ザ・グレート・展開予測ショー

忌まわしき虹 〜9時入社。19時退社。〜


投稿者名:executioner
投稿日時:(04/ 4/13)

今日も大いなる青空にあの虹が美しく映えわたっている。
あの忌わしき虹が。

心と裏腹に余計に美しいから本当に忌々しい。


そんな事とは関係なく俺の日々は流れていく。

ナガサレテイク。

9時入社。19時退社の日々にナガサレテイク・・・

そんなんでもやっぱり俺は捨て去ることができないのかな?







produce by executioner

written by SooMighty




忌わしき虹 〜9時入社。19時退社。〜




伊達雪乃丞   28歳   職業 ゴーストスイパー

独身。

今日も単調な生活を繰り返します。















9時に事務所に入り、適当に仕事をこなし、19時に退社。
家に帰って野球観戦して、寝る。
これが俺の日常だ。





いつからかこんな機械仕掛けの日々も悪くないと思える
ようになってしまった。

こんな大人にだけはなりたくなかったのにな。







弓と別れたのはいつだっけ?
もう5ヶ月は経つのかな。
男と女が別れるのなんてマンガや映画と違ってあっけないもんだった。
涙なんか無くとも語れる失恋。
必要以上の言葉なんか不要。

そんな終末だった。

一緒にいた時は本当に愛を語り明かしていたのにな。
まあ6年も続けば良いほうか・・・


まあ、そんなもんだろう、男女問題なんってのはさ。
複雑に見えて実は単純明快なんだ。



















・・・なんて強がりをいってもやっぱり寂しさは残ってしまう。
なもんで最近はうちの事務所に入ったばかりの紀子ちゃんを
口説いている。
全く相手にされていないが。




・・・なんかこんな事をやっていると悪友のあいつを思い出して
しまう。
あれほど見境いがないってわけでもないが、少し可愛くてママに似ていると
つい声をかけたくなってしまうだけだ。

まあ俺だけじゃねぇからいいさ。
男なんて大抵こんなもんさ。









そういえば別れた日から俺の第2の人生・・・いわばこの単調な
人生は始まっていたんだと思う。

最初はこんな自分が嫌で仕方なかったが、慣れてしまえばどってこと
ない。










それより実家の親父の説得の方が問題だ。

弓とつきあっていた頃からあいつは俺が結婚するのを楽しみにしていた
らしい。
まあ親父もママに速く逝かれて寂しいってのは重々理解できる。

よく「いい加減孫の顔が見たい。」だの「速く身を固めろだの。」
説教される。

その気持ちは本当にわかる。
実家に帰ったり電話するたびにこの手の話題が飛び出してくるのは
正直ウンザリだけどな。

俺ももういい年だ。守るべきものを作るのもいいのかもしれない。
親父を安心させてやりたい気持ちも当然ある。
俺の場合は人よりいっそう心配をかけたから、特に。



しかし結婚までを考えるとどうも、いい女が見当たらないのだ。
なんせ一生付き合う相手だ。
いい女のが長く付き合いやすいってのは当然だ。

・・・なんてこんな事考えるなんて俺もやっぱり老けてきてるよな。
だがいつまでもゆきあったりばったりなわけじゃあいかんだろ?

よく悪友や知り合いからは「お前暗いぞ。」なんて言われる。
それは元からだといってやりたい。
実際に俺はそんなに明るい性格でもないんだ。
むしろガキの頃から暗いほうだった。

そもそも明るい性格ならこんな事でウジウジ悩んだりしない。

思えばその悪友はもう家族を作ってしまった。
一番女に縁のなさそうな奴がこんなんになるんだから世の中本当にわからない。
嫁さんももう腹をふくらまして3ヶ月だそうだ。




