ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『乙女とデートと願いごとと 後編の1』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 4/24)



「?」

少女の動きに合わせるように、金色の髪がサラサラ揺れる。

場所はまたまた公園のベンチ。先ほどの騒動の熱も冷めやらぬ・・・どこかさわがしい午後のことだった。
男子たちとサッカーに興じる横島の姿を眺めながら、タマモが一息ついていると・・・・

「お姉ちゃん!」

「お姉ちゃ〜ん・・・」

一団の中からこちらへと、2つの影が近づいてくる。
元気にてってけ駆けよってくるのは、6人いる子供たちの中でもちょっと異色。
活発そうなおさげの女の子と、それとは対照的に大人しそうな、セミロングの女の子だ。

「?・・どうかした?」

不思議がるタマモをよそに、女の子2人組みは、目をキラキラさせながらベンチへと腰掛けて・・・

「・・・・・。」 「・・・・・。」

・・ほぅっと見とれるようにこちらを見つめてくる。

「??」

タマモには意味がわかっていないようだが、この反応も無理はないのかもしれない。

小学生である彼女たちにとって、中学生の(ように見える)タマモは、手が届きそうで微妙に届かない・・・
まさに『憧れのお姉さん』的存在であり、純粋な尊敬と羨望の対象なのだ。


「・・お姉ちゃんは私たちより大人ですか?」


おさげの女の子が、ずずい、と身を乗り出してくる。

「?・・そうね。相対的に見るとそうなるのかな?」

タマモが首をかしげながらそう言うと、途端、2人の顔が花が咲いたように明るくなり・・・

・・・。

「な・・・なに?」

「お姉ちゃんに質問があります!」

「ありま〜す!」

学校で教師に向かってそうするように、ハイ!ハイ!と女の子たちが無邪気に手を上げ始める。
半刻前のやりとりで、ごっそり体力を持っていかれた自分にもその元気を少し分けてほしかった。

「・・・・。」

とりあえず状況を整理すれば・・
この2人は他ならぬ自分に何か尋ねたいことがあって、途中でサッカーの試合を抜け出してきた・・とこういうことになるのだろうか?
それ自体は別に構わないのだが・・・・

・・・・・。

「学校の先生に聞いてもね?教えてくれなかったの。もっと大人になってからじゃないとダメなんだって〜」

「・・私たち・・・もう大人なのに・・・」

・・・・。

・・・・・・・。

・・気のせいか、今、聞き捨てならないことを耳にしたような・・・・

「ちょ・・・ちょっと待って・・・」

再びよぎる嫌な予感。いや、それは予感というより確信に近い。(使いまわし)

タマモはなんとか話題を変えようとした。(それが無理なら逃げようと思った。)
よく分からないが、これはまずい。
顔も知らないその学校の先生を恨みたい気分だ。いや、そんなことを考えているヒマなど、これっぽっちもないのだが・・・

何をしていいか分からず、わなないているタマモを前に・・・・・・


「えっと・・子供ってどんな風につくればいいんですか?」

「子供・・・私もほしいです・・・。」


2人はやはり、目を輝かせながらそう聞いてきて・・・・


「―――――――――・・・。」


そんな状況に・・・・・
タマモが真っ白になって固まったのだった。




〜『 乙女とデートと願いごとと 後編 』 〜




(「・・・それでどうしてオレまで巻き込まれなくちゃいけないんだよ?」)

(「・・そんなこと言ったって・・・」)

コソコソと・・・・。
子供たちから大分、離れた場所でのミーテイング。
試合が中断された公園に、奇妙な沈黙が漂っていた。

半眼の横島に、タマモは少しもじもじした様子で言葉を切って・・・先ほどから、全く口を開こうとしない。


「・・・何だ?今日はずいぶんとしおらしいな・・・」

「べ・・別にそんなことは・・・」


明後日の方向を向くキツネの少女。
滅多にないほど大人しい彼女の態度に横島は軽く眉をひそめた。

・・そうして、まじまじとタマモを見つめ・・・

・・・。

「・・ふ〜ん・・」

やがて、何かに思い当たったか・・・急にニヤニヤし始める。
ちょっと意外・・・、そんな感想を持ったかのようにゆっくりと両手を前で組んで・・・


「な・・何よ・・。」

「お前ってさ・・もしかして、意外と『こういうこと』に免疫なかったりするか?」

意地悪くそう聞いてみると、案の定、ビクリと体を震わせるタマモ。

ああ・・・やっぱりそうなのか・・・。

「ば・・馬鹿にしないで。これでも私は元・九尾のキツネよ?それぐらい知らないはずないじゃない。」

いや、胸を張る必要性は全くないような気がするのだが・・・
タマモは・・・まるで『知ってるけど、私は・・あえてそんな下世話な知識をひけらかしたしないの』とでも言わんばかりの、
小馬鹿にしたような瞳をこちらにへ向けてきて・・

