ザ・グレート・展開予測ショー

続々々々・GS信長 極楽天下布武!!(3‐3)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 3/26)

某・大手ゲーム会社の依頼で,新作ソフトの制作中にプログラムの中に入り込んだ悪霊を退治すべく,その会社に赴いた浅野ねね。
だが,同じく除霊を請け負った浅野長政,益汰長盛と共に,悪霊に因ってゲームの中に取り込まれてしまった!
そんな訳で,そのゲームの主人公となってしまったねねは,除霊を成功させるべく,取り敢えずゲームクリアを目指すのであった。




ピロリロリーン♪
「よーし,レベルマックス ▼」
長政が汗を拭いた。
「やと長政が最高レベル迄いたアルか ▼」
「これで準備は万端なの? ▼」
「多分……。魔王を倒す為の伝説の武器とやらも全部手に入れたし,アイテムも持てるだけ持った。レベルも三人ともマックスレベだし…… ▼」
ねねの問いに,長政が指を折って答える。
「うん。大丈夫じゃないかな ▼」

そう,此処はゲームのラストダンジョン前の平原。
ラストダンジョンをクリアすれば,遂に(多分)ラスボスの魔王との対決だ。
今,ねね達がやっているのは只のゲームではない。悪霊に取り憑かれたゴーストソフトなのだ。ゲームオーバーは,もしかしたらイコール死かも知れない。
万全を期す為,取り敢えず三人共を最高レベル迄上げた。リセットは押せないのでパラメータの上がり具合は運任せだが,マックス迄レベルを上げておけば,大抵の場合,ラスボスでも楽に捻れるだろう。
大抵の場合,であるが。
このゲームに関しては,一概にそうとも言えない。
このゲームを支配しているのは,除霊対象の悪霊なのだ。
抑も魔王を倒してゲームをクリアした所で,現実世界に出られるかは分からないし,縦しんばそうだったとしても,悪霊に因って数字や設定が書き換えられてしまう事も大いに有り得る。
即ち,ねね達は最初から悪霊の掌の上で冒険をしていた訳だ。
そんな事はねね達とて百も承知なのだが,他に手も思いつかず,こうして真面目シナリオを進め,やっとこさ此処迄辿り着いた。
一応,もう,やり残したイベントとかは無い筈だ。装備している武器も,考え得る限りの最強装備だ。……一応,は。
「じゃ,街に戻ってセーブしてこよっか ▼」
「そうだね。ダンジョン内にセーブポイント有るか分からないし ▼」
「もうお金使い道無いから,パーと使ちゃうアルよ ▼」
「いや,そんな……,無駄に時間潰す事もないでしょ。これで出れるかも分からないんだし,さっさと先進もう ▼」
「そうよ,長盛ちゃん,無駄遣いはいけないわ ▼」
「いや,そう言う問題でも…… ▼」



と言う訳で,一旦街に戻りセーブと体力回復を済ませてきた三人は,遂にラストダンジョンに挑むのだった。
「おお……,何かそれっぽい景観 ▼」
「いや……,何か微妙アルけどね…… ▼」
「ん〜…… ▼」

チャラチャラ〜ン♪

『サターニア×2が現れた! ▼』
「あ,新種の雑魚敵よ ▼」
「今更だね ▼」
「今更アルな ▼」
「ま,それは兎も角。助さん,格さん,懲らしめてあげなさい! ▼」
「はーい ▼」
「て,私達,別にねねサンの部下でも何でもない違うカ……? ▼」
「まあ,良いじゃん ▼」
「……そうネ…… ▼」
ドカ!
『浅野長政の攻撃!サターニアAに650のダメージを与えた!サターニアAは倒れた! ▼』
バキ!
『益汰長盛の攻撃!サターニアBに540のダメージを与えた!サターニアBは倒れた!敵を全滅した!賞金として,600ゴールド手に入れた! ▼』
「今更,賞金も何も無いネ ▼」
「いや……,別に俺等のプレイに合わせて作られてる訳じゃないし…… ▼」



