ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『乙女とデートと願いごとと 前編』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 4/ 6)



―――きっかけは本当に些細なこと。















「いいの?謝るなら今のうちよ?」

「・・勝ちが見えてる勝負するってのに・・なんで謝らなくちゃいけないんだよ。」


売り言葉に買い言葉・・。中庭に激しい霊気が渦を巻いている。
美神、おキヌ、シロ・・・・普段、ブレーキ係を務めるこの3人が全員不在の除霊事務所で・・・・・

(な〜んでこんなことやってんだ?オレ・・・)

怒りに震えるタマモを前に、横島は半眼で首をひねった。

きっかけは本当に些細なこと。・・いや、『モノ』と言った方が適切か。
数分ほど前、横島が戸棚で見つけ、そして摂取してしまった『ある食材』に全ての元凶があるのだが・・・

「・・あのさ、オレが許せないってのはよく分かった。でもな、たかが油揚げ一皿をつまみ食いしたぐらいでどうして・・」

「・・楽しみにしてたのに・・。全部食べたらもったいないと思って、昨日戸棚の奥に閉まっておいたのに・・」

・・・全く聞く耳を持っていない。
フルフルと肩を震わすタマモに、横島は心の中でつっこんだ・・・・『んなことで涙目になるなよ』と。

・・・・。

「で、決意は固いってわけか。」

「そう・・今日という今日は許さないわ。・・決闘よ。」

指をビシィッ!!とこちらに向けてくる少女の瞳は・・本気と書いてマジと読み取れ気味だ。
・・というか、すでにタマモの掌を紅い火球が覆い隠していたりして・・・

「・・うう・・本当にやるのか?」

「火付きが悪いわね。じゃあこういうのはどう?私が勝ったら、横島は私に一週間キツネうどんをおごり続ける・・。
 横島が勝ったら、・・そうね、1つだけ何でも私に好きなことを命令していいわ。」

「・・いや、だからオレは闘うことそのものが面倒いと・・・・」

「・・・くどい!」


・・瞬間だった。
重心を思い切り低くしたのも一瞬、タマモが弾丸のような勢いで距離をつめてくる。
身体能力においては人間のそれを遥かに凌駕する犬神族の跳躍。常人には決して捉えきれない。

(ふふっ。ちゃんと寸止めはしてあげるけど・・でも本当にキツネうどんはおごってもらうわ。覚悟しなさい、よこ・・・)

・・・捉えきれない・・はずなのだが・・・

「うわあ・・当たったらやっぱ痛いよなぁ・・・」
なんてことを言いながら、横島はあっさりとタマモの拳打をかわしてしまい・・・

「え?あ・・・そ・・そんな・・・」

少女が戸惑いの声を上げた・・・その直後。


・・・・・・コロコロコロ・・・・・・・・・・

タマモの足元を、光を放つ玉のようなものが通り過ぎていく。

「ほい。王手。」


――――!?

そんな言葉とともに、タマモの動きが完全に封じられた。
手も足も・・指一本すら、動かすことがままならない。視線を移すと、背後には『縛』と刻まれた文殊が転がっている。


「・・・・・・。」

ポカンとしたままのタマモへと、横島は思いっきりため息をついて・・・

・・・・・試合時間3秒。決着・・・。

「う・・うそ・・・・」
タマモは愕然とつぶやいたのだった。


                       ◇


「そ・・・それで・・私を一体、どうするつもりよ。」

「・・・いや、人をそんな悪党みたいに言われても困るんだが・・」

数分後。憮然としたタマモの様子に横島は思いっきり頭を抱えて・・・
大体、こうなることは刃を交える前から分かっていたこと。タマモには悪いが、正直、何が起ころうと負ける気はしなかった。
補助や援護のエキスパートである彼女は本来、一対一の戦闘には不向きなのだ。
・・そのことは、本人も自覚していると思ったのだが・・・

・・・・。

まじまじとタマモを見つめる。
彼女は顔を真っ赤にしておびえるように部屋のすみに縮こまっていて・・・

「・・言っとくが、いかがわしいことなんて何も考えてないから安心していいぞ?」

「そ・・・そうなの?」

安堵したような落胆したような・・複雑な表情を浮かべるタマモ。
そんな彼女の様子に気づくことなく、横島は眉間にしわを寄せながら腕を組む。

(・・しかし、何でも一つ命令ねぇ・・くだらねえこと思いついたもんだな〜)

