ザ・グレート・展開予測ショー

夢と現実の間


投稿者名:cymbal
投稿日時:(04/ 4/ 3)

GSになる為に・・・・・10年も頑張って来ました。

でも・・・それもおしまいです。




だって・・・・・・・・・霊がいなくなっちゃったんですもの。




そんな事ってあるでしょうか。私は毎日毎日特訓を重ねていたのに。
小さい頃から将来の夢と見定めてここまで生きてきたのに。

どうしたって、退治する対象がいなくなったのではどうしようもありません(泣)。




一体世の中に何が起きたのでしょうか。まあ・・・・・私には良くわかりませんが。




という訳で最近はあちこち面接を受けて回っています。
何でも良いから職につかなければならないのです。

・・・なにせ、この東京という街は遊んでいるものにはとても厳しいんです。
生活する為に何かをしなければ生きていけません。(本当はどこでも一緒ですけど。)


今はあるアルバイトで食いつないでいますが・・・やっぱり親を安心させたいし。
とにかく・・・仕事が決まるまでは連絡は取らないつもりです。


(でも・・・・、そんなに簡単にはいかないのが世の中。)


勉強なんてこれっぽっちも出来ないし・・・技能も無い。(霊退治なんて役にも立たない。)

だいたい元々口下手だし・・・・更にどーしたって方言が直らない・・・。今かなり無理してます。

・・・・正直いつまでもお水系なんて出来ないですから(悲)。だれか私に仕事くりゃーせんか!









・・・・・てな訳で今公園にいます。
あんな口調は疲れるのでここまで。ここからが素の私です。

「あー、もう嫌!大体えれーんだて。普通の就職なんてあたしに出来るわけにゃーて。」

思わず酷い訛りも出る。目の前には仕事にあぶれたやからが一杯。あたしもその一人だ。



・・・霊がいなくなった事でたくさんのGSが失業してしまった。
だって役立たずだもの。しょうがないよね。これが逆に正常な世界なんだから。


「やっぱ、田舎帰ろかなー。でも恥ずかしいんだよね・・。夢破れた少女って感じで。」


あの十年は何だったのか。怒りが込み上げてくるけどぶつける場所が無い。


「ああ・・・霊は何処に行ってしまったの!?あたしの青春を返せ!!!」



ポカポカ。日差しが暖かい。春真っ盛り。桜舞い散る季節。



「・・・・・・空しい。誰も反応してくりゃーせんがね。」



「君もGSなのかい?」


後ろから声がした。・・・・・この聞き方はひょっと元GSのお方ですか?

・・・・とりあえず後ろを振り向いて見る事にする。


「あ、どうも。ゴメンね急に声かけちゃって。」


・・・・冴えないおっさ・・じいさんて感じだ。頭にオールバックも中途半端にひげ生やしてる。


(んっ?どっかで見たことあるような・・・・・・。どこだっけ?)


昔見たことあるような気がする。ひょっとして名のある人かな・・・。


「お恥ずかしい話なんだが・・・、私は元GSなんだよ。今は無職だけどね。」


年齢は60手前・・・くらいかな。大分白髪が混じってるし。


「そうなんですか。私は正式には違うんですけど・・・まあ「たまご」でした。」

「そうか・・・。でもまだ若いからやり直せるよなあ。私はもう・・結構年だからね。」


・・・確かにこの人比べればまだ気は楽かも知れないが・・ちょっと腹立つ。


「でも苦労してもう少しでなれるところだったんですよ!自信あったのに・・・。」

思わず声を荒げてしまう。私の10年を馬鹿にされた気がしたのだ。


「ああ、ごめんごめん。気悪くしたかな。でも・・・・・苦労か・・・死ぬほどしてきたよ私も。」


遠い目で空を見つめている。・・・なんか悲しい目つき。色々あったのかなこの人。
まあ当然私より長く生きてる訳だし・・・。

「いえ、すいませんでした。私もついかっとなってしまって。」

「いや、謝る事はないよ。私もちょっと説教臭かったから。」


にこやかな笑顔を見せる。なんかちょっと・・・ドキッっとした。


(やだなあ・・・私は別に年寄り好みじゃないのに・・・。)


なんか少年みたいな感じを受けたのだ。・・・・じいさんに。


「・・・でも良かったんだよこういう世界になって・・。君らにはちょっと不幸かも知れんが・・。」

「・・・・・??どういう意味です?」


妙に実感がこもった言い方をする。霊のいない世界が良い?なんのこっちゃ。


「それは・・・・いててて!」

「たくっ!!あんたはいくつになってもそのクセは直んないのね!!」


後ろから女性の手が伸びてきた。じいさんの耳を引っ張っている。


「れ、令子!別に私はそんなことをしていた訳じゃあ・・・。」

「言い訳は後で聞くわ!!とにかく早くこっちにいらっしゃい!」


会話から察するにこの人の奥さんだろうか・・・なんかちょっと若く見えるけど。でも綺麗。


「あいたた・・わかったよ・・それじゃあね、えーと・・名前なんだっけ。」

「えっ・・・えっと・・蛍子です。横町 蛍子。」


何となく名前を答えてしまった。初対面では警戒する方だったのだが・・。


「「けいこ」か。ふーん、まあ気休めだけど頑張って仕事見つけなよ。何いくらでも道はあるさ。」

「その前にあんたが就職しなさい!!」


「令子」さんがこぶしを振り下ろす。


「あたっ・・でももう十分お金あるじゃないか令子・・・。もう仕事探しなんてしなくても・・・。」

「駄目よ!定年までは働いてもらうわ!まだ遊ぶのはあんたには早い!!」


目の前で繰り広げられている光景に私は思わず吹き出していた。
なんかさっきまで悩んでいたのが馬鹿らしく見えてきたのだ。


(この人よりは多分私幸せかも・・・・。)


まあ・・・この人もある意味幸せそうだけどさ。


向こう側へ引っ張られていくおじい・・・いやおじさん。
まるで漫画の一場面みたいだ。でもぴったりとはまっている。正直お似合いだ。




(・・・なんかお母さんとお父さんの顔が見たくなっちゃった。)




田舎の両親が頭の中に思い浮かぶ。こっち来てから連絡も取ってないから心配してるだろうな。


(・・・何、私はまだ20代!回り道なんかじゃにゃーて!いい経験だったと思えば・・だら?)


空は綺麗に晴れ渡っていた。まるで今の私の心のように真っ青だ。
・・・・とりあえず私は履歴書を破り捨てると・・・・駅へと走り出した。

久しぶりに両親の顔を見る為に・・・・・・。

おしまい。

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