ザ・グレート・展開予測ショー

続々々々・GS信長 極楽天下布武!!(5‐2)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 4/ 3)

白昼の街中を,二人の美女が駆ける。
「キーッ,キキキッ!」
「あっちですって」
「ええ」
白い猿の後を付いて走るのは,ロングブラックヘアーの美人婦警と,同じ位に長い金髪を一本に三つ編みした黒服で細目の女性。泣き黒子で,手には箒。
猿の名は,“サスケ”。金髪の女,魔女・万千代めぐみの使い魔である。
めぐみは,大学時代の先輩であるI.C.P.O.捜査官・西条鍋子と共に,とある連続殺傷事件の犯人を追っていた。
サスケに犯人の『死臭』を嗅がせ,追跡するのだ。
「此方が当たりだと良いですね。幾らGSとは言っても,時読さんは未だ高校生です。竹中さんに至っては,未だアシスタントですし。それに,彼女達は何時も,織田さん達とチームで動いていますから……」
「そうね。そう,願いたいわね」
横目で語りかけてくるめぐみに,鍋子は傾いた。
殺人現場から感知された『死臭』は,二本。どちらかは犯人が“来た”時のもので,もう片方が犯行を終えて“帰る”時のもの。片方を調べている内に,もう片方の『死臭』は消えてしまうかも知れない。
其処で,鍋子やめぐみが今,追っているのと違う方の追跡は,近くの『織田除霊事務所』から助っ人で来た女子高生スイーパー・時読ヒカリ(ヒカゲ)と,アシスタントの人狼少女・竹中重治に任せたのだった。
「て言うか……,だったら私と時読さん,先輩と竹中さんで組めば良かったですね……」
「そうねえ。でも,今更言っても遅いわ」
「まあ,それはそうですけど」
「それに,ヒカゲちゃんだって正式なスイーパーよ?って,それを言ったら淀ちゃんもとかなっちゃうか……。まあ,貴女も結構天然ボケだしね」
「……先輩こそ,愛すべきギャグキャラじゃないですか」
「如何言う意味?」
「いえ,別に……」
「……」
仲良く付き合ってはいるが,それだけにお互い色々と欠点も見える様だ。
「キキキィッ!」
路地を曲がった所で,サスケが,一際大きく鳴いた。
「!近いみたいですっ」
「よしっ!」
キン……!
鍋子は,走りながら腰の霊剣『ハイファーム』の鯉口を切った。



「……?」
とある殺人現場から漂っていた『死臭』を辿って,犯人を追跡していたGS・ヒカゲと竹中重治は,進行方向に人集りを見付けた。
ザワザワザワ……
「何かあったのかしら」
ヒカゲが,無関心そうに言う。
すると,重治が声を上げた。
「『死臭』は,彼処に向かっているでござるよ」
そう言って,彼女は人集りを指した。
「そうなの?」
「間違いないでござる」
自信に満ちた顔つきで,重治は頷いた。
「じゃあ,見てみようか。……一寸,すいませーん」
野次馬達の間を縫って,二人(重治は人狼なので,正確には一人と一匹)は人集りの中央へと顔を出した。
「え,これは……!?」
「うわ……」
重治が叫び,ヒカゲは口を押さえた。
二人が見たのは,血を流し,倒れ伏している若い女性の姿だった。
「ま,間違いないでござる。『死臭』は,此処に続いてるでござるよ」
鼻を蠢かせながら,重治が言う。
「死んでるわ……。じゃあ,この人は第六の犠牲者って事か……」
女性の首筋に触れ,脈が無いのを確かめたヒカゲが返した。
ヒソヒソヒソ……
周りの野次馬達は,いきなり死体を検分し始めた二人の少女(しかも,一人は巫女姿で一人は尻尾付き。そして,派手な容姿)に,驚きの声を上げ,ざわざわと何やら勝手な憶測を並び立てている。
「……」
ヒカゲは,溜息をつくと財布からスイーパーライセンスを取り出した。
「私達は,GSです。オカルトGメンから協力要請を受け,この事件の霊視をしに来ました」
ほぉ……
人の輪から,感嘆の溜息が聞こえる。尤も,その野次馬達の半分以上の視線は,死体から『死臭』を嗅ぎ取ろうと鼻を地面に着けている重治の,高く上げられた形の良い尻に向けられているが。
ヒカゲは,野次馬達のそんな反応を気にする様子も無く,振り向いて重治に語りかける。
「如何やらこっちが正解だったみたいね。あっちの二人に連絡入れようか」
「待つでござる!」
「え?」
携帯を取り出したヒカゲを,重治が制止した。
「如何したの?」
「『死臭』が……,又た二手に分かれたでござる!」
「……?」
おかしい。
状況から考えて,殺人犯人は五人目の被害者を殺害してから,直接此処に来て六人目のこの女性を殺したと考えられる。詰まり,五人目の死体から続く“帰り”の『死臭』は,この六人目の“行き”の『死臭』である筈だ。
だと言うのに,それ以外にこの死体から二本の『死臭』が発せられているとは,如何言う事なのか。
「これは一体……」
「……兎に角,此処は二人に連絡入れましょ」