そんなこんなで,ダンジョンの中程迄来た三人。
既にレベルマックスに最強装備のパーティに対し,其処等の雑魚敵では相手にならなかった。
と言うか,今迄あれだけ温い難易度で,最後だからって此処だけ一気に難しくなってたりしたら,詐欺だ。
「まあ,普通のビデオゲームなら,それも面白いかも知れないけどね…… ▼」
「誰と話してるの?長政ちゃん ▼」
「いや…… ▼」
「んな事より,中ボスアルよ ▼」
長盛が指差す通路の先を見ると,成程,中ボスと思しき化け物が,通路を塞ぎ鎮座していた。
「もう……,何か面倒臭くなってきたアルな。抑も,何で地道にゲームなぞ進めなくてはならないネ? ▼」
「いや,だから,他に方法が見当たらないから…… ▼」
「はあ〜……。やれやれアルね。ちゃっちゃと片付けて,自分の足で歩きたいヨ ▼」
「それは同感だけど……,それには,此処を無事に出なきゃな ▼」
「そうネ ▼」
長盛が文句を言って長政がそれを宥めるのは,この二人の何時もの光景である。無駄に微笑ましい,端から見ていると良く分からないコミュニケーションであるが,本人達は結構楽しいらしい。
「じゃ,話が纏まった所で中ボスバトルと行きますか,助さん,格さん」
上手い事会話の合間を縫って,ねねが号令を掛ける。
「うん ▼」
「さっさと終わらせるアル ▼」



で,最後。
魔王の玉座。
「やっと此処迄来たわね……! ▼」
「て,別にそんな,気負わなくても良いでしょ,お従姉ちゃん ▼」
「いやー,これでこの面倒臭いのも終わると思えば,気負いたくもなるヨ ▼」
「仕事中でしょうが……。気ぃ抜くと死ぬよ? ▼」
「そうネ ▼」
「よし,行きましょう! ▼」
とか言う会話を,玉座に座る魔王の目の前でする三人。敵の目の前でこんな気を抜いた会話など現実世界では有り得ない事だが,其処はそれ,此処はゲームの世界。ムービーは部屋に入った瞬間ではなく,ボスに近付く事で開始されるのだ。
「と言う訳で…… ▼」
ねねが魔王――最初の街の酒場で戦った無駄に美形な男に近付くと,一旦画面が暗転し,直後,三人の挙動が奪われた。
ムービーシーンの始まりである。
「ふふ……,良くぞ,此処迄来たものだな ▼」
「はいっ!お褒めに与り光栄です,魔王閣下! ▼」
相手の挑発には,相手が期待する以上の,明らかにからかっていると分かる様なオーバーなリアクションで返せ。
――ねねが,師の藤吉郎に教わった事の一つである。その心は,相手のテンポと精神状態を乱す事が出来るからだ。
元来,純朴で素直なねねである。ましてや,藤吉郎は以前から想いを寄せる相手。彼の言う事を素直に聞き,又た,実践した。
……その結果,かなり食えない奴になってしまっていたりした。まあ,元々意外と強かな娘ではあったのだが。
何にせよ,清貧の薄幸少女から,一気に不景気の花形商売・ゴーストスイーパーへと変身したのだ。悪霊退治は勿論の事,依頼人との交渉,金に纏わる諸々のトラブル,お偉いさんとの折衝と,虚々実々の駆け引きは何かと入り用になってくる。ゴ−ストスイーパーと言う道を選んだねねに,藤吉郎が詐術紛いの世渡りの法を教えたとしても,それは賢明と言われるべきであろう。
家康が,自棄酒でもう一度死にかけた以外は。
「遂に,余の所に迄やってくるとは。初めあのスギハラの街で遇った時とは見違えるな ▼」
が,勿論の事,相手はプログラミングされた只のデータなので,そんな揺さ振りは通用しない。プログラムに従って,指定された言葉を吐くのみだ。
因みに,“スギハラ”とはねね達が最初に立ち寄った街の事である。
「だが,余に刃向かおうなどとは,矢張り愚かしい限りよ。己が無能を悔い,地獄へ堕ちるが良い! ▼」
魔王の口調が強まり,音量も大きくなった気がした。
そして,効果音。


