ザ・グレート・展開予測ショー

続々々々・GS信長 極楽天下布武!!(4‐3)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 4/ 1)

「来たわね,景勝……」
「義姉様……」
植椙屋敷の奥座敷で,義理の姉妹は再会した。
「生きてたのね,義姉様」
「お陰様でね」
それぞれが皮肉な笑みを浮かべながら,義姉妹は言葉を交わした。
姉は座ったままで,妹は立ち尽くしたままで。
「あれだけ徹底的に陥れたのに,未だ生きてたとは。流石だわ,義姉様。ホント,そう言う所は尊敬しちゃう」
「有り難う」
絵面だけ見るなら,美人姉妹の麗しい会話と言う所(何だそりゃ)だが,実際は,十数年の長きに渡って足を引っ張り合ってきた仇敵同士の,棘に満ちた会話だ。
女のジェラシーは恐い。
勿論,この場合はそんな単純なものではないが。
「景勝……」
「なあに?義姉様」
「景勝に完全に敗北を喫してからの生活は,本当に地獄だったわ……。思い出したくもない位よ」
「それはそうよ,義姉様。二重三重に罠を張って陥れたんだもの。でもそれは,お互い様だった筈よ?それで,私の方が少しだけ上手だったって事でしょう」
「そうね……」
そう応えると,景虎は目を伏せ,座布団から立ち上がった。
「でも,だからと言って,貴方が憎くない訳じゃないのよ」
「うん,それは分かってた。けど,こんな反則技で反撃してくるなんて,思いもしなかったわ」
「反則技?何の事かしら」
「惚けないでよ。義父上の落とし種?馬鹿臭い……。まあ,そんな手を考えつくなんて,流石は義姉様って所だけどね」
「あら,心外ね。あの子は,本当に義父様のお子よ?少なくとも,私達の中では,ね。それで充分でしょ」
「あはは……」
最早,話し合いなどと言う段階ではない。景勝は,苦笑を以て問いに返した。
「もう,遠回しな争いは止めましょうか」
景虎が,不意に笑みを消して景勝を見据える。
「そうね」
景勝も,肩の力を抜く。
「戦って,勝った方が植椙に相応しい……。シンプルで良いでしょ?」
「うん。私も,化かし合いより,そっちの方が好きだわ」
ゴッ!
二人の霊力が,高まっていく。
「最初から……,こうしていれば良かったわね……」
景虎が,少し淋しげに呟く。
「そうだね……。けど,そんなの無理な話だよ」
「ふ……」
そう,これは二人だけの問題ではない。
「全くもって,その通りね……」
「嫌な育ち方しちゃったよね,私達」
「ええ……,本当に……」
しかし,結果を決めるのは,結局彼女達自身以外にはないのだ。



「吉乃」
「なあに〜〜〜〜?加江ちゃん〜〜〜〜」
畠山義晴の血に濡れる,中庭に面した廊下。
対峙するは,豊臣秀吉(だから,藤吉郎だっつーの!),雨姫蛇秀家と,六道吉乃に鬼道加江。
「豊臣君は,私にやらせて。貴方が言いだした事なんだから,駄目とは言わないわよね?」
「え〜〜〜〜?そうだっけ〜〜〜〜?」
「如何して私が此処に居ると思うの!?」
「え〜〜〜〜ん。加江ちゃん,怒っちゃ嫌〜〜〜〜」
「はいはい!兎に角,良い?」
「分かったわ〜〜〜〜。それじゃあ〜〜〜〜,私はあの猫又の男の子を相手すれば良いのね〜〜〜?」
「ええ」
一通り会話を交わして,藤吉郎達の方を見る二人。
「と言う訳で〜〜〜〜」
「行くわよッ!」
「何が,と言う訳なの!?」
「と言う訳だろ?覚悟決めろよ,秀家」
「って,僕の相手,六道家の跡取りとかなんでしょ!?勝てる訳ないじゃん!せめて代わってよぉ〜」
「っても,ご指名だしなあ。まあ,俺等がやるべきは足止めだけだし,殺される事は無いと思うから……」
「そんなぁ〜!にーちゃあ〜ん……」
まあ,理屈ではその通りなのだが。
「日吉……変わったな,お前」
加江の式神の石川五右衛門が,しみじみと呟く。彼は,人間だった生前,藤吉郎(日吉)とは知り合いだった。
「まあ……ね。俺も,何時迄も草履取りではいられないし」
「へっ……」
五右衛門は,微笑ましい様な残念な様な,複雑な笑みを浮かべた。
「じゃあ……,行きますか,加江様」
「ええ……」
バシュウ!
五右衛門が,抜き放たれた霊剣『之綱』に宿る。
「鬼道流武装式術“幻夢閃流”……!」
オーバーソ○ルとか言わない。あの漫画,もう,良く分からなくなってるし(関係無い)。
バシュウ!
霊波刀を一旦消すと,藤吉郎も文珠を生成し,それに『剣』の字を込めた。
「いざ……」
「勝負!」