ヒカゲが携帯のボタンを押した時,それ迄一心不乱に死体の霊視をしていた重治が,突然顔を上げた。
バッ!
「!」
「如何したの?」
真顔できょろきょろと辺りを見回す重治に,ヒカゲが訊いた。
「あの御仁……!」
重治は,そう叫ぶと野次馬の内の一人を指差した。背の高い,薄茶色のコートに身を包んだサラリーマン風の男だ。
「あの御仁に,『死臭』の内の一本が続いているでござるッ!」
「え!?」
ヒカゲも驚きの声を上げる。
犯人は現場に舞い戻るものだ――。何時か,何気無く眺めていたテレビから聞こえてきた台詞が頭を掠める。
「じゃあ,彼が犯人……!?」
男の顔を見つめる。
「ちっ!」
舌打ちの音が聞こえたかと思うと,コートの男は身を翻して立ち去ろうとした。
「あ,一寸……」
「逃がさんでござるよッ!」
重治は,右手に霊波刀を作り出すと,男の後を追った。



一方,ヒカゲ達から一キロ程離れた町外れ。

「キキィッ!」
サスケが,道を行く一人の痩せた男に飛びついた。
「うわっ,何だ,此奴!」
「キィッ,キキィッ!」
男はサスケを振り解こうとするが,サスケは容易には離れようとしない。
「く,糞っ……!」
男が辟易していると,サスケを追って鍋子とめぐみが走ってきた。
「居た!彼奴ね!?」
自分を指差し叫ぶ鍋子に,男は目を丸くした。
「其処の男,手を挙げなさい!」
「何だとぉ!?」
鍋子は,男に向かってピストルを突きつけた。
「I.C.P.O.超常犯罪科の者よ!殺人の容疑で,貴方を確保します!」
「くっ……!?」
男が,たじろいだ。
「オカルトGメンか,糞っ垂れめ!」
「キィッ!」
サスケは,既に男から離れ,めぐみの元へ帰っている。
バシュウ!
「!」
めぐみが,箒で魔法陣を描き結界を張った。
恐らくは間違い無く連続殺人犯と思われる目の前の男を逃がさない為と,通行人を人質に取られない様にする為だ。
「ナイス,めぐみ!」
「へへっ」
チラッと振り向きガッツポーズを示した鍋子に,めぐみは舌を出して頭を掻いた。大人の余裕を見せるかと思えば,偶に斯ういう子供っぽい仕草を見せるのが,めぐみであった。
「さあ,これで逃げられないわよ。観念なさい!」
犯罪者を前にすると,鍋子は一層高圧的になる。
「ちっ……」
シャキン!
「!」
それで観念したかと思いきや,男は懐からナイフを取り出し,抜き打った。
「なら,あんた等を殺して出る迄だ!」
ゴッ!
男が,ナイフに霊力を込めた。
ナイフを握った男の右手に,霊波刀が現れる。
「霊波刀は,肉を裂く感触が感じられなくて嫌なんだがな。しかし,お前さん達はそんな事を言ってられる相手じゃなさそうだ」
逃げられないと知ると,腹を括ったのか異常に落ち着いた男。
「へへ,あんた等が女で良かったぜ。野郎の呻き声なんざ,聴いても何の得にもならねえからな」
下品に舌を出し,醜悪に顔を歪める男。
「病んでるわねえ……」
鍋子が,呆れ顔で呟く。
「そうですね。男漁りが趣味の先輩が言っても,説得力無いですけど」
「めぐみ……,あんたねえ」
