ザ・グレート・展開予測ショー

ナミダ


投稿者名:月夜
投稿日時:(04/ 4/ 6)


ナミダ



――ふと、目が覚めた。

目の前は真っ暗で、何も見えない。
時計を見てみる――蛍光塗料のおかげで、時間はわかる――3時27分、どちらかと言えば夜である。
二度寝しようと布団を被っても、何故だか目が冴えてしまう。
何度か寝返りをうち……やがて、諦めて上体を起こす。
隣の布団で眠る彼女を起こさないように、静かに立ち上がる。
気分を変えるために、外の空気を吸うことにした。


外の空気は、ひんやりと冷たく澄んでいた。
目の前に広がる風景は、今だ闇に覆われている。
その風景を、ぼんやりと眺め――街灯の光が、横目に見えた。
その微かな光はまるで、ホタルの様で――

「……っ」

――不意に、思い出してしまった。

ルシオラと歩いた場所――
ルシオラと見た風景――
ルシオラと話した数少ない言葉――
ルシオラとの共有の記憶――


そして――儚クきエル、ホタルのひカり――


「くっ……っ」

涙が、溢れる――

一体、何で今更こんな事を思い出すのだろう……。
アシュタロスを倒してから既に5年。
彼女と結婚してからは、既に3年。
ついこの間、子供が出来たと聞かされ、馬鹿みたいにはしゃいだのは自分なのに………。
それは、ルシオラであって、ルシオラではないと知っていて……けれど、また逢えることに喜んで……。
もう何年も前に――彼女と結婚した時には、乗り越えたはずなのに………。

――何で今更、こんなにも胸が痛くなるのか――

「ぐっ……くそ、くそっ……何で……」

――横島は知らない、何故、胸が痛むのか――


涙が、流れた。
………止まらない。


――それは、無意識に抱いた罪悪感――


「……っ……くっ……ぐすっ……く……」


――自分のために死んだルシオラを、今度こそ幸せに出来るというのに………

  その自分の隣には、既に彼女が居て――


ふわりと、背中に暖かい熱が伝わる。
いつの間にか居た彼女が、慰めるように背中から抱きしめる。


――だから、きっと、恋人としては、もう愛せない――


それは、優しすぎる横島が故の、悲しみ方。
そして――彼女を選んだ、横島なりの懺悔の仕方。


「すまん……ルシオラ……」
 

何故、謝るのか――きっと自分でも分かってはいない。
けれど、横島は思う、ルシオラならばこう言うだろうと――


『ふふ……安心して、横島……私は、十分幸せよ……。
 だから――私のために、泣かなくても良いの……』


――ルシオラの声が確かに聞こえたと、横島は、そう確信した。

  だからこそ、この言葉を送ろうと思った――


「またな、ルシオラ。……愛してる」


――いつの間にか、朝日が二人を照らしていた………











尚、その言葉に、背中にいた彼女がおもいっきり不機嫌になり、
機嫌を取るためにひたすら横島が謝り倒すのは………また別の話。



End

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