雨姫蛇秀家は考えていた。
「僕には十二匹もの式神を,同時に相手する術は無い。とすれば,式神に命令が行く前に,術者自身を倒すしかない!」
幸い,スピードには自信が有る。
「おぉあっ!」
ダン!
そう認識するや否や,秀家は吉乃に飛び掛かった。
しかし,秀家は一つ,重要な事を分かっていなかった。
六道家の当主が,何故恐れられるのか。それは,決して技術と権力と霊力の高さからだけでは無い事を……。
ヒュッ……!
「!」
秀家の繰り出した爪の一撃は,しかし紙一重でかわされた。
「ちっ,もう一回……」
体勢を立て直そうとして,そのまま秀家は固まった。
「……」
吉乃から,突然凄まじい霊力が迸ってきたのだ。
「くっ……!」
これ六道の実力か……!
思わず,及び腰になる秀家。
「……」
吉乃の頬には,先程の一撃が掠ったのか,一筋の傷が出来ていた。
「……血……」
「え?」
「う……う……っ」
吉乃は,思い出した様に涙目になった。
「ちょっ……,その位で泣く事……」
思わず慰めてしまう秀家。しかし,彼は甘かった。

「うわあ〜んっ!!!」

ドゴォーン!
「ぎゃあぁあぁ!?」

六道家に伝わる禁断の奥義“ぷっつん”である。……敢えて多くは語るまい。
兎に角,その一撃で,辺りは灰燼と化したのだった。



モニター室前。
此処では,村上義清と猛吏輝元が対峙していた。
「貴様……,何者だ?」
義清が,震える声で輝元に問う。少なくとも相手が相当な霊力の持ち主であろう事は分かるが,果たして何者なのかが分からなければ,戦略も戦術も立てようがない。抑も,戦う理由が有るのか如何か。
「猛吏輝元……」
「な,猛吏……!?」
猛吏家と言えば,陰陽道の大家として知られる名門である。その当主が景勝に荷担しているとなれば,ただ事ではない。
「し,しかし,猛吏家の当主は女性と聞いたが……」
「ウチは,おなごどす!」
失礼至極な義清の言葉に,思わずお国言葉が出てしまった輝元。まあ実際,五人に四人は男と間違える容姿をしているのだが。
「そ,そうなのか……。しかし……,と言う事は,猛吏は景勝様の方に付くと……」
「ふ……」
「?」
「皆が皆,お前の様に下司な考えばかりで動いている訳ではないぞ」
「何……だと?」
予想外の罵倒を貰い,戦きながらも憤る義清。
「私とて,友の為に何かしてやりたいと思う事も有ると言う事さ。……そう言うものだろう?」
「馬鹿な……」
「まあ,目の眩んでいる今のお前に言っても,馬の耳に何とやらかも知れんがな」
「お,己,愚弄するか!?」
「そう取りたいのなら,そう取っても構わん。何れにせよ,私とお前の正義が対立する以上,戦うしかなかろう」
「……良いだろう」
バシュウ!
義清が,霊波刀を作る。
「猛吏だか植椙だか知らないが,我が剣の前に沈むが良いわ!」
血走った目で,義清が霊波刀を構える。
「語るに落ちたな……。まあ,私には関係無いが……」
ヒラ……
対して輝元は,庭の木から舞い落ちてきた木の葉を,一枚扇子に取った。
「景勝への義理立ても有る……。兎に角,お前を倒すのが私の役目らしいのでな?」
「ほざけぇっ!」
義清が仕掛けた。
「ふう……,自分にとって重要な場面こそ,落ち着かねばな。必要以上にハイになれば,失敗する迄だぞ?」
「おおおぉっ!」
「聞く耳持たずか……,まあ,構まんがな」
こんな台詞を吐く余裕が有るとは,一体どんだけ離れてたんだよとか言わない様に。
「――五行相生,木生火」
ボッ!
輝元の開く扇子の上の木の葉が突如燃え始め,やがてそれは義清の方へ向かい,彼を飲み込んだ。
「う,おおっ!?」
「五行相生,火生土」
ドシャア!
木の葉より発した炎は土塊へと代わり,義清の動きを封じ,降り注いだ。
「ぐっ……!」
一瞬の内に,義清は土にまみれ床に伏していた。
「糞……」
「……さあ,これで分かったろう?実力の差という奴が」
平伏す義清を見下ろし,輝元が問う。
「……」
「己が手に余る敵から逃ぐるは,臆病ではない。考え無しの蛮勇が,常に正しい選択とは限らぬぞ?」
「く……!」
自分を見下ろしたまま言葉を紡ぐ輝元を,義清は最後の勇気を振り絞って睨み返す。
だが輝元は,そんな彼の心中を見透かした様に笑んだ。
「……お前と私の実力差では,争うとのが無謀というもの。此処等で敗北としても,お前を責める者はあるまい」
「……」
「お前にも色々と柵は有ろうが,後は結局,お前の心持ち一つ……」
「……っ」
「さて,如何する?」
勿論,力尽くで義清を屈服させる事も,輝元には容易い。
……と言うか,結局これも力尽くではあるのだが。しかし,怪我をさせるなり命を奪うなりで相手の動きを止めるよりは,マシな方法では無かろうか。少なくとも,藤吉郎ならばそう言う。いや,彼ならもっと簡単且つスマートな(見た目は兎も角)手法を思いつき,実行するだろうが。
最近の輝元は,藤吉郎のやり方を真似ようと思っている。
無論の事,彼女が藤吉郎に惚れている為なのではあるが,純粋に藤吉郎のやり方に憧憬を覚えた為でもある。或いは,それも惚れた理由の一つなのかも知れないが。
「……」
「……」
沈黙が,空間を支配する。
抑も,戦いに及び腰だったこの男だ。少しばかり押せば,楽に転ぶだろう。
「……」
義清が目を逸らした。
よし,もう一押しだ。
「敢えて刃向かうと言うのなら,首を落とす迄だが……」
「……!」
輝元の言葉に,義清の身体がビクッと反応した。
その脳裏を,先程監視カメラのモニターで見た,畠山義晴の死に様が掠める。
「……降参だ……」
顔を床に伏せ,義清は力無く宣言した。
「ああ……。それが賢明だ」
そう言って,輝元は薄く笑った。



