいです。」

小竜姫はその答えに少しだけ意地悪そうに微笑むと、取っておいた切り札をジークに突きつける。

「居心地が悪いかと心配したのは、管理人が融通の利かない頑固頭だからですか。」

小竜姫の質問にジークは驚きのあまり持っていた湯飲みを落としそうになる。
だがなんとか耐えると、恐る恐る小竜姫の顔を窺う。

やばい、やたらニコニコ微笑んでいる。ああ言う時の小竜姫さまに逆らってはいけないと本能が訴えてくる。

「な、なぜそれを・・・」

融通の利かない頑固頭、それは魔族軍の内部に伝わる小竜姫のイメージ像だ。
その他にも実は爺くさいとか、最近軍に帰った時など妙神山の引きこもりとまで言われていた、
はっきり言って小竜姫さまにばれたら、魔族軍が襲われる恐れがある。

「いえいえ、教える事はできません。ですが私ってそう思われていたんですね。
悲しいです、思わず明日から留学生のノルマを五倍にしてしまいたくなるぐらい悲しいですね。」

「わあ、まってください。今だって鬼のように仕事があるのに五倍なんて・・」

ジークが情けない顔をすると、それを見た小竜姫が突然笑い出した。

「じょ、冗談ですよ、そんなに驚かれるとは、お、思っても見ませんでした。」

必死に真面目な顔をしようとするが、まったく笑いが抑えられていない小竜姫は、
喋るのも苦しそうにしながらジークに言って来る。

それを見たジークはやれやれと言った顔をする。
まさか小竜姫さまにからかわれるとは思ってもみなかった。
今は小竜姫の笑いが落ち着くまで、おとなしくしていようと思うのだった。




と言った内容が月に一回定期的に行われる。
話し合いの中で上げられた問題点などは、今後の課題として改善していく。
そして次の面接の時にそれらが改善されたかを話し合うことになる。
小竜姫さまの的確なアドバイスには、毎回感心させられる思いだ。

これで留学生としての妙神山での一日を諸君らに語ったわけだが、諸君らはどう思っただろうか。
厳しすぎると思った者も居るかも知れないが、留学生として魔族軍より神族へ行っているのだから、
厳しいのは当然と私は思っている。

新兵の諸君!!
これからいろいろ苦難が諸君らにあるだろう、だがそれに負けず常に上を目指して頑張っていって欲しい!!
以上だ。

辺りから大地を割らんばかりの盛大な拍手が聞こえてくる。
その中をジークはちょっと胸を押さえながら降りていった。




「で、お前はあまりの罪悪感に新兵の歓迎式を途中で逃げてきたのか。」

「はい・・・」

場所は公園、周りには子供たちのはしゃぐ声が流れている。
そこはなんでもない日曜日の昼の光景だった。

その中を横島とジークはベンチに座って缶コーヒーを飲んでいた。

「式のついでに留学生としての発表を、言わせるお前の上官もすごいが、
この原稿はそれ以上にすごいな。正直これだけ見ると誰が誰だか名前見ないとわからん。」

横島は手に持った原稿の束に目を下ろしながら言ってくる。
流し読みしているのだが、言葉に出来ないすごさがあった。

「最初に作った原稿は中尉に見せた瞬間ボツにされました。
理由を聞いたら、神族に失礼なのと夢が壊れるから止めろだそうです。
急いで言われた通りの内容を作ったのですが、
新兵たちが目をきらきらさせながら僕の話を聞くんですよ・・・心が痛くて・・」

燃え尽きたようなジークは大分肩を落としながら喋る。

「ま、まあなんだ、カップラーメン奢るから元気出せよ、な。」

横島はジークの肩を叩いて元気付ける。

もうすぐ年末へとむかう冬の寒い日の一日の出来事だった。




おしまい


あとがき
すみません。
最初に書き忘れてしまったのですが、これは妙神山の休日の後の話となっています。
呼んで意味が分からない人がいたら妙神山の休日を呼んでみてください。

これは最初に書かないといけなかったんですが、ついうっかりしてました。
申し訳ない。


ではあらためて青い猫又です。
今回はラブラブでもストーリーもまったく関係ない話です。
留学生としてのジークの報告を話にしてみました。

新兵に語る内容と現実とのギャップ、面白く感じたら幸いです。

ではまた次のお話で!

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