ザ・グレート・展開予測ショー

ジークフリードの華麗なる一日 前編


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 4/27)

私、ジークフリードは魔族軍で少尉の階級を貰っている。
現在自分は妙神山にて留学生として任務にあたっているのだが、そんな私の一日を皆に語る事にしよう。

妙神山の朝は早い、0430時には管理人である小竜姫さまが朝の訓練に入る。
神族の間に名を轟かせる小竜姫さまの訓練は、諸君らにも良い手本になると思うので、
まずはその辺から詳しく語る事にする。




「はぁ〜〜〜」

小竜姫は手にしている剣を杖代わりにして盛大にため息をついた。
その姿には一欠けらのやる気すら見えない。

「どうしました小竜姫さま。この間横島さんたちが帰ってから集中できてませんよ。」

小竜姫の横で柔軟体操をしていたジークが、心配そうに声を掛ける。
さすがにその声で我に返った小竜姫が、慌てて剣を構える。

「いえ、大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていただけです。」

「それなら良いのですが、なにか悩み事ですか?」

ジークの質問に、しばらく正面を向いたまま考えるようにしていた小竜姫は、
一つため息をついてジークの方を向く。

「そうですね。せっかくですし参考意見としてお聞きしたい事があります。
ただ一つ約束してください。これは他言無用です、誰にも言ってはいけませんよ。」

いつにない真剣な顔をした小竜姫が、ジークに念を押してくる。
小竜姫の雰囲気にジークも真剣な顔をして小竜姫の目を見つめる。

「はい、誰にも言いません。」

「ありがとうございます。」

小竜姫はジークの答えに軽く頭を下げてお礼を伝える。
そして、悩んでいた質問を口にした。

「やはり、男の人はウエディングドレスと言う物の方が喜ぶのでしょうか。
ですが、ここは日本ですしやはり日本式の着物の方が合ってるんじゃないかと思うんです。
あ、でもどちらかと言うと神道式の方が竜神としては合ってるんですかね?
これは迷います。」

「はぁ?」

思わず間抜けな声しかジークには出せなかった。
何を言っているのだろう小竜姫さまはとちょっと真剣に考えてみる。
だが小竜姫はジークの答えなんてどうでもよかったようだ。

「すみません、少し調べ物が出来たので、今日はこのぐらいにして書斎で調べ物をします。
朝ごはんが出来たら、パピリオをおこしてあげて下さい。私は時間になったら行きますから。」

それだけ言うと持っていた剣をジークに手渡して建物へと走っていく。
残されたジークは持っていた剣を横に置きながら、青い空を見上げる。

「いや〜横島さん、恨みますよ、さすがに変わり過ぎです。」




以上が朝の訓練の大まかな内容だ。
さすがは斉天大聖老師の弟子として名を轟かせた小竜姫さまだと、私はいつも感心している。
諸君らはまだまだ新兵として訓練に明け暮れると思うが、目指す場所は常に高い所を目指して欲しい。

次に0530時より朝の食事の準備に入る。
新兵ども!!
たかだか食事だと思って甘く見るんじゃないぞ。
医食同源と言う言葉がある様に、食事は何時でも戦える体を保つ健康の源といえる。
それを留学生とは言え、魔族である自分にすべてを任せて下さるのは、信頼の証だと私は思っている。
そうだ一つここは体を動かす上でどのような食事が良いのか、妙神山での例を上げて説明しようと思う。




最近では当たり前のようになってきた食事の準備を、
パピリオが作ってくれたエプロンに袖を通して始める事にする。

「小竜姫さま、横島さんたちが居た時は準備すると怒ったのに、
普段はやる時の方が少ないのはどうかと思うんだが。いえ、文句とかじゃないけどね。」

ジークは普段滅多に口にしない事をなんとなく口にしてみる。それも最後に良いわけのオマケ付だ。
しかもいったい誰に言い訳しているのか不明だった。

台所の前に立って今日の献立を考えてみる。
小竜姫さまは基本的に朝は和食を好む、だがパピリオは好き嫌いが激しく、
小竜姫さまと同じ和食だと、手をつけない事が結構あった。

「ニンジンとピーマンは絶対食べようとしないからな。」

さて、作ろうかと思っていると後ろから声を掛けられる。

「おっはようなのね〜」

後ろを振り返ってみると、紙袋を抱えたヒャクメが入り口からこちらを覗きこんでいる。
台所の中に居るのがジークだけだと分かると、ゆっくりと中に入ってきた。

「おはようございますヒャクメさん。ま・た・来たんですか。」

ジークはさわやかな笑顔を浮かべながら、またの部分を強調して言う。
だが、ヒャクメはそんなジークの言葉に顔色一つ変える事も無く、
同じく笑顔を浮かべながら返事を返してくる。