めぐみは,思った事をはっきりと口に出してしまうと言う悪い癖がある。正直と言えば聞こえは良いのだが,要するに毒舌なのだ。しかも,本人に全く悪気が無いので始末に負えない。
「私は,基本的に信ちゃん一筋よ?」
「それはそれで問題有りますけど……」
ショタコン。
とは言え,最近はめぐみも人の事を言えない状況に嵌りつつあるのだが。相手が誰だかは,敢えて書かない。
まあ,兎も角。
目の前の男は変態だが,しかし霊能力はそれなりの強さを誇っているだろうと思われた。霊能力……に限らないが,特に霊能力は“心”の持ちよう,即ち精神的コンディションがその戦局に大きく作用する。迷う事の無い“変態”は,その意味で強い。と言うか,基本的に『強い奴=変態』とは言わない迄も,“強い奴”と言うのは須く何処かおかしいと思って間違い無い。それを言ったら,幼い子供を除いて人間の全てはそうなのかも知れないが。
「さぁ〜て,どっちから斬り刻んでやろうかなあ〜?黒髪のねーちゃんの制服姿もそそるけど,パツキンねーちゃんの魔女ルックも良いなあ〜。糸目だけど,美人だしねえ。う〜ん,迷うぜえ〜」
嫌らしい眼で二人を品定めする男。
「余裕ねえ。貴方,自分の立場分かってるの?」
鍋子が,蔑みを込めた眼で言う。
「へっ!ねえちゃんよう。俺が,あんたみてえな国家の狗に捕まるとでも思ってんのかよ?」
「残念,オカGは国際機関。国家の狗じゃないわ。通り魔なんかしてる暇が有ったら,もっと勉強なさい」
「けっ」
「それと……,質問に答えようか。思ってるわよ,勝てるってね」
鍋子は,自信に満ちた眼で言い切る。自分の力を過信すべきではないが,自信の無い者は勝利など掴めない。
彼女には,自分はオカルトのエリートだと言う自負があった。
「はっ!俺ぁ,こう見えても,ちったあ名の知れたGSなんだぜ?スイーパー試験じゃベスト4迄行って合格した」
男も,負けじと威嚇する。
GS同士が真っ向から白兵戦で戦うなどと言う事は,実は滅多に無い。それ故,その数少ない機会である資格試験の結果は,そのまま各人のステータスとなる。ベスト4迄進めば,確かに自慢出来るだろう。
「素人同士の戦いで,百五十にも満たない人数の内のベスト4ね……。自慢にもならないわ」
「な,何だと!?」
鍋子の言葉に,男が額に青筋を浮かべる。
「そのベスト4様も,今じゃ殺人鬼か。笑えないわねえ」
くす。
と,鍋子がその整った顔に,悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
男は,キレた。
「ふ……ざ……けるなあっ!」
ボッ!
右手の霊波刀が,その出力を増す。
「くす……,面白い」
シャキィッ……
鍋子も,『ハイファーム』を抜き打つ。
「霊剣か……!」
男が唸る。判断力迄は失っていない様だ。
別に彼は狂ってしまっている訳ではない。只,感覚が常人――周りの人々とずれてしまっているだけだ。例えば,快楽のツボや倫理観などが。
「貴方の土俵で叩き臥せてやるわ……!」
「面白え……!」
二人は,殺気を込めて剣を構えた。


