ザ・グレート・展開予測ショー

妙神山の休日 その6 前編


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 4/ 3)







「なあ、パピリオよ・・・いい加減聞きたいんだが、お前が作る服ってなにを参考にしてるんだ?」

着替え終わった横島が朝食を食べようと部屋に入ると、そこには異様な光景が存在していた。
小竜姫さまの白の割烹着は許そう、意外と似合ってるし家庭的だ。
だが座布団に正座しているタマモは、黒のフリフリのメイド服に猫耳と尻尾のおまけつきだ。
しかもミニスカートなのだが、短すぎるのかさっきから一生懸命に下に引っ張っている。
同じく反対側に座っているシロに至っては、豹柄のビキニ姿だった。
緑色に染められた頭に、鬼の角っぽいのを付けているのだが、横島にはなんなのかさっぱり分からない。

ここまでは許そう、まだ見ないふりをすれば我慢できる範囲だ。

だが!!しかし!!なにより!!

ジーク・・きさま、フリルの付いたピンク色のエプロンなんて付けてるんじゃね〜〜
最初に入って見たのがジークだったせいか、さっきから涙が止まらない・・

横島は出来るだけ落ち着いた声で言ったつもりだが、少し声が怒りに震えるのはしょうがない事実だった。
少し怒り気味の横島に驚きながら、パピリオは懐から一冊の本を取り出した。

「えっとこれでちゅよ。
前に鬼門の二人に街に行ってもらって、服の本を買ってきてもらったでちゅ。」

「えっと、なになに」

横島はパピリオから本を受け取るとまず表紙を確認した。

「コスプレ情報雑誌、ギャラクシアン・エク○プロージョン。
おいおい、異次元に飛ばされそうな名前だな。」

「そこに男の人が気にいる服の特集があったでちゅよ。」

パピリオが表紙に書かれている場所を指差す。

「どれ、特集・男が萌える服はこれだ!!
ゴスロリ・着ぐるみパジャマは当たり前、マニア殺しのきわものからファミレス制服まで一挙大公開。」

「ね、とくに問題は無いはずでちゅ。
なんでヨコシマは嫌いなのでちゅか?」

パピリオは不思議そうに横島の顔を覗き込む。

「ちっが〜〜〜〜う!!
お前は見る本を根本的に間違っている。
これは一般的じゃない、かなり片寄った趣味の人向けだ。」

「え!そうなんでちゅか?
でも結構可愛い服がたくさんあって面白かったでちゅよ。」

横島に否定されてしまったのだが、結構気にいっていたパピリオはちょっと抵抗をしてみる。
だが正直あきれてしまった横島は、少しばかり冷静になると、
先ほどから恥ずかしそうに下を向いているタマモに声を掛ける。

「タマモ。」

「なによ!」

着てる服が恥ずかしいのか、やたら横島の視線を気にしながら、
顔を真っ赤にして目だけを横島に向けてくる。

「来る途中のコンビニでファッション雑誌買ってなかったっけか。」

「MUNMUNでよければあるわよ。」
横島の言いたいことがやっと分かったのか、
タマモは少しばかり落ち着きを取り戻すと顔を横島に向ける。

「もってきてパピリオに見せてやってくれ。」

「分かったわ。」

そう言って立ち上がったタマモは部屋から出て行こうとする。
だが、タマモの着ているメイド服はスカートが短すぎるため、歩くたびに下着が見えそうになってしまう。

「タマモ、見えるぞ。」

横島の一言にはっと気が付いたタマモは、再び顔が火のついたように真っ赤になる。

「く〜〜〜」

なにが悔しいのか、タマモはうなり声を上げながらスカートを下に引っ張りだした。
そしてそのままちょこまかと内股のまま部屋から出て行く。

「あのスカートは短すぎないか?」

「ちゃんと本の通りに、スカートのラインは股下と同じでちゅ」

横島の疑問に、すぐ横に居るパピリオが答える。
だか、そこで新たな疑問も横島には芽生えるのだ。

「それってかなり厳しいだろ、いろんな意味で。」

「でも、本には勝負する時は下着も脱ぐって書いてありまちた。」

あまりの驚きに横島はゆっくりパピリオへと顔を向ける。
その視線に気が付いたのか、パピリオも横島へと顔を向けた。

「それってどんな勝負なんだ?」

「さあ、きっと命をかけた一騎打ちじゃないでちゅかね。」

「・・・そうか・・・でもまあ・・・
見た本が男の理想を詰め込んだ男の萌える服特集だしな・・しょうがないか。」

「そうでちゅよ」

横島の意見にパピリオも賛同する。
しばらくタマモが出て行ったドアを見ていたのだが、ぜひ小竜姫さまに着せてみたいなと考え始めた辺りで、
その小竜姫に声を掛けられる。

