ザ・グレート・展開予測ショー

部屋とYシャツと狐


投稿者名:殿下
投稿日時:(04/ 4/14)

ポツッ ポツッ

(ん?雨・・・か?)
安アパートの屋根に打ち付ける微かな雨音に気づき、窓を開け確認する。
そこにはまだ小雨といった感じの景色が広がっていた。

「微妙な雨だな・・・でも雨は雨だし今日は行かなくてもいいかな」
基本的に美神令子は雨の日の仕事を極端に嫌うのでかなり大口の依頼でも入らない限り働くことはないのである。つまり雨が降れば、その日は臨時の休暇となるため横島は事務所に行く必要もなくなるのである。
しかし、今見たところ美神が仕事に行くかもしれないほど微妙な雨なので横島は事務所に行くか行かざるべきか迷っていた。

「晴れるのか、雨降んのか、ハッキリせんかい!」
窓から顔を出し、空に向かって叫ぶ横島
その叫びが天に通じたのだろうか、横島が叫び終わった瞬間

ザーーーーーーーッ!!
一気に雨音が強くなり、美神が大口の仕事が入ってきても断りそうなほどの豪雨となったのだ。

「俺って時々すげえな・・・」
まるで自分で天候を操ったかのような状況を見て自分自身に少し感心する。

「とにかく、これで今日の仕事は休みになったな。久々にのんびりすっかな」
そう言って窓を閉めて、すぐに布団に潜り込み眠りにつこうとした。その時

ドンドンドン

横島の部屋のドアを強く叩く音が聞こえてきた。

「誰だよ、せっかくの休みに・・」
眠りにつこうをした瞬間に邪魔され、少し不機嫌そうにドアの方に向かう。
そしてドアを開けるとそこには・・・

「タマモ!?」
土砂降りのせいでびしょ濡れになったタマモの姿があった。

「ちょっと雨宿りさせてくれない?」

「おお、早く上がれよ」
部屋に上がるタマモからぽとぽとと雫が落ちている。

「待ってろよ。えっとタオル・・タオルと・・・あった」
すぐにタオルをタマモに渡し全身を拭かせる。しかし少し拭いたくらいでは全く乾く気配がない。

(う〜ん、このままじゃタマモ風邪ひいちまうな・・・仕方ない)
俺は意を決してタマモにあることを告げる。

「タマモ」

「何?」

真剣な顔でタマモに迫り、そして
「・・・・・・脱げ」

バキッ!!
「ぐはっっ」
タマモの強烈な右フックが俺に炸裂する。

「いきなり何を言い出すのよ!このバカ」

「ち、違う、誤解だ・・。びしょ濡れのままじゃ風邪ひくから、早くずぶ濡れの服を脱いで俺の服に着替えろって意味だよ」

「だったらちゃんとそう言いなさいよ。いきなり脱げなんて言われたら誤解するに決まってるじゃない」

「それは俺の説明不足だったな、すまん。とにかく着替えろよ」

「わかった。服はどこにあるの?」

「そこのタンスに入ってるから適当に選んでいいぜ」
俺はタンスを指さして答える。

ごそごそごそ
「これでいいわ。どこで着替えればいいの?」

「ここ」

ドゴッ!!
「おぐぅっっ」
タマモの膝蹴りが俺の腹にめり込む。

「あんたの目の前でなんか着替えれるわけないでしょ!」

「しょーがないだろ、俺の部屋風呂がないから脱衣場みたいな所がないんだ。俺は後ろ向いてるから平気だって」

「う〜〜」
タマモはしばらく唸りながら考えた結果
「振り返ったら殴るだけじゃすまないからね」
観念した。

「わかってるって」
そう言って俺は窓の方を向く。

シュルッ パサッ

後ろから衣擦れの音聞こえてくる。窓を閉めたため雨の音もあまりしない部屋ではその音がやけに響いた。

(うう、まさかヨコシマの前で服を脱ぐことになるなんて・・・まだ心の準備が・・・って違うか)
チラッ
横島がちゃんと後ろを向いているかを確認する。
自分には魅力がないのかと少し残念がりつつも着替えを続ける。

一方横島は・・・
(今、俺の真後ろで生着替えをしてる女の子がいる・・・俺はこのまま後ろを向いてるべきか、それとも・・・)
普段なら絶対にない状況と後ろから聞こえてくる美少女の生着替えの音で少し興奮状態に陥っていた。
これがもし美神とかなら確実に襲いかかっているだろう・・・しかし相手は美少女、いくら美しくても少女なのだ。迂闊な行動はできない・・・かといって、この状況は健康な高校生にはかなりキツイものがある。
そんな感じで心の葛藤と戦い続けている横島に目に衝撃的な光景が映る。

(!?)

