ザ・グレート・展開予測ショー

現世覚醒伝ONI(第8章前編)桜と着物


投稿者名:Pr.K
投稿日時:(04/ 4/ 7)



 薄暗く、声も出せず、ただ在ることしかできない世界。

 まただ、またここに来ちまった。

 「最後のONIよ」

 何のようだよ。

 「お前は未だ真の覚醒には至っていない」

 真の覚醒?

 「自らの内に有る存在を認識しろ」

 自らの内に有る存在?

 「その名を、魔蛍君子の意味を思い出せ」



 輝きが、広がっていく。

 オレは、いったいどうなっているのだろう。
 ていうかこのヤロウ絶対登場タイミング狙ってやがる。



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 風の音が聞こえる、桜の香りが頬をなでる。
 「お目覚めになられたようですのぉ」
 どっかの爺さんの声が枕元から聞こえる。意識がはっきりとしない。
 「動かれんほうがええ、霊力の行使による能力肥大、あげくの果てには鬼丸の行使、数分でここまでやれば・・・」
 急に頭が冷える、記憶がリフレインされる。
 そうだオレはアイツの一撃を受けて・・・・
 
 (だいたい貴様はONIなんだろう)

 (なんで人狼はともかくこんな汚れた妖怪とともに有るのだ)

 一気に目が覚める!そうだ、アイツの名は!
 「彩ぞおぉーーー!!!」
 叫びながら上半身を起こす・・・・・・って
 「ここは?」
 「元気なお方だ、あれだけ力を行使してたった1日で全快されるとは」
 枕元には正座したふくよかそうな爺さん

 「え?・・・・・ってあれ?延髄に踵落とされて、そんで・・・・・へ?」
 どうなってんだ?
 「記憶が混乱されておられるようですな。彩蔵は手加減抜きでやったみたいですからなぁ」
 「ええっと、アンタは?」
 誰?
 「私ですか?そういえば申し上げておりませんでしたな、これは失礼いたしました」
 そう言って腰をかがめる。えらく礼儀正しい爺さんだ、こっちがかしこまっちまう。

 「私の名前は紅流斎、この里の長を務めております」
 里?
 「あの、ここは・・・」
 「ここは地張りの里、ようこそいらっしゃいました横島殿」
 「は、はあ・・・・・・」
 いったい何なんだよ・・・・


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 どうやら困惑しておられるようだ。無理も無い、事前説明がまったく欠けているのだから。
 だが彼には理解してもらわねばならぬ、時間がどこまで許してくれるか分からぬ身故に。
 
 それにしても、あの彩蔵がここまで強行手段にでるとは・・・・考えられなかった。
 彼、横島忠夫の素性に関しても良い印象を持っていなかったのは明らかだったのだが。
 任務において常に最小の被害と最大の結果を善しとし、氷のごとき冷静を崩さなかったあやつが・・・

 自らを慕うものは神・悪魔・人の区別なく受け入れるというこの少年は確かにあやつにとっては異質かもしれない。
 だが、この魂の輝きの見事な事。
 黄金の精神とでも言うのだろうか。
 失ってはならぬものを失い、それでも己を見失わず突き進む者にしか得られぬ輝き。

 だが、それ故に彼はまた失うだろう。
 そしてそれ故に新しいものを手に入れるだろう。

 ならば、
 失うものを減らすため、得るものを増やすため、
 あえて彼に試練を与えよう。

 それが我らの務めでもあるのだから。

 そして願わくば、
 あの子の過去を断ち切る剣となってほしい。

 それをできるのは、この男だけだ。


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 じ、地張りの里?
 「いやあの、何県なんすかここ?」
 どう考えても東京都じゃない。
 「申し訳ありませぬが・・・一身上の都合によりそれを明かすことができませぬ」
 ならせめて、やな予感はするが・・・・
 「関東ですよね?」
 「それならば・・・・四国でございます」
 へえ〜〜四国か、初めてき・・・た・・・な!?
 「四国ぅ〜〜!!!?」
 布団から飛び出る。
 「さように」
 いや、さように、じゃなくて。
 「何でこんなとこにオレが連れてこられにゃならんのだ!!」
 「それは後ほど、人がそろってからで」
 だから・・・・駄目だ、聞く気ねえよこの爺さん

 「ところでお腹の方は空いておられませんかな?」
 腹か・・・
 「そりゃ空いてますけど」
 それどころじゃないんですが。
 「ならこちらへどうぞ、粥などでも用意させますので」
 粥か・・・・腹も減ったしいったい何が起こってるのかわかんねーし。
 「じゃあお言葉に甘えて・・・」
 「おおそうですか、ではこちらへ」
 そのまま廊下へ案内される。

 その瞬間

 立派な庭と

 見事に咲く桜が見えた。

 「すげえ・・・・・・」
 こんな立派なもん見たことねえ


 もしあるとしたら、

 あの夕日だけだ・・・・

 「ん?」
 視界の片隅に、
 黒い影が見えた。

 「あれは・・・」
 女だ、黒と藍色の着物を着た短髪の女。
 空を、見ている。

 あまりにも似合っていて、

 不覚にも、

 一瞬見とれた。




 ブワッ

 強い風が吹く。

 その女は、

 桜の海に消えた。

 「なんだったんだ・・・・」
 なぜかとても、懐かしい。

 「お気にめしましたかな?」
 「わっ!」
 爺さんか・・・
 「どこに居たんだよ?」
 「付いてこられにならなかったので、どうしたものかと・・・」
 そういえば廊下に出てからまったく移動していない。
 「この庭をお気にめされたようですな」
 「綺麗っすね・・・そういえば」
 あの女の人
 「どうなされた?」
 「さっき黒と藍色の着物を着た短髪の女の人みたんすけど・・・」
 「黒と藍色の着物?知りませんなあ」
 じゃああれは?

 分かる、

 あの色が、

 幻ではないことが、

 何故か、確信している。

 「ところで、急ぎませんと。もう粥の方は準備ができています」
 そういや腹へってんだったな・・・
 「では食堂へ・・・秋場の料理はおいしいですぞ」
 そう言って歩いていく爺さんの後を追う。



 ふと庭を見る。

 あの人が、

 何故かとてもなつかしい。




後書き

大問題発生
1)夜に咲く話の華の掲示板に掲載予定だったs.CRY.edの小説データを紛失

2)タイガー&ピートのことを忘れていたのでおもいっきし書き直し中
以上です、しばらくしたら更新送れるっぽいので。特に2)・・・やばすぎ

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