「横島さん、取り敢えず自分の席に座ってください。ご飯と味噌汁を用意しますから。」

「あ、はい、すみません。」

小竜姫に自分の考えがばれたのかと焦った横島は、すぐさま自分の席に正座する。
だが、とくに怒った様子も無く自分にご飯をよそってくれる小竜姫を見て、
自分の早とちりだったと安心した。

そこで正面を見る、珍しく大人しいのでさっきから存在感がいまいちだったが、
豹柄のビキニを身に着けたシロが俯いたままジッとしていた。
よくよく聞いてみれば、ぶつぶつと何かを言っている。

「騙されたでござる。拙者騙されたでござるよ・・」

「文句言うんじゃないでちゅよ、ラ○ちゃん。」

その一言にシロが反応する。
パピリオをキッと睨むと、溜め込んでいた文句を一気に喋りだす。

「だれが○ムちゃんでござるか〜!
こんな懐かしのアニメ特集にしか出てこないような格好をさせおって!!
雑誌が同じなら許されると思ってるでござるか〜〜!
高橋○美子先生に謝れ〜!!」

「うるちゃい!!」

いつの間にか取り出したハリセンでシロの頭を叩くと、そのまま崩れ落ちて静かになる。
パピリオは一回ため息をつくと、なにが悪かったのかと考え始めた。

「おかしいでちゅね〜、男の理想だって書いてあったのに。」

「だから見る本が間違ってるんだって。」

さりげなく横島が横から突っ込みを入れる。

「パピリオ!!
ご飯の時には暴れてはいけません!」

小竜姫に注意されたのでしぶしぶ自分の席につく。





そうしてみんなのご飯をよそり終えた頃に、雑誌を取りに行っていたタマモが帰ってきた。
入ってくる時からずっとスカートを気にしていたが、自分の席についてやっと落ち着く。

「はい、これがそうよ。特集でこの冬の流行の事が載ってるから、参考にすればいいわ。」

横島はタマモからファッション雑誌を受け取ると、それをパピリオに見せる。

「ほれ、パピリオ、タマモがもってきたファッション雑誌だ。
普通一般的には、そう言うのが流行ってるんだよ。」

受け取ったパピリオはぱらぱらと流し読みをするのだが、あまり気にいった様子は無い。

「なんか服が地味でちゅね。
こうぐっとハートに来るものが無いでちゅ。」

「前の本に書いてある服が、いろんな意味でハートにきすぎるだけだ。」

「そうでちゅか〜、ん〜〜
取り敢えずこの本て貰って良いでちゅかね?」

少しの間悩んでいたパピリオは、横島とタマモに向かって頼んでくる。

「ええ、良いわよ。もう読み終わったしこの服から脱出できるなら安いものよ。」

「ありがとう、お礼にその服あげるでちゅよ。ぜひ勝負の時に使ってくだちゃい。」

「いらないわよ!!」

タマモには意味が分かるのか顔を赤くして断る。

「はいはい、そろそろお話は終わりましたか?
いい加減ご飯食べてくれないと冷めてしまいますよ。」

話の区切りで小竜姫が会話に入ってくる。
ご飯はよそり終わったのだが、横島たちの話が終わらないのでずっと待っていたのだ。

「あ、すみません小竜姫さま。
ほらみんな、せっかく小竜姫さまが作ってくれたんだから食べるぞ。」

「いただきます。」

「いただきます、
ちょっと馬鹿犬なに寝てるのよ、さっさとおきてご飯食べなさい。」

タマモが横でのびているシロをおこす。

「う〜ん、はっ!!」

気が付いたシロが周りを見渡す。

「あれ、拙者なにしてたでござるかな?」

「なにってご飯食べるに決まってるじゃない。」

シロの疑問にタマモが当たり前だと言わんばかりに答える。

「そうでござったかな〜
もっとこう、魂の叫びみたいなものがあった気がするでござるが。」

少しの間シロは悩んでいたが、タマモにおかずを取られそうになると、
取られてなるものかと急いで食べ始めた。

その後はとくに問題も無く長かった朝食が終わりを告げる。
朝食が終わると各自それぞれの用事で散らばっていく、
小竜姫はまだちょっとだけ残っている書類を片付けるために書斎に、
ジークは修業場の掃除や補修作業のために、竹箒とちりとりを持って庭に、
横島・タマモ・シロは、パピリオの相手をするために部屋へと向かった。