ゴッ!
『???が現れた! ▼』
「あれ,未だ仮名!? ▼」
「制作中のゲームだからネ。ボスの名前とか,未だ決まってないのではないアルか? ▼」
「まさか,裏面が有るとか言う落ちじゃ…… ▼」
「恐ろしい事を言うでないヨ…… ▼」
長政と長盛が,苛々するじゃれあいを一通り繰り広げる。本人達は楽しんでいるが,敵を苛つかせると言う意図も無きにしも非ず。取り敢えず,端から見たらかなり苛つく会話をしていると言うのは,自覚しているらしい。
「さ!じゃあ,さっさと片付けて,帰るよっ! ▼」
会話が途切れるのを待って,ねねが発破を掛ける。
「いや……一寸待って! ▼」
が,長政が待ったを掛けた。
「え? ▼」
「変だよ,お従姉ちゃん……。何か,力が抜けてく感じしない? ▼」
「そう言えば……,何か変な感じアル ▼」
「……! ▼」
何か感付いたらしい長政が,急いでステータス画面を開いた。
「ああっ! ▼」
「ど,如何したの? ▼」
「こ,これ……」
大声を上げた長政の後ろから,残る二人もステータスを覗く。
「げ!パラメータが下がってる!? ▼」
何と,三人のパラメータが,何時の間にか少なく書き換えられていたのだ。
「悪霊の仕業なの? ▼」
「此処迄来て,何てせこい奴アルか! ▼」
ねねは呆然とし,長盛は憤る。
「でも,裏を返せば矢っ張り此奴を倒せば外に出れるって事かも ▼」
などと希望的観測を述べてみた長政だが,それ以前に倒せる保証は無い。
「ど,如何しよう…… ▼」
「ま,まあ,こっちがコマンド打ち込む迄は向こうも攻撃してこないんだし,一寸落ち着いて考えてみようよ ▼」
「そうアルね ▼」
時間は有るが,だからとて良い手が浮かぶとは限らない。
三人は途方に暮れた。
「! ▼」
「え,あれ……? ▼」
その時,不意に救いの手が差し伸べられた。
「パラメータが元に戻ってる……!? ▼」
「如何して…… ▼」

――別のコンピュータにターゲットのコンピュータを接続して,プログラムを書き換えているんだ――

突然,何処からともなく何者かの声が聞こえてきた。
「え,この声…… ▼」
「三成アルか!如何して!? ▼」
テレパシーの様に響く声の主が,同僚の善楕三成だと看破した長政と長盛が,口々に疑問を投げ掛ける。

