ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(30)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(04/ 4/ 3)




 辺りが黒煙で覆い尽くされ粉塵と破片の飛び交う中、俺は一人一人に呼び掛け、その返事を待った。
敵がどこにいるか、どころか自分がどこにいるのか分からない今、迂闊には動けねえ。

  「パピリオ!ピート!エミ!・・・唐巣!・・・美神っ!」

 黒煙を霊波で押し退けながら何か近付いて来る――すぐ目の前まで来てそれが唐巣を引きずった
パピリオだと分かった。

  「けほけほ・・・一体どうなったんでちゅか?トリあたまと美神令子と変な動物たちとガラクタみたいなのが
  飛んで来たのは分かったけど・・・。」

  「そいつらが奴に、ラケリエルに衝突したのさ・・・俺もそこまでしか知らねえ。」

  「僕の人工式神は、ガラクタじゃないぞ・・・っ!」

 煙の中からもう一人、あの長髪の男が現れた。

  「こっちにエミさんもいたはずだ・・・無事なのか?」

  「ついさっきまではな・・・今は、俺が知りてえぐらいだ。」

  「冥子さんと一緒に戦ってた正樹さんも途中で見えなくなった・・・。」

  「あー、そりゃあ、どっかに落として来たんじゃねーか?だって・・・」

 あんなに式神が暴れまくってりゃあ――そう言おうとした時、強烈な気配を身近に感じた―――鋭利な・・・剣気。
 皆が一斉に退がった。次の瞬間、煙を弾きながら現れたラケリエルが俺達のいた場所に剣を振り降ろしていた。
 衝撃波と閃光が走り、周囲の煙が白く燃え上がった。奴は数メートルまで煙を退がらせながら立っている――
――さっきまでのブチ切れぶりとはまた少し様子が違っていた。

   ふうーーーーっ、ふうーーーーっ、ふうーーーーっ・・・

 こちらを見ながら奴は一言も発しない。まったくの無表情で目だけが据わり、ギラついていた。

   ふうーーーーっ、ふうーーーーっ、ふうーーーーっ

  「能書きなしで行くぜ、ってところか・・・?」

 メギドフレイムは相変わらず奴の全身からぽつぽつと噴き出していたが、剣はさっきまでの様な大げさな
炎柱ではなくなっていた。・・・・見た目はな。

  「ラケリエル様・・・っ!」

 ラケリエルの横から煙を掻き分けて七角水帰白鷺尊が転がり出てきた。羽毛のあちこちが焼け焦げ、全身の
パワ−もかなり弱っているようだった。

  「奴らめは・・・手ごわくございます・・・何卒・・・もう少しだけ、メギドフレイムの御力を・・・っ!」

   ――――ガッッ!

 ラケリエルへ近寄って行った白鷺野郎は、その長い嘴の根元をいきなり掴まれる。
 白鷺野郎に顔を向ける事なく奴は言い放った。

  「・・・役立たずめ・・・授けた力、全て返してもらうぞ・・・!」

   バリバリバリバリッ!!

 稲妻と火花が散り、辺りに鳥の悲鳴が甲高く響く。やがてぐったりした白鷺野郎を投げ捨て、ラケリエルは剣を
構え直した。――剣先を俺達に向けるのと、踏み込んで来るのとは、ほぼ同時だった。―――狙いは、俺。
 蝶の群れが俺と奴との間に割り込んだ。蝶は次々と燃え落ちるが、奴の剣筋も微妙に逸れた。俺は身を躱す。
返しで二振り目、それも躱す―――炎の柱に化けない分、さっきとはスピードが段違いだ・・小竜姫の居合には
劣るが・・・問題は、その威力。掠っただけでもアウトだろう。
 三振り・・四振り・・・空気が剣に沿って発光する・・・突き――――――違う!フェイントだ。
これは、パピリオへの・・・・!
 俺は床を蹴った―――右後ろにいたパピリオの手前に立つ。奴の剣先が胸部の装甲にめり込んだ。
――全身の魔装術が白い炎に包まれる。

