ザ・グレート・展開予測ショー

アイ


投稿者名:executioner
投稿日時:(04/ 4/27)

自分らしさってなんなんだろう?

誰しもがそんな事に苦悩して、その意味を捜し求める。

そして誰しもがいつか自分は自分だなんて気づく。

それは当たり前のようでいてかけ離れていて。

難しそうに見えて、簡単で。
























ルシオラ・・・


俺は馬鹿だからお前を失って・・・かけがえのないもの

と引き換えにしてようやくその事に気づいたよ。



自分は何者にも捕らわれて無いって。

愛や理想や社会にすら縛られて無いって。



そして・・・







俺はどうあがいても俺なんだって。












produced by executioner

written by SooMighty




アイ










ルシオラを失ってもう2ヶ月が過ぎたのか。
こんなに時が過ぎるのが速いと実感したのは初めてだな。
なんとなくぎこちなかった周りの態度もようやく普通に
戻ってきた。


俺も仮面やら強がりやらの笑顔ではなく、心からの
笑顔を無理なく出せるようになってきた。

むしろ最近になって仮面をつけた俺ですら、やっぱりそれは俺なんだろう
なんてわけのわからない結論を自分で出している。

この2ヶ月の間でそんな考え方ができるようになった。

そんな風に考えれるようになるまで自分なりに色々と考えてきた。
ルシオラを失ってからずっと。
朝も夜も。暇さえあれば。






俺っていうのはどんな人間なんだろうって。





「自分が何者かなんて一生理解できる事は無い。」なんて吐いてた人がいたような
気がした。
でも凡人な俺はそんな達観した見方はできなかった。



こんな悩みを抱えて生涯、生きていけるほど俺は超人じゃない。
実際は確かにわかる事は無いのかもしれない。
答えには辿り着けないのかもしれない。
ましてや人間の短い一生では全てを捧げてたとしても。


だからっといってそんな風に割り切れて生きていけるのか?
誰だってそういう感情は一生付きまとうって
わかっていながらも苦悩や後悔なんかと笑って一緒に暮らせる
ように必死に闘っていると勝手に思っている。
みっともない悪あがきだったとしてもだ。


そして俺もやっぱり悪あがきをしてしまうんだ。


お前との思い出の場所。
東京タワーに何度も通った。
そこで見られるものといったら夕焼けに染まった世界と
鳥の群れの移動ぐらいなもんだ。


雲や鳥は一体どこに行き着くんだろう。
東京タワーの鉄骨で景色を眺めながら
ボンヤリとそんな事を考えたりもした。

結構試行錯誤してみたけど結局わからなかったな。



時にはあの日々を思い出したりなんかしてやるせなさ
を強引に心の奥底に閉じ込めたりなんかもした。

振り返らないって決めたのにさ。
迷わないって約束したのにさ。


























不思議なもんだよな・・・
お前と一緒に見た夕焼けはただひたすらに美しい感じ
だったのに、独りで見たこの情景はひたすらに広くて
捕らえようが無いな、なんて思っちまう。

日によって様々な顔を見せてくれるんだ。



そう本当に夕焼けは、そしてこの世界はどこまでも
広くて、途方も無く自由なんだな、なんて馬鹿げた考えが浮かんできた。
パッと見では変わらないように見えても実は雲の流れ、形などは変わっている。


鳥の集団も北へ行ったり、西へ行ったりしている。


なーんて気分は3流の詩人だ。
それこそ柄じゃねぇ。




人の心と同じだ。
同じような日常を歩んでいても、
今日は喜んで、明日は悲しんでみたいに変わってきている。
どんな形になるかなんて想像もできない。


だけど知りたくて探す。

また心は別の形を見せる。

だけど諦めずに探す。

また変わる。

また探す。





そんな事を繰り返しながら、いつしか人は生涯を終える。
人が人である以上は、逃れられない尋問に苛まれなければいけない。
俺もきっとそうなるんだろう。
その時まではなんとなくでいいから何かを掴みたい。


100点満点の答えをくれなんて言わない。
だけどなんかしら自分の手にしたいものはある。


それが何かなんてわからない。
そう手にするものはなんでもいい。


愛、真実、夢、希望。



数え切れないぐらい色々あるだろう。
この先何を手に入れるかなんてさっぱりわからない。
霊感は人並み以上はあるけど、それでもわかりゃあしない。

なんであれはっきりと、この世界で俺は生きてきたって胸を張って
言えればそれでいい。
今は亡きルシオラに天国かどこかで出会った時に俺はちゃんと
この時代を生きてきた。

願わくばそう言えるようになりたい。
それが俺の求める『答え』なんて言い難いけど、それでも俺なりの『答え』だ。


何度も東京タワーに通っているうちに漠然とそんなイメージ
が頭を支配してきた。


今までの人生で貧弱な脳味噌を一番使って悩みに悩んだ結果、こんなちっぽけ
なイメージしか掴めなかった。

だけどそんな貧困なイメージが今の俺の原動力になっているのだ。





こんな安っぽいイメージで明日を歩いていこう、
なんて思えてしまう自分が悲しくもあり、でも嬉しくもある。


例えこの先の道が向かい風だろうと、その先に様々な厄介な出来事があると
想像してしまっても、甲斐性の無い自分を疑っても、
何度も過ちを繰り返しても、時に孤独を感じてしまっても、
道を誤り後悔してしまったとしても・・・



この世界とルシオラに認めてもらえるように生きていきたい。

みっともなく悪あがきしながら。

七転び八起きスタイルで。

マイナス思考すらモチベーションに変えて。




人生を迎えたい。







こんなイメージを持つとなんか肩の荷が下りた気分になる。
結局自分らしさなんて難しく考える必要はないのかもしれない。

こんな風にらしくなく悩んでいる俺も実は間違いなく俺で。

生きていこうと自分に激をいれる俺もやっぱり俺で。


環境や出来事で心が明るくなろうが、暗くなろうが、それはどちらに
せよ自分である事に変わりはないんだ。

いつの間にかそういう風に考えれるようになっていた。




大切な者・・・俺の愛したルシオラはもうどうあがいても
戻れないけど。

そんな世界に悲しみを憶えてしもう自分も確かにいるけど。




そんな儚くも謎だらけで、

でも自由で面白いこの世界を少しずつ確かな一歩を踏み続けていく。
















「さあて、今日も仕事を頑張るぞっと!」
そう言ってボロアパートの扉を開けた。


扉の先には今日も世界が俺を待っている。






事務所に行く途中、鳥の大移動を見かけた。


今の俺なら少しだけ鳥達がどこへ行き着くのかわかった気がした。
本当になんとなくなんだけど。


なーんてまた柄にも無い事考えちまった。



ルシオラ・・・今俺は俺らしく旅路を走っているよ。
気が付けば早足になってたりもする。
立ち止まったりしてしまう時もある。
仕事でヘマしちまう事も何度もある。



それでも俺は今、夢中になって生きているよ。
もしかしたらこんな俺はお前が求めた俺じゃあないのかもしれない。



それでも俺は自信をもって言える。
今だから言える。


この今ある時代を自分らしく自由に楽しんで生きていると。






END






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