ザ・グレート・展開予測ショー

The Blue Rain 後編


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 4/21)







だがタマモが喋った次の言葉で、頭から冷水を掛けられたような気分になってしまった。

「私にはこれしか持ってないから、私を好きにしていいからだから私を守って、だから私を助けて。」

よく見ればタマモの目は理性の光が全然見えない。
まるで必死にすがりつく子供の目をしている。
なんでこの目を見間違えたのかと思うと自分に腹が立つほどだ。

「タマモもういい、もういいんだよ。」

そっとタマモの頭を撫でてやる。
その行為にタマモは驚いた顔をして横島を見つめる。

「なんで、好きにしていいのよ。
私なんだってやる、言ってくれればどんな事だってやるから。」

横島の胸に必死にしがみついてくるタマモは、普段を知っている横島には目を背けたくなるほどだ。

「お願い、お願いだから私を見捨てないで・・」

タマモの頬に手を添えて、自分の正面に持ってくる。
目をそらさず真っ直ぐに見つめてやると、タマモは少し落ち着きを取り戻した。

「タマモ、それはちがう。俺はお前を見捨てるなんて絶対にしない。
お前が守って欲しいと思うなら守ってやる。
お前が助けて欲しいと思うなら助けてやる。
だけどそれにこんな見返りなんて求めていない。
俺がお前を守るのに理由なんていらないんだよ。」

タマモの目を見ながら必死に訴えてみる。
当然心の中では、さすがにそれは言い過ぎだろ俺と自分に突っ込みを入れているのだが、
今はタマモを落ち着かせないと話にならない。
まあタマモを助けたいのは本当なので、ある程度のでっち上げは許されるだろう。

「うそ、うそよ!
今までそんな事言ってくれた男なんて一人もいない。
だから、だから私は・・・」

再びタマモが見つめてくると、意識が飛びそうになる。
おかしいと思ったが、タマモがなにかの力を使っているのかもしれない。
頭を振ってタマモに手を出そうとする気持ちを振り払う。

「そんな事しないでも大丈夫だ。
俺や美神さん、おキヌちゃんやシロだって、お前になにかあればすぐに助けに来てくれる仲間じゃないか。
それに今すべてを信じるなんてしなくていいんだ。
他の誰が敵でも、俺はお前になにかあったら絶対助けてやる。今はそれだけを信じてくれ。」

そう言ってタマモを抱き締めてやる、そのまま頭を撫でてやれば子供は安心するって美神隊長が言っていた。
まさかタマモで実践するとは思わなかったが間違いは無いはずだ。

最初はすすり泣き、そしてだんだんと声は大きくなって最後はわんわんと大声で泣き始めた。
よし、もう大丈夫だろう。泣いている目にはちゃんと理性の光を感じられる。




嬉しかった、ただ嬉しかった。
欲しかったのはただ安らげる場所、手にはいらないと思ったのは自分の心を預けられる人。
周りはいつも敵だけだった。外に出れば必ず襲ってくる妖怪たち、
内に居ても私を自分の物にしようとする男たち。
その中で、いつしか諦めていた物をこの人はくれた。
だから信じてみようと思う前は駄目だったけど、今度は望みがかなうかも知れないから、
だから、だからがんばってね。

自分の中からなにかが消えていく、それがなにかタマモには分からなかったが、
確かにそれは満足して消えていったと思う。
だけど、消えてしまったそれが悲しくて横島にいっそうしがみ付いて泣いてしまう。
今だけは涙を抑えることが出来そうに無かった。




まったく、手を出すの我慢するってどれだけつらいかこいつに分かっているのだろうか。
しかも俺に散々くさい台詞言わせやがって、がらじゃねっつ〜の。
だが助けるって気持ちだけは本当だ、この気持ちだけは嘘じゃない。
だけど後でぜったい説教だな、しかし美神さん居なくてよかったぞ、
さすがにこれは言い訳するの大変そうだ。

