ザ・グレート・展開予測ショー

オ・ン・ナ・ノ・シュ・ラ・バ♪その6 〜消え失せた平穏の場〜


投稿者名:ノリ
投稿日時:(04/ 3/31)


「はぁ〜……疲れた。」
「……心中お察ししますよ。横島さん。」

今、学校の屋上にピートと横島が一緒にいる。
いつもなら教室で、どたばた騒動を起こしている横島はまた気落ちしているようだ。
そう、それは前回の弁当争奪戦が繰り広げられた日からちょうど一週間後
つまりは、今日のことであるが……
また、一騒動がおきたのである。
では、その騒動を振り返ってみることにしよう。

                   * * *

四時限目終了直前

横島は、授業には集中していなかった。
つまり、今回も行われるであろう弁当の争奪戦のことを考えているのだ。
まぁ、午前中しか学校にいない日は、クラスメイトの眼光は微々たる物だった。
しかし、今日に限りなぜか眼光の鋭さが増しているのだ。
その周りからの威圧感は、横島の精神を疲弊させていた。
それに、昼に近付くと共に威圧感は増し続けていくのだった。

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ンキ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン

遂に授業終了のチャイムが鳴り響いた。
そして、食に飢えた野郎共が雄叫びを上げた。
横島は、その雄叫びが上がるのと同時にかばんを抱き上げ教室の外へと駆け出た。
実際、横島は甘かった。
昨日と大して戦力に違いはないと高をくくっていたみたいだが……

「横島〜!!弁当よこせ〜!!」

という雄叫びとともに他のクラスからも飛び出てきた。
その数、ゆうに前回の三倍を越えていた。
横島が逃げた後の道は、したの階の人が地震が起きたのか!?と勘違いするほどの振動があったみたいだ。
無論、横島を追いかけている人数は、数知れないので床が抜けてしまうのでは?というほどだった。
そしてもはや、横島が捕まるのは時間の問題だろう……
昼になってからはや十分が経った。
そして、その頃ピートは……

「……横島さんは、屋上か。様子見に行きますか。」

ピートは、苦笑いを浮かべて屋上に向かうのだった。
一応、横島のためを考えて霧状になってだが。

                   * * *

以上が、昼の弁当争奪戦の全貌である。
横島は、追い詰められたふりをして、素人相手に文殊で逃げおおせたのだ。
まぁ、攻撃を加えたわけではないので別に構わないだろう。

「ピート……俺、なんとなくお前の気持ち分かったような気がするよ。」
「……いえ、僕は横島さんみたいに追いかけられませんでしたけど……」

横島が、自分の弁当を食べ終わろうとした時、また1人の訪問者が現れた。
まぁ、横島を発見できるのは、ピート、タイガー、そして愛子ぐらいな者だろう。
しかし、タイガーは頭に血が上っているような常置なので、横島の霊波の出ている場所など、分かるわけもないだろう。
(ただ、弁当争奪戦が何回も繰り広げられるうちに獣の本能でそういったことを学習するのかも知れないが。)

「横島君。こんな所にいたの?」
「……なんだ、愛子か。脅かすなよ。」

横島は、屋上の扉が開く音がした瞬間、荷物を抱きかかえフェンスの所まで引き下がっていた。
しかし、入ってきた相手が愛子だとわかると警戒を解いてさっさと先ほどの場所までもどった。

「横島さん。驚きすぎですよ。」
「まぁ、弁当も殆んど食べちまてるからな。」
「……」

横島とピートがまた雑談を始めたのだが、愛子は顔を俯かせたままそこを動かなかった。
横島は、そんな愛子の様子に気付き気をかけた。

「愛子、どうしたんだ? 気分でも悪いのか?」
「……」

愛子は、横島が自分の近くまで来たのを見ると机を降ろしてその中から小包を出して横島に押し渡すと。
机を担ぎ上げ屋上を去っていった。

「……まさかな。」
「? 横島さん、どうしたんですか?」

横島は、愛子に押し渡された小包を持ってもとの場所に座る。
ピートは、横島の持っている小包を見て察したみたいだ。
横島は、ともかく小包(弁当袋)を開いてみた。
と、そこには……

『横島君へ。
 私は、横島君のことが好き。
 いつからかというと、私がクラスの皆とうち溶け合えたときぐらいから。
 どうしてかというと横島君が、私と普通に接してくれていたから……
 他の皆も気負いせず私を受け入れてくれたんだと思ったから。
 直ぐに答えを下さいとは言いわない。ただ、私は本気だから。
 本気だから、バレンタインにチョコレートを入れたの。
 あの時は、ごめんね。まだ、言う勇気がなかったからいえなかったの。
 直ぐに答えをくれとは言わない。
 でも、高校を卒業するまでに答えをくれると嬉しい。
 迷惑かも知れないけど……少なくとも私は、本気だから。
                                 愛子』

そんな内容の手紙が一通入っていた。
横島は、手を震わせながらそれを読んでいった。
ピートは、その手紙の内容を聞いたり見たりしたわけではなかったが、だいたいの内容は察したようだ。

「横島さん。どうしたんですか?」
「いや、なんでもない。さて、愛子から貰った弁当を食べねぇとな。」

横島は、先ほどまでの雰囲気と変わらない様子で弁当を食べていった。
だが、ピートにはその横島の姿がとてもくるしそうに見えた。

                     * * *

昼が終わったあと、横島は先ほどまで気にしていた男たちの眼光を気にする事はなかった。
それは、愛子の告白が関係しているのは明らかだった。
昼が過ぎてから、威圧感を気にしなくなったのだから。

横島は、恋愛には臆病になっている。
自分を初めて愛してくれた人が……
自分が始めて心から愛した人が……
自分のために命を投げ打ってしまった。
だから、また自分が人を愛する事によって、同じような事が起こってしまうんじゃないか。
そんなことを考えてしまうのだ。
実際に考えてそんなことはないとは思っていても……
後一歩踏み出せないでいるのだ。

「ルシオラ。俺、どうしたらいいと思う?」

横島は、沈んでいく夕日を眺めて、誰に言うのでもなくただ、そう呟いた。
一時に見えるものだから夕日は美しいといったあの少女を思い浮かべて。

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