・・・。

「・・そうかいそうかい。じゃあ、そうだな・・例えば恋人どうしの男女が密室に2人っきりで居たとする・・。 
 その後、どんなことが起こるのか・・順を追って説明してみろよ。」


「え?」

・・・で、その見せかけの余裕は横島の一言により、あっさりと瓦解する。
ほれほれ、言ってみぃ・・と逆に向こう側から挑発が始まり・・・・・・

「・・・っ!」

頭の上から湯気のようなものが出ていたりする。
多少、逡巡しながらも・・・タマモはようやく・・・


「ま・・・まず、男と女が部屋に入って、ドアが閉まるでしょ?」

「はいはい、それで?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」


「わ・・私の読んだ本によれば、そこから何故か、毎回時間がトリップして・・次の朝から物語が再開されるんだけど・・」

「・・って、結局何も知らねえんじゃねえか!!」

・・・・。

・・不毛な会話だった。
というか、どう考えても対象年齢が低めの少女マンガから仕入れた情報としか思えない。
なんだかんだ言っても、所詮、知識レベルはシロに毛が生えた程度か・・・・。
やれやれと肩をすくめる横島に対して、

「くっ・・・仕方ないでしょ!前世の記憶なんてほとんど残ってないだし・・まだ私は復活して日が浅いわけで・・
 その・・・とにかく!知ってる方が逆におかしいじゃない!」

・・とりあえず、何か大変な目に遭う、ということは分かっているらしい。
開き直るタマモに、これ以上の口論は意味がないと悟ったのだろう・・・。
横島が話を打ち切るようにため息をつく。


「・・・ま、いいや。それで質問に対する答え方なんだけど・・。
 露骨に人間の男女で表現しようとするから生々しくなっちまうんじゃないか?・・とオレは思うんだが・・」


「・・?え・・あの・・生々しいって・・・?」


「いや、そこにつっこまれるのが一番困るんだが・・。とりあえず分かったことにしとけ・・。
 で、だな。例を挙げるなら花・・。清らかな花でイメージすれば、自然と説明もクリーンなものになってくるはずだ。」


「・・・ほぅ・・。」


「うむ。じゃあ、試しにオレがお前相手に教えてみるぞ?」

ゴホン、と一つ咳払いして・・そして横島はいかにも自信満々と言った感じで・・・

「まずはだな、雄花のおしべから放出された花粉が、雌花のめしべに・・・・」



・・・・間。



「・・・〜〜〜〜」


「わかった・・。オレが悪かった。もうやめるからそんなに赤くならなくていいっつーの・・」


一体、彼らは何がしたいのだろうか?
ここ最近、作者もめっきり謎なのだが・・・
・・とりあえず、これ以上続けられると小説の存続が本気で危なくなるのでそろそろ勘弁願いたい。


―――――・・。


「お兄ちゃ〜〜ん!お姉ちゃ〜〜ん!!まだ〜〜〜〜?」

「だあああああああ!!もういい!!コウノトリだ!!コウノトリに頼めばきっと届けてくれる!!!」

「そ・・そうだったの?でも、どうして鳥類が人間の子供を・・・・」

「誰でもいいから、こいつをなんとかしろおおおおおおおお!?」


・・・。

そんなこんなで・・
やはりやや気だるげ昼下がり。
無駄遣いしているとしか思えない勢いで、瞬く間に時間は過ぎていくのであった。


                       ◇



・・結局、少女2人の質問は煙に巻くことに相成った。
決して答えを見出す努力を怠ったわけではなく、それしか選択岐がなかったのだ(多分)。

そして現在、横島たちはというと・・・・


「おい!パスよこせパス!一気にゴールに押し込んでやる!」

「横島兄ちゃん・・そこ・・どう見てもオフサイドじゃ・・・」

「ふふん・・そう言われると思ってすでに対策は立ててある・・。見よ!文殊の力によってゴール前で金縛りになっている弟の姿を!」

「・・なっ・・・!?次郎・・・次郎ぉおおおおお!?」


・・・いや、その前に気づけよ、というつっこみもあるが・・
とにかく、試合が再開されたらしい。

そんな喧騒から少し離れた位置で・・先ほど同様、タマモが全く興味なさそうにあくびをしている。


「・・・楽しそうね・・・。」


横島は・・サッカーを、というよりは、子供たちと遊ぶこと自体を楽しんでいるようだ。
以前、体を動かすのは嫌いだと、聞いた気がするが・・・意外に、火がつくと止まらないタイプなのかもしれない。

                          
「男子たちは野蛮ね〜」

「お洋服・・汚れそう・・・。」


・・それにしても・・どうして未だに2人の少女は、自分の両サイドをしっかりと固めて座っているのだろう?
一体、今までとった行動のどの辺りに懐かれる要素があったというのか?