一体世の中ってなんなんだろうな・・・
俺の人生ってなんなんだろうな・・・









誰もわからないとわかっていながらもそいつを探してしまう。
もしかしたらそれが人生で、その多くの人生が集まって世の中って
奴を形成しているのかもしれない。


















なんてわけのわからん事を考えながら今日も日が暮れてしまった。
どうやら仕事以外の遊び方ってのも忘れてしまったようだ。






















9時に事務所に到着。
19時に退社。

いつもと変わらない時刻にタイムカードを差した。
ここんところずっとそうだ。



通勤する時に見えていた虹はもう姿を消していた。
当然の事だが。


どうでもいい事だが、最近よく虹を見かける。

虹は綺麗だ。
誰しもがそう思うだろう。



だからこそ今の自分と比べると無くしたはずの気持ちが
こみ上げてきて逆に辛かった。

美しいものはそれだけで罪ってことを美しいもの達は自覚していない。
確かに見る者に深い感慨を与えるのかもしれないが、そういった純粋な人間
ばかりじゃないのだ。




だから俺は虹が忌まわしく見えて仕方がない。
見たら自分の心に影を作ってしまう事がわかっているから。



家に帰って野球を見ていたが、なんとなく応援している巨人が負けた。
少しだけ気分が悪くなったのでさっさと寝ることにした。



紀子ちゃんにメールを送ってみたが返事は返ってこない。
今日もやんわりとかわされたみたいね。




















9時入社。



今日は時間制限付きの仕事に見事に失敗してしまった。
上司からもクライアントからも大目玉を喰らった。
無愛想な俺もさすがに頭を必死で下げた。

なんせ今や不景気だ。
一攫千金なゴーストスイパーといえど、その影響は
受けてしまう。
ましてうちの貧乏事務所はそういうミスは非常に痛い。
ひとつの信用でも落としたくないのだ。
そういう事情がわかりながらも失敗してしまう俺はアホだろう。
俺が頭を下げたところでどうにかなる問題でも無いが、
それでも下げないよりは遥かにマシだ。


これでも謝る回数は減ってきてるんだけどな。
やっぱり俺はどうしてもうまくやれない。


そう、入社したての俺ははっきいって青かった。
ゴーストスイパーって仕事はただ霊力が強ければ誰でも
成功するだなんて思っていたんだから。


そんな甘ったるい考えは一週間として持たなかった。
しかも最悪なのが選抜試験で首位で合格してしまった事だ。
それ故に優秀なルーキーと期待されてしまったのが痛い。

それと同時に大手の事務所がなぜ俺をとらなかったのかもわかった。
実戦以外の経験が皆無だからだ。
腕っ節だけの奴なんて社会は誰も必要としていなかった。
俺の小さい事務所はとかく上に上がる事を念頭に考えているので
俺みたいな奴でも使ってくれるのだ。

あの頃の俺は会社の過酷な経済状況も知らずただオロオロしていただけだった。
うまくなった事といえば頭の下げ方ぐらいなもんかもしれない。

上司の説教と反省文を書かされていたために、今日は




21時退社。






散々な1日だった。
せめてもの救いは忌まわしき虹を見なくて済んだことか・・・




野球も見ることなく就寝。














9時入社。19時退社。



今日は何事も無く終わった。
上司ももう頭を冷やしていたみたいで、気を引き締めるように
なんてありきたりでもう何回も聞かされた事を言うぐらいだ。


紀子ちゃんが風邪で欠勤していたのが少し寂しいぐらいか。
あとでメールでも送っておくか。
返信される保証は無いけど。




今日は天気予報によると1日中雨らしい。
明日には晴れるらしいが、虹が顔を出すと思うと
早くも憂鬱な気分に浸ってしまう。


大雨のおかげで野球も中止だった。




やがて就寝。

















9時入社。19時退社。


朝っぱらから虹を見て嫌な気分になるも、紀子ちゃんから
昨日送ったメールの返事が来て少しパッピーな気分になる。

プラマイゼロってところだな今日は。



そんな事を思いながら就寝。













9時入社。19時退社。



親父から電話がかかってきた。
おおよそ言うことはわかっていた。






・・・予想通りの小言を聞かされた。
それも本当にクソ真面目な声で言うんだからたまったもんじゃあない。

前の小言を聞かされた時と同じように適当な相槌をしながら聞き流した。

別に親父の説教が鬱陶しいわけは無い。
小言を聞く度に自分が出来損ないというのを思い知ってしまうからだ。


もう俺の年齢なら結婚していてもおかしくはない。
俺自身そう思う。
しかし未だに恋人とすら呼べる者が隣にいないってのは問題有りだろう。

なんとかいい女見つけたいと奮闘しているんだけどな。
映画やドラマみたいな出会いなんてないから、悪友のツテで女を紹介して
もらったり、自分でも合コンに積極的に参加したりしているんだけど。



