ザ・グレート・展開予測ショー

花見


投稿者名:hazuki
投稿日時:(04/ 3/30)

※これは、告白シリーズです←知ってる人がいません(というか美神さんと横島くんが恋人(?)とおもっていただければ)


 ここに恋人がいれば、人生薔薇色だったと思っている人間がひとりいた。
つんっと額を一指し指でつつき『こいつぅ』なんて言葉を言ったり、『あーんっ』と彼女手作りの朝食を食べさせてもらったり、そんな人生を夢見てた男(バカ)がいた。
ちなみに、その男の名前は横島忠夫である。
が、しかし人生そんなに甘くないことを実際に恋人を手に入れてから知る。

「……………うわ…」
ちなみに今は桜さく季節である。
つい先日自分からちゅーまでして、こんな言葉やあんな言葉まで言い交わして、これで先のステップに進まないと嘘でしょうっ!といわんばかりの有頂天ぶりの横島に襲うのは春の仕事の嵐であった。
稼ぎ時とばかりに、悪魔のような笑みで仕事をこなす美神にひきずられるメンバー。
それでも女性陣は、なんとか休みをいれているわけであるが、横島にいたっては休みなしである。
そして過労死という言葉が頭をかすめながらもなんとか仕事を一段落させた横島は美神に呼ばれて事務所へとむかった。
ちなみにドアを開けて、美神の姿を認めた横島の一声目がこれである。
窓から風がはいり、さわさわとカーテンを揺らしている。
敷地内にある桜の木は既に満開であり、風が吹くたびに花を揺らし薄紅色の花びらがひらりと音をたてずに窓からはいってくる。
そして春の光に亜麻色の髪を光らせ顎に手をあてながら美神は書類を見ている。
普段はかけないめがねやらその理知的な表情やら、柔らかな光やらここしばらく見ることのできなかった恋人(本当にそうなのかっ?と自問自答したくなることも多々あるが)に思わず見ほれる。
たとえ、性格に多少の難があろうとも。

「ん?」
つと、ドアの気配に気付いたのだろうか?
美神は書類から目を離し顔を上げた。

「……ど、どうも」
ここできちっと決められず、どもってしまうのが横島である。

「ああ横島くんね……丁度良かったこっちも一段落したとこなの」
眼鏡を外しながら横島。
安心したように笑うその姿がかわいらしい。

「ああっそうですか?よかったっすね〜…で」
その笑顔に骨抜き(笑)になりながら横島はだらしないほど顔を緩ませる。

「今日で仕事一段落したでしょ?だから、今日の夜にでも花見にいこうかな?と思って」
一応桜を見れるのも今日明日あたりが限界らしいから、予定としては今日にしたいんだけど横島くん大丈夫?と美神。

が、横島はそんな美神の後半の言葉は聞いてなかった。
聞いていたのは花見という単語だけである。
というか、花見である。
ライトアップされた桜に日本酒でほんのりと頬を赤く染める美神。
そして肩を寄せる横島。
近づいていく唇っあああもうっ!!!!!!!!!
やっぱ今年は和風だね(何がだ)
頑張った後にはいいことがあるんだなあっと喜びをかみ締めながら横島は一もニもなくこくこくと頷く。



「あ、よかったわ♪おきぬちゃんがせっせとお重つくってるから」

美神のその一言で横島の全身に衝撃が走った。
せっせと?

「……えと、美神さんもしかして花見って…」

「もちろん、事務所のみんなで行くにきまってるでしょう」
何を今更といわんばかりで美神。
みんな今回は頑張ったからね〜と珍しく雇用主のような優しさを滲ませている美神に横島はひきつった笑顔を浮かべることしかできなかった。
ここで、一番頑張ったのは俺なんですけど、恋人からのご褒美はないんですか?と言った日には『ない』と一蹴されること間違いないだろう。
いや決して、みんなとの花見が嫌というわけではない。
むしろ楽しいと思う。
………だけど恋人とあいたいとご褒美がほしいと思うのは無理だろうか?
(………無理だろうなああああ)
ため息と共にそう思えるところがたいがいこの男も哀しい。



そして夜。
雪洞にライトアップされた薄紅色の桜は、昼の清廉さとは違う妖艶な美しさがありこれまた見物人を見ほれさせる。
ちなみにお花見にきた公園は、都内では穴場となっており見事な桜の割には人気は少ない。
ござの上に敷き詰められた、おきぬ力作のお重に美神秘蔵の日本酒。

「うわっさすがおきぬちゃんだわ、半日でこれだけのお重を」
日本酒を片手に美神。
その目はきらきらと輝いている。

「そんなことないですよ…でもそういって貰えると嬉しいですね」
頬をかすかに染めながらおきぬ。

「おいしそーでござるっ」
まだかなああっ?とまだ食べちゃ駄目かなあああっ?と全身で訴えながらシロ。

「…お稲荷さん」
…つくってくれたんだあ
とタマモ。

「…うまそーっ」
そして横島も今までろくなものを食べてなかったらしく激しい空腹感に襲われていた。
このときばかりは色気より食い気である。

そうして宴会は始まった。
「うわっこの肉詰おいしいでござるよ」

「そう?」

「うわーっ卵焼きもまじうめえっ」

「ほんと、お酒にあうわ」

「……ごまのはいったお稲荷さんも美味しい」

「拙者何も用意できてないから、おきぬどのの料理のお礼にひとつ舞いをするでござるっ」
余興とばかりに人狼の里に伝わる剣舞をシロが披露し桜の舞い落ちるなか踊るそれは、幻想的なまでの美しさである。

「あっじゃあ私もっ」
と今度はタマモがぼうっと幻術で光の雪を降らせる、
雪と桜
これほど見ごたえのあるものもそうないであろう。


「うわあ…綺麗ですねえ」
ほうっと見ほれるようにおきぬ。

「雪見酒に花見酒かあ…まさか一遍にできるとはね」
穏やかに笑いながら美神。
嬉しそうに口元を綻ばせゆったりとくつろいでいるひと。
横島は嬉しそうなメンバーを見ながら、そしてくつろいだ美神をみながらまあたまにならこんなものもいいかなと思った。
まあ、二人っきりのほうがいいいと思うときもあるが。
みんな嬉しそうだし。

なにより花見と雪見を一緒になんて滅多なことじゃ出来ないと。


「美神さんその酒おれにも一献いいですか?」
横島はにいっと笑いながら言う。

「ほしいの?」
きょとっと問い掛けるように美神。

「はいっ」
と笑い横島。

「仕方ないわねえ」
笑い美神は日本酒を口に含みぐいっと横島を引き寄せると口移しで横島に日本酒を渡した。
ちょいっと見ほれているおきぬやら踊りに夢中になってるシロそしてと幻術を操っているタマモはそれに気付かない。

「……」
不意打ちだ。
こんな風に地獄に落としといて天国まで引き上げるなんて
ぐるぐると酒のせいでだけではない理由で真っ赤になっている横島を見て美神は一言


「これで残業手当ということでね♪」

とのたまわった

まあ人生ばら色とまではいえなくても、瞬間的にばら色になれるならいいかと。

おわり

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