ザ・グレート・展開予測ショー

The Blue Blue Sky


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 4/21)

夢を見る、自分でこれは夢と分かる夢だ。
なんと言ったか、確か名前があった気がするが思い出せない。
まあ、今は関係は無いのだけれど。


「横島、おきて。おきないとキスしちゃうぞ。」

目をつぶっている俺の耳元でタマモが囁いてくる。
いかん、これは絶対おきれなくなった、来い!かも〜ん!

唇に柔らかい感触とほのかなレモンの味が感じられる。
ゆっくり目を開くとすぐ近く、まあキスをしているのだから当然なのだが、
ジッと見つめるタマモの視線があった。

「おはよう、タマモ。」

「ずるいんだ、おきてたくせに。」

ちょっと拗ねたような声で可愛い文句を言ってくる。
続けて文句を言おうとする口をもう一度キスして塞いでしまう。
少し長めのキスをしてゆっくりと唇を離した。

「タマモだって気がついてただろ、」

「もう〜すぐ誤魔化す。」

俺は自分のベッドから降りると、顔を洗うために洗面所に向かうことにした。
すると当たり前のように俺の腕にタマモが自分の腕を絡めてくる。
昔と違い女らしくなった身体つきは、良い感触を俺の腕に伝えてくる。

「こら、歩きにくいだろ。」

「ふ〜んだ、早くしないとおキヌちゃんがせっかく作ったご飯が冷めちゃうんだから。」

そらいかん、おキヌちゃんが拗ねると怖いからな。
人一倍やきもち焼きのおキヌちゃんは、サービスをたっぷりしないとすぐ拗ねてしまう。
まあそこが可愛いのだが。

「よし、急ぐぞタマモ。」

「きゃ」

そう言ってタマモをお姫様抱っこで抱えると、洗面所に走る。
だが向かう途中で呼び止められてしまった。

「ダ〜リ〜〜ン」

「あ、エミ。おはよう、朝から綺麗だね。」

「もう、ダ〜リンだら口がうまいんだから。」

前はタマモを抱えているためにしがみ付けないので、エミは背中にしがみ付いてくる。
そして、背中でよく見えないが、顔を赤くしながら横島の背中にのの字を書き始めた。

「は、は、は、くすぐったいぞこいつ。」

「横島ク〜〜〜〜〜〜〜ン〜〜〜」

背中のエミに笑いながら話しかけると、前から妙に間延びした声が聞こえてきた。

「冥子。おはよう。今日も一段と可愛いね。」

「も〜〜〜〜そんな事言われると〜〜〜ますます好きになっちゃうわ〜〜〜」

そう言うと横島の右足にしがみ付いてきた。

「は、は、は、おいおい冥子それじゃ歩けないぞ。」

「横島君。」

横島はその声にはっとして振り返る。
そこには少しだけさびしそうに俯いている美神の姿があった。

「私の事なんてもう興味は無いかな・・」

「な、なに言っているんだ令子。俺は何時だって君を忘れたりはしないよ。」

「よ、横島く〜〜ん」

美神が横島の左足にしがみ付く。

「は、は、は、困ったなこれじゃ歩けないぞ。」

その後も後から後から他の女性が現れては横島にしがみ付くので、まったく動けなくなってしまった。
そしてそれを見ていた胸の中のタマモが拗ねたように言ってくる。

「もう、横島もて過ぎよ!」

「は、は、は、焼くな焼くな、お前が誰より一番だって。」

そう言ってタマモの唇になんどもキスをしてやる。

「は、は、タマモなんだか顔小さくなったなキスがしずらいぞ。」

いまだに笑っている横島は少しずつ違和感を覚える。
あれなんでこんなに顔が小さいんだ。
それにちょっと魚の臭いが酷いぞタマモ。

・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・


目を開けると目の前に近所の野良猫が居た。
しかもドアップで・・・・生臭いはずだ。
猫とキスしてりゃ〜な・・・・

「て、うわ〜〜」

横島がびっくりして飛び上がると、猫も驚いたのか横島の顔に引っかき傷を作って逃げていく。

「いって〜」

布団から起き上がった後、横島がひっかかれた傷をさわっていると横から抗議の声が上がる。

「あ〜あ、せっかく捕まえたのに逃げられちゃったじゃない。」

見ると横島の布団の横で、タマモが居場所を作って座っている。
どうやら、横島に猫とのキスを強要していた犯人はタマモのようだった。
なんでここに居るんだとか、確かに鍵は閉めたはずだぞとか言いたい事は沢山あるのだが、
まず最初に言わなければいけない事がある。

「お前な〜猫のキスで目覚めるのは、精神的にきついので止めてくれ。」

だが横島の文句は、不吉な微笑を浮かべるタマモにはまったく効かない様子だ。
しかも獲物を追い詰める狩人の目をして横島に迫ってくる。

「へ〜そんな事言って良いのかな横島。」

「な、なんだよ。」

タマモが少しずつにじり寄れば、横島も少しずつ後ろに下がっていく。
いつもと様子が違うタマモに横島は恐怖を覚えてしまう。

「ずいぶんいい夢見てたみたいじゃない。
エミ。おはよう、朝から綺麗だね。
冥子。おはよう。今日も一段と可愛いね。
令子。俺は何時だって君を忘れたりはしないよ。」

わざわざ横島の声まで真似て喋ってくる。
そんな芸の細かい事をしなくても横島には絶大な効果があった。
一瞬にして顔を真っ青にすると、震える声で確認をしてくる。

「タ、タマモさん。いったいどの辺からお聞きになっていたんですか・・・」

ニヤニヤしたタマモがちょっと怖い。

「そうね〜全部って訳じゃないけど、まあ、おはよう、タマモ辺りかな。」

全部じゃね〜かよ。
よりにもよってタマモに聞かれるとは、しかも今日の夢はなぜだか分からないが、
タマモがメインキャストだった気がする。
俺は西条と違ってロリコンじゃない!!(意味不明
こんな夢は今まで見たことなんて無かったのに・・・

また少しタマモが横島ににじり寄る。
横島も後ろに下がるのだが狭いアパートだすぐ壁にぶつかってしまった。

「今日、本当はおキヌちゃんが来るはずだったんだけど、
美神さんの都合で来れなくなったから私が伝言を伝えに来たの。」

あ〜そう言えば、昨日おキヌちゃんが朝ごはん作りに来てくれるって言ってたっけ。
そっか来れないのか残念だな。
ちょっと現実逃避に入り始めた横島は、朝ごはんを何にするか考え始めた。

たしかカップラーメンのストックがまだあったはずだ。
いや、ご飯を炊いて梅干で食べるか。

「ちょっと横島!!」

「は、はい!」

横島が現実逃避をしている間にタマモはさらににじり寄っていた。
うっわ〜鼻と鼻の距離が15cmぐらいしか無いって・・・

「横島が見てた夢の内容、美神やおキヌちゃんが知ったら大変だったわね。」

その言葉に一気に冷や汗が流れる。ま、まさかタマモの奴。

「伝言伝えに来たのが私でよかったわね、よ・こ・し・ま」

満面の笑みを浮かべながらさらに近寄って、しまいにはほっぺたをつんつんと突付いてくる。
これは世間一般では脅迫と言うんですよタマモさん。

「分かった俺の負けだ。要求を言え、金なら無いが多少は考えよう。」

タマモは心の底から微笑を浮かべると一気に横島から離れた。
逆に横島は敗残兵として床に崩れ落ちる。

くっそ〜今月は厳しいのに、シロをかわしたと思ったらタマモに捕まるとは。

「七水のだぶるきつねうどん!
新しく新メニューが出たのよ。挑戦しようと思ってたんだけど先立つものが無くて困ってたの。」

七水とは美神除霊事務所のある駅の近くのうどん屋で、行列が出来るぐらいに人気がある。
横島もタマモにつれられて何度か食べているが、良い味出していた。
ちなみにタマモのお気に入りで事あるごとに奢らされている。
まあ、味に見合ったお値段もするのですが・・・けっして高くは無いが安くも無い。

「分かった、ただし一度だけだぞ。さすがに今月は厳しいから何度もは無理だ。」

「やった〜、横島ありがとう〜」

いつもクールなタマモがよほど嬉しいのか横島に飛びついてくる。
それを見ると横島も微笑みながら、まあこれも良いかななんて思ってしまう。
だが、タマモは自分のやってる事にすぐ気がついたのか、ぱっと離れるといつものすました顔を作る。

