ザ・グレート・展開予測ショー

続々々々・GS信長 極楽天下布武!!(3‐1)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 3/23)

永禄九年,織田信長の配下・木下秀吉の守る,伊木山城。
その,奥の座敷。
「不可能です!敵の真正面での築城など……!」
跪いてそう叫ぶ,茶色い天然パーマの青年は,この城に軍師として入っている竹中半兵衛重治。
策術巧妙にして沈着剛胆,更に無私無欲と言う天下の逸材として知られ,難攻不落の要害・稲葉山城を,僅かな手勢で城兵を殆ど殺める事もなく占領したと言うのは,有名な話である。
この辺りの少し名の通った武将なら,誰でも欲しがる頭脳なのだが,この城の城代・木下秀吉の再三の頼みに何か感じるものでも有ったのか,如何言う訳か,この小さな城に仕えている。
「はっ!不可能を可能にしろって命令なんだよッ!」
そう言って湯漬けを掻き込むのは,この城を守る城代の木下藤吉郎。
そして,日野秀吉。
即ち,二人合わせて『木下秀吉』である。
「正気か,兄者!?」
これは藤吉郎の異父弟・小一郎。
抑も百姓足軽の小倅に過ぎない藤吉郎の,唯一と言って良い肉親の部下だ。勿論,彼も百姓の出なのだが,急速な出世と器量の良さで時に周りの者の反感を買う事も有る兄とは違い,上司にも部下にも評判が良い。
武芸も学問も出来ないが,些事を疎かにしない真面目さと細やかな気配り,そして何より他人と功を競わぬ温厚な人柄とが,周りから信頼されている。自宅と農地とを捨て,安楽な百姓稼業から,危険を伴う最下級の侍へと言う,誰もやらない様な不利な転職をやってのけた小一郎は,兄の部下である事に一生を賭けていた。
この場に居るのは,この四人だけである。
皆の前では藤吉郎を尊称で呼ぶ小一郎も,この面子では,憚らずに『兄者』と呼ぶ。
「おお。至って正気だぜ?」
事も無げに返す藤吉郎に,小一郎が続ける。
「墨俣の地は,確かに美濃攻めの要衝だ。だが,半兵衛殿の仰る通り,敵城の真ん前だぞ!?柴田権六様も,丹羽五郎左衛門様も築城に失敗なされた地だ。如何考えても,不可能としか……」
「だからこそ」
秀吉が,小柄な体型に似合わぬ低い声で諭した。
「俺達がそれを成せれば,大きな手柄となる」
「し,しかしだな……」
「どの道,もう殿には引き受けると申し上げてしまった。今更,出来ませんなんて言おうものなら,九族皆殺しじゃすまないぞ」
あの方はそう言う方だ,とあっけらかんとして言い切る藤吉郎。
秀吉も,ふん,と鼻を鳴らす。
「つー訳だ,斎藤義龍公亡き後,盆暗の龍興公に代替わりしても,一向に美濃は落とせぬ。桶狭間の戦勝で幾分穏やかになった殿バッシングも,最近は又たぞろ吹き始めてる。此処いらで俺達がバシッと決めて,こんな城じゃなく,もっともっとでかい城を,城代じゃなくて貰える様にでもなろうじゃないか!」
藤吉郎が,そう言って立ち上がる。
『俺』ではなく『俺達』である処に,藤吉郎らしさが出ている。
「当然だ!」
心底嬉しそうに陰険な笑みを浮かべ,秀吉も腰を上げる。
彼は,窮地を楽しむ事の出来る,割り切った男だ。だが,この笑いは,それだけが因ではないだろう。


