ザ・グレート・展開予測ショー

悪魔は神か?(1)


投稿者名:雪男
投稿日時:(00/ 3/16)

「精霊石よ!!」
美女の一撃で武者姿の骸骨が4・5体同時に砕け散る
「おキヌちゃん撤退するわよ。横島君、文殊は!?」
「あと12個っす」
「じゃあ、すぐ前をふさいで。
・・横島君この壁どの位持ちそう?」美神は文殊で出来た壁を叩いた。
「そうですね、あの“トネリ”って奴でも10分は大丈夫だと思います」
「しばらくは持つわね。
でも、急ぎましょう。
この忌々しい洞窟からとっとと出るわよ」
「そうっすね、でもこの洞窟、何なんっすかね?」
横島はヘッドランプで壁を照らした。
実際洞窟には見えない。
炭鉱を広くするとこんな感じだろうか?
「大本営よ」美神が歩きながら答える。ハイヒールの音が妙に響く
「大本営?」
「そう。松代の幻の大本営。聞いたこと無い?」
「第二次大戦の時作ったって奴っすか?」
「でも、使われなかったって聞いていますけれど?」とおキヌ
「それに、大戦中に作られたんなら、なんで武者が居るんすか?」と横島
「それが判らないのよ。元々その為の調査だし」と美神
「美神さん」と横島
「元から有った洞窟を利用した?
それなら平安朝の亡霊まで居る理由にはなるけど、この数は何?」
「あのぅー美神さん」
「墓地か何か?みんな武装しているのはなぜ?」
「美神さーん」
「いったいなに!?」
「・・・こんな所、通りましたっけ」
「えっ?」

1週間前 GS協会本部
「一千万円ですってぇ!!
冗談でしょう!?
会長。仕事の内容からすると5億は頂かないと割に合わないわ」
今時流行らないボディコンに身を包んだ美女が野武士姿の男に噛み付いた。
「依頼したいのは取りあえず調査だけだ。
次回はかなり良い話を回せると思うが。
大体この件は1億以下と考えているのだがね」
「同じ事よ。調査できるぐらいなら除霊もできるわ。
大体1億で引受ける人がいるならそちらに依頼すれば良いでしょう。
良い仕事とやらもそちらに回したら」
(ウチに調査を依頼するって事は調査員が霊視出来ないほど強力って事でしょう!?
冗談じゃないわ!)
「この国のGSにはネクロマンサーはあまりいないのだ。
イザと言う時、神族の支援を受けられるGSもな」
会長の言葉からは苦々しさが滲み出るようだ
「・・・おキヌちゃんには、難し過ぎると思うわ」
「分かっている。
だから君に依頼したいのだ。
正確には美神除霊事務所に。
大体正式にはGSではない氷室君に、協会が依頼するわけには行かない」
「じゃあ、免許を発行したら?
それなら引受けても良いわよ」
「GS試験のランクは営業に影響するぞ。
将来氷室君が困ることになりかねんが」
「それもそうね。
分かったわ。依頼人を教えて。後は依頼人と交渉して引き受けるかどうか決めるわ」
(まぁこんな条件を出すようじゃ望み薄ね)
「それが・・・分からないのだ」
「・・・何、それ?」
「依頼を受け付けたのはコンピューターの記録にある。
報酬も振りこまれている。
どうやら依頼人は協会に忍び込んで勝手に依頼を入力したらしい」
「忍び込んだって。この建物に?」
「魔族でも簡単には忍び込めないはずなのだが。
少なくても何の痕跡も残ってない。
この件に関しては、神族の調査官に来てもらっている」
「そんな大事なら、それこそ”オカルトGメン”に依頼すれば?」
「別件だが、政府のチームが行方不明になったのは聞いてないか?」
「行方不明?」
「ご承知のとおり、政府は関係機関の霊能力者を集めてチームを編成している。
内一つ、警察関係のチームが行方不明になった・・・らしい。
政府が伏せているのではっきりした事は判らないが。
元々日本政府の対霊能戦能力はお寒い限りだし。
今、別件で信じられないような事をしているので、手が回らない状態だ」
「“一部隊が行方不明”より重要な“信じられないようなこと”って何よ」
「・・・ミサイルを霊能力で迎撃する研究をしているのだ。
これが出来ないと核兵器の開発をしなければならないとかで政府も必死だ」
「・・・それ本当?」
「政府が研究しているのは確かだ。
協会からも十人単位で参加している。
大型ミサイルを迎撃する手段は無いんだそうでな。
核兵器は報復手段、”恐怖の均衡”というやつだ。
霊能でミサイルの迎撃が出来るなら、英国が第二次大戦でやっていると思うが」
「TMDとか言うのは・・・?」
「最も上手くいった場合でNMDと合わせて迎撃率75%だそうだ。
4発に1発は命中する計算だな。
おまけに10発以上の“飽和攻撃”には対応できない。
私も研究内容は西条チームが行方不明になるまで知らなかったが。
なんでも無線機を持った巫女の幽霊が戦闘機を撃墜した事があるそうでな」
やれやれと言わんばかりの会長を前に、美神は汗が背中を流れ落ちるのを感じた。
「まぁそんな訳で、政府は全く当てにならん。
だがまず間違いなく政府はこの件に関心を寄せ、除霊の依頼をしてくる。
調査さえ出来れば、苦労に見合う収入になる。
・・・場所を見てみたまえ」
「松代・・・旧大本営?」

