ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と 第14話 後編 』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 4/ 8)



「え・・ええ!?あんたたち・・どうしてここに・・?」


滑り込むように広間へと突入してきた美神たち5人は、予想外の待ち人に目を丸くする。

「・・久しぶりだな、美神令子。それに他の者たちも・・」
見れば・・、ワルキューレ、ジーク、そして除霊委員の面々が・・それぞれ疲れ果てたように床に座りこんでおり・・

「・・情けない話だ。スズノの力を2、3秒押さえただけでこのざまなのだからな・・。」
苦笑するワルキューレ。

若干、拍子抜けしたように息を吐いた後、美神はあたりを見回して・・・

「・・横島くんたちもここに来てるのね?それで・・スズノは?」

「あの中です。そろそろ決着がつくころだと思うんですが・・」

ピートが炎柱を指差した・・・その時だった。突然、周囲を包む炎が真っ二つに分断され・・・



「・・先生っ!!」


シロが叫ぶ。

そこには・・・タマモとスズノを抱えながら、こちらへと向かってくる横島の姿があった。
全員の顔を一瞥すると、彼はすぐさまいつものしまりの無い顔に戻り・・

「ふ〜〜!!つっかれたぁ〜・・。ま、帰りはスズノのおかげで大分、楽できたけどな。」
眠たげに目を細めると、思いっきり床にへたり込んでしまう。


「ちょ・・横島?大丈夫?」
それに、タマモがためらいがちな声を上げて・・・

「・・気遣うヒマがあるんなら痩せろって前に言っただろ?あ〜・・重かった。」
半眼のまま、横島がつぶやく。

・・・・・。
・・・・・・・。

ボカッ!!!

「っ・・痛って〜な!!またそれかよ!!」

「・・・あんたが悪いんじゃないの・・・・・バカ。」

頭を押さえる横島に、憮然としたままタマモが言い放った。
緊張感のない2人の口論に・・一同は駆け寄りながら苦笑を浮かべる・・・。


――――――・・。

「美智恵・・。」
少し苦しげに横たわるスズノが・・チラリとこちらに目を向けてきた。

「・・スズノ・・大丈夫だった?ケガはひどいの?」

「・・・・・ん・・・。」


心配そうな美智恵の顔に・・少女は弱々しげに微笑んで・・・・

「・・横島が・・教えてくれた・・。」

「・・・え?」

「私は・・生きようと思う。もう、後悔したくないから・・。」

――――・・。

「・・スズノ・・・。」

牢屋の中で泣くことしか知らず・・ずっと姉の名を呼び続けていた少女。
今、彼女の瞳は、確固とした光を宿している。強い意志の輝きを放つ・・眩しい光を・・。

スズノの言葉に無言でうなづいた後、美智恵は・・どこか羨望をこめた眼差しで横島を見つめ・・

(『横島が・・教えてくれた』・・か。)

そして、ひとつだけ嘆息したのだった。

                       
                      ◇


「ほ・・本当なの?横島くん。」

「ああ・・まずいことに事態はあんまり好転してないらしい。・・だよな?スズノ。」

困惑を顕にする愛子に言った後、横島はスズノと・・その背後に見え隠れする陽炎のような紅光へと振り向いて・・
祭壇を包む炎・・。先ほどまでの勢いは失っているものの・・それは未だ強大な力を保ち続けている。

「すまない・・暴走自体は収まっているのだが・・。・・すでに作り出した分の火柱を押さえる力は・・もう私には残されていない。」

少しふらついた足取りでスズノが立ち上がる。彼女の胸元からは血が滲んでいた。

・・傷は・・はっきり言って、致命傷に近い。
胸を貫いた時、当然ながら彼女自身、このような展開は想定していなかった。
スズノは消耗している・・傍から見てもはっきりと感じ取れるほどに・・・・