数日後,木下秀吉は主君・織田信長の元へ参上した。
「先ず,コンセプトは“守り果せる城”。敵を欺き,虚を突いて仕上げる為に,作業の秘匿と虚偽の宣伝も行ってます」
藤吉郎が,小身だった昔と変わらぬ,割かし砕けた喋り方で信長に報告する。
末席とは言え家臣会議に出してもらえる様になった今では,身分相応の言葉遣いもするが,信長と藤吉郎,秀吉の三人しか居ないこの場では,自然,口調もフランクになる。これは,信長の“ご学友”である前田利家や丹羽長秀,池田恒興等にも言える事で,何より信長がそれを好むのだ。信長が堅苦しい事が嫌いと言うだけではなく,其方の方がより良く,言いたい事が伝わると言うのもある。
「城は小さ過ぎると役目を果たせず,大き過ぎると防御断面が拡がって守りにくい。“仕様”は,如何するつもりだ?」
信長が,冷然と訊く。
子飼いの寵臣であろうとも,仕事上の手落ちは見逃さず,全ては功績で判断するのが,信長と言う男だ。
「はい。常に千五百人程で守り,敵の包攻にも五十日は耐えられる。本体が出動してきた際には,兵糧補給の役割も果たす。場所は墨俣の長良川寄り,洪水を避けて,河から百間程離します。形は,東西に八十間,南北に百五十間の長方形。二間幅の堀に二重の柵と,敵の矢を避けながら鉄砲が撃てる塀を建てます。櫓の数は十基,兵の住む長屋も同じく十基,見張りの為の高い物見櫓も建てます。ついては……」
此処迄,朗々と持論を述べてきた藤吉郎だったが,此処に来て言い淀んだ。
「?如何した,猿」
「……その」
「ああっ,たく,お前はもう!……殿,ついては動員兵力を六千人,それに三百貫の銭と五貫目の銀,序でに千俵の米を下され」
貧乏暮らしが根に染み込んでいるのか,それとも元がネガティブな性格故か,人に物を強請ると言う事に,一々躊躇する藤吉郎に代わり,それを見て業を煮やした秀吉が,後を引き取った。
「……ふっ,良かろう。この際,銭は惜しむんじゃねえ。少々高くついても,戦よりかは安い」
そんな微笑ましい光景に顔を綻ばせながら,信長は二人の案にGOサインを出した。


九月十一日。
陽が高くなった頃,六千人の墨俣築城スタッフの内,木下秀吉の率いる先遣隊は,築城予定地に到着し,急ピッチで作業を開始した。
その日の夕刻,全軍が墨俣に到着すると,信長は六千の兵を三つに分け,それぞれに築城,防衛,補給を任せた。
斎藤方は虚を突かれた。
これ迄,信長の行ってきた陽動作戦が功を奏したのだ。
十三日になって,漸く穂積に駐在する守備隊が出撃してきたが,兵力も準備も足りず,柴田勝家の率いる防衛対に阻まれ,工事を妨げる事は出来なかった。
その間に,木下秀吉が指揮する築城工事は猛烈な勢いで進む。
十三日には堀が堀り上がり,土嚢を積んだ斜面も出来た。
十四日には,二重に柵を巡らし,敷地の中に盛土をして,水捌けの溝を作った。
十五日には,岡部又右衛門等の黒鍬者が,櫓を建て,長屋を組み上げた。木下組の兵達は,城を囲む塀作り,櫓の屋根と壁に竹の簀の子を張って,泥を塗り上げた。火矢での攻撃に耐えられる様にである。


斯うして,昼夜兼行の突貫工事の末に,何とか城は形として顕れた。
後の世に伝えられる,豊臣秀吉の天才的な頭脳がもたらした奇跡の一つ。
世に言う,『墨俣一夜城』である。




そしてこれは,そんな世界から少しずれた時空のお話。











時は,土曜の朝迄戻る。



織田除霊事務所に所属する新米GS・浅野ねねは,守護神である元・貧乏神の福の神(ややこしい)東照大権現と共に,仕事の依頼を受け,博多迄来ていた。
因みに,東照大権現。彼は,今でこそ人間の小娘一人に憑いている下級神だが,その実態は江戸幕府の初代将軍・あの徳川家康公だったりする。
生前,霊能力に乏しかった彼は,死後に神として祀られたものの,力不足で下級神にしかなれなかった。彼より先に豊国大明神として祀られていた嘗てのライバル・豊臣秀吉は,上級神の末席にその名を連ねていた。悔しい彼は,修行を積み,神界において出世する事を誓ったのである。