「よし、これで終わりですね。」

最後の書類に判を押すと、椅子に寄りかかりながら大きく伸びをする。

「う〜ん、疲れました。
老師ももう少し私の苦労が分かってくるとうれしいのですけどね。」

ドンドン

ドアが勢いよく叩かれる。

「はい、だれですか。」

ドカッ

横島が転がるように入ってくると、そのまますぐにドアを閉めて小竜姫に近寄ってくる。
そしてあっという間に近寄ってきた横島は、小竜姫が使っている大きめの机の下に隠れだす。

「な、なんですか横島さん、いきなり入ってきて。」

「シッ、追われてるんです匿って下さい。」

「え?、追われてるって。」

小竜姫が聞き返そうとすると、廊下から怒り交じりの叫び声が聞こえる。

「だめこっちには居ないわ、そっちは?」

「こっちには居ないでちゅ。」

「こっちも駄目でござる。」

ばたばたと廊下を走る音が聞こえ、だんだんとこちらに近づいてくる。

「逃がさないわよ、横島!」

「そうでちゅ!、今日は一日たっぷりパピリオと遊ぶでちゅよ。」

「拙者たちに押し付けるのは酷いでござるよ・・」

三人の声が書斎の前で止まる。

「ここは何の部屋なの?」

「確か小竜姫どのの書斎だとジークどのが言っていたでござるよ。」

「そうでちゅ、今仕事してるはずだから、あまりうるさくすると怒られるでちゅよ。」

「怪しいわ。」

コンコン

はっと我に返った小竜姫は少し慌てる、
急いで横島を奥に押し込むと先ほどと同じように椅子に座りなおした。

「はい、どうぞ。」

ガチャ

小竜姫が声を掛けるとドアを開けて三人が入ってくる。
タマモとシロはさすがに朝食よりおとなしめの服になっているが、
おとなしめのメイド服ではあまり変わった気がしない。
何故かパピリオまで着替えているので、三人ともおそろいだった。

「失礼します。」

「失礼するでちゅ。」

「失礼するでござる。」

三人は入ってくるなり部屋中を見渡し始める。
さすがに部屋の中を歩き回る事はしていないのだが、
あきらかに疑いの眼差しをあちらこちらにに向けている。

「ま、まあ、みなさんどうしたんですか?」

少し声が裏返ってしまったが、小竜姫はばれないようにがんばっている。

「こっちに横島が来たはずなんだけど見ませんでしたか。」

「え、え〜と」

机の前までやってきたタマモに尋ねられると、小竜姫は机の下に隠れている横島の存在感を感じながら、
どう言うべきか一瞬迷う。
嘘を付く、これは神族にとってはあまり褒められた事ではない、
いやどちらかと言うと禁止されている事の一つだ。
前に妙神山が壊れた時も、老師にたいして嘘を言ったわけではなく、
ただ言わなかっただけと自分をなんとか騙した。
だが、今横島を庇えば自分は確実に嘘を付かなければいけない、だから迷う・・・嘘を付くかどうかを・・・

「・・み、見てませんよ。横島さんはこちらに来てません。」

結局小竜姫は横島を庇ってしまう。
小竜姫にきっぱり来てませんと言われてしまうと、さすがにタマモもあまり強くは出れない。

「おかしいわね。確かにこっちに追い込んだつもりなんだけど、
シロ、横島の匂いは感じられないの?」

「駄目でござる、先生きっと何かしてるでござるな、拙者の鼻でも追いかける事が出来ないでござるよ。」

シロは部屋の中をくんくんと嗅ぐのだが、見つけられないでいる。
三人が小竜姫から視線を外したので安心していると、ふと、そこで小竜姫は太股に生暖かい感触を感じる。
そっと下を覗くと、横島が小竜姫の太股に頬を摺り寄せていた。

ゴンッ

すごい音がしたので三人が音の方を向くと、小竜姫が頬を引きつらせていた。

「どうしたでちゅか?、すごい音がしましたが。」

「い、いえ、なんでもないのよパピリオ、ちょっと足元に虫がいたから驚いて机に足をぶつけただけです。」

慌てて小竜姫が言い訳を始めるのだが、なかなか苦しい。

「ぶつけたとか、そう言う次元の音じゃ無かったような気がするんだけど。」

タマモがあきらかに疑ってますと言う顔をしながら、小竜姫に尋ねる。
しかし小竜姫も今更ばれる訳にはいかない、
タマモの疑いの眼差しをかわすためにいつも以上に真剣な顔をする。