「・・私が・・生き残ることを考えなければ・・他のみんなを外に送り届けることぐらい可能なのだが・・・」
ポソリとつぶやくスズノに横島が・・・

「だ〜〜!!どうしてそこで発想がネガティブな方向に飛ぶんだよ!!」
なんてことを言いながら、彼女の後頭部にド突きをかまし・・・パコン!!という音とともにスズノが前へつんのめる。

「・・・・いたい・・・。」

「お前が悪い。いいか?こっからはオレが説明するぞ?」

叱りつけるようなしぐさをした後、横島は一同に笑いかけながら・・・

「・・で、と。
 残る方法は今、スズノが言ったとおり・・全員で元の世界に転移して外側からこの空間の入り口を閉じるしかないんだけど・・
 ぶっちゃけ力が足りないんだ・・丁度、スズノ一人分。」

・・だから・・と、視線が美神たちへ向けられる。

「まだピンピンしてる私たちの出番・・って言いたいんでしょ?分かったわよ、ただ働きでもそれしか方法がないんじゃね。」

美神に続いて他の4人も合点したように次々とうなづいて・・・・

「・・横島さん。。、力を使い果たしたわしらはどうするんかノー?もしや休憩・・?」
思いついたかのようなタイガーの言葉。
「いや、オレたちにもちゃんとやることは残ってるぞ。ってかここからはオレとお前が主力だ。気張るぞタイガー。」

「おお!?ようやくわしにも活躍の場が・・・これでわしもメインキャストの仲間入・・・・」

・・いや、大変申し訳ないことにそれは無理だったりするのだが・・
そんなタイガーの様子に・・事情を知るタマモは少し同情したように頭を抱えて・・・・

――――・・。

「いいか!?今、スズノは出血多量でいつ気を失っても全くおかしくない状態だ!漫才でも一発芸でもなんでもいい!!
 そういうことに適正のない奴らがほとんどというのは遺憾だが・・任せろ!!ここはオレとタイガーで・・・」

・・・なんて展開。
ここ数分、タイガーの悲しい咆哮が闇の中を木霊していたりするのだが・・、面々は各々耳を覆っている(笑)

・・・・・・。

「消耗してるわりに・・力が有り余ってるみたいですね、皆さん・・。・・スズノちゃんは大丈夫?」

「う・・うん。で・・でもタイガーが・・・」

「・・スズノ君、触れてはいけないよ。彼を思うならなおのこと・・」

なんか無茶苦茶言ってるが・・・
唐巣の説得に一応、納得したのか・・・渋々と頷きながら、スズノは一歩踏み出した。

「・・そういえば、西条くんとマリアはここに来てるのかしら?2人もスズノを探してるってさっき聞いたんだけど・・」

「それも・・心配ないと思う。転移術はこの空間全体に作用する仕組みになってるから・・・。」

西条たちが実世界にいるなら当然問題はないし・・仮に祭壇内に足を踏み入れていようと、絶対に捕捉できるはず・・。
憂いはないとばかりに顔を上げ、スズノは意識を集中する。


「・・力を・・開放する・・。みんな、意識を合わせて。」


刹那。


スズノの周囲から緑色の蛍火が湧き上がる。・・補強するように美神たちからも同質の光が・・
それはやがて・・幾何学的な紋様を象る・・巨大な魔方陣を形成して・・・・


「・・すげえ・・。」

横島は・・目の前の現実離れした光景に、静かに息を飲んだ。

閃光が映像として映る全てのものを包み込んでいる。
水晶の祭壇は・・まるで風にでも吹かれたかのように、サラサラと透明な粒子となって崩れ去り・・・

・・・・スズノが創造した嘆きの世界の・・崩壊だった。


―――――・・。

「・・こうして見るとこの風景も圧巻といったところだね。あとどれくらいかかるか分かるかい?スズノ君。」

「これで・・もう大丈夫。あとはこのまましばらくコントロールを保てば・・・」

唐巣の問いかけに答え、スズノは緊張を解きながら息を吐く。

これで・・ようやく終わった・・・そして・・ここからが・・・


「みんな、すまない。それに・・ありがとう・・。」
そう言って・・
闇の中を浮遊する仲間たちへと、スズノがゆっくりと振り向いた・・・・・・・・・・・・



・・・・その直後だった。



・・・・・!?