『博多〜,博多〜。終点,博多で御座います。お荷物,お忘れ物の無い様に……』
プルルルルル……
構内アナウンスと共に,ベルが鳴り響く。
「ふう……」
ねねは,軽やかな足取りで博多駅のステップへ降り立つ。
「凄いね,貧ちゃん。私,寝台車なんて初めて乗ったよ!」
ねねが興奮気味に家康に話し掛ける。因みに“貧ちゃん”とは貧乏神の意であり,即ち家康の事である。
「分かったて,ねね。しつこいのー。それ,何度目や?もう,降りてまったで。たく,何時迄も貧乏臭い……」
「だって……」
ねねは元来控えめで,余り感情を表に出さないタイプだが,貧乏暮らしが長かった為か,斯ういうお金をぱーっと使う(っても大した事はないが,長距離列車の切符と言うのは,意外な程に高価い)事になると,必要以上にはしゃいでしまうと言う悪癖がある。それと,戦闘行為に及ぶとキャラが微妙に変わるのもそうか。それ以外は,少し妄想癖が酷い所を除けば,今時そうはいない位の“良い子”だ。
そんなねねだが,祖父の悪行が祟って取り憑かれた貧乏神も,自宅の隣に住んでいたGS『豊臣秀吉』のお陰で,福の神に転じ,そのお陰か病身の母の体力も戻ってきたりで,最近は順調な人生を歩んでいる。
そして,何と行っても決定的だったのは,とある事件でねねに霊能力が目覚め,豊臣秀吉も所属する織田除霊事務所に,GSとして雇ってもらえた事だ。
ゴーストスイーパーと言えば,高給取りの代名詞だ。更に織田除霊事務所の所長・織田信長と言えば,若くして高額納税者の上位に名を連ねる大物である。天が彼女に与え賜うた才能は,彼女の生活を一変させたのだ。

数週間前にGS免許を取得し,織田除霊事務所第二オフィスの正式メンバーとなったねねだが,今回は,初めて単独で任される仕事である。
密か(と思っているのは,本人だけ)に想いを寄せる支所長・豊臣秀吉の期待に何としても応えるべく,ねねは,意気揚々と博多の地を踏んだ。
「よーし。行くよ,貧ちゃん。いざ,鎌倉ー!」
「博多やろ」



博多の駅前に雄大に聳え立つ,某・大手電化製品開発企業の本社。
此処が,今回の依頼の現場である。
依頼人は,この会社の第一企画開発室々長だ。
「えと……貴方がGS……?」
依頼人は,ねねを見て,思わずそう漏らしてしまった。
「え,ええ。まあ,一応……」
まあ,無理もない。見た目,普通の女子高生で,実際に普通の女子高生なのだから。
「ま,まあ見てくれは兎も角,一応,才能だけは有りますから……」
幼少の頃から,長年世間の荒波に揉まれてきたねねは,自分を卑下しがちだ。この辺り,上司であり師でもある豊臣秀吉に似ている。
「そ,そうですか。……まあ,兎に角,依頼の話にいきましょうか。……如何ぞ此方へ」
「は,はい……!」
ねねは,緊張した面持ちで返事をした。



