ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と 第12話』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 3/25)



「・・・ここは・・・。」

美神がつぶやく。

一面に輝く水晶の壁。
ものの数秒という時間で周囲は完全に様変わりしていた。
自分を囲むように立つおキヌ、シロ、美智恵、唐巣・・・・とりあえずは全員無事のようだ。

「美神さん・・私たちは一体・・」

キョロキョロと周りを見回しながらおキヌが言い、

「・・強制的に転移させられたか・・。しかも横島くんたちとは別の位置に・・やられたわ。」
対して、美智恵が歯噛みする。

スズノは令子と横島の霊波同調に勘付いてる。それが自分にとって唯一の脅威となり得ることも・・。
わざわざ離れた位置に配置するほどの手の込みようだ・・。

(無理やり、押さえつけるにしても・・説得するにしても・・一筋縄ではいかないか・・。)

腕を組む美智恵。
・・その横で、シロがおそるおそるといった様子で口を開いて・・・

「・・あのう・・・・拙者、気付いたのでござるが・・」

「?何だい?シロ君。」



「・・この部屋って出口がない・・というより四方が壁でふさがれてるような・・・」


「「「「・・・・・・。」」」」


・・・・。


・・・・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・あ。



〜 『 キツネと姉妹と約束と その12 』 〜




〜appendix.11 『 月下終焉 』


斬撃に次ぐ斬撃。鮮血に次ぐ鮮血。

常軌を逸した撃砕音とともに、コンクリートの建築物が崩れ去り・・地面には深々と穴が穿たれ・・
・・・そして、剣閃が舞う。

「・・・・・・っ!!」

「ぬぅううっ!!!」

縦薙ぎに疾る2つの刃。
せり合いの後、わざと吹き飛ばされることで衝撃をいなし・・西条は背後の壁を蹴り上げる。

速度を寸分も殺すことなく・・繰り出される居合の一撃は、そのままコカトリスのわき腹をかすめ・・・



―――――・・。

「・・・見事。しかし、随分と静かなのだな。気合の声の一つでもあれば、こちらとしてもやり易いのだが・・」

「僕のポリシーでね。英国紳士がそうそう奇声を上げていては・・・格好がつかないだろう?」
しれっとした声で西条が笑い・・それにコカトリスも唇をつり上げる。


西条には・・どうにも腑に落ちないことが一つあった。
それは・・・・コカトリスが剣での決着に固執していること・・。

単純な話、霊力だけを比較すればコカトリスのそれは自分を確実に上回る。
決して手が届かないというほどの差ではないが・・
それでも、力にものを言わせれば、コカトリスが今より若干ながら優位に立てることは間違いないのだ。

・・わざわざ、互角の領域・・剣と剣による闘いに身を置こうとする・・その理由が分からない。

・・。

西条の疑問を知ってか知らずか・・コカトリスの顔がわずかに曇り・・・
そして彼は・・先ほどから激変している大気の流れに・・憂いを込めて嘆息した。


「・・貴殿も気付いておろう・・辺りを包むこの強大な魔気に・・。これがスズノ殿の力・・こうなっては誰にも止めること適わぬ。」

・・・。

「捕獲はすでに諦めていると・・・そういうことかい?」

静かに確認する西条に・・しかしコカトリスは首を振り・・・

「それもある・・が、もはやこの決闘に意味など無いのではないか?
 貴殿ほどの力があれば今のスズノ殿の居場所を特定するのは容易では・・?」

真っ直ぐにこちらを見据え返してくる。
・・・。
ここで勝負を投げ出したとしても追いはしない・・・ということなのだろう。

・・西条は一つため息をついた。そうして、コカトリスの申し出を・・刀を構えることで拒絶する。

この魔族が本来、争いを望む気性ではないことは・・承知していた。さらには、彼がスズノのことを気にかけていることも・・・・
そういえば、彼の娘が生きていれば今ごろは、スズノと同じ年のころだろうか・・・。