「――あ,手ぇ出さないでよ?めぐみ」
「え?ああ,はい。分かりました」



「ちっ……!」
バチィ!
「受け止められた!?」
重治の振り下ろした霊波刀は,コートの男の抜いた剃刀で受け止められた。
「……おおっ!」
「くぅっ!」
バヂィ!
弾かれ,重治は一旦後方へ跳び,間合いを取った。
ザッ!
「く……そんな……,拙者の霊波刀が,剃刀に弾かれるなんて!」
驚愕する重治。
そんな重治に,コートの男が言った。
「それはそうだ。この剃刀は,こう見えて霊剣の一種だからな。乙女の血を求めて流離う,怪しの刃よ」
顔を歪めて,男が言う。
「じゃあ,貴方があの人を殺したんで間違い無いのね?」
後を追ってきたヒカゲが問う。
「おおっと,それは誤解だぜ」
「如何言う事?」
大袈裟に手を広げて無罪を主張する男に,ヒカゲは眉を顰めた。
「俺は,此奴のやりたいようにやらせただけさ。なあ,相棒」
言うと,男は語りかける様に剃刀を見た。
「なっ……,何でござるか,この御仁は。あの霊剣に操られて,自分を見失っているでござるか!?」
「そう言う訳じゃないと思うな……」
思わず退いてしまう重治に,ヒカゲが諭す。
「え,じゃあ一体……?」
「世の中には,世間の常識じゃ測れない人が沢山居るって事よ」
「……?」
「詰まり,あの人はか弱い女の人を殺す事なんて何とも思っちゃいない。いえ,寧ろ楽しんでいるのでしょうね」
「えっと……?」
「だから,自ら進んであの剃刀に力を貸してるのよ。詰まり,使用者になってあげてるのね」
「……!」
「若しくは,普段は倫理観に抑圧されて隠されていた殺人だか陵辱だかの願望が,あの剃刀って言う言い訳を得て,堰き止められなくなっちゃったのかもね。何れにしても,彼はサディストだって事よ」
溜息さえつきながら,ヒカゲは本人の前でさらっと分析した。
「くっ……くくく,サディストか。まあ,否定はしないがな」
男は,低く呟いた。
「分かってるなら話は早い。この剃刀は,小さくとも魔剣。貴様等如き小娘の手に負えるものではないぞ」
常軌を逸した眼で,男が嗤う。
「この剃刀が,お前達の血を欲している……。生け贄となれ,娘!丁度良い具合に巫女姿だしな」
男が,剃刀をヒカゲに向ける。
いや,剃刀が自らヒカゲに向かったのか。
「……この衣装は,そんな安っぽい魔剣に捧げる為のものじゃないわ」
涼しい顔で,ヒカゲは言い返す。
「くす……,でも,私には見えるわ。“力”を失った私にも……。魔剣に魅入られた,貴方の末路が……」
「!?」
背筋の凍る様な眼で,ヒカゲが男を見た。
例の,信長曰く『人の頭ン中,覗き込むみてーな』眼だ。
「ふ……ふ……巫山戯るなッ!」
男は,びびって剃刀を振りながら後退った。
「戯れ言を……!」
震える顎で,男はヒカゲを睨む。
「そうかしら。本当は,貴方も分かっているんじゃなくて……?」
「!」
ヒカゲは,更にプレッシャーを掛ける。
斯ういう“神懸かり”的なプレッシャーを掛けるのは,ヒカゲの得意分野だ。街中でも,その技術は衰える事をしない。
コートの男は,彼女と,彼女の見つめる男の周りだけに,別の空間が出来た様な感覚を覚えた。
いや。それを感じたのは,彼だけではないだろう。それ程迄に,彼女の発するオーラは神懸かっていた。
「ぐ……!」
だが,男がヒカゲに屈服してしまいそうになったその瞬間,横合いから待ったが掛けられた。
「お待ち下され,ヒカゲ殿」
「半兵衛……?」
ヒカゲと男の間に,霊波刀を構えた重治が割り込んだ。
「此処は,拙者にやらせて下され!」
重治が,強い眼で男を睨む。
「如何したのよ」
突然の重治の申し出に,ヒカゲが問う。
「刃筋を剣に頼り,剰え己が下劣な願望を剣の所為として満たすとは。拙者,剣士としてその男は許せないでござる!」
ゴッ!
霊波刀に込められる霊力が増す。
「……っ!」
普段とは違う鋭い目で,男を睨む。
「くっ……」
男が何やら呟いた。
「くっ……,くっくっく……」
男の口から苦笑が漏れた。
如何やら,今の茶々で持ち直したらしい。
「面白い……」
ス……
男も,剃刀を構える。
「やってみろ,犬娘」
「狼でござるっ!」