「あそこで目が眩んだのよね。
マスコミに公表するって脅せば10億は確実だものね」美神は溜息をついた。
「横島さん、ヒーリング終わりました」
「ありがとう、おキヌちゃん」
「ねぇ横島君」と美神
「何すか?美神さん」
「文殊残ってる?」
「いま1個作りましたっすから、あと2個っす」
「食料は?」
「Cレーションが一人一食とチョコレートが2枚っす」
「おキヌちゃん、お札は?」
「1千万以上のはありません。
500万が3枚、200万が2枚、100万が11枚・・・」
「お札以外は?」
「精霊石が5個、あとは見鬼君くらいです」
「じゃあ私のとおキヌちゃんのを合わせて9個かぁ・・・」
「・・・それも入れて5個・・・です」
さすがの美神も沈黙した。
荷物を取られて、というのは今までも有った。
だが、使い切ったのは3人でチームを組んでから初めてだった。
大体実力的にはA級GS以上が3人も居る美神除霊事務所が苦戦するのも久しぶりだ。
(シロと玉藻を置いてきたのは失敗だったわね)
2人は西条達の捜索のため美智恵が使っている。
犬神は調査や捜索にうってつけなのだ、
あの2人では足手まといの局面もあるのだが・・・。
「あの美神さん」
「なに? 横島君」
「ここは一つ やってみませんか」
ドカ!バキ!グシャ!!
「こんな時まで!!お前は!!!」
「ちっ違うっす!そりゃ俺だってホントは2人を上下に重ねて・・・じゃなくて
文殊っす、文殊!」
「文殊?」
「えぇ。アシュタロスのとき二文字書かれた文殊を使いましたっすよね」
「そうね。でもあの時は・・・」
「もうルシオラは俺の中には残ってないっすが、今も文殊は2個あるっす。
代用になるんじゃないっすか?」
横島はアシュタロス事件以来久しぶりに恋人の名前を口にした。
明るく振舞ってはいるが、無理しているのは傍目にも明白だった。
「そうね・・・」
美神は目を逸らし考え込んだ、考えに逃避したとも言える。
(月の時も2個使ったから2個同時は問題ないわ、問題はどんな文字を使うかね)
「横島君、どんな文字を使う気なの?」
「“脱”“出”っす」
「ふーん。失敗すれば“ぬぐ”“でる”だから私とおキヌちゃんの裸が見られると」
「確かにそれは考えたっすけど、美神さんはともかくおキヌちゃんまで・・・」
ドカ!バキ!!
「あんまりふざけると殴るわよ!」
「(殴る前に言って欲しいっす)
・・・俺が目隠しすればいいだけっすから」

「じゃあいいこと。
横島君は右手に“出”の文殊を載せる。
左手はおキヌちゃんの袖をつかむ。
おキヌちゃんは右手で横島君のベルトをつかむ
左手は私に抱きつく、
私は左手で横島君のベルトをつかむ
右手はおキヌちゃんの脇の下を通して前に出し、
持った“脱”の文殊を横島君の右手に叩きつける
用意はいい?」
バンダナで目隠しした横島とおキヌは頷いた
「言い忘れたけど、横島君は私かおキヌちゃんが良いと言うまで絶対に動かないこと。
もし、ピクリとでも動いたら・・・いいわね」美神はにっこりと微笑んだ。
横島は慌てて頷く、美神が完全に本気なのは、はっきりと判った。
「じゃあ、いくわよ。3、2、1、0」
美神の右手が横島の右手に叩きつけられると同時に、
美神は自分の体が引っ張られるのを感じた。
眼下には横島が虚無の上に浮いていた。
「横島さん!」おキヌの声が遠く響く。
否、おキヌは美神の右腕の中にいた。
美神は横島が虚無へと落ち込むのを感じた瞬間、森の中に立っていた。
ベルトを手に立ち尽くした。
おキヌの呼びかけも耳に入らなかった。

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