「またなんて失礼なのね〜、神界の仕事が終わったから妙神山に寄ってみただけなのね〜。」

「前回は夕食時でその前が昼時、その前が夕食の時でそう言えば前に3時のおやつの時もありました。
最近は回数も増えてきて、二日にいっぺんは来られるみたいですが。」

ジークの情け容赦の無い突っ込みに、さすがのヒャクメも少し怯んでしまう。

「た、たまたまなのね。それに今日は食べるだけじゃないのよ。」

そう言って紙袋を見せてくる。

「下で良い魚を見つけてきたから、朝食は私が作るわ任せて欲しいのね。」

そう言ってジークが止める暇も無く、さっさとエプロンをつけて作り出してしまう。

「まず、魚と野菜をを切るのね。」

包丁を高々と上にあげると、まな板の上の魚に向かって振り下ろす。

ダンダンダン

「ちょ、ちょっとヒャクメさん。鱗取ったりしないんですか!」

「細かい事気にしちゃ駄目なのね。」

慌てるジークなど相手もしないで、ヒャクメは切り終わった魚を鍋の中に放り込む。

「ダシの元を入れるのね〜。」

「それはコンソメの元ですよ!」

だがヒャクメはジークの静止など聞かずにコンソメの元を一掴み、
おそらく7個か8個を鍋の中に放り込んだ。

「あ、ごめんなさい、じゃあらためてダシの元を入れるのね。」

「それは砂糖です。あ〜しかも一袋の半分も入れないでください。」

こんな感じでしばらく台所は戦場と化した。

・・・・・・
・・・・

「よ、用事を思い出しちゃった。私が来た事は誰にも言わなくて良いのね〜」

そう言ってさっさとヒャクメは逃げ出してしまった。
台所に残されたのは散々散らかったボウルやおたま、
そして鍋物とは思えない粘度をした薄紫色の物体だけだった。
しかも、先ほどからポコポコと気泡が浮かぶたびに怪しい色の煙を噴いている。

ジークは窓を開けると、一つ大きなため息をついてから買い置きの食パンを棚から出す。

「今日はバタートーストに塩だな。」

朝食の材料をすべて奪われたジークに、残された選択肢はそれしか無かったのである・・・




以上が妙神山での基本的な食事である。
新兵の諸君、このような規則正しい食生活は、何者にも屈しない心と体を作る上でとても重要だ。
斉天大聖老師、ならびに小竜姫さまもいつもこのような食事をして、心身共に自己管理をしている。
ぜひ見習ってもらいたい。

次に0630時、現在妙神山にて同じく修業を行っている、魔族パピリオを呼んで朝食へと入る。
諸君、パピリオと言う名前に心当たりがある者が居ると思う。
彼女は先のアシュタロス事件の時の貢献者である。元々はアシュタロス側に居たが、
彼の過ちに気がついて協力を名乗り出てくれた。彼女の勇気と信念、ぜひ諸君らにも見習って欲しい。

残念ながら身体の都合上朝の訓練には出れない体だが、彼女のやる気には時々驚く程だと言っておきたい。
ではその辺について少し詳しく語ろう。




コンコン

無駄と分かっているノックを済ませると、ジークはパピリオの部屋の中に入っていく。
まず、薄暗い部屋に明かりを入れるためカーテンを開いた。
一瞬にして部屋全体に明かりが取り込まれ部屋の中を照らす。

ぬいぐるみと作りかけの服が散らばった部屋の中に、妙神山唯一のベッドが置いてある。
ベッドの主は差し込んできた日の光から逃げるように布団の中へともぐりこむ。

「パピリオ、さっさとおきろ。朝食の時間だぞ。」

「う〜ん、眠いでちゅ、まだおきれないでちゅよ・・・・・」

やたら眠そうな、それでいてまったりとしたテンポでパピリオが返事を返す。
だがジークもおきれないと言われて素直に帰るわけにはいかない。

「駄目だ、ほらおきるんだ。ただでさえ朝の修業をさぼってるんだぞ、
朝食まで食べないなんて小竜姫さまに怒られるぞ。」

「修業なんて嫌いでちゅ、ヨコシマ〜〜ヨコシマ連れて来ないとおきないでちゅ。」

そう言ってますます芋虫状態へとなっていく。
我が儘を言って駄々をこねる子供に、さすがのジークも困ってしまう。
軍隊ではこう言ったケースの対応を教えてくれなかった。