  「・・・・ぐあぁぁぁっっ!!」

  「――ユキ!」

  「・・・雪之丞・・・君!」

 火の中での修行なんてモノもやった事のある俺だが、この熱さはケタが違う・・・違い過ぎる。
 俺は魔装術を解き、床を転げ回った。服と身体にも燃え移った炎はなかなか消えない―――自分で自分に
霊撃を数発ぶち込んでやっと消火した時には、体を動かせず、パワーも殆ど放てなくなっていた・・・・。
 ラケリエルがとどめを刺そうと俺に剣を突き降ろした時、パピリオが俺と唐巣を引っ掴んで飛んだ。
 礼拝堂内の黒煙は薄らぎ始めているが未だピートや美神の姿は見えない。ラケリエルは両の羽根を広げて
浮かび上がった。剣を構えたままゆっくりと俺たちとの間合いを詰めて来る。
 俺は絶え絶えの息でパピリオに呼びかけた。

  「・・・何、でちゅか?」

  「・・リ・・・を・・・せ・・」

  「・・・?聞こえないでちゅ!」

  「パ・・リオ・・・蝶を・・出せ・・・。」

  「無駄でちゅ、余程沢山出してもあの剣じゃ・・・それよりもっとダイレクトな・・・」

  「・・・そう・・・じゃ、ねえ・・・・・」

 俺は一旦言葉を切り、息を深く吸ってから一気に説明した。


  「・・・デジャブーランドだ!・・・仲直り・・の・・高等法術・・・の・・・あの、蝶だ・・!」


  「高等法術・・・・?」

  「・・どう言う事、だね・・・?」

 唐巣と人工式神に乗ってこちらに飛んで来た長髪の男とが顔を見合わせ、次に俺を見た。

  「あれ、でちゅか・・・?」

 パピリオは思い出し、怪訝な顔をする。

  「あんなの戦闘には何の役にも・・・」

  「いい。攻撃しようなん・・て・・思うな。・・・なあ、唐巣のおっさん・・・・『祈る』事は・・・信仰だよな?」

  「なっ、何だね?急に・・・」

  「・・・・・答えろ。・・・神の名を知ら・・・なくとも・・・聖書を読まなくとも・・・・祈りがある・・なら、
  それは信仰であり・・・神の作った世界への・・・神への・・・愛だ。・・・・・・・・そうだな?」

  「・・・・確かに、そんな信仰解釈もあったが・・・君がよく知っていたね?」

  「―――ママが、言ってたのさ。・・・・・・パピリオ・・・・祈れ。何でもいい・・・あのガキどもでも・・・・
  ルシオラ、でも・・・アシュタロスでも・・・自分の未来・・・誰か・・・世界・・・・・・お前なりに祈れ。
  ・・・そしてあの蝶を・・・・。」


  「―――そうか!君は・・・!」

 唐巣が声を上げた。パピリオも何か、察した様だ。
 ラケリエルが再び接近し、斬りかかって来る。

  「―――ロボ!寄せろ!」

  「―――ロボじゃないっ!」

 俺達はロボ・・いや、人工式神の上に転がり込む。這いつくばりながらパピリオに向かって叫んだ。


  「――――行け!!」




   夜、眠りにつく前、アシュ様のことを考える時がありまちた。
   ルシオラちゃんやベスパちゃんのこと、ヨコシマのこと。
   私が道具として生まれたこと、繰り返される傷付け合いに疲れてしまうこと、
   残されて悲しむこと・・・

   今日はお前と、そしてメリーたちのこと、お前のママのことなんかも考えまちた。
   幸せ、だったのかな 幸せなのかな 幸せになれるのかな
   仲良くなったのかな 仲良くなれるのかな

   なると、いいな・・・・
   これが、『祈り』、なんでちゅか?