「!?あっ・・・・・くっ・・・!!」

スズノの胸を・・突如、絞めつけるような痛みが襲い・・・・

「スズノ!?」
駆け寄ろうとするタマモを黒い波動が弾き飛ばす。

「・・っ!!」


――――――・・貴様ら・・・っ!!小賢しい真似を・・っ!!

憎悪に溢れた声。

それは・・スズノの意識に寄生していた・・あの灰色の霧だった。
『霧』は再び・・・住み慣れた場所へと還るかのように、スズノの体へと纏わりつく。

「スズノちゃん!!」

―――――――しかし・・礼は言っておこう。お陰でまだまだスズノを利用することができる・・。
       この力を手放すのは・・少々惜しいからな。

ギリギリと少女を絞めつけながら、霧は横島へと注意を向けて・・・

「てめぇ!!」

――――――・・フン。お前にここまで場をかき回されるとは・・正直、予想外だった。だが・・最後に笑うのは私のようだ・・。

愉快そうに影が身をよじる。

「!?」

霧の霊圧に押され・・その場の全員が射すくめられた。
強くはない・・・が、消耗しきった横島たちの動きを封じるには十分すぎるほどの重圧だ。

「・・ふざ・・けるな・・!私は・・もう、お前の言いなりになんかならない・・!私の体から・・出て行け・・!!」

――――――無駄だ。死に損ないのお前に何ができる?

気丈に睨みつけてくるスズノを嘲笑うと・・『霧』は天空へと舞い上がり・・・

――――――ク・・ハハハハハハッ!!!さぁ!!人間どもには陣の外へご退場願おうか!!

虚無の空間に霊波の風が巻き起こる。同時に、無数の鎌いたちが横島たちの体を切り刻み・・

「・・・くっ!!」

「!!横島・・!」

・・やがて、彼らを光の外へと押し出していく。

「ねーさまっ!!・・みんな!!」

――――――貴様もさっさと壊れてしまえ・・。くだらん感情など邪魔なだけだ。

這い寄る死の気配。重く響く不快な声。霧を除くその場全ての者が・・敗北を前に唇を噛んだ。

・・・・・。

そして・・霧も含むその場の全てのものが失念していた。祭壇内にすでに進入していた・・・二つの影を・・・。


「やれやれ、ひどい場面に出くわしたな。・・・マリア君。」

「イエス・西条さん。」


瞬間、轟音とともに・・おびただしい数の爆雷が『霧』へと撃ち込まれ・・・

・・・・・。

そして・・・・

――――――な・・何!?貴様ら・・・一体・・・・

「囚われのお姫様の救出を買ってでたナイトだよ。覚えておきたまえ。」


・・・・剣閃が舞う。

高速の斬劇が・・灰色の霧を四散させた・・。

――――――グ・・・ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!

飛行するマリアから飛び降りた西条は、そのまま魔方陣へと着地して・・

「・・・!西条・・・」

「やあ、スズノちゃん。遅れてすまなかったね。」
・・・そんな会話。

(・・・うわ・・・キザ・・・・・)
その横では、横島があまりの台詞に鳥肌を立てていたとかいなかったとか・・・・

・・・。


――――――・・お・・のれ・・・・!!

「悪いが、閉幕だ。退場するのは君の方だったようだな。」

一閃。
ユラユラと揺れる霧の残り香は・・今度こそ、真っ二つに両断され・・・・

――――――バカな・・・!おのれぇええ!!人間がぁああああああ!!!!