――お前達が余りに遅いので,心配になって此処迄来たんだ。そうしたら,お前達が悪霊に喰われたと言われてな――

「いやぁー,面目有りません ▼」
「でも,もう一寸で全クリだったアルよ ▼」

――ふ。まあ,楽に終われるに越した事はあるまい。一応,援軍も送っておいたぞ――

「助っ人? ▼」
ねねが疑問符を浮かべると,後ろから声が聞こえてきた。
「あたし達よ ▼」
聞き慣れた声に,三人は振り向いた。
「正家さん!玄以さん! ▼」
「玄以,退院したアルか ▼」
其処にいたのは,デフォルメされたドット絵の同僚達――那柄正家と舞拿玄以だった。
「さ!あたし達が来たからには,お遊びは此処で終わりよ。とっとと片付けちゃいましょう! ▼」
おかま風の長身の男――那柄正家が,気勢を上げる。
「結局,此奴を倒せば出られるんですか? ▼」
長政が,正家に聞く。
「何を言ってるのよ ▼」
「え? ▼」
「貴方達の目的は,此処から脱出する事じゃなくて,悪霊の除霊でしょう? ▼」
「それはそうですけど…… ▼」
「霊能力が戻ってるのに気付かない? ▼」
「あっ……! ▼」
言われてみれば,ゲームに閉じ込められた時から使えなくなっていた自分の霊能力が戻ってきている。
「これは一体…… ▼」
「三成の干渉で,悪霊の支配力が弱まってきてるのね ▼」
「三成さん,コンピュータも出来るんすか……。万能超人すね ▼」
「て,まあ,実際には普通に霊能力なんだけどね ▼」
「…… ▼」
魔王は,相変わらずねねがコマンドを入れるのを待っている。
「さ!遊びは終わりよ。出てきなさい! ▼」
正家が,魔王に霊波を送る。
カッ!
「グアッ!?」
バシュウ!
すると,魔王の首がもげ,それが見て分かる悪霊の形となって喋り始めた。
「嫌ダ!終ワリナンカジャナイゾ!」
「あれが,悪霊……!? ▼」
自分達を散々弄んできた悪霊様のご登場だ。ねね達は一歩足を進めた。
「モットモット人間ノ魂ヲ引ッ張リ込ンデ,モットモット遊ブンダ!僕ハ止メナイカラナ!」
悪霊が喚く。
「割としっかり自我は保たれてるみたいっすね ▼」
「ええ ▼」
長政の問いに答えた正家が,後ろにいる舞拿玄以を振り返る。
それに頷き,(嫌々そうに)玄以が続ける。
「調べた所に拠ると,此奴の正体はとあるゲームヲタク。この会社に就職したかったらしいが,失敗して,その後,暫くして死んだらしい ▼」
「もしかして,自殺とか? ▼」
「其処迄は分からん ▼」
「ソウダ!」
「!」
玄以と長政の会話を聞いていた悪霊が,大声で割り込んできた。
「僕程,ゲームヲ愛シテル人間ハイナイ!僕程,ゲームヲ知ッテイル人間ハイナイゾ!ソレナノニ,コノ会社ノ連中トキタラ……」
「あんたを面接落ちにした,と ▼」
「アア,ソウダ!信ジラレルカ!?コンナ無体ナ事ガアッテ良イ筈ガナイ!」
「そうなの? ▼」
「ソウダヨ!その証拠ヲ見セテヤロウカ!?」
「証拠? ▼」
「僕ハ,コノ会社ノ発売シテキタゲームソフト,全テノ発売日ト定価ヲ言エルゾ!全部買ッテキタカラナ!」
「いや,それは…… ▼」
「だからて,就職させてもらえる訳でナイでしょ ▼」
「何デダ!?コンナ稀少ナ人材ヲ!」
「いや……確かにそんなマニアは珍しいかも知れないけど…… ▼」
「マニア言うより“ヲタク”アルな ▼」
「けどさ。このゲームの空間て,あんたが支配してたんでしょ? ▼」
「アア,ソウダガ?」
「て事は,大分,あんたの手が入ってたと ▼」
「ソウダ!面白カッタダロ!?」
「いや……どっちかっつーと…… ▼」
「ひたすら詰まらなかたアルな ▼」
「ああっ,そんなにはっきり言わなくても…… ▼」
「馬鹿ネ,長政。勘違いしてる悪霊には,はきり言てやるのが温情ヨ ▼」
まあ,確かにその通りなのではあるが。
長政は,非情になりきれないと言うか,割り切れないと言うのが欠点だ。勿論,それは人間的には長所なのだが。
「ナ,何ダト!?僕ノゲームガ詰マラナカッタダト!?馬鹿ヲ言エ!」
「いや……確かにこれ以上無い程に退屈なゲームでした ▼」
「独創性の欠片も無かたアルからね。無駄に長いし ▼」
「ソ,ソンナ……!?」
「これで分かったでしょ? ▼」
二人の後を引き取り,正家が悪霊に諭し掛けた。
「あんたは,ゲームヲタクではあっても,ゲームクリエイターにはなれないのよ!他人の描いた妄想を知識として詰め込み,それで自己満足に浸るしか能の無いあんたにはね! ▼」
ビシィ!と悪霊を指差し,正家が決めた。
て言うか,あんたはおかまだろとかその場にいた(悪霊以外の)全員が思ったが,まあ,彼はこうしてきちんとまともな仕事に就いているのだから,別に構わないのか。彼のは,余り迷惑なものでもないし。
「ナ……ナ……!」
「そんな奴を会社が取ってくれる訳がないでしょ!仕事は遊びじゃないのよ!?自分の無能さが分かったら,さっさと成仏しちゃいなさい! ▼」
因みに,彼等『不暁GSオフィス』のメンバー達は,元は『武行会』と言う仏教系霊能道場のの経営する『武行GS』の出身だ。
故に,成仏思想は勿論持っている。
「ウ……ア……ア……ソンナ……」
悪霊は,頭を抱えて悩んでいる。
「僕ハ……僕ハアァァア!!」
バシュウゥゥ!
「うわっ ▼」
「浄化された!?何で……? ▼」
「普通,悪霊を追い詰めたら更に墜ちるのと違うアルか……? ▼」
「ショックが強過ぎたみたいね。現実逃避する前に,逝っちゃったわ ▼」
不意に,辺りが真っ暗になり,ゴゴゴ……と何かが崩れ落ちる様な音が響いてきた。
ゴッ!
「うわ!? ▼」
足下が崩れる様な感覚がし,事実,五人の足下はさながら玩具のブロックの様に崩れ始めていた。
「世界が,崩れる……!? ▼」
「ゲームソフトが,悪霊の支配から解放されたのよ! ▼」
「う,うわあぁあぁあ!? ▼」