その頃,中庭は六道吉乃の“ぷっつん”により,空襲でも喰らったかの様な状態となっていた。
「だ,大丈夫っすか,加江様……」
「ええ,何とか……」
“ぷっつん”の衝撃に吹っ飛ばされた藤吉郎と加江が,折り重なったまま互いの無事を確認する。
「て……,あ……」
「……っ」
其処で初めて,自分達が超の付く程の接近戦を演じている事に気付く。
「あ,あわわわわ!すいませんっ!」
慌てて,藤吉郎が飛び退く。
「い,いえ,良いわよ,仕方無いって。て言うか,寧ろ歓迎……」
「え?」
どさくさに紛れて,かなりストレートに告ろうとする加江。
「て,そんな場合かよ」
其処で,ジト目になった五右衛門の突っ込みが入った。
「なっ,何よ!如何せ私は,もうすぐ四捨五入したら三十歳よ!高校生に気が有ったら,ショタコンだって言うの!?」
「か,加江様……?」
突然切れ始めた加江に,付いていけない藤吉郎。
「いや,だから……,んな事よりもよぉ,やるべき事があんだろ?」
そう言って,五右衛門が指し示した先には,廃墟の真ん中に眠る,六道吉乃の姿が在った。
「……確かにね。如何しよう」
他家の内輪揉めに首を突っ込んで,何の役にも立たずに,派手な被害だけ出して戻ってきたとなれば,六道家の名に傷が付くかも知れない。とすれば,その時責任を押し付けられるのは加江だ。
「まあ……,六道の家の性格から考えて,こんなの揉み消す位の事はするか……」
「ま,そうだがな……」
希望的観測で,取り敢えず安堵した加江。
その時,藤吉郎が叫んだ。
「そう言えば,秀家は!?」
忘れていた……訳ではないが。
「ひ,秀家〜〜〜〜!大丈夫か!?」
秀家の姿を求め,瓦礫の山を掘り返し始める。
それを見つつ,加江は五右衛門に言った。
「やれやれ。私の性格からして,一世一代のチャンスだったかも知れなかったのに……」
勿論,さっきの告白擬きの事である。
「馬鹿言え。今のじゃ,はぐらかされて終わりだよ」
「断言するの?何それ,脈無しって事?」
「か如何かは知らねーが……,日吉も,結構大変だって事さ」
「そうね……」
藤吉郎の後ろ姿を見て,加江は溜息をつく。
「一寸違うけど……,お前も彼奴位の歳の時は,色恋だ何だと言ってらんなかっただろ?」
「まあ……,あれは,ね」
その頃の加江は,父の命により打倒六道の為の修行に明け暮れていた。
「それが今では,吉乃のお守り役か……。豊臣君のお陰で,私の人生,狂ったわね」
「そうかもな」
「この責任は,取ってもらわなきゃね?」
「さ,そりゃ如何だか……」
「ふふふ……」
気絶した吉乃を抱き上げながら,加江は改めて決意した。
藤吉郎を手に入れる,と。