呪怨の言葉とともに・・霧が奈落の底へと沈んでいく。

・・・・。

「・・やったのか?」

「わかりません・ですが・対象がこの空間から脱出する術は・完全になくなりました」

いかに実体のない存在とはいえ・・数百万度に及ぶ爆発には耐え切れまい・・。おそらくはこれで・・チェックメイトだ。


胸を撫で下ろしながら、全員がヘナヘナとその場にしりもちをつく。緊張の糸が解けたのか・・めいめいが労いの言葉をかけ始め・・・
横島は苦笑しながら西条を見上げた。

「ったく・・いいとこ持ってくよなぁ・・お前。」

「言っておくが、通算で貸しは2つだ。そろそろ返済を考えてくれないか?」
半眼のまま西条が嘆息する。


「す・・すごいぞ!ねーさま!!今気づいたのだがこの者の体は鉄で出来ている!!鉄人にじゅうピ――――号だ。
 変形や合体もできるに違いない!」

「・・ミス・スズノ。マリアには・そういった機能はありません。」

「・・・。・・・そーなのか・・・・・・・。」

「・・スズノ、そんなあからさまに落胆しなくても・・」

・・ちなみに鉄人ピ――――8号は変形も合体もできません。


徐々に徐々に・・・漆黒が薄らぎ・・辺りの魔気が払われる。
スズノの創り出した世界が、完全に形を失ったころ、横島たちを出迎えたのは・・・

「おお・・絶景だな・・。」

穏やかな闇と・・そして優しい月の光。気づけば、自分たちは焼け野原の上で・・仰向けのまま空を見上げていた。

―――・・。

(・・戻って・・きた・・?)

スズノは呆けたように、周りの景色に見入ったまま・・・・・

「スズノ?」

不意に・・声をかけられる。

「・・ねーさま・・・・・」
声の主に振り向いて・・しかし、少女の顔が、少しだけ悲しげに歪む。

「あの・・・・・」

「?」

「まだ・・ねーさまって呼んでも・・・・・」

いいのだろうか?
自分たちが本当の姉妹ではないことは・・やはり事実には違いない。そして何より・・自分は危険な・・

「・・・・。」

この人を姉と呼ぶことが・・許されるのだろうか?

・・・・。

言いよどむスズノに一瞬、タマモはキョトンとして・・・・・
・・そうして・・・・

「変なこと言わないでよ。いいに決まってるじゃない。」

当たり前だと言わんばかりに、彼女はゆっくりと微笑んだのだ。

銀の光を受けながら・・・タマモはスズノの頬を優しく撫でて・・・

「ねーさま・・・・。」

「お帰りなさい・・スズノ。」



「―――・・ただいま・・・ねーさま。」

2人はもう一度だけ、互いの温もりを確かめるのだった。


〜続きます〜

『あとがき』

あれ?一つにまとまってしまった・・・(汗)じゃ・・じゃあ、前回の中編『その1』の意味は一体・・。うう・・すいません。

・・というわけで、かぜあめです。こんにちは〜みなさん、いつも読んでくださりありがとうございます。

あとがきの前に、『キツネシリーズ』製作関係者の知人に伝言を・・(笑

こら!妹!!「ありがちな終わり方だな。」とか言わない!!
そこ!!アドバイザーその1!!「絞めつけられるスズノがえっちぃ」とか言わない!まだ子供だぞ!!(笑

・・失礼しました(^^;

いや〜西条目立ちまくりですね〜(笑)いつの間に『英国紳士』から『ナイト』にクラスチェンジしてるんだお前は・・(爆
しかし・・目立ちはしてますが・・爪が甘い・・
もっとちゃんとトドメをささないから次の話であんなことに・・っとこれ以上はネタバレですね・・。

しかしこの『姉妹』・・他シリーズと比べて全体的に横島とタマモのラブラブ度が薄いですね・・スズノがメインに据えられているせいもあるのでしょうが・・
次のシリーズはちゃんとタマモメインに戻りますのでご安心を。

さてさて一件落着と見せかけて・・・実はまだもう一山あります。それでは・・次は、短編の後編でお会いしましょう。

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