だが軍隊は教えてくれなかったが小竜姫さまが、妙案を教えてくれた。
後でパピリオが拗ねるのだがまあしょうがないだろう。

「それなんだが、先ほど横島さんがいらっしゃった・・」

ジークが最後まで言う前にパピリオが布団を跳ね上げて部屋から出て行く。

「・・ら良いな。・・・・毎日同じ手でよく疑う事を覚えないのか不思議だな。」

跳ね上げた布団をきちんと戻し、ベッドメーキングをすましてからパピリオの部屋を出て行く。
さて、今日はなんて言って落ち着かせるかな。
被害は妙神山の門ぐらいで済ませて欲しいものだが。




以上が魔族パピリオの大体の人柄である。
修業への意欲と集中力は、私も見習わなければいけないと思っているほどだ。
またアシュタロス事件の時の、仲間への信頼と思いやりは彼女の美徳の一つだと思っている。
現在は妙神山にて監視体制に置かれている身だが、一刻も早くとける事を私は願っている。

朝食が終わった後、1100時まで妙神山の警備や連日の修業による設備への負担を、直す事にしている。
その中には多少それ以外の雑務も入るが、妙神山の維持には欠かせない仕事と言える。
では一例を上げて説明をしてみたい。




「はぁ〜良い天気だな。」

洗濯物のしわを伸ばしながら、ジークは空を見上げた。
元々が雲より高いところにあるせいか、あまり空に雲が浮かぶ事は無い。
今も空には雲ひとつ無く、まさに晴天と呼べる空だった。

「これだけ日が出ていると、洗濯物が早く乾いて助かる。」

そう言いながら、ジークはパピリオのカボチャパンツを洗濯バサミで止める。
ここの女性はあまりこういう事は気にしないらしい。

「しかし、全自動とは言わないが洗濯機ぐらいは置いて欲しいな。
毎回たらいに洗濯板はつらいものがある。」

まあ愚痴ってもしょうがないので、考えるのを止める事にした。

ここを終わらせた後は、朝パピリオが壊した門の修理を手伝いに行かなければならない。
毎日のように門を突破して、横島の所に行こうとするのを止めるのはさすがに疲れるが、
パピリオが破壊した場所を直すのも、また疲れる作業なのである。

「しかし、鬼門の二人もお気の毒だな。」

外からの外敵よりも、内からの攻撃によって毎回壊されている妙神山の門は、
いい加減押せば倒れてしまうような姿に変わっていた。

近々本格的な補修が必要なのだが、なかなか時間が取れないのが現実だった。
なにぶん直さないといけない場所は、他にも沢山あるのだ、
その大半がパピリオと以外にも小竜姫が原因なのだが、直すのは何時もジークと言うのは、
無性に首を捻りたくなる時がある。

まあ戦闘行為と建物の修復なら、建物の修復を選んでしまうジークの性格では、
思うだけで口に出して言った事は無いのだが。

ドッカ〜ン

背後の建物から物凄い音と爆風がふいて来た。

ハタハタハタ

その風で物干し台が次々に倒れていく、一瞬なにも言えずに唖然としていたジークは、
すぐ気を取り直すと後ろを振り向いた。

「こら、パピリオおとなしく修業をしなさい。」

「嫌でちゅ〜、それよりもヨコシマの所に遊びに行くでちゅよ〜」

小竜姫が逃げるパピリオを捕まえようと追いかけている。
だがパピリオも小竜姫をうまくかわしながら、時々飛び道具を撃っているようだ。

「しつこいでちゅよ!!」

何度目かの飛び道具をパピリオが放つ、だが小竜姫はそれを剣で弾くと、
そのままパピリオの首根っこを捕まえた。

「さ〜捕まえましたよ。お仕置きも含めて今日は普段の倍はやってもらいますからね。」

「く〜そう言えば飛び道具は苦手だったでちゅ〜」

小竜姫は問答無用でパピリオを引きずって修業場に消えていく。
残されたのは小竜姫が弾いた一撃を、間近で受けてしまったススだらけのジークと洗濯物だけだった。

自分の服で顔のススを拭きながら大きなため息をつく。

「壊れた建物とススだらけの洗濯物は私が直すと・・・
かくして妙神山の平和は守られたのであった、まると。」

すっと空を見上げる。
今日は暑くなりそうだなとちょっと現実逃避に走ってみたりする。




これが私が普段行っている警備手順と、施設の修復状況である。
さすがは全世界に何箇所も無い霊的拠点と言えると私は思う。もちろん装備だけじゃない!!
それを扱う小竜姫さまや他の者があってこそだが、
充実した装備と堅牢な建物はまさに要塞と言っても良いだろう。

次に昼食を挟んだ後、1500時より隊員たちのコミュニケーションをはかる事を目的とした、
オリエンテーションを執り行う。
これは主に仲間同士の連帯感やチームワークを固めるため、妙神山で執り行われている作戦である。




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