ザ・グレート・展開予測ショー

離れていても…


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(04/ 4/ 2)


「ああ、おキヌちゃん?
 俺や。銀一!仕事も終わったし週末にはそっちに帰れると思う。」

「………うん、待ってる。
 銀一さんのこと、ずっとずっと待ってるから。」


ここは冬の新大阪駅1番ホーム。
新幹線のホームで東京行きの新幹線を待ちながら
おキヌちゃんに携帯電話で東京に帰ることを報告する銀一クン。

……その二人の表情は温かくて。


「このままずっと、話してたいなぁ……」

「うん。そうだね………」



―――――どんなに離れていても、心はつながっている―――――










「ハイ、カァ―――――ット!!………OK!!」

「お疲れさまで〜す!!」

監督らしい人が叫ぶと同時に緊張した雰囲気が一気に緩む。
そう、お気付きの読者さんもいると思うがこれは携帯電話のCMの撮影である(笑)

なんでおキヌちゃんが銀ちゃんとCMで共演しているかというと
話は数週間前にさかのぼるのだが………


☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  

「なんか今日、銀ちゃんが来るらしいすっよ。」



めきゃっ



「なんでそういうことを早く言わないのよっ!?
 近畿クンが来るならそれなりの準備ってモンが必要でしょうがっ!!!!」

「だって……ギリギリまで黙っていてくれって、銀ちゃんが……」

美神さんの鉄拳に沈む横島クン。………哀れである。
と、そのとき人工幽霊壱号が美神さんに声をかける。

「美神オーナー、事務所の前に車が止まりました。
 どうやらこの前にいらっしゃった近畿剛一さまに間違いないようです。」




「あっ!こんにちは、美神さん。
 さっそくなんですがお仕事のお話しなんですが………!!」

「悪霊の大きさは!?形は!?
 てゆーか、報酬はぁぁぁぁぁぁっ!!??」

仕事の話となった瞬間に目を輝かせて近畿クンに詰め寄る美神さん。
既に眼が$マークになっている。

「お、落ち着いてください!美神さん!!
 仕事の話やゆーたけど、除霊の話や無いんですっ!!!!」

「………へ?」

銀ちゃんの言葉に目をぱちくりとさせる美神さん。
横島クンやおキヌちゃんも固まったままである。
除霊でなければなんの仕事だというのであろう?

「あ、あのですね……
 めっちゃ言いにくいことなんですけどおキヌちゃんを貸していただけないかなと思いまして……」

「おおおおお…おキヌちゃんをどうするつもりやぁ!?
 いくら銀ちゃんでも許さへんでぇ!!」

興奮してすっかり大阪弁に戻ってしまった横島クン。
銀ちゃんの胸ぐらを掴んで目と鼻と耳からもー、
いろいろな液体を吹きだしながら大声で叫んでる。

「よ、横っち!落ち着け!!仕事の話やってゆーたやろ?
 実はこの前仕事を見学させてもらった時のことを
 今度のスポンサーに話したら是非とも今度のCMにおキヌちゃんを使いたいって……」


フリーズ。


1秒経過

2秒経過

3秒経過


再起動。



「「「えぇ――――――――――っ!!??」」」



「む、無理ですよ!!私、演技なんて絶対できっこないです!!」

手を顔の前でぶんぶんとおキヌちゃん。

「やってみたらいいんじゃない?
 何事も経験だと思うし近畿剛一と共演なんてめったにない機会よ?」

とは美神さん。当然ながら
おキヌちゃんが有名になれば事務所のCMになるという打算も働いているわけだが。

「おキヌちゃんが銀ちゃんと共演するのは見たいけど有名になっちゃうのは複雑だなぁ……
 いややぁ―――――っ!!おキヌちゃんは俺だけのモンなんやぁ!!!!」

まあ、こいつの意見はほっといて。



〜翌日〜


「おキヌちゃんが芸能界デビューするって!?!?」

「近畿剛一と共演だってっ!?」

翌日の六道女学園ではどこから情報がもれたのかちょっとした騒ぎになっていた。
こういうウワサは口に戸を立てられないものだし
嘘をつくのが激しく下手なおキヌちゃんのこと、
あっという間にウワサは学校中に広まった。
なんかもー、ウワサには尾ひれや背びれが付きまくって

「キスシーンがあるんだってーっ!!」

とか

「これを機に踊るゴーストスイーパー、THE MOVIE2にも出演するかもしれないってっ!!」

と際限なくウワサは大きくなりながら広まっていった。
当然ながら横島クンのいる高校にもウワサは伝わってくるわけで……







「おい、横島っ!!
 おキヌちゃんが近畿剛一とハリウッドデビューして婚約宣言したって本当かよ!?」

そのウワサは原形をとどめていなかった。

「………………はぁ?
 ああ、もうウワサが広まってんのかよ。ちげーよ。
 ただ単に銀ちゃ…近畿剛一とCMに出るだけだ。
 この前、美神さんのところにGSの見学に来たときの話をしたら
 是非ともおキヌちゃんをCMに使いたいってスポンサーが言いだしたんだってよ。」