   ・・・・・多分な。



  「・・・・求めよ、そうすれば与えられるであろう。捜せ、そうすれば見出すであろう。門を叩け、そうすれば、
  開かれるであろう・・・すべて求める者は得、捜す者は見出し・・・」


 パピリオは手の平を顔の前に掲げた。そこから色鮮やかな蝶が次々と生まれる。ラケリエルの剣がパピリオと
蝶に振り下ろされ、あいつは白い炎に一瞬で包まれた。
 パピリオを覆うメギドフレイムは奇妙な動きで数度揺らめいた―――炎の中で“何か”が蠢いている。
 それは一斉に飛び立った・・・・炎をまとった純白の蝶の群れとなって・・・ラケリエルに飛びかかった。
 その中央には蝶に守られて無傷のパピリオ。
 引き攣ったままで表情を凍り付かせたラケリエルは、蝶と自分の放ったメギドフレイムとに押し戻された。

  「馬鹿な・・・・馬鹿な・・・・馬鹿なああああっ!?お前が・・・お前がメギドフレイムを・・・お前が・・
  我らの父の炎をぉぉぉぉっ!?」

 奴が絶叫している間にもメギドフレイムを吸収して光り輝く蝶の群れは、その数と勢いを増して行く。
 ラケリエルは無我夢中で蝶を振り落とそうとするが、炎を浴びれば浴びる程、蝶は活気付くばかりだった。
 魔力と聖なる力の融合、そんなものは俺達は何度も見て来ている。俺達からすればパピリオがメギドフレイムを
操れたって、実はそれほど驚くことじゃねえ。
 しかし・・・奴にとって、この光景はきっと・・・この光景の、受け入れ難さは・・・。

  「へっ・・・人体実験・・も、やって・・みるもんだ・・なあ?・・・いい、サンプルが・・取れたじゃ・・ねえか?」

 俺は途切れがちの声で、奴に憎まれ口を叩く。唐巣は唱和の後、顔の下で十字を切った。
 奴にとって史上最強最悪のブラックジョーク、その効果が形になるのに大した時間はかからなかった。

  「ありえない・・・ありえない・・・ありえな・・ありえないありえないありえないありえないありえない
  ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない
  あり・・え・・あああああああああっっ!!」

 奴の鎧、羽、衣、手足や顔を白い炎の筋が縦横無尽に駆け巡り―――奴の全身が一斉に燃え上がった。
ラケリエルの取り込んだメギドフレイムが完全な制御不能となったのだ。
 こいつは俺から見ても充分笑えるジョークだ。奴が目を付け、炎の餌食にするつもりだったパピリオが炎を
操って見せ、奴自身が炎に巻かれてやがるんだから。ラケリエルはもがきながら落下し、床の上でのた打ち
回る。奴から時折、勢い良く炎が噴き出して周囲に散らばった。――メギドフレイムを身体から切り離そうと
しているのだろう。
 パピリオも蝶からメギドフレイムをはずして自分の中に収める。終わると肩を落として息をついた。

  「・・・疲れたでちゅ。もともと私はシリアス長続きさせるキャラじゃないのに・・・。」

 俺達を乗せた人工式神は高度を下げる。かなり薄らぎ、霧程度になって来た煙の中、美神令子と六道冥子、
ピートがこちらに駆け寄って来るのが見えた。

  「あれ〜〜マー君は?みんな、知らない〜?令子ちゃんもね〜〜知らないって〜〜。」

  「・・だから、どこかで落として来たんじゃないのって言ってるでしょ?
  アンタ、私と合流してからだけで一体何回プッツンした?」

  「あれ・・・?先生、雪之丞、・・エミさんは?」

  「ああ!?ピート、お前の方にいたんじゃねえのか?」

  「煙が上がった時、気配が移動して途絶えましたので・・・てっきりそっちに行ったと思ったのですが・・・。」

  「ん〜そのうち〜見つかるかしら〜〜?ところで〜あの人も〜敵の、人〜〜?」

  「げっ・・・あいつが今回のラスボスなの?中途半端にスカした美形で・・・
  分かり易いやられキャラって奴ねえ・・・。」

 冥子がラケリエルを指差し、美神が言い得てはいるけどかなり「余計なお世話」な評価を下す。居合わせた
全員の視線の先、メギドフレイムを切り離したラケリエルはヨロヨロと起き上がった。

  「もうそろそろ降参した方が良いんじゃない?いくら天使様でもアンタ一人、切り札もなくなったままでこの
  メンツには勝てないわよ。・・それに今頃はもう一つのタンクで小竜姫がメギドフレイムの不正所持の状況証拠を
  きっちり調べてるだろーし・・・アンタらの悪だくみも、もう完全にお終いよ!」