なんと窓の反射でタマモの姿がくっきりと映っていたのである。しかもタマモは既に上半身裸の状態だったのだ。幸いタマモは後ろ向いて着替えているため見えるのは背中だけなのだが、普段見ることができないタマモの裸の背中に横島の大脳中枢は激しく刺激された。
そしてタマモがスカートに手をかける。

(ダメだ!これ以上見たら・・・自分を抑える自信がない)
すぐに下を向き、必死にその衝動を抑えようとする横島

そんな男として立派(?)な行動をしている横島にさらなる試練が課せられる。
「(うわっ、中までビショビショ・・・)」

ピクッ
(中まで!?中って何?何なの?ぐああぁぁ)
不幸にもタマモのつぶやきを聞いてしまい、再び抑え込んでいた衝動が横島を襲う。
必死にもがく横島

(もうダメだ・・・俺は見るぞ!なんで見るかって?俺が『男』だからだ!!)
妙な決心をして、ついに横島が後ろを振り返ろうとした時

「もういいよ〜。ヨコシマ」
後ろからタマモの着替え終了の声が聞こえてきた。

「・・・・・・」

「どうしたの?もうこっち向いていいのよ」

「・・・ちょっとそっとしておいてくれるか」

「?・・・うん」
不思議そうな表情を浮かべたが、机の上においてあったカップうどんに気づくとすぐに手にして、勝手にポットのお湯を注ぎ始める。

コポコポコポ

横島はというと・・・
(何故俺はあの時下を向いたんだ!俺に・・俺にほんの少しの勇気があれば・・・)
勇気の使い方を間違いながら横島は先ほどの自分の行動を涙を流して後悔していた。

ずるずるずる

そんな横島の耳に美味しそうな何かをすする音が聞こえてきた。
その音で自分の命綱のカップ麺が食べられていると悟り、ずっと後ろを向いていた体勢を変えてタマモの方を向き、抗議の声を

「こら、それは俺の生命・・・・線」

あげようとする横島の目に映ったのは・・・長い髪をとき、Yシャツを羽織っただけという姿のタマモだった。

「タ、タマモさん?その格好は・・・」

「え、これ?横島が好きなの選んでいいって言うからこれにしたの。変?」
うどんを食べるのを止め、立ち上がり顔を少し赤らめながら「どう?」といった感じで聞いてくるタマモ

「まぁ、似合うといえば似合うけど・・・」
「けど・・・?」

「その格好は、俺にはちょっと刺激的すぎるなぁ・・」
目のやり場に困り、俺はタマモから顔を少しそらしながら話を続ける。

「・・・・・・いいよ」
ぽつりとタマモがつぶやく。
一瞬、タマモの言葉の意味が理解できなかった。

「タマモ?」
「・・・・・・」
タマモは俺の言葉には答えず黙って俺の側まで寄ってきた。そして、ぎゅっと抱きついてくる。

「私・・・ヨコシマになら何されてもいいよ。ヨコシマだけは私に何してもいいの・・・」
そう言って、甘えるように俺の顔を見上げてくる。

(か、可愛い・・・。ていうか何で急に人格変わってんだ?)
さっきは着替えを見られる事さえ恥ずかしがっていたタマモの急変した態度に俺は少し変に思う。

「何も言ってくれないの?ヨコシマ」
タマモが目に涙をため、俺に擦り寄りながら返事を迫ってくる。

「タマモ・・・」
「ヨコシマ・・・」

俺がタマモの名前を呼ぶと、タマモは瞳を閉じて顔を少し上に向ける。
そのタマモを抱き寄せ、唇を重ねた。

















「もういいよ〜。ヨコシマ」
さきほど聞いたセリフがもう一度横島の耳に入ってきた。
目を開けると、そこにはジャージ姿のタマモがいた。

「へっ?あれ?」
さっきまでYシャツを羽織っただけのタマモが今はジャージを着ているという状況に動揺が隠せない。
そんな俺にタマモが声をかけてくる。

「いい夢見れたかしら?」

「夢?でもさっき俺はタマモと・・・」

「私と?何?」

「・・・いや、なんでもない。それより俺寝た記憶なんかないぞ」

「夢っていうか私の幻術。悪いとは思ったけど着替えてる間、幻術を使わせてもらったわ」

「はは、そうだったのか。あれは幻・・・」
(そうだよな。よく考えりゃタマモが俺とキスなんかするわけないし・・・はぁー寝よ)
さっきまでの出来事が全て幻術とわかり、ひどく落ち込み、ふて寝する横島

(最後のキスだけは幻術じゃないけど・・今は秘密にしとこうかな。今はまださっきの幻術のような行動はできないけど、いつか出来るようになるからそれまで待っててね☆ヨコシマ)

果たして横島は現実でタマモの裸にYシャツ姿を見る日は来るのだろうか?
それは神のみぞ知る・・
「知りません!」
「知らないのね〜」
・・コホン・・誰にもわからない。


       【おしまい】

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