めんどくさそうな表情で事の経緯を説明する横島クン。
もちろん銀ちゃんと幼なじみであるということはヒミツだ。


「…………お前、本気でその言葉信じてんのか?」

「………えっ?」

級友の突然の言葉にドキリとなる横島クン。
その級友の顔は少し怒ってるように見える。

「お前………お人好しなのもいい加減にしろよ。
 それは明らかに近畿剛一がおキヌちゃんに好意持ってるってことじゃねえか。
 この仕事が成功したら
 またCM撮影の仕事だっておキヌちゃんに入ってくるようになるだろ。
そうすりゃお前と一緒に仕事する回数は減って、
 近畿剛一と仕事する回数が増えるって寸法だ。」

「銀ちゃ…近畿剛一がそんなことするわけねーだろ。
 考えすぎだって、考えすぎ。」

冷静なふりをして答えてみたけど、なんだか心の中に湧いた疑問符が消えない。
なんて言ったって銀ちゃんは国民的アイドルスターだ。
努力も人一倍するし人当たりだっていい。
それに銀ちゃんが良いヤツだってことは他の誰よりも俺がよく知ってる。

そう、顔がいいとかアイドルスターってことよりも…………良いヤツなんだよ。
一度約束したことは死んでも守るし、友達のことは絶対に裏切らない。
男の俺から見ても非の打ち所がないんだ。女性から見りゃあ、なおさらだろう。



『だからって、そんなことあるわけが……………っ!!!!!』

心の中で叫びかけた言葉を途中で飲み込む。

銀ちゃんのことは信じてるけど
仮にそれが本当だとしても銀ちゃんを責める事なんてできやしない。
おキヌちゃんのことが好きだから一緒に仕事がしたいっていうのは自然な気持ちだし、
銀ちゃんは遊びで女性と付き合うようなヤツじゃない。

それにおキヌちゃんだって
いつまでも煮え切らない俺なんかより銀ちゃんと付き合った方が………

だってだって…銀ちゃんは日本を代表するスターで本気で役者目指して夢追っててそのために一生懸命努力してて面白いし優しいしカッコいいし、それに比べて俺は普通の高校生で将来のことなんて何も考えたことないし未だにおキヌちゃんか美神さんかどちらを好きなのか自分でも分かってないようなダメダメ男でうああああぁぁぁぁぁぁぁ………


結局俺はおキヌちゃんのこと、どう思ってるんだろう?

―――――雪降る夜空の中白い息を吐き出しながら自分が吐いた息を見上げる横島クンと
         携帯電話の前で落ち着かないおキヌちゃん。―――――

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★ 

そんなこんなで煮え切らないままウジウジしてる間に
おキヌちゃんはCMの撮影にテレビ局に行ってしまったのだが………

撮影には数日かかるらしく、その間は事務所に帰ってくることができない。
たった数日逢えないだけなのに胸を冷たい氷柱で貫かれたような気持ちになる。

おキヌちゃんは携帯電話を持ってるから連絡を取ろうと思えば簡単に取れるんだけど
電話番号が書かれた紙きれは目の前にあるんだけど
電話したくて、おキヌちゃんの声を聞きたいんだけど

だけど、だけど……
こんな気持ちのままおキヌちゃんと話したら
言っちゃいけない言葉を喋ってしまいそうで………


『俺のことはもう……いいからさ、銀ちゃんと付き合っちゃいなよ。』


……………いやだっ!!
そんなことを言いたいんじゃないんだっ!!!!

何度も握りしめた所為でボロボロの紙きれを汗ばんだ手の中でじっと見つめる。


銀ちゃんとは友達だからおキヌちゃんを任せても平気?
あの二人だったら大丈夫?

そう考えただけで背中から嫌な汗が吹きだしてくる。
胸が苦しい。どうしたらいいのか自分でも分からない。


……ちがう。ちがうんだ、そんなわけないじゃないか!
そんなのカッコ悪いからって自分に付いてた嘘に決まってるだろ!!
自分の中で結論出して、
おキヌちゃんにフラれるのが怖くて仕方がないから嘘ついてただけなんだっ!!


だって、だって…俺、おキヌちゃんのこと大好きだから!!






深夜12時近くの近所の公園。
胸が痛くなるほど冷たい空気を力一杯吸い込んで必死で駈けていく。
目指しているのは暗闇の中に街灯でボンヤリと照らされている電話ボックス。

ホントはこんな時間じゃなくて明日に電話すればいいんだろうけど、そのたった数時間が待ちきれないんだ。
だって気が付いてしまったこの気持ちを今すぐにでも叫びたいから。

電話ボックスのドアを開けて、手を突っ込んだジーパンのポケットの中に小銭を探す。
あるだけの10円玉を電話の中にたたき込んで
何度も電話をかけようか迷ってる間にとっくに覚えてしまった電話番号をプッシュする。


こんな夜中に電話しておキヌちゃんが出てくれなかったらどうしよう……
ひょっとしたらもう寝てるんじゃないか……?





ガチャ


………………でたっ!!

おキヌちゃんが電話に出てくれたそのことが嬉しい。
自然に口元が緩んでいく。いったい、なにから話そうか?


「もしもし、おキヌちゃん?
 あのさ、俺だけど……………………………」

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