  「悪だくみ・・・・悪だくみ、だと・・・?」

 ラケリエルが顔を上げ、美神を睨み返した。

  「何も分かってない・・のは・・お前たちの方だ・・・!いいか・・・神界と魔界、人間界の関係がもしこのまま
  お前たちの望み通りに変化して行ったら・・・どうなると思っているのだ!?・・・無秩序を進めて・・・そこに
  自由が生まれるのか?剣を捨てたら・・・譲り合おうとしたら、平和が生まれるのか?共存を求めるなど・・・
  進んで付け込まれ、奪われようとする様なものだ・・・その先にあるのは、魔物どもの人間支配だぞ・・・!」

 剣を杖代わりにして踏ん張り、仁王立ちになったラケリエルはこっちへ剣先を向けながら言葉を続ける。

  「正しい自由とは・・・正しい平和とは・・・正を正として掲げ、邪を邪として断じる正しい秩序の下で成り立つ
  ものだ!お前達人間にとっての幸福な未来とは、その中にしかない筈だぞ!だから・・我々は・・・」

  「我々は、・・・何だよ?」

 俺はピートの肩を借りながら一歩前に出て、ラケリエルに問い掛ける。

  「俺たち人間の為に、てめーらは、何なんだよ・・・?所構わず、毒ガスやら危ねえ火やらで埋め尽くして、
  威張り散らして、関係ねえ奴どころかてめえを信じて・・信じるしかなくてついて来た人間たちまで踏み台に
  した挙句使い捨てて・・・」

  「――多少の犠牲は止むを得ないだろう!犠牲となるのは秩序を維持するための一人一人の義務では
  ないか!それに・・秩序にそぐわぬものも厳しく報いを受けねばならない・・・悪が討たれなければ、正義は
  示せぬのだぞ・・・!」

  「その態度こそが、貴方達の思い上がりなのです。」

 中空の二ヶ所が光り、その一つから小竜姫と横島が、もう一つからヒャクメが現れた。剣を持ったまま、小竜姫は
ラケリエルの前に浮かぶ。

  「裁くべき悪もあります。だけど、見守るべき選択肢もあるのです。最高指導者がそのラインの新しい可能性を
  模索している今、古の過ちを繰り返す正義に何の根拠があるのです?
  ・・・・第十二階位天使ラケリエル、お前の不正所持しているメギドフレイムの保管状況を1号タンクにて確認
  しました。また、それが指定組織21号『真神聖霊十字軍』からの供与であるデータも控えてあります。
  神界協定1405条により違反行為現行での査問会出席を令状なしにて命じます!」

 俺達の所に来たヒャクメは床に着地するなり報告を始めた。

  「オカルトGメンの本隊は予定通り出発したのねー。途中海自の巡視船が2隻貼り付いて来たけど、命令が
  変わったらしくて引き返して行ったわ・・・。」

  「じゃあ、もーすぐこっちへ着くんだな?」

  「それが・・・、大変なのねえっ!!」

 俺の言葉にヒャクメは首を大きく横に振った。

  「声、でけーよ。・・何だよ?」

  「この船の更に数キロ先の海上で高エネルギー反応があったの・・正体不明なのね〜。
  でも・・・これだけは分かったの・・・見えた・・・メギドフレイムが、この船に積まれている以上のメギドフレイムの
  存在が見えたのねーーっ!」

  「―――何、だと!?」

  「危険かもしれないから本隊は一旦停止させたわ。まずは、その正体を・・・」

 その時、ラケリエルが両の羽根を広げながら勢い良く飛び立った。奴の後を追って小竜姫も上昇する。

  「待ちなさい!逃げおおせると、お思いですかっ!」

  「任務が挫け、我が身が散ろうと・・・同志達の妨げにはさせません・・・。かくなる上は・・・何一つ・・・残しません。
  ―――来たれ!!我が同胞たちよ!神聖なる、我らが父の御使い達よ!勇敢なる軍勢よ!!」

 ラケリエルが空を見上げて声を振り絞った時、ヒャクメの全身がビクンと震えた。

  「エネルギー反応が動いた・・・見え、るわ・・・天使、なのね・・・ラケリエル、それ以上のクラスの天使が数十名
  ・・・メギドフレイムを携えてるのねーー!真神聖霊十字軍の本隊よ!!
  おそらく船・・いや、海域ごと全て焼き尽くすつもりだわ!!」