バチィ!
「くっ!」
「……!」
容疑者の痩せた男の霊波刀と,鍋子の霊剣『ハイファーム』が,ぶつかり合い,火花を散らした。
ザッ!
両者は,押し合って弾き合い,間合いを取った。
「けっ,やるじゃねーか,ねーちゃん」
「貴方もね」
それぞれ,“必殺”を狙った一撃だったのだが,見事にタイミングを合わせられ,受け止められた。
「けど,如何するよ。刃止め刃渡りでもやってみっか?」
「それも良いけどね……。けど,霊波刀相手じゃ意味無いでしょ」
「ふん」
いやいやいや。
「それに,この『ハイファーム』はレイピアだから……」
レイピアとは,欧米の刺突専用の剣である。フェンシング等で使う。
斬撃を主とする日本刀に比べ,型は不格好で攻撃力も低いが,モーションはかなり少なくて済む。
「……から,やるならこれでしょ」
ス……
鍋子が,剣を構えた。その姿は丸で……
「牙突?」
「はっきり言わない!」
まあ,剣がレイピアだし……。ねえ?(何がだ)
「……ちっ!来ると分かってて,突きなんざ喰らうかよ」
男は,霊波刀を正眼に構える。最も防御に適した型だ。
て言うか,此処で霊波砲撃ったりしない辺り,此奴も場の雰囲気に呑まれてしまっている。自分の立場を忘れてしまっているのだろうか。
まあ,何でも有りになると二対一で勝ち目は無いに等しいから,正しい判断と言えるかも知れないが。
「さあ……,それは如何かしら!?」
ドッ!
鍋子が,『ハイファーム』を構えて突進した。
「はあぁあぁあッ!」
ゴッ!
「!」
突進した『ハイファーム』の切っ先は,正眼に構えた男の霊波刀に受け止められた。
バチバチバチ……
接触面から,火花が飛ぶ。
「くっ……!?」
ジ……ジジジ……
暫く均衡状態が続いたが,次第に男の顔が歪んできた。
「……っ!」
「ふふ……」
額に脂汗を浮かべながら,鍋子が微笑った。
「自分の霊気で道具を作った方が早いし応用も利くのに,如何してわざわざ霊具なんて持ち出すか,分かる?」
鍋子が訊く。霊具とは,霊剣やら神通棍やら,そう言う類の霊能者が使う道具の事である。
「霊力が集中し易くて,結果強力になるからでしょ……!?」
鍋子がそう言った瞬間,『ハイファーム』の先端に集められた鍋子の霊力に負け,男の霊波刀が弾け飛んだ。
バチィ!
「ぐあ!?」
ドスゥ!
『ハイファーム』は,そのまま男の右肩を貫いた。
カラン……
男の手からナイフが落ちる。
「ぐ……」
蹌踉けた男に対し,鍋子は尚も攻撃の手を緩めず,そのまま左の太股を刺した。
「ぐわあ!」
ドシャ!
足をやられ,男は崩れ落ちる。
「糞……」
その喉元に,『ハイファーム』の切っ先が突きつけられた。
「これで貴方は……,武器を取って戦う事も出来ない,この場から逃げ去る事も出来ない……」
鍋子が,その美しい顔に満面の笑みを浮かべる。

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