「此方です」
ガコォーン……
「此処は……」
室長に案内され,ねねは開発室に踏み入れた。
「……何か,変な雰囲気が……?」
「せやな」
「貧ちゃん!」
ポン!と言うコミカルな音を響かせて,それ迄神通力で姿を隠していた家康が,ねねの隣に現れた。
「ま,機密保持が厳重なんは分かるにしても,不自然な位に霊的に安定しとるで,此処。其処等の寺院や神殿じゃ,こうはいかんで」
「流石ですな。実は,その通りです」
前に居た室長が,二人(一人と一柱)を振り返って答えた。
「正に此処は神殿なのです!これこそ,我が社のビデオゲームが驚異的に売れる理由!プログラミングと平行して,様々な呪術や儀式を執り行い,文字通り魂を吹き込む事で,他社の追随を許さぬ大ヒットを飛ばし続けております!」
「そ,其処迄するか……?」
熱弁を振るう室長の余りの勢いに,高がゲームやろ,と家康が呟く。
「其処迄やるからこそ,現在の我が社があるのです。ですが,今回はそれが裏目に出ました」
室長に導かれるままに奥の部屋へ進むと,其処には一つのパソコンが鎮座し,それ以外の設備は目茶目茶に壊されていた。
「こ,これは……」
「如何やらゲームに悪霊が入ってしまった様で,この有り様なんです。今迄にもスタッフが何人も魂を吸い込まれて……。如何すれば良いのでしょう?」
不安気な顔で,室長がねねに訊く。
「う〜ん,如何したら良いと思う?貧ちゃん」
「あんなあ,それ位,自分で考えーな。ねねを信じて任せてくれた,日吉にーちゃんが泣くで」
「そっ,そうよねっ!私だってプロなんだもんね!よーし,見ていて下さい,豊臣さん!ねね,頑張りますっ!」
「……」
冷や汗を浮かべる家康。
織田除霊事務所の半数以上が,秀吉原理主義者なのだから困ったものだ。
「あれ?室長,その方は?」
ねねが別の世界へトリップしかけた時,部屋の外から別の声が聞こえた。
「お,おお,副室長。この方は,“私が”このゲームの除霊を依頼したゴーストスーパーだよ」
妙に“私が”を強調する室長のこめかみには脂汗が浮かんでいた。
「ははぁ〜ん?」
「如何したの,貧ちゃん」
「いやいや!成程な」
「だから,何が」
「ふん。この霊障が,会社にとって致命的なもんであればある程,それを解決したもんの功績は,高く評価されるちゅー事よ」
「詰まり?」
「あのおっさん,見た所,あの若い副所長はんが煙たいんやろな。この騒動を奇貨にして,一気に差ぁつけたいんやろ」
「ふ〜ん」
にやにやと嫌らしい笑いを浮かべる狸親父に,ねねは気の無い返事を返した。
「あ,その事なら」
「何だね,副所長」
「私も,GSを連れてきたんですが……」
「何?」
抜け目の無い部下に,室長の顔が僅かに引きつった。
「入って下さい」
副所長に促され,少年と少女の二人組が,開発室に入ってきた。
「って,あ〜〜〜〜〜〜っ!」
その内の一人の顔を見たねねは,思わず絶叫した。
「な,何ですか,お知り合いですか?」
副所長が訊く。
「長政ちゃん!」
「げ,ねねお従姉ちゃん!?何で,こんな所に……」
「その『げ』,って何?」
「いや,ははは」
「あらあら,ご縁の有る事ネ」
背の低い少年と,チャイナ風のお団子少女。
それは,織田除霊事務所の本部の前に事務所を構える,『不暁GSオフィス』の,浅野長政と益汰長盛だった。
長政はねねの従弟であり,彼女の妹・ややは,長政の家に引き取られ,其処で生活している。
「女の子と二人きりでこんな所迄……。ややに知られたら大変じゃないの?」
他の者と話している時とは違う,さっぱりした調子でねねが話を振る。
「二人っきりっつっても,仕事だよ?しかも,女の子っつったって,こんな蜘蛛女じゃ……」
「そりゃ,悪かったネ」
ズン!
「いった……!」
長盛に思い切り足を踏まれた長政が,小さく悲鳴を上げた。
「とか言って,思いっ切り敷かれてるじゃない」
ねねが,くすくすと笑う。
妹の想い人に,或いはそれよりも親し気な女の子が居ると言うのは,恋に恋するお年頃の女の子にとって笑い事では無い様なものだが,競争率の激しい豊臣秀吉に惚れたねねは,そう言う感覚が最早麻痺していた。
寧ろ,他人の不幸は甘い蜜……ではないが,ねねとて年相応に斯ういう話は好きなのである。
「つーか……別に俺はややと付き合ってる訳でも何でもないんだけど……」
痛みで目に涙を溜めつつも,長政はしゃがんで足をさすりながら,訴える様にねねを見上げる。
「甘いわよ,長政ちゃん。恋は盲目,そして時に不条理なのよ。ややの中では,既に長政ちゃん=未来のお婿さんと言う公式が出来上がっているに違いないわ!」
ビシィ!と人差し指を立て,ねねが言い放った。
……はっきり言って,キャラが違う。
しかし長政は,ああ,この姉妹って似てるよなあ……,とか思ってしまうのだった。



さて。
一悶着あったが,取り敢えず合同で仕事を進める事にした三人。
兎に角,もう一度部屋の中を覗いてみる。
「うわ,こりゃ,酷い」
「で?如何するアルか」
「そうねえ……」
と,取り留めの無い話をしていると……
パシュウッ!
突然,一つだけ無事だったパソコンから怪光線が発せられ,三人を飲み込んだ。
「うわあっ!?」
そして,次の瞬間には,三人はディスプレイの中に姿を消してしまったのだった。
「ああっ,又たしても!しかも今度は,部外者の高校生があっ!如何してくれるのだね,副所長!この責任は如何やって取るつもりだ!?」
「なっ,何を仰るのです,所長!貴方の方こそ……」