「・・・私と一緒にいたって、何も面白いことなんてないと思うけど・・・」

「そんなことないよ〜髪引っぱるの面白〜い!」

「ビョンビョ〜ン!」

「・・・・・。」

・・なんだか今日はこんな目にあってばかりの気がする。
ちなみに2人にせがまれて、砂場でお城を作ったりしているのはもっと秘密だ。


「でも・・ほんと楽しそうだね、お兄ちゃん。」

にこにこしながら、女の子が笑う。

「・・まぁ、あいつはいつでも無意味に楽しそうな気がするけど・・」

呆れたように、そう口にするタマモへ・・・・

「そんなことないよ〜・・だってお兄ちゃん・・いつも夕方になると元気がなくなるんだもん。
 だけど今日は・・・・・・・あ!」

そこで・・2人は同時に、合点したように手を叩き・・・・

そして、何やら込み入った話をするべく、じりじりと茂みの奥へと移動していく。
どこかショックを受けたようにこちらを向いて・・・・

(「そうだよね、お姉ちゃんと離れ離れだったら寂しくもなるよね・・・」)

(「う・・うそ・・!じゃ・・じゃあやっぱり2人は・・・」)

・・・。

そんな会話。

一言聞いただけで、タマモには彼女たちが何を言わんとしているか、理解してしまった。
・・思いっきり誤解されているのは今更だが・・


「やっぱり、今日はいつもと違うよ!お姉ちゃんが一緒にいるから元気なんだよ。」

「はぁ・・。もうそれはいいから・・。そんなことより、コレの側面固めちゃうから・・水を運ぶの手伝ってくれない?」

出来かけの砂の城を指差しながらそういうと、寸前まで浮かべていた悲しげな表情はどこへやら、少女たちは勢いよく頷いて・・・

「「は〜い!」」

そのまま、飛び跳ねるように走っていってしまう。・・落ち込んでいるとばかり思っていたのでこの反応は少し意外だった。

「・・・・・。」

もしかして・・・・・からかわれた?

・・・・。

・・・・・。

「・・・・もう・・・。」

苦笑しながら、自分も2人の後を追う。

時刻はすでに6時過ぎ。太陽が街の影へと沈みかけている。
迎えの時間がもうすぐだ、と言っていたから・・少し急いであげた方がいいかもしれない。

・・・。

・・・わずかに歩調を速めながら、タマモはチラリと横島に目を向けた。
視界の先で赤い夕陽が・・・薄く、彼の髪を染め上げていて・・・・

「いつもと違う・・・か。」

子供たちろ公園中を駆け回る・・・それは彼女の知っている、彼の自然な在りようで・・・
別段、何か変化があるようには見えないのだけれど・・・・


(私といるから・・・・楽しそう・・・)

伝えられた言葉を反すうする。オウム返しのように・・ただ反すうして・・・・


だけど・・きっとそれは・・・・


風が吹く。さわさわと・・木陰が音をたてながらゆれ始め・・・・
夕日が沈む・・・。横島が愛しそうに見つめている・・・真っ赤な夕日が・・。


「・・・本当にそうだったら・・嬉しいのにな・・・」


・・誰に告げるとも知れず、タマモは少し寂しげつぶやいたのだ。




〜『すいません・・諸事情により4話へ続きます(汗)』〜


『あとがき』

うあああ・・すいません・・・(泣
この間、送ろうと思って一度見直したところ、どうしても納得いかない箇所が一つありまして・・
もうしばらくお待ちください。次こそ・・次こそ完結させます(爆

と、いうわけでみなさん、いつもありがとうございます〜
かぜあめです。

今回は色々とつっこみどころが満載だと思うので(笑)あとがきではあんまり内容については触れないことに致します〜
しかし、タマモってどうなんでしょうね〜・・知ってるのかな・・・?(謎

ううむ・・・それにしても、なんだか某有名恋愛ゲームの発売日が近づきつつある今日この頃ですね(笑
うう〜ん・・買った方がいいのかな・・・、小説のスキルアップの為にはかなり参考になるような気もしますし・・・
う〜む・・・・・。

と、まあそれはそれとして・・・次回は『姉妹』の17話です。ドゥルジさまのスーパーパワーが炸裂します(笑
それでは〜今回はこのあたりで〜

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