ザ・グレート・展開予測ショー

初雪の日


投稿者名:浪速のペガサス
投稿日時:(04/ 4/ 2)



しんしん、しんしん。
空から降ってくる、雪の妖精達。
大阪に舞い降りた、今年初の雪。

「遅刻や遅刻〜!」
「何で今日に限って夏子はとっとと行くかなぁ!?」

一人で走ってる男の子。
遅刻寸前の、額に赤いバンダナ巻いた男の子。
今日はいない、いつも一緒の女の子。

一人ぼっちで寂しそう。
雪の中を走る男の子。

「お陰で今日はろくに飯も食えへんかったやないか!!」
「くっそ〜!母さんも親父も起こしてくれへんで。」

口から白い息。
寒そうに、雪に中を、一生懸命走る男の子。


「ちっくしょ〜!このままやともうアカン!!夏子のアホ!!」












―――――初雪の日―――――













遅刻しないですんだ男の子。
朝のHRも終わって一休み。
アイツに何か言ってやろう。
彼女のクラスに向かう男の子。


「やっほ〜。なぁ、夏子、知らへんか?」

「さぁ。移動教室やからもう行ったんやない?」


男の子、一人寂しく立ち尽くす。

そっか、あいつはいないのか
休み時間にまたくればいいわ

寂しい教室、後にする。













時間だけがただ過ぎて。
何時までたっても逢えない女の子。
やることなすこと空回り。
アイツはどこで何をしてるやら。
逢えない女の子、逢えない男の子。

「なんだかなぁ・・・・・・。」

男の子、一人寂しく呟いた。






「・・・・・・!〜〜。−−−!!?」

ぼけっとしてる男の子。
もうすぐ学校もお終い。
あまりに不思議なすれ違い。
逢いたいのに逢えない、どうして?
男の子、なんだかとても悲しくて。
わけもわからず外を見る。


普段なんでもないことも、なんだか切なくしてくれて…


外を見ながら呟いた。

「雪って、好きだけど、嫌いだ。」










学校が終わって、帰る準備の男の子。
いまだ続く雪のワルツ。
男の子、ジャンバーのポケットに手を入れて、手袋取ろうとする。

「ないっ!?」

哀れ男の子、ポケットの中身を忘れてた。
遅刻の惨劇再び。

本当に、ろくなことがない一日だ

仕方がないから男の子、ポケットの手を入れて。
手を凍えさせつつ家路へと。


一人は…寂しいな


温めて、ほしいな







「お〜い!!」

十分、それとも二十分くらい歩いたかな?
男の子、気づくと後ろから肩を叩かれた。ポン。

「ア…、夏子……。」

「何暗くなってんのや?」

相変わらずコイツは底抜けに明るいなぁ
きっと俺が何考えてたのか分からないだろうなぁ

男の子は笑う。
凄く嬉しくて、ちょっぴり悲しくて。







暫らく無言のままの二人。
並んで歩くお二人さん。
男の子、ふと気づく。
女の子が立ち止まってじっと見てる。

「な、なんだよ?」

「アンタ、ずっとポケットに手を入れてるけど何してるん?」

男の子は、ポケットに手を入れない。
些細な些細なくせ。
長い間いる奴でも知ってるのはごく僅かなくせ。
女の子には、やっぱりくせが見透かれた。

「見せなさい!!」

男の子それを拒んで手を出さない。
無理やりひっペがす女の子。
出てきたのは、真っ赤な真っ赤な両手。
男の子、はにかんだみたいに笑う。
寒そうに、苦々しく。
よく見ると、女の子何かしてる。
手をごそごそして何かしてる。
女の子、手袋差しだし呟いた。

「貸す…。」

「は!?」

「いいからつけなさいこの馬鹿!手が冷たいやない!!」

顔を真っ赤にしながら手袋を突き出す女の子。
ソレを受け取る男の子。
男の子、女の子より長くて大きい手。
当然入るわけがない。

「あの〜・・・、お気持ち嬉しいのですが入らないです。」

「そういうことは言うもんやない!!」

女の子、彼の頭をパシッと叩く。
いてて、頭がいたそう男の子。
でも手は?





アレ?
手が暖かい
なんだろう?




気づくと、女の子が手を握ってた。
ぎゅっと、優しく、温かく。

「………馬鹿………」

優しく、ただ優しく。
そのまま女の子、その手を顔にくっつける。

「なぁ・・・、キスしていい?」

切なくて寂しくて。
虚しくて嬉しくて。
色々思った男の子。
思わず出ちゃった本音の一言。


「……いいよ……、








アンタが撲殺死体の少年Aになる覚悟があれば♪」

「自分にはそんな度胸はありません!!」

やっぱりこうなるか…。

まぁ、しょうがないか
普段が普段だから

顔から手を離し再び歩く男の子。
何故だろう?
手が、まだ温かい。
振り向くと、まだ手を握ってくれてる女の子。

「だから、死体になりたくないなら、ずっとこうしてること…。
分かった?」

「……うん。」







雪は好きだけど嫌いな男の子。
切なくて寂しくて、そして悲しくて。
だけど温かくて、寒くても温めてくれる人もいて。

そんなこと考えて歩く男の子
ううん、男の子ともう一人。
並んで歩く男の子と女の子。





2人で







手を繋いで









互いの手を温めながら









2人は冬色の空を歩いていました







〜Fin〜

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