はっきり言って、漠然としすぎていて、逆に何をしていいか分からない。
・・・・。

「う〜ん・・ちょっと思っただけど、今回の件は完全にオレが悪かったよ。だからタマモが許してくれるっていうならそれを命令に・・」

「それはだめ。」

言い終わる前に却下された。いや、命令する側とされる側という点でこのやりとりはどうなのか、という気もするが・・

「・・そりゃまたなんで・・?」

「さっきのは私も大人げなかったと思ってるわ。今はそれほど怒ってもいないし・・」

「つまり、もう許してるから命令にならないってことか?・・変なところ律儀だな、お前も」
言って、再び腕を組みなおす横島。

・・どうする?まぁ、食い物を奢らせる・・もしくはそれに類する命令は成立しないだろう。
なにせシロとタマモはタダ働きだ。それでも自分よりずっと裕福なくらしを送っていることには疑問が残るが・・
今はそんなことはどうでもいい。とにかく、食い物系はダメ。

・・・・と、なると・・・・

「・・やっぱ体で払ってもらうしかないよな・・・」
ポソリと横島が口にする。

「か・・・体!?」

それにタマモはまたもやビクリと体を震わせて・・・・


―――――・・。


「あはははははっ!!なんだこの髪!?おもしれ〜どこまで伸びんだコレ。」

長い金色のナインテールをビョンビョン引っ張って遊ぶ横島。
よほど、前からいじってみたかったのか・・彼の目はもう少年のように生き生きと輝いている。

(・・・どうせこんなことだろうと思ったけどね・・・)

自慢の髪を乱されることには多少の憤慨を覚えるが、約束は約束なのだからしょうがない。
後頭部に軽い痛みを感じながら、タマモは疲れたように顔をしかめた。

・・本当のことを言えば、自覚はしていたのだ。拳打を放つ直前に、自分の勝ちはまず有りえないと。
しかし、同時に勢いに任せて叫んでしまった勝負の条件をかんがみる。


実力差は歴然⇒120パーセント自分は負ける⇒つまり横島の命令を聞かなければならない⇒相手は横島⇒大変な目にあわされる可能性大


そんな考えが頭に浮かんで・・・

(そ・・・それもいいかも・・)

・・なんてことを思ったり思わなかったりしたのもまた事実。

しかし・・夢(夢か?)と現実のギャップは激しいわけで・・・・

・・・・。

「チョンマゲ!!」

ビョーーン!!

「・・・・・・。」

ゴスッ!!!!


先ほどから、こんな場面が展開している。

「・・・はぁ・・もういいでしょ?整える大変なんだから。」

第一、横島は鈍感すぎるのだ。シロやおキヌたちほどではないにしろ、自分だって少なからずアプローチはかけている。
・・・にもかかわらず・・・

「ええ!!?もっと遊ばせろよ〜!」

全くそれに気づくそぶりを見せない。わざと、とぼけているのではないかと疑ったこともあるが・・どうやら本気で気づいていないらしい。

「・・絶対だめ。離して。」

・・・そのくせ・・・・・

「うう・・わかったよ・・。
 でもお前ってどんな髪型も似合うんだな〜下ろしても一つにまとめてもいい感じだし・・やっぱ美人は得だなぁ・・。」

・・こんな風に、時々心臓が跳ね上がるようなことを言ってくる。

「・・・。ま・・・まったく。でも、意外に楽な命令ではあったわね。一時はどうなることかと・・」
照れ隠しのために明後日の方向を向いているタマモに・・・

「?何言ってんだ、お前。」
キョトンとした表情で横島がそう言って・・・

「・・何って・・だから命令・・・・」

「オレは命令なんてした覚えはないんだけど?」

・・・・。
・・・・・・・・・。

ちょっと回想してみよう。たしか、髪をいじくり始める前に横島は・・・

―――――う〜ん・・そうだなぁ。オレはタマモの髪をさわって『みたい』かな。

―――――?なに?そんなことでいいの?

