B&B!!(32) Epilogue−1
投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(04/ 4/21)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Bodyguard & Butturfly!!
Maximum−Side Epilogue
“ Regend ”
___________________
呼びかけられ、彼は顔を上げた。
ドアも窓もないその広大な空間は彼の執務室であり、一番奥に彼と机とがあった。
しばらく経ってから彼は返事をする。
「―――何や。」
彼からずいぶん離れた執務室の中央に何者かが姿を現した――その巨体と言い、全身から放たれる莫大な量の神気と言い、明らかに人間ではなかった。その者は彼に向かって一礼する。
「お早うございます。本日も御名が奉られん事を。天の栄光が世に成されん事を。」
「・・・会合の予定にはまだ早いで。」
「先程から使者が二組参られ、お待ちになっております。」
「使者・・・・・・誰と誰や。」
「はい、まずは真神聖霊十字軍軍団長ストラディエル殿とメルカパ第四参謀エスナエル殿で今後の・・・」
彼が目の前に立っていた。その者と比べて彼は更に大きく大量の神気を放っている―――彼もまた、人ではなかった。彼は自分の執事を見据えながら、人間だったらとっくに消し飛んでいる程の霊圧で締め上げる。
「何言うとんのや、わいを誰や思うとる。わいにそないな非合法組織のモンと話す用なんかないで。」
「し・・・失礼いたしまし・・た・・・ミカエル様・・・
エネルギー庁総裁次官ストラディエル殿と中央議事会二等書記官エスナエル殿で・・・」
「謁見の間に通し、待たせとけ。後から行く言うてな。」
彼・・・天使長ミカエルは執事を解放し、机へとゆっくり歩き始めた。
「もう一組は妙神山守護神小竜姫殿と情報局官神のヒャクメ殿で斉天大聖公の質問書簡を持参し、
ミカエル様への謁見を願い出ておられます・・・。」
「ふん、何の質問や。」
「ええと・・・メギドフレイム流出の件で特定の上級神族による過激派組織への関与疑惑、
そしてミカエル様直轄である『神の軍勢』の内部事情に関しての数点の疑問、
流出したメギドフレイムの保管・開発が行われている状況について、ミカエル様からの
ご見解をお伺いしたいとの・・・・。」
「まったく知らん。正式な回答状を後で送る。・・・そう言うて追い返したれ。」
ミカエルは机の傍で立ち止まり、その表面を指でとんとんと叩きながら付け加えた。
「・・・帰ったら、塩まいたれや、塩。」
「かしこまりました。」
「ストラディエルとの話も予定の会合もわいの喋らなあかん所は殆どあらへんさかいに、
直して喋る言葉決めんのも楽や。ほんま抜けへんの、関西弁は・・・
わいもみっともな思とるんやが・・・。」
「ミカエル様・・・無理をなさらぬほうがよろしいのでは?その言葉使いも天に定められしもの。
天の頂にて御使いを父に代わり統べる運命の双子の証として父の父たる造物主より・・・」
ミカエルの指が止まった。執事は自分の失言に気付き両手で口を押さえた・・・が、遅かった。ミカエルが振り返ると同時に執事の周囲に強力な霊波が張られ、その身体は身動き出来ないまま宙へと浮かび上がる。
執事を睨みながらずかずかと歩み寄るミカエル―――放たれる神気は強烈な怒りに満ちていた。
「双子・・・双子やと?誰がじゃい、誰が双子じゃい!わいか?わいに双子の兄弟がおる言うんかいっ!?
わいの様に関西弁使とるやつがおるんかい!?どこや、どこにおる言うんじゃわれ、言うてみんかいっ!?」
「も・・・申し訳・・あり・・ませんっ、ミカエル・・・様・・・」
宙に浮かんだ執事の目線はミカエルのそれと並ぶ。その頭を鷲摑みにしてミカエルは横に払う。執事は部屋の端まで転がって行った。・・・どちらも大天使である。室内で荒れ狂うエネルギーは核ミサイル数発分に相当するものだった。さすがに部屋の壁や床、空間のかすかにきしむ気配がする。執事は身体を起こし衝撃に顔を歪ませながらも平伏した。
「・・・どいつもこいつも・・・ナメとったらあかんで、ほんまに。」
ミカエルは天井へ顔を向ける。その視線の先には天井全体に書かれた幾何学的な紋様―――三つの帯が絡まり合い融合し、太陽と十字架を支えている絵の様でもある―――「三位一体」を意匠したものだった。それを見つめながら顔の下半分を覆っていた布を指でずらす。そこから見える口元は・・・嗤っていた。
「カスがぎょうさんいちびったかて、どないもならんわ。・・・死は扉の外にあるもんやで。
選ばれし者と生きる者の踏み入れぬ場所でな。預言の通りいわしたるさかい・・・
『世はすべて、事もなし』、や。」
+ + + + + + +
夢を見た。
赤ん坊と、少女の夢だ。
夜の明け始めた蒼く暗い田舎道を、盗んだオンボロの車で飛ばしている。窓の隙間から入り込む冷たい風。道の横を看板や枯れ木が何度も流れて行く中を、舞っている何か無数の白いものが赤ん坊の目に止まった。
――――あなたのなまえよ。
掴もうとでもしたのか、窓に向かって手を伸ばす赤ん坊に運転席の少女が語り掛けた。
――――ゆき・・・・。だて・・・ゆきのじょう・・・。このゆきとおなじなの。
更に勢いを増して舞う白雪の中、エンジンの音だけが響いていた。少女が可笑しそうに笑いながら言葉を続ける。
――――ふるめかしい、じだいげきみたいななまえでしょ?
でも、つよくてきれいなかんじがしてあなたにぴったりだとおもうの。
むこうでかんがえていたの、このなまえ。
ぜったいつけてあげようって・・・ずっとおもってた。
赤ん坊には言葉の意味が分からない・・・「名前」も「雪」も。だけどその響きが気になったのか、不思議そうに少女を見た。
――――つもったゆきは、よるをてらしてくれるんだよ。そして、あさを、まっしろにかざるの。
・・・つめたく、つよく、うつくしく、やさしく。
だからどんなにさむいときでも、どんなにひどいばしょでも、あしたが・・・・
チャイムの音。
二度目・・・三度目のチャイムの音。
続け様に慣らされる、チャイムの音・・・荒々しくドアを叩く音。名前を連呼する声。
だが雪之丞が目覚めたのは、そのしばらく後に窓の下から響いて来た長押しのクラクションでだった。
彼は枕元の時計を掴みぼんやりと眺め一言、「やべえ・・・」と呟いた。
顔を上げて何となくカレンダーを見る。
季節は初夏。あの長い一日から既に半年近くが過ぎていた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Bodyguard & Butturfly!!
Minimum−Side Epilogue
“ Children ”
___________________
今までの
コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa