ザ・グレート・展開予測ショー

雑炊(肉料理しりーずの最終回です)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(04/ 3/30)

人間何を食べてても滅多な事では死なない(ある一部の人間に限らさせていただきます)んだなあっとおきぬは、シロの話をきいてつくづく思った。
おきぬは、こんこんとシロに人間の食事というものを話して聞かせたのである。
そしてその話をきいて、シロはショックをうけたように絶句し、さらにはおきぬへ頼み込みんだのである。
横島の喜ぶ料理を教えてほしい、と。
シロは、瀕死の状態ながら殺人的なスケジュールをなんとかこなし健気にも、今度こそ横島の喜ぶものをつくってあげようとうにゃうにゃと目をこすりながら、おきぬに料理をおそわっているのである。

ちなみに、唯今は午前四時である。
一時間前まで仕事をこなしており、急いでお風呂にはいってぱじゃまに着替えて髪も半かわきのままエプロンをつけている。

「………で、なにをすればいいでござ…るか?」
気を抜けば眠りそうな状態でシロ。

「大丈夫?特に今日しなきゃってことでもないと思うけど?」
とは、つきあって一緒におきているおきぬの弁である。
まあ、シロは明日も仕事がこれでもかっと言うほどつまっているし仕事が一段落してから教わっても遅くは無い。
第一横島に食事をつくるということは強制ではないのだ。
何時にならなければならない、ということ自体がない。
と、おきぬはシロをみかねていったのだが、そのおきぬの言葉にシロはふるふると首を左右に振り目には隈をつくって言うのだ。

「先生に、げんきになってほしいでござる」
と。
拙者がつくった料理で具合がわるくなったでござるから、先生は、拙者の料理がおいしくなくても全部食べてくれたのでござる。
なら、今度は美味しいものをたべてもらいたいでござる。
ぎゅっとえぷろんを両手でにぎっててれてれと笑う。
なんといじらしく、可愛らしい台詞であろうか。
子犬のようにきらきらと目をうるませこの台詞を言われ、断る事などできる訳が無い。
あるわけが無い。
更にいうならば、おきぬは母性本能が強い女性である。
ぎゅっと抱きしめて、なで繰り回したいのを堪えおきぬは敢然と顔を上げた。

「とびっきり美味しい料理おしえてあげるからねっ」

「はいでござるっ」


シロという生き物には欠点が数え切れない程ある。
が、それをおぎなって余りある美点をもっている生物でありそのうちのひとつに努力家というものがあったのだ。
目的を果たすためには、いかなる努力も惜しまない。
どんなに疲れていても、どんなに眠くてもシロは頑張った。

そうして一週間後。
いまだ朝陽も顔をださない時間。
事務所の誰もがまだ床についているであろう時間にシロはキッチンにたっていた。
シロは今日から職場復帰する横島ためにある料理をつくるつもりなのである。
それは、おきぬにも太鼓判を押されたものであり、美神やタマモにも美味しいといってもらえた代物である。
シロはおきぬがプレゼントしてくれたえぷろんに身をつつみ、さながら決闘に赴く表情で包丁をとった。
それから更に数時間後。
太陽もすっかり東の空に昇り、てろてろと横島は事務所へと続く道を歩いていた。
「ああ…まだ胃がいてえ気がする」
胃をさすりながらも横島である。
でも、仕事せんとだしなあとそんなことを呟きながら事務所へとはいっていったらなにやらいい匂いがするのに気付いた。
くんくんと鼻を動かしてみるとそれはキッチンのほうからである。
(おきぬちゃんが何かつくってくれてるのかな?)
てろてろと、これまたやる気のない足取りで横島はそちらのほうへ歩いていった。
そしてそこに居たのは─
朝陽のなか、一生懸命料理をするシロであった。
きっとずっと練習していたのであろう。
手付きがなれているし、手際もいい。
が、その表情は真剣である。
そしてしばらくなんともなしにそのシロの姿をみていると、どうやら出来上がったらしく真剣な表情が一気に変化し、それこそ本当に嬉しそうな表情となったのだ。
見てるほうまで嬉しくなる笑顔である。

「できたでござるっ」
ガッツポーズでもつきそうな勢いでシロ。

「なにが?」
まさか人がいるとは思わなかったのだろう。
(というよりもシロが人の気配にも気付かないくらい集中していたということなのだが)
ふと、顔を向けるとそこには横島がいたのである。
すると、シロは益々嬉しそうに笑い

「先生のためにご飯をつくったでござるっ」

と言い放った。
そしてその瞬間、横島の表情も凍りついた。
更にその頭をぐるぐる回るのはシロの手料理のためにあわされた目の数々。

だけども一生懸命なシロを(すこしの時間だが)横島は見てしまった。
いやでも、おれでも限界というものが…とそんなことを思ってみると、シロが

「一生懸命、つくったでござるけど…先生がよろこんでくださるように、つくったでござるが、駄目でござろうか?」
と目を潤ませていったのだ。
女子供の涙には弱いという自覚はある。
………激しい葛藤を繰り返す事十秒。

「一口だけだぞ」
という条件で承諾した。
この男の人の良さも筋金いりである。

一体どんな肉料理がでてくるかとまっていたら出てきたのは、卵雑炊である。
ほかほかとたてるゆげがなんとも優しい。
えっと目を見張り横島が振り返ると、シロははにかんだように笑い

「美味しいでござるよ。おきぬどのの直伝でござるから」

と言った。

「先生が、美味しいっていってくださるようなものを作りたかったでござる」
だから、食べてくだされ。
とシロは照れをかくすように、せきたてるように言う。
横島もシロの言葉にじんわりと暖かいものを感じまだ湯気のある雑炊を口にはこぶ。

それは、確かにこれまでのシロのつくった料理のなかで一番美味しくて

「うまいぞ」

と一言。
横島がいうと、シロは嬉しそうにほんとうに嬉しそうに、わらった


おわり

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