……


「……ん ▼」
ねねは,ガンガンと痛む頭を押さえて起き上がった。
「あれ……?私,如何してたんだっけ…… ▼」
そうだ,私は……。確か,除霊に行って……,それで……
「それで……,如何したんだっけ ▼」
……ん?
「な,何?この語尾の三角…… ▼」
「如何やら,俺達,ゲームの中に取り込まれちゃったみたいだね ▼」
「え? ▼」
聞き慣れた声に振り返ると,従弟の浅野長政と,その連れの益汰長盛が居た……のだが……
「……なあに?貴方達,その格好 ▼」
「て言うか,自分見てよ!同じ,同じ! ▼」
「え?あ,ホントだ!? ▼」
良く見ると,何とねね達三人は,スモールデフォルメされ,ドット絵になってしまっていた。
「周りの木や川やなんかも,全部偽物ヨ。触ろうとすると,見えない壁に阻まれてそれ以上進めナイ ▼」
長盛が,ゲームに入っても相変わらずの似非大陸訛りで話す。
「そ,それって,矢っ張り悪霊の仕業って事? ▼」
「多分ね ▼」
「ええっ!ど,如何すれば…… ▼」
「そうだよね,まさかこんな悪夢みたいな所で死にたくないもんね ▼」
「折角,豊臣さんが任せてくれた初仕事なのに,失敗なんて嫌ぁっ! ▼」
「…… ▼」
ねねの場違いな嘆きに,長政も長盛も黙り込んでしまった。
ねねはこの中で一番の年長者で,霊力量も最も高いのだが,霊能者としては素人同然の上,世間ずれしてないので,感覚が惚けている所がある。……余り頼りにしすぎるのは危険らしい。
「と,取り敢えず,パラメータを確認しよっか ▼」
長政が作り笑顔でそう言うと,突然,空に謎の黒い空間が出来,更に,その中に文字が羅列され始めた。
パーティ,アイテム,オプションなどと並んでいる項目の中から,如何やったのか長政が“ステータス”と言うのを選ぶと,各人の能力値が表示された。


浅野ねね Lv,1
     HP/14
     MP/350
     AP/100
DP/5
SP/20
     装備/神通根
     必殺技/フェザーブレッド・エアカッター・貧ちゃん・ゴッドバード

浅野長政 Lv,3
     HP/54
MP/45
AP/32
DP/29
SP/30
装備/霊体ボウガン
     必殺技/ミンミン蝉・油蝉・蜩・寒蝉

益汰長盛 Lv,2
     HP/44
MP/49
AP/27
DP/24
SP/37
装備/神通ヌンチャク
     必殺技/霞網・飛絲・影蜘蛛・甲殻変化


「…… ▼」
一同,口を噤んでしまった。
「何だかなあ……。何か初期レベルっぽいのに,必殺技は全部覚えてるのは何でよ? ▼」
「未だ製作段階だからじゃないアルか? ▼」
「び,貧ちゃん,必殺技になっちゃってる…… ▼」
「つか,偉い偏ったステータスだね,ねねお従姉ちゃん ▼」
「凄いアルな……。しかし,一番防御力有る長政が霊体ボウガン持てて如何するネ? ▼」
「んじゃ,交換コマンド使えば良いだろ。……て言うか,何でお従姉ちゃんや長盛の必殺技は格好良さ気なネーミングなのに,俺の必殺技は蝉の種類なの……? ▼」
「分かり易くて良いヨ ▼」
「そう言う問題か…… ▼」

そんなこんなで一頻りぐだぐだと感想を述べ合った三人は,それで結局如何するのかと言う事になった。
「多分,このゲームをクリアしたら邪霊の呪いも解けると思うんだけど……,俺達,初期レベルっぽいって事は,もしかして,このゲーム最初から最後迄クリアしなくちゃいけないって事かな? ▼」
「まあ,多分そうだろうネ。けど,製作段階なら,体験版みたいなもんでショ?直ぐに終わるヨ ▼」
「いや……,製作段階って事は,製品版ではカットされる様なのもそのままって事だから……,寧ろ,長いんじゃないの? ▼」
「……? ▼」
長い赤貧生活で,勿論ビデオゲームなんてやった事の無いねねは,話と展開に置いてかれて,頭の上に疑問符を浮かべ呆然としている。
「ま,関係ないヨ。どの道,クリアしなきゃ出れないんだからネ ▼」
「そうだな……。つー訳で,お従姉ちゃん ▼」
「え。な,何? ▼」
「何かお従姉ちゃんが主人公みたいだから,頑張ってね? ▼」
「え,え? ▼」
「何なりとご命令を,リーダー! ▼」
長盛が,巫山戯た顔で恭しく適当な事を叫ぶ。
「頼むよ,お従姉ちゃん ▼」
長政も,面倒な事をねねに任す気まんまんだ。
「う,うん……?よ,よし,では行くぞ,皆の者ー!出陣じゃー ▼」
何時の間にか手にしていた神通根を振り上げ,ねねは高らかにゲームの始まりを告げた。
そこはかとなく台詞が世界観が合ってない気がするのは,多分気の所為だろう。

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