「あ!いた,秀家。良かったあ〜」
「ふにゃあ……」



ボッ!
景勝が,『兼続』に送る霊力を増す。
「……」
「成程,流石は“死神人形”って所か……。義姉として,鼻が高いわ」
「止めてよ……,その呼び名。嫌いなんだ」
「ふふ……,でも,ぴったりよ」
「そうね……,表情の全てを殺した,私にぴったりよね」
「似合ってるわ。痛々しくて,涙が出ちゃう」
「そう思うのなら,報いてよ,その呼び名に。そうする様にしてよ,義姉様……」
「うふふ。可愛い義妹の望みですものね。出来れば叶えてあげたいけど……」
「心にも無い事を……」
「そうね。……て言うか,無理よ。有り得ない。それは即ち,私の破滅だもの」
「あはは,今更,義姉様に失うものなんかないでしょ?」
「ええ……,後は奪うだけよ……。貴方からね……!」
ボッ!
景虎の右手に霊気が収束し,斧の形を成す。
「それこそ,力尽くで,ね」
「霊波斧『アルマーズ』……か」
巨大な戦斧が,景虎の手に握られる。
「でも,ネーミングがアレだね。何で突然,出典が外国の神話なのさ。まあ,前に一つ有ったけどさ」
「まあ,あんまりマニアックにしても仕方無いしね……」
「うーん……」
「まあ,それは良いでしょ。……行くわよ?」
「うん……。最後の勝負よ……」
「ええ……,十数年に及ぶ馬鹿な戦いも,これで終わりね。如何せなら,派手にいきましょう」
「最後に,でかい花火をね。義姉様の,弔いに……!」
「景勝の……でしょ?」
「さあ,如何かしら」
「じゃあ……,全力で行くわよ!」
「私もねッ!」
ゴッ!
二人の握る霊波武器が,一気にその出力を増す。
「はあぁあぁあッ!」
「おおぉおぉおッ!」
ドオン!
限界迄膨れ上がった二つの霊気が,部屋の真ん中でぶつかり合った。
バチバチバチバチィ!
「はぁあッ!」
「おぉおッ!」
霊気が,反発しあう。
空気の弾ける音が,二人の耳に響く。
「はあぁあぁあッ!」
「おおぉおぉおッ!」

ドゴーン!



中庭(が在った所)。
「うぉ……,何だあ?」
響き渡る轟音と振動に,藤吉郎は顔を上げた。その膝の上には,気を失っている秀家が居る。
「にゃあ〜ん,にーちゃ〜ん……」
そして,吉乃を抱き上げた加江と,その傍らの五右衛門。
「この子,男の子よねえ……?」
「さあ……」
「むにゃむにゃ……,信長くぅ〜ん……」
「……」



モニター室前。
「決まった……かな?」
「……」
「どっちが勝ったと思う?」
柱に寄り掛かった輝元が,隣の義清に訊く。
「……さあな」
「ふ……,逃げる準備をしておいた方が,良いんじゃないのか?」
「……」




数時間後,東京行きの列車の中。
「で……,お姉さんは如何なったの?」
藤吉郎が,景勝に訊く。
「……」
「ねえ〜」
「……さあ?」
「さあ,って……」
「……多分,殺してはないと思うがな……」
藤吉郎と話す時だと,景勝は戦闘モードでない時も,少しだけ口数が多くなってきている。良い傾向だ。
「良いのか?」
今度は,輝元が訊く。
「……」
「おい」
「……」
「こら」
「……良いよ。如何せ,もう義姉様には何も出来ないし……」
そう答えた景勝の表情は,何時もと変わらぬ無表情だった。
「ま,確かにな。あんな裏技はもう二度と使えないだろうし……。これで,奴等ももう終わりだな。終わってみれば,結局,得をしたのは景勝か……」
「て言うか,例の落とし種とやらは如何なったのさ?」
秀家が,半ば呆れ気味な声で問う。
「いや……,何かもう,有耶無耶にしちゃった様だぞ?もう,植椙家中で景勝に逆らう者はいないからな」
「そう言うもんなんだ……」
「そう言うものだ」
「嫌だね,金持ちって……」
「金持ちで一括りにするのもな……」
輝元と秀家がそんな話をしている横で,藤吉郎は窓の外を眺める景勝に声を掛ける。
「……」
「……」
「……良かったね。景勝」
「……ああ……」
窓の外を見たまま,景勝は返した。
「……良かった……」
何にしても,長きに渡る不毛な戦いに,やっと本当の終止符が打たれたのだから。
それは決して,望む形でなかったにしても。
「……」
相も変わらず無表情で窓の外を見つめる景勝を,藤吉郎は微笑を浮かべて眺めるのだった。
「良かった……ね」

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