―――――ん。オレはタマモの髪をぜひともさわって『みたい』ぞ。

・・・・・・。

「つまり、あれはお前に対する個人的なお願いであって命令ではな・・・・・」

「ひ・・卑怯よ!!そんなの!!」

しれっとした口調で・・『はじめから騙す気満々でした』とばかりに横島が口にする。
・・ようやく、今の状況の趣旨と面白さが理解できたのだ。せっかくだし、もう少しタマモをからかってみたい。

(・・ううむ・・。)

命令はあと一回だけ。もう今回のような手は使えない・・何か他に楽しいことといったら・・・

・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・!!

・・・そこで・・・・・

横島は何かを思いついたのか、勢いよく手を叩く。・・そして、タマモへと挑発的な視線を向けながら・・


「もう一回、オレとお前が勝負するってのはどうだ?」

「・・・・え・・?」

「ただし、勝敗による報酬条は変更。お前が勝ったら、一ヶ月・・油揚げでもキツネうどんでも好きなものをおごってやるよ。」

・・・・ピクッ!!

瞬間、タマモの目の色が変わる。彼女にとってはそれほど魅力的な条件なのだろうか?

「そ・・・それであんたが勝ったら?」

「今日一日中、お前はオレの命令を聞き続けなければならない!」
ふんぞり返って言い放つ横島に・・・


・・・・・。

「却下。」

タマモは即答した。もう気持ちいいくらいの即答。
不敵に笑ったあと、彼女は横島へ哀れみにも似た視線を送り・・

「ふっ・・。そんな魂胆が見え見えの誘いには乗れないわ。さっき勝った勝負でレートだけ引き上げようだなんて・・考えがあま・・」

・・と、言いかけたその時だった。

「ふむ。じゃあオレが文殊を使わないって言ったらどうする?」

「・・・・・は?」

予想外の提案に驚いたように顔を上げる。

「オレは文殊を使わない、栄光の手もな。使えるのはサイキックソーサーと体術と・・あと霊波による通常攻撃だけ。
 これでも勝てないと思うか?」

・・澄みわたった明るい笑顔が逆に胡散臭かった。

(・・・・・・?)

これは・・どういうことだ?そんな制約下で闘って・・本気で勝てると考えているのだろうか?

・・・だとしたら・・・

「・・ふふっ。私のこと・・舐めすぎてない?」

一体、自分を誰だと思っているのか?腐っても九尾の狐を相手にして・・・(最近では本人もめっきり忘れかけていたが・・)
・・明らかに、横島は戦力差を見誤っている。

「・・・いいわ。それでいきましょう?」

タマモは内心、小踊りしていた。前回は負けてもいいと思ったが・・今回は違う。
何としてでも勝つ・・・そして、油揚げを手に入れる!

「じゃあ、始めるわよ?・・悪く思わないでね、横島。」

余裕の声とともに炎が噴き出し・・
タマモは先ほどの攻防よりも、さらに増加した速度で、横島へと一直線に飛び掛った――――――


――――・・・。

3分後。

「はい、残念。オレの勝ち。」

「う・・・うそ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

中庭に、タマモの驚愕の叫びが轟いたのだった。


(疾風怒涛の後編へ続く(笑))


『あとがき』

うあああ!!すいません!!『姉妹』を書き終わってヒマだった上、他の作家さまの素敵な短編を目にしてしまい・・・
ついつい、筆が動いてしまいました(爆)「ヒマだったら『姉妹』を打ち直して早く送ればいいいいじゃん」と妹にも言われる始末。
・・・申し訳ありません。しかも前・後編だし・・・うう・・

いや〜・・タマモ・・大ピンチですね(笑)初めて横島×タマモでラブコメを書いてみたのですが・・どんなもんでしょうか?

しかし・・前編だけだと題名との関連がないなぁ・・どうしよう・・。

さてさて・・このお話は少し変則的ば投稿の仕方をします。
明後日に『姉妹』の続きを送って・・・その少しあとにこの短編の続きを・・・
それでは、次は『姉妹』の14話中編の2・後編でお会いしましょう。それでは〜

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