 ヒャクメの言葉でその場にいた全員が凍りついた。・・・視界の端に貧血で倒れる六道冥子が映った。



 + + + + + + +



 俺達はラケリエルと小竜姫の後を追い、飛行能力や式神で上昇した。タンク天井に出来た破れ目から
そのまま甲板ヘと――。交番の一角、第1タンク付近でタマモが一人立ち尽くしているのを見つけた。
俺たちが近くに降り立ってもタマモは呆然と船の前方に広がる光景を見上げていた。

  「な・・・何よ、あれ・・・?」

 船の前方には黒い海原と水平線と夜空。その中央で、空が割れていた。巨大な舞台照明の様にその
一角だけ光が上から差し、光の中を多くの、翼を持った天使たちがパラパラと舞い、降下している。昔の
宗教画か何かでああいう絵があったな―――。ごま粒程度の大きさにしか見えないが、あの一つ一つが
ラケリエルより強い敵で、こちらに向かっている――しまった、どう考えても勝ち目・・・いや、逃げ道すらねえ。

  「ふん、やっぱりな・・・・。」

 俺の隣に降り立った横島が呟いた。・・・気のせいか、その口調に動揺の欠片も見当たらねえ様に思えた。
あの美神でさえ、青ざめていたって言うのに・・・。

  「横島・・・アンタも何よ?その余裕は?」

 タマモが見咎めると、横島は今度は低く、笑い始めやがった・・・さすがに俺も一言、言いたくなる。

  「おい・・・今までの人生のどんな楽しい思い出掘り起こしてんだか知らねえけど、
  現実逃避してる場合じゃ・・・。」

  「ふふふふふ・・・くっくっくっ・・・情報を制する俺は、世界を制す!」

  「「はあ?」」

  「―――通信鬼!」  ぼんっっ!

 横島は俺らの怪訝な視線にもお構いなく手の上に通信鬼を呼び出すと、その通話部分に話し始めた。

  「俺だよ。・・・調子はどうだ?そっか、今どの辺にいる?・・・俺の所に出られるか?ああ、―――出番だ。
  遊んでる場合じゃないぞ。」

 ――何だ?・・・いや、どこで何をしている誰と、話しているんだ?

  「まあ、これも遊びだよな、アンタにとっては。・・・まあ、思う存分、やれ・・・。」

  「おい、誰と何の話を―――。」

  「・・・何?座標修正がどうしたって?何かエラい揺れてるな・・・え?・・・・・・・・バカヤロオオオオッ!!
  4かける5は20だ!・・12、じゃねえ!!」

 横島がそう怒鳴ると同時に頭上の夜空が大きく撓んだ。海面は激しく波立ち、船も大きく揺れる。

  「「「「「うわあああああああっ!!」」」」」

 着地しようとしていた他の連中がバランスを崩したまま甲板上に放り出される。パワーダウンしている俺もまた、
人工式神から落ち、そこらを転げ回った。捻じ曲がった空間から何かが顔を出す――――真っ黒い、巨大な、
羽根を広げた甲虫。・・・ジェット噴射もしてたけどな・・・。

   ゴオオオオオオオオッーーー!!

 パピリオが顔を上げ、頭上十数メートルの所に浮かぶ巨大なその飛行物体を凝視しながら叫んだ。


  「―――――逆天号!!」

  「――何だと!?」

 逆天号・・・その名前だけなら知っている。
 ・・・かつてアシュタロス軍が108ヶ所の霊的拠点を撃破するのに使った戦略兵鬼移動要塞。


  「どうなってんだよ・・・?」

  「だから、“保険”さ・・・。」

 俺は港で横島がマリアに渡した物体・・・黒くてもぞもぞ動く物の事をやっと思い出していた。



――――――――――――――――――
 Bodyguard & Butterfly !!
 (続く)
――――――――――――――――――
いよいよ、大詰め。てか眠いぞ。またコメントラッシュやったり短編書こうとか思ってたり・・・
または、このまま31話も行っちゃうかも・・気の向くままですねえ。

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