ザ・グレート・展開予測ショー

想い出になる前に


投稿者名:ダフイ
投稿日時:(04/ 4/ 7)

『美神さは〜ん!横島カンゲキ〜!!』

『上司にセクハラするなって何万回言わせる気っ!?』

『みっ美神さんっ!それ以上はいくら横島さんでも…』

『あいかわらず横島も懲りないヤツよねぇ』

『先生、拙者は情けないでござるよ(泣)』


それはいつもの光景。
横島が美神にセクハラをし、神通昆でシバキ倒される。
ありふれた日常の一コマ。

神・魔・人界を巻き込んだアシュタロスとの戦いからすでに半年が経っていた。





  想い出になる前に





『美神除霊事務所』

日本一のGSが経営する、日本一料金が高いことでも有名な(笑)除霊事務所。
その事務所の一室にぼろ雑巾と化した男が倒れていた。


「アイテテテ…」
なんだかちっとも痛そうじゃない声を出しながらむっくりと起きあがる横島。

「…結構長い間気を失ってたんだな」
ふと、視界に入った時計を見てそう呟く。たっぷり1時間は気絶していたようだ。
上半身のみ起こした状態で辺りを見まわすが、今この部屋には彼しかいない。

「さすがに今回はおキヌちゃんもシロもヒーリングしてくんなかったか」
苦笑いしながら、1時間ほど前の情景を思い出す。


いつも通りスキンシップ(セクハラ)のため、美神さんに抱きつこうとしたのまでは良かった。それだけならここまでひどい折檻を受けることはなかっただろう。
ただ、今回は飛びかかる時に何かにつまずいてカウンターの肘を偶然かわしてしまった。
そのうえ、これまた偶然に美神さんの胸に顔をうずめるように抱き着いてしまった。

恐る恐る上を見上げた俺の目に映ったものは、般若だった……


「まあ、自業自得だからな」
美神さんの胸、柔らかかったし、とも考えながら立ち上がる。
それにおキヌちゃんも一応は美神さんを止めてくれたようだ。
でなければ俺が今こうして生きているはずがない。

そんなことを考えながら服の埃をはたいていると、いつのまにか部屋の中が朱に染まっていることに気がついた。

「………夕焼けか」
西側の窓から茜色の光が差し込んでいる。
窓の外を見ると、ビルの間に沈んでゆく夕日が見えた。



窓のそばに立ち夕日を見つめる。

(………ルシオラ)
思い出されるのは、夕日が好きだった彼女のこと。

(俺、元気にやってるよ…
 今まで通りバカやって、笑って…毎日が楽しいよ…)

いつからだろう…毎日が楽しいと昔のように思えるようになったのは…


最初の頃はかなり無理をしていた。
みんなを心配させたくなくて、今まで通りの自分を演じるようにした。
なにより、俺が俺じゃなくなることがルシオラを悲しませるように思えたから……


だが、いつからかほとんど演技などしなくなっていた。。
まだ胸が痛むのも事実だが、彼女が傍にいないことを受け入れられるようになっていた。

だからといって気持ちの整理がついたわけでもないだろう。
どんなに悲しい記憶も徐々に想い出になっていく…
結局は時間が解決するとゆうことだろう。

もう少ししたら彼女のことを笑って話せるようになるかもしれない…
彼女のことを知ってる誰かと想い出話もできるかもしれない…

だから、
自分の気持ちまで想い出になってしまう前に、これだけは言葉にしておこうと思った。
なんとなく、今なら彼女に想いが届くような気がした。
結局彼女に伝えることのできなかった想いが…




『………………愛してるよ、ルシオラ』

心の中で『またな』と付け加え、夕日に背を向ける。





振り返る瞬間、夕日の中にアイツの微笑が見えた気がした……

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