「ちょっと力が入りすぎてしまったみたいですね。
それより、まだ少し仕事が残ってますので三人は別のところで遊んでいてくださいね。」

要するに早く出てけと小竜姫は言い放つ。
さすがの三人も小竜姫の気迫に押されてしまった。

「分かったでちゅよ。」

「しょうがないわね。シロ今度は向こう側を探してみるわよ。」

「了解でござる。」

そして三人は小竜姫に失礼しましたと言って部屋から出て行った。

「はぁ〜」

大きなため息をついた小竜姫は、前にメドーサと戦ったときよりも疲労感を感じてしまう。
しばらく椅子に寄りかかっていたが、気合を入れなおすと机の下から横島を引きずり出した。

先ほど擦り寄っていた横島を殴って沈めておいたのだが、
勢いをつけすぎて横島が机にぶつかったのは失敗した。

「まったく、あなたって人は、あなたって人は、あなたって人は!!」

バシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシッ!!

横島の頬を往復びんたして目を覚まさせる。

「ああ、堪忍や、堪忍や、綺麗な足が目の前にあれば男ならだれだって、
・・・・はっ、あれ小竜姫さま、タマモたちはどうしました?」

「もう、行ってしまいましたよ。」

あれだけ殴ったのにまったくへこたれない横島を見て、小竜姫はあきれる以外に無かった。

「いや〜すみません、パピリオたちが全然放してくれなくて、思わず逃げてきちゃいました。」

「まったく、横島さんはどれだけすごい事を私に要求したか、分かってないでしょ。」

神族に向かって、自分のために嘘をつけとはすごい事なのだ。
まあ、一口に神族と言っても多少個人差はあるが、
少なくても小竜姫は嘘をつくという行為は自分に禁じてきた。

「えっ!、俺なんかまずいことやっちゃいましたか?」

さすがの横島も小竜姫の態度を見て、まずい事をやってしまったのかと焦りだす。
小竜姫はそんな横島を見て怒る気力が、全然沸かないのを感じる。

「まあ、もう良いですよ。よく考えてみればたいした事じゃなかったかもしれません。」

私はだいぶ変わってしまったのかも知れない、昔なら絶対こんなふうには思わなかったのに・・

「そうですかよかった。」

心底ほっとしている横島を見て、ついおかしくて笑いそうになる。
私の言う事にここまで一生懸命に反応してくる、それが何より嬉しかった。

「それより、ここに来たって事は朝の約束を守ってくれるって事ですよね。」

「ええ、まあ、一応そのつもりで来ました。」

横島は頭を掻きながら少し言いにくそうに言う。

「なら、ちょっと場所移しましょうか。ここだとまたパピリオたちが来るかもしれませんからね。
どこか希望はありますか?」

その言葉に横島は不思議そうに顔を上げる。

「え、どこでも良いんですか?」

「ええ、良いですよ。」

「じゃ〜小竜姫さまの布団の・・・」

言いながら小竜姫に飛び掛ろうとした横島は、最後まで言う前に目の前の剣によって動きを止められる。
後一歩でも前に出ていれば、額に剣が突き刺さる絶妙な位置だ。

「いきなり布団の中とか、私の胸の中とか言わなければ大丈夫ですよ。」

にっこり笑いながら小竜姫が言ってくるが、はっきり言ってそれは脅しだった。

「嘘つきや〜、どこでも良いって言ったのに。」

横島が床にのの字を書きながらいじけだす。
小竜姫はちょっとやりすぎたかしらと思いながら場所の候補を言う事にした。

「ほら、今日は天気ですし外の景色とか綺麗ですよ。
なんなら頂上まで連れて行くので、そこで景色見ながらとかどうですか?」

外と言う言葉に横島は反応する。
すぐさま小竜姫に詰め寄ると、滅多に見せない真剣な顔をする。

「俺、小竜姫さまと是非行きたい場所があるんです。」

「は、はい」

いつもと違う横島にどう対処していいのか迷ってしまう。

「ささ、では行きましょうか。」

「え?、え、ちょっと横島さん。」

小竜姫の腕をつかんで、あっという間に部屋から飛び出していく。
部屋には誰も居なくなる。横島と小竜姫は最後まで気が付いていなかった、
ジッと部屋の中の様子を見ている目が6個ほどある事に・・。




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