相性の合う女は見つかりません。
弓みたいないい女は見つかりません。



どうして手放してから事の大きさに気づくんだろうな・・・
俺にはもうもしかしたらそんなチャンスは無いのかもしれない。







まあ、いい。
寝てしまえ。






複雑な想いを抱えながら就寝。









9時入社。


そろそろ新入社員が入社してくる季節だ。
上の連中はここぞとばかりにいい新人を掻きいれようと躍起になっている。

俺の立場もいよいよ微妙になってきた。
元々微妙だったが今までは実戦のほうは卒なくこなしてきたので
なんとかなっていた。

でも近頃はやや体のほうに衰えを感じてきている。
そりゃあそうだろう。もう30代は目の前だ。
若さという最大の武器で乗り切るのも今年で最後だな。



ここで職すら失ってしまったら、さすがに親父にも
申し訳ない。
まして生活ができなくなったらさすがに困る。


ここは正念場という奴なのかもしれない。








19時退社。











9時入社。19時退社。











9時入社。19時退社。







9時入社。19時退社。







今日は久々の休日。
つっても特にやる事もやりたい事もないんだが。

いつもの様に自分の事で考えてしまう事ならいくらでもあるのだが。





もう何回9時入社。19時退社の日々を繰り返しただろうか?
似たような生活を繰り返しても結局答えは何一つ得られなかった。

結局俺も見つからないってわかっていながら探してしまっていたのだ。
他の連中の例に漏れずな。

本当に何もわからなかった。
これっぽちもわからなかった。


これから先もどうなるのかなんてはっきりいってわからない。
単調な生活をまたしてしまうのかもしれない。
職を失って明日を生きるのにも困難としているのかもしれない。


本当はそんな事考えないで、1日1日が楽しければそれでいいのかもしれない。
そう人生なんて楽しければそれでいいんだよな。
どんな形にしろさ。





今日1日日が暮れるまで考え抜いて、出した結論がこんなもんだった。
俺はこの先どうすればいいかなんてさっぱりわからなかった。





もういい・・・もういいよ。

はっきりいって疲れちまった。

人生を考えるのも生き抜くことも。





今は寝ることだけ考えたい。














7時起床。





1晩寝たら昨日の憂鬱は消えていた。
完全に消えたとは言えないけど、随分心は軽くなっていた。
単細胞な俺は寝ると結構痛みを軽くする事ができる。
喜んでいいのかどうかはわからないが落ち込みやすい自分にとっては
ありがたかった。




へへ、疲れたからもういいや、なんて台詞を吐いたのもこれで何度目かな?



こういう想いを抱いたのは何も初めてじゃあない。
悪あがきでかっこ悪い俺は結局人生を捨てきるなんて事はできなかった。
嫌な事がある度に諦めようなんて言ってきてるけど、そう言いながら
今まで自分はここまで生きてきてるんだ。


そんなに簡単に悟りを得られるなら、むしろみんなとっくにくたばっている
とすら思える。



まだこの先どうなるのかなんてわからないと昨日思った。
いい事なんかないかもしれないけど、でもそうとも言い切れないし
割りきりたくもなかった。


だからもうちょっとだけ頑張ってみよう。
そう自分に言い聞かせ今日も同じようで実は違う単調な生活に飛び込む。





いつもの道順にまたあの虹が今日もそびえたっていた。
そういえば昨日は大雨だったな。


相変わらず虹はまだ忌々しく見えてしまうけど。
いつの日にか本当に心から綺麗だなと思える日がくるように
9時入社。19時退社の日々を繰り返していく。





そうしていれば案外アッサリといい事、楽しい事なんてのは
出てくるかもしれない。



伊達雪乃丞   28歳  職業ゴーストスイパー。

独身




そんな事を毎度毎度思いながら、でも頑張って生きていきたい。





そう思う今日この頃です。











END










SPECIAL THANKS hazuki!!







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