ザ・グレート・展開予測ショー

蛍の日々 〜手料理〜


投稿者名:殿下
投稿日時:(04/ 4/14)

「ただいまぁ。今回の除霊は泊まり込みだったから疲れたよ・・ルシオラ?」
いつもなら俺が家に帰ってきたらすぐに抱きついてきて「おかえり」って言ってくれるのに・・。ましてや今回は泊まり込みの仕事だったため丸二日顔を合わせていない。それなのに何故?

(まさか・・・新婚3ケ月目にして早くも倦怠期というやつになったというのか・・)

そんな不安を取り払うようにルシオラを呼ぶ。
「ルシオラ?いないのか?」

シーン

俺の声が虚しく響きわたる。
(おかしいな。鍵は開いたまんまだったし・・とりあえず中入ろう)

俺はいつもと違う我が家に戸惑いながらも家の中へと進んでいくと・・・
キッチンで何かの本を読みながら悩んでいるルシオラを発見した。

(なんだ、いるじゃないか)
先ほどの不安が一気に解消し、テンションが上がった俺は忍び足でルシオラに近づき、そして・・・

ガバッ!
後ろから抱きついた。

「きゃっっ!?」
「ただいま♪」

「ヨコシマ、びっくりするじゃない」

「ごめんごめん、でも玄関でもただいまって言ったんだぜ」

「そうだったの?ごめんなさい。気付かなくて・・・それよりヨコシマ」
こちらをキッと睨むような視線で見る。

「な、なにかな」
その眼光の鋭さには思わず後ずさりしそうになる程の迫力があった。
(一体何だろう。別に浮気なんかしてないぞ・・・まさかあの事か)

「ヨコシマ!」

「あっ、す、すいませんでした。ひょっとしてルシオラに秘密でアダルトビデオを隠している件ですか!?
それとも高校時代の冒険心を思い出して女子校の更衣室を覗いてみた件ですか?」

ピクッ
「へぇー、そんな事してたのヨコシマ」

「えぇ!?違うのか?」
(しまったぁ。余計なこと言うんじゃなかった・・)

「とりあえず、その事は後でゆっっっくりと話し合うとして、ヨコシマ!」

「は、はい!」

「何が食べたい?」

「・・・は?」

「だから、今晩何が食べたいって聞いてるのよ」

「そうだな、出前でも取るか」

「そうじゃなくて、何を作って欲しいかを聞いてるの!」

「作る?誰が?」

「私に決まってるじゃない」

「夕飯を?ルシオラが?」

「そうよ!」

「えっ、でもルシオラ、料理は出来な・・」

「何が食べたいの?」
俺の言葉をかき消すようにルシオラが鬼気迫る表情で俺に迫ってくる。

(急に何が食べたいと言われても・・・それにルシオラが作る料理はお世辞にもおいしいとは言えるもんじゃないからなあ。前に一度作ったことがあったが、そん時は確か焼き魚が炭のかたまりになって出てきたんだよな)

「それで何を食べたいの?」
ぐっと顔を近づけ、もう一度聞いてくる。

「えっと、じゃあカレーがいいな」

何故カレーかと言うと比較的簡単な料理の部類に入るからだ。まあ、焼き魚が炭のかたまりにする料理の腕ではかなり難しいかもしれないのだが・・

「カレーね?カレーでいいのね?」
「お、おう」

「わかった。それじゃあ材料買ってくるから留守番ヨロシクね」
「お、おう」

俺の返事を聞くと同時にルシオラはすぐ出掛けた。
しばらくの間、俺はドアをぼーっと見つめていた。

「んっ?」
俺がふと台所の方を見ると、先ほどルシオラがいた場所に料理の本が置いてあった。
その本を開くと、びっしりとチェックがついていた。
(ルシオラの奴、俺が居ない時に練習してたんだな・・こりゃ期待できるかもな)


「ただいまー!!」

「おかえり」
買い物袋を机の上に置き、材料を取り出す。
それからエプロンを身につける。
ルシオラのエプロン姿はあまり見慣れてないせいか少し新鮮な感じがする。

「なんか手伝おうか?」
「いいわ、ヨコシマは座って待ってて」


そしてついに調理が始まった。俺は座っててと言われたが、怪我などしなか心配になり少し離れた所から様子を見ている。

「えっと、まずお湯をわかして・・・次に材料を切ると・・」
キッチンでブツブツと本を片手に一生懸命料理をしている姿と普段見慣れないエプロン姿で思わず後ろから抱きしめたくなる衝動にかられた。

くるっ

調理を止め、急にこちらを振り返り、
「い、今は・・・ダメだからね」
頬をほんのりと赤らめながら俺の心を読んだかのように注意をする。

「・・・はい」
(読まれたか・・・でも何でわかったんだろ?俺からいやらしいオーラでも出てたんかな?
『今はダメ』か・・・我が妻ながら可愛すぎるぞ)

俺は素直に引き下がり、ソファーに寝転びながら雑誌を読みながら愛の手料理が出来るのを待つ。

トントントン
ぎこちないがリズミカルな音が聞こえてくる。

「へえー、じゃがいもって皮剥くんだ。知らなかった」

(・・・マジで!?)

「なになに、次は炒めるのね」

「あ〜ん、焦がしちゃった」

「ちょっと味見・・・ちょっとカレー粉足りないかな」

「うん、いい感じ♪待っててね、あ・な・た・・・なんちゃってね」

(・・・か、かわいい)

「で〜きた!」


テーブルの上に出来立てのカレーが並ぶ。
「それでは、早速・・いただきま〜す」
「どうぞどうぞ」

ぱくっ

「・・・どう?」
「美味いぞ」

「ホント?」
「ホント、ホント」

「嬉しいな・・」
「ルシオラも早く食べろよ」
「いいの。ヨコシマが美味しそうに食べてる顔を見てるだけでお腹一杯になっちゃった」

「なーにバカな事言ってるんだよ」

「あー、非道い・・・あら?ヨコシマ、ちょっと動かないでね」
「ん?」

そう言うとルシオラが俺に顔を近づけてきて
ぺろっ
俺の唇の端にご飯粒を舐めて取った。

「ふふふ・・、おいし」

その瞬間俺の理性が切れ、ルシオラをソファーに押し倒し、唇を押しつけた。
「・・・・んっ・・んん」

「もう、まだエプロンしたままなんだからダメ」

「それはそれで・・」

「ダメだって・・・怒るわよ」

「ルシオラが可愛すぎるのが悪いんだよ」

「もう・・・そんな事言われたら照れるじゃない」

「それに食後はやっぱデザートでしょ」

「まだ全部食べてないじゃない」

「まあ、細かいことは気にしないで」

「もう、後でカレー全部食べてよ」
そう言ってルシオラが腕を絡めてくる。

「任せとけ!」

「それと・・・デザートも残さず食べてね☆」

「・・・任せて下さい」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ふー、腹一杯」

「驚いた。ホントに全部食べちゃった」
大量に作ったはずのカレーを全て平らげた横島に驚きを隠せないルシオラ

「だから言っただろ?任せとけって」

「それよりヨコシマ」
ルシオラがソファーに座る俺の横に座り抱きついてくる。

「なんだ?もう一回デザートを食べさせてもらえるんですか?」

「んーん、違うよ。隠してるアダルトビデオの事と女子校の更衣室の事について話し合いましょ☆」

「えっ!?」
さっきまで温かさに満ち溢れた部屋が一瞬にして凍り付いた。


       【おしまい】

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