「ま、まあ、今回はそのぐらいで許してあげるわ。それともう一つ聞きたいんだけど。」

「なんだ、よく分からんがなんでもこい」

もう隠すものも無いので、なんでも答えてやるぜと開き直りながら返事をする。

「さっきの様子だと、ハーレムの夢見てたみたいだけど、そ、その中に私は居たの?」

ぐっ一番答えにくい質問を、男の夢ハーレムがいけないとでも言うのか!
いいじゃね〜か、現実じゃ無理なんだから夢で見るぐらい。

「ハーレムは男の夢だ。たどり着けないと分かっていても、夢見てしまうのは男のサガなんだ〜」

「うるさい!」

バコッ

「ものすごく痛いぞタマモ。」

さすがに目覚まし時計を直で殴られると下手すれば死ぬぞ。
だが、俺の答えでは不満だったらしくタマモはかなりご立腹だ。

「ハーレムなんて夢どうでも良いのよ。私に手を出してたの?出してないの?」

いや、タマモさんそれはとっても答えにくいよ。

「えっと、その、出していたような出してないような〜」

「みんなにばらすわよ。」

「すみません、きっちり手を出してました。」

タマモの脅しに簡単に屈服する。

「へ〜私って横島の守備範囲なんだ、気をつけないと襲われちゃうかも知れないんだ。」

やたら嬉しそうにニヤニヤしながら、人のほっぺを突付いてくる。
顔が赤くなるのが抑えられない。
くっそ〜タマモにからかわれるとは思っても見なかったぞ。

「ちがう、夢の中のお前はもうちょっと成長していてグラマーだった。
今のお前では手を出す基準じゃない!!」

なんとか、苦しまぎれにやり返そうと反論をするが、
タマモをちょっとむっとさせるぐらいの効果しかなかった。

「逆に言えばもうちょっと成長すれば手を出すって事ね。
きゃ〜怖い、こうやって二人っきりになるのは危険ね。」

だめだ、もはやなにを言ってもタマモに勝てる気がしない。
今はほっぺを突付かれようが耐えるしかない。

「ねね、どんなふうに襲ったの。おキヌちゃんが見てた週刊誌には、
私を奪ってとか言うと効果あるって書いてあったけどほんと?
ニ号さんでもかまわないわとか言うと安心して手を出してくるって本当なの?
ちなみに二号さんてなに?」

「うがぁ〜〜〜」

「きゃっ」

叫びながら立ち上がるとさっさと着替えを済ませて玄関に向かう。
驚いたタマモが唖然として座り込んでいるのを見て、横島が声を掛ける。

「ほら、七水行くぞ。今から行けば朝食メニューがあるかもしれない。」

真っ赤になっている顔を意識しながら、タマモに目線を微妙に合わせないで言う。
今の財布の中身で七水行くのはきついが、このままタマモに苛められるよりは全然ましだった。

「はいはい、この辺で勘弁してあげるわ。」

先に玄関から外に出て待っていると、すぐにタマモも靴を履いて出てくる。

「そう言えば、どうやって入ってきたんだよ。」

鍵は確かに閉めていたはずだ、合鍵をタマモに預けた覚えも無い。
するとタマモはポケットからアクセサリーのついたアパートの鍵を取り出した。

「これ、おキヌちゃんが貸してくれたわ。でも帰ってきたらすぐ返してくださいってねんおされちゃた。」

ああ、なるほどおキヌちゃんには合鍵を渡している。
伝言を頼むときに合鍵を貸したのだろう。

「なるほど、じゃ行くか。」

「あ、ちょっと待って。」

歩き出そうとする横島をタマモが呼び止める。

「ん、どうした?」

「これあげるわ、奢ってもらうお礼よ。」

タマモはなにか小さなものを横島に向かって投げる。
なんとか落とさないようにつかむと、それは飴玉だった。

「飴玉?」

「そう、来るときにも舐めてたんだけど結構美味しいわよ。」

そう言ってタマモは自分で持っていたもう一つを口に放り込んだ。
横島もまねして口に放り込む。

「あれ、レモン味だ。」

「そうよ、レモン味がどうしたの?」

「いやレモン味ってなにかこう記憶に新しいのだが思い出せないな。」

首を捻って考えるが全然思い出せない。
あっれ〜つい最近なにかあった気がするんだが、なんだったっけな〜。

「思い出せないんじゃたいした事無いんでしょ。
ほら行くわよ。見なさい今日は雲ひとつ無い晴天よ。」

つられて見上げれば確かに雲ひとつ無い晴天だ。

「青い青い空って感じだな。」

そう言ってすぐにタマモを追いかける。

「さて、金足りるかな。」




終わり



あとがき
The Blue Rainで全然明るく無かったので、明るい話をと言う考えで作りました。
最後の題名に引っ掛ける部分はちょっと苦しいかもしれません。
ご勘弁を

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