ゴゴゴゴゴ……






バシュウ!
「おお,帰ってきたか」
五人を出迎えたのは,眼鏡の女性――善楕三成の何時もと変わらぬ冷然とした顔だった。勿論,GS試験の時の様な胴衣ではなく,ピシッとしたスーツ姿だ。似合い過ぎている。どちらかと言えば胡散臭いGSの様な職種より,寧ろビジネスウーマンの方が似合っているのではないか。
五人が辺りを見回すと,其処は間違いなく,ねね達がパソコンに喰われた第一開発室だった。
「あれ,三成さん……?」
「て事は,戻てきたアルか」
「ふー,上手くいったわね」
「やれやれだぜ」
不暁GSのメンバー達は,口々に生還を祝い合った。
「取り敢えず,これで依頼完了アルな」
「何を言っている。二人で何とか出来なんだくせに」
「う……いや……。も,もう少しで何とかなる所だたアルよ!ねえ,長政!」
「え?う,うん……」
三成に不覚を責められた長盛が,長政に助け船を求めた。と言うか,責任の在り処を論じるなら,この場合,二人は一蓮托生なのだが。
「いやー,でも,何とかなって良かったね。ねえ,お従姉ちゃん」
返答に窮し,取り敢えずねねに会話を振って誤魔化そうとする長政。
「……?お従姉ちゃん……?」
だが,ねねは守護神の家康と共に,部屋の隅で体育座りをしていた。
「……お従姉ちゃん……?」


「ううっ……。結局,最後,持ってかれたわ……。私ってこんなんばっか……」
「泣くんやない,ねねっ!首尾良く日吉にーちゃんを射止められれば,日の目を見る事も有るで!」
「う……うん,そうよねっ!ねね,負けないっ!何時の日か,豊臣さんを手に入れるその日迄っ」
「その意気や,ねねっ!」






おまけ。

その日の夜,長政宅。
「ただいまー」
先の除霊の事後処理を終えた長政は,夜の七時半頃に帰宅した。
「お帰りなさい」
出迎えてくれたのは,同居しているねねの妹・ややだった。
「おう,やや。父さん達は?」
「叔父さんも叔母さんも,未だ帰ってないよ」
「そっか」
「うん……。ねえ」
「ん?」
「お仕事,泊まりなんて言ってなかったよね」
「え?ああ,そう言えばな」
ゲームの中で一晩過ごしてしまったらしい。
徹夜でぶっ通しでやって,やっとクリアとは。本当に,無駄に長いゲームだった。あの後,室長に製作の見直しを進言してきたのは,賢明だったと思う。
「そんな事より,話が有るの」
「え」
「……」
「……!?」
長政は驚愕した。良く見ると,ややは怒っていた。ゴゴゴと言う効果音付きで。
「……ど,如何したんだよ。何を怒ってるんだ?」
「良いから。其処に座って」
「何で?」
「良いから!」
ややの余りの剣幕に,思わず従ってしまう長政。
「……はい」
「うん。……聞いたわよ」
「な,何を……?」
ひたすらに不機嫌なオーラを醸しだし,長政にプレッシャーを掛けまくるやや。
「昨日の夜,仕事中に同僚の女の子と ピーーーーー! な事や ピーーーー! みたいな事をしてたんですって!?」
「は!?何を言ってんだよ,誰に吹き込まれたんだ,そんな事!」
「お姉ちゃん」
「……しかいねえよな……」
ああ……。
ホント,意外と根に持つタイプなんだよな,あの人……。
「いや……,それ,吹かしだぜ?」
「お姉ちゃんが,嘘なんかつく訳ないわっ!」
「ええ〜……,そうか……?」
「で……?この事,如何申し開きしてくれるのかしら……?」
「え……?いや,その……」
て言うか,仮にそれが事実だったとしても,何でお前に言い訳しなきゃなんねーんだよ……。とか思うが,この状況でそれを言っても火に油を注ぐだけなので,そんな事は言えない。
長盛に電話して,誤解を解いてもらうか。いや,駄目だ。逆に話をややこしくされる。彼奴はそう言う奴だ。
「さあ……,ゆっくり話を聞かせてもらいましょうか……」
「いや,だからな?」
「だから?何よ」
「いや……」
如何しろと言うんだ。

「お従姉ちゃんの,馬鹿あぁ〜〜〜〜〜っ!!!」
夜空に,長政の絶叫が響き渡った。

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