ガチャ

「ただいま〜、まったくふざけんじゃないわよ。雨の日には働かないってあれほどママに言ったのに、
我が儘言うんじゃないだなんて失礼しちゃうわ。」

「まあまあ、美神さん。早めに終わったんだからいいじゃないですか。」

ドアを開けて入って来た美神とおキヌは、泣き声に気が付いてこちらを見ると一瞬にして凍りつく。

あ、終わったな。
ソファーに俺が上になってタマモを押し倒しているように見えるだろうし、
タマモは俺の胸にすがり付いてわんわん泣いている最中だ。俺もしっかりと抱き締めてるしな!!
それに今まで見ない振りをしてきたが、タマモはパジャマのままだった。
これをなにも知らない人が見た時、どういう場面に見えるか大体想像が付く。

「あ、あの〜美神さん。俺の話聞く気有りますでしょうか・・・」

「く、腐れ外道が〜〜〜〜〜」

「やっぱりね〜か〜〜」

どっか〜〜ん

それからしばらくの間、美神の神通根で盛大にしばかれる横島の姿があった。





「ま、まあ大体状況は分かったわ。
多分それは前世の記憶が今のタマモと混ざり合った結果ね。
いえ、前世のタマモが横島君の見たタマモと同じだったとは思わないわ。
前世のマイナスの感情が今のタマモの記憶とくっ付いて別の人格となったと思うの。」

「はあ、なるほど」

感心したように相づちをうったおキヌは、
ちらりと部屋の隅を見るとボロ雑巾のようになった横島が転がっていた。
今更どうしようもないので、美神たちはなるべく見ないようにしながら会話を進めている。

「でも美神さん、今までタマモちゃんは前世の記憶とかまったく思い出せなかったのに、
どうして突然思い出したんでしょう。」

今までジッと聞いていたおキヌが、気になって美神に質問をする。

「今だって思い出してないわよ。さっきのだってもう私の中には前世の感情なんて無いもの。」

おキヌの質問に美神よりタマモの方が早く答える。

「そうよね、そこが問題なのよ。これが今回だけなのか、それともまた起こるのか調べないと困るわね。」

ん〜と考え出した美神を見ながら、タマモはさっきからちょっと不思議に思っていた事を聞く。

「そういえば馬鹿犬はどうしたの?」

「え、ああ、なんか行く時から眠そうだったんだけど、帰りに寝ちゃっておきないから車に置いて来たわ。」

そう言えばいい加減おきるころかもねと言いながら、再び考え始める。
だんだんとはっきりとして来た記憶の中で、そう言えば昨日シロが持っていた本はと考え始めたとき。

ガチャ

「たっまも〜〜前世はなんだったか夢に出たでござるか〜」

元気よく入ってきたシロが、周りの雰囲気なんてまるで考えないで話を進める。

「いや〜昨日拙者が買ってきた、[夢占い、これであなたの前世が占えるベスト102]を
タマモに馬鹿にされてから、寝ずに枕元で暗示を掛け続けたでござるが、
美神どのの仕事でタマモがおきるまで居られなかったでござるよ。
しかも徹夜だったから眠くて眠くて、帰ってきたら真っ先に確認しようと思ったでござるが、
途中で寝てしまったでござる。拙者が思うにタマモの前世は、コオロギだと思うでござるが・・・・
あれ、どうしたでござるか?
みんなそんなに怖い顔をして、もしかして今は邪魔だったでござるかな。
み、みんなどうして寄ってくるでござるか!
あ〜なんか知らないけどごめんでござる〜〜〜〜」

それから三日間、事務所の外の犬小屋に繋がれるシロに似た犬が居たとか居ないとか、
首に馬鹿犬ですと書かれた板を掛けていたとの目撃例もあったそうです。



おしまい



あとがき
あれ、タマモのラブラブ話書こうと思っていたのに、なんでこんな暗い話になったのか・・・

すでに最初の3行目から明るくないし・・

ども青い猫又です。
今回はちょっと暗い話&趣味が分かれるような作りになったために、
人によっては面白いとは感じないかもしれません。

でも面白いと思ってくれれば幸いです。

ちなみにこの後載せるThe Blue Blue Skyは今回とは全然違いますが、こちらから見てくれると
嬉しいです。ちなみに続き物ではないのでよろしくお願いします。

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