・・・・。



「・・・3年前。」


「?」


「君と初めて出会ったときのことだ。信じろと言っても無理な話かもしれないが・・一つだけ伝えておきたいことがある。」




月光の空に・・瓦礫のつぶて舞っていく。

冷たい・・光だった。・・氷のように・・・闇のように・・・・



「あの日・・たしかに君の娘さんの最後を見取ったのは僕だ。ただ・・手をかけたのは違う。
 今まで僕が殺したと語ってきたのは全て偽りだ。」

3年という月日の中で・・延々と続く、どこか歯車の狂った連鎖。

その中心に一人の男がいることを・・西条は知っている。
人であることを放棄した男。
無数の屍を平然と踏み潰し・・その血肉を至福の表情で喰らい続ける。

彼は・・それを『進化』と呼んでいたが・・・


どちらにしろ・・はっきりしていることが一つだけ・・。

・・・・。

・・・・・。


そう・・・・・




「・・・本当の仇は・・別にいる。」




・・つぶやく。言葉が紡がれる。







「・・・・・。」

不意に・・コカトリスの口から笑いが漏れて・・・


「コカトリス・・・。」


「・・知っていたよ・・そんなことは・・。とうの昔に・・知っていた。」

翼人は自嘲気味につぶやくと、大きく刀を振りかぶる。

「・・なら、何故?」

「それはこちらの台詞。目の敵にされると分かって、何故それがしに偽りを申したのだ?」

・・・。
言われて・・、西条は苦々しげに言葉を切った。語る答えは持ち合わせていても・・口に出すのは憚れる・・そんな戸惑い。
西条の様子にコカトリスは微笑を浮かべて・・・

「話せぬのならよい。それがしは・・ただ臆病風に吹かれただけだ。
 不特定多数の『誰か』を恨むより貴殿一人を恨む方が気が楽と・・そう思っていたのかもしれない。」

それももう疲れたが・・、翼人の口がそう動いて・・・

「あとは・・期待かな。貴殿なら、それがしを斬り伏せてくれるという・・。」

西条の顔が悲痛に歪む。


「・・・君は・・・・・・・。」


「この痴れ者の一人芝居に・・3年以上も付き合わせたこと・・謝罪致す。願わくば、今一度、それがしと斬り結んでいただきたい・・。」


刀身が・・月影に濡れていた。一切の音が途切れる中・・・






「・・・幕引きを。」









―――・・二つの剣が交錯する・・。

キィィィィン!という甲高い金属音が鳴り響き・・火花が散る。

一撃で勝敗が決しないことは分かっていた。二撃、三撃・・・連続で必殺ともいえる太刀が激突し・・・



『おおおおおおおおお!!!!』


瞬間、二つの声が重なった・・――――――


                      
                         ◇




数分後。

空から西条の姿を確認すると、マリアはすぐさま地上へと降り立った。


「西条さん・ご無事でしたか。」

「マリア君か・・どうかしたかい?」

カチリと音ともに西条は霊剣を鞘へと納め・・そしてマリアへ振り向いた。
人目見ただけで合点がいく。彼女がここに居るということは・・おそらく横島が応援を頼んだのだろう。

「目的地の周辺に・霊的な防護壁が張り巡らされています。私では・破ることができません。」

「・・・わかった。道案内を頼むよ。」

西条の言葉に一つ頷くと、マリアは再び空へと浮上しようとして・・・

・・・と。

彼女はチラリとそばに横たわる魔族へ目を向けた。


「・・・その方は?」

「・・彼かい?古い友人なんだが・・色々あってね、少しの間眠ってもらった。後数分もすれば起き上がると思うよ。」

少しだけ笑いながらそう言うと、彼はマリアに先に行くよう促して・・

・・・・。

・・・・・・。

「みね打ちとは・・・ひどい御仁だな・・貴殿は。まだ、それがしに生きろと?」

「・・・そういうことになるかな。
 スズノちゃん捜索の時間を割いてまで君を叩き伏せたんだ・・これで命まで奪ったら、僕はただの悪役だろ。」

月を見上げながら、どことなくシニカルにそうつぶやいて・・
西条は飛行するマリアを追うように駆け出していく。





「最後にもう一つ。英国紳士は叫び声を上げないのではなかったのか?」

冗談めかしたコカトリスの問い。
それに西条は苦笑する。


「・・英国紳士は臨時休業。再開は・・もう少し先になりそうかな?」

言って彼は小さく肩をすくめるのだった。


〜続きます〜



『あとがき』

皆様、いつもありがとうございます〜
第12話は・・なんだかちょっと失敗気味です(汗)うあ・・どうか見捨てないでください・・(泣

それにしても・・な・・・なんだ!?オレはこんな伏線を出すつもりは全く無かったのに!!(激爆
指が勝手にキーボードをたた(以下略)
というわけで、この伏線はシリーズにまたがって続いていきます〜

それにしても、横島とタマモが全く出てこない話ははじめてです。
キツネシリーズのサブ主人公(笑)は一応、西条という設定なので・・これからもこんなお話が時たま出現するかもしれません。
しかし、無尽蔵に増えていきますね・・伏線が・・回収できるように頑張らねば・・

さて・・次回は横島とスズノのバトルなのですが・・実は、横島の見せ場はもっと先なのです(汗
何せ相手が悪すぎるというか・・19万マイトですし・・(爆
その分、ラストバトルでは横島くんが派手な役回りを独占しますのでご容赦を・・(泣

それでは、また次回お会いしましょう。

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