ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と 第11話 後編 』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 3/22)



――――・・。


「・・・・あっ!!」

「・・!?タマモ!?」

強大な地鳴りが足場を崩し、タマモが地へと放り出される。それを両手でなんとか押しとどめた後、横島は少女を引き寄せて・・

「・・大丈夫か?タマモ。」

「・・う・・うん。だけど・・今度は何が・・」
本当に・・今日はなんという日なのだろう。まるで一生分の不測の事態に狙い撃ちされている気分だ。

苦笑する。
そのまま、タマモは震えるように肩を押さえて・・・・

気づけば、グニャグニャと歪んでいただけの街並みは、じょじょに流線型の柱へと姿を変え始めている。

「・・・幻影が・・実体化してるの?」
信じられないといった面持ちで彼女はつぶやく。

・・・馬鹿な・・・。ありえるはずがない。
幻術は所詮、幻術。現実にカタチを持つなど・・・・それに・・・先程、届いたあの声は・・・・・

「・・まさか・・スズノが・・?」

タマモが声を漏らそうとした・・・・その時。


「横島く〜ん!!」

背後から、まばらな足音が聞こえてきて・・・

「?お前ら・・どうしてここに・・。逆方向に出たはずじゃあ・・」

駆け寄ってきたピート、愛子、タイガーの3人に横島は目を丸くする。

「僕たちにもよく分かりません。・・・それに見てください。」

言って、ピートは周囲を見渡した。


瞬きにも満たない時間の後、音も無く世界はその様を変える。
見知った街の情景が・・溶けるように崩れていき・・・

・・・。

そこに広がっていたのは、都市や文明などといったものとは、おおよそ無縁の空間。

・・・・透き通った水晶ようなもので構成された・・・・・
数十・・・数百キロにわたる巨大な祭壇だった。

(・・・・・・?)

闇に浮かぶ建造物・・その中央に自分たちはいる。・・月が近い・・。相当な高度に置かれていることが見て取れた。


「・・・幻想的でしょう?あなたたちの死に場所には勿体ないくらい・・・。」

静寂を破るように声が響き・・・

「・・・・誰だ・・・?」

「ようこそ、私の世界へ・・・。歓迎するわ。」

視界の先にいる、美しい銀髪の少女が口を開いた。その青い瞳には、殺意と憎悪が渦を巻いている。
薄手の衣からのぞく肌は・・・光に照らされ、まるでもう一つの月のよう・・

・・。

ひぃ、ふぅ、みぃ・・・。言いながら、彼女は目を細めて・・・

・・・しかし、不意に獲物を数える動作を止めてしまう。彼女の視線が向かったのは・・たった一点。
金色のポニーテールを持つ、妖狐の娘。

「・・・・・。」

少女は一転したやわらかな表情で微笑んで・・・

「・・・タマモ・・・姉さま・・・。」

「・・・・・・・・?」

警戒の色を示していたタマモの顔が、一瞬、呆けたようなそれになる。
自分よりも少し年上に見える銀髪の少女。その口から、聞きなれた単語が紡ぎだされて・・・・・


―――・・タマモねーさま・・・。

舌足らずな口調で自分を呼ぶ妹と・・何故かその姿が重なった。

・・・。

「・・・スズ・・ノ?・・スズノ・・なの?」

タマモはうわごとのように繰り返す。
前に踏み出す彼女の様子を・・一同は固唾を飲んで見守っていた。

「・・・はい。姉さま・・・ご心配をおかけしてごめんなさい・・。」
言って、スズノも地へと降り立ち・・・そうして愛しげに姉の首へと腕を回しながら・・

「スズノ・・よかった・・・。」

「・・・姉さま・・もう・・大丈夫ですから・・私はどこにも行きません。」

そして・・・タマモの耳元に・・一つ、ささやいた。


「・・姉さまが目を覚まされた時には・・虫けらが一匹もいない世界をご覧に入れます。
 人間が・・神が・・悪魔が消えた国に・・2人で王として君臨しましょう?」


――――・・!?

タマモが身を離すよりも早く、彼女の首筋に手刀が決まり・・・

「!!タマモっ・・!」

「これから起こる惨劇・・姉さまにお見せするのは忍びない・・・。」

意識を失い、崩れ落ちるタマモを横たえると・スズノは凶悪な笑みを浮かべる。


「さぁ・・あなたたち・・誰から死にたい?」

声をかける間もなく、支配者が断罪を宣告する。

・・・・。
・・・・・・・。

次の瞬間、信じられないことが起こった。

スズノからもっとも離れた位置に控えていたはずのタイガーの背後に・・・・

「ぬおっ!?」

「ふふっ。・・あなたは初めて見る顔ね?」

スズノが・・回り込んでいる。

(・・・・な・・・・に・・?)
横島は目を見開きながら、2人へと振り向いた。
・・全く反応・・どころか、スズノの動きを視界に入れることすらできない・・・

「・・会ったこともない私のために来てくれたの?優しいんだね・・お礼にキスしてあげようか?」

妖艶なしぐさで・・なおも笑うスズノの姿が映ったのは・・数秒のこと。
・・・タイガーの視界が暗転する。

「・・・ただし・・・死の接吻だけど。」
スズノの左腕が朱で染まる。

「タイガー!!」

「そう恐い顔しないでよ・・まだ殺してないわ。気が変わったの・・まずは全員を気絶させて・・処刑はメンツが揃ってから。」

その言葉をかわきりに、ピートが一気に彼女との距離をつめる。
ヴァンパイアの能力を全開にして、スズノの死角を完全に捉え・・・

「ごめん・・・スズノちゃん・・。」

魔の霧によって隠された鋭い打撃。
・・・・が、スズノはそれに毛程の反応も見せはしない。

「・・・ヴァンパイアハーフ・・か。惜しいな・・人間の血が混じってなければ見逃してあげたのに・・」
言いながら、ピートへと目を向ける。
ただ・・それだけだった。

それだけで・・・・・・

「・・・か・・っ・・はっ・・・・!」

ピートの体躯は凄まじい勢いで床へと叩き伏せられる。

・・・。

「・・・・・・・。」

・・・話にも・・ならなかった。この少女の強さは・・・桁が違う・・・。
あれだけの動きを見せてなお・・スズノは悠然とたたずんでいる。

「・・・・っ!!?」

「・・・・愛子!!」

妖狐の瞳が、わずかな時間、愛子へと向けられた。間に割って入ろうとする横島に、スズノは少しだけ息を吐いて・・

「心配しなくても、その子には手を出さないわ。私が憎いのは私たちを殺そうとした奴ら・・人間と魔界に与する魔族だけ。
 彼女は同胞だもの。」

あっさりと言ってのけ、さらには・・「獲物はちゃんと別にいる」と言わんばかりに、ゆったりと横島へと踏み出していく。

「ねぇ?机妖怪さん?少しだけ夢の世界を楽しんでいてくれる?」

スズノの周りから、緑色の発光体が放たれる。それを目にした途端、愛子の瞳からは逆に光が失われ・・・

「よこ・・・しま・・く・・・」

まるで糸の切れた人形のように彼女の全身から力が途切れていく。

「・・・・っ・・!」

「・・さて・・・・と。」

満足気に頷いた後、少女は強大な殺気を解き放つ。

「メインディッシュが残ったか・・。あなたのその力・・封じさせてもらうわ。応用次第では・・少し厄介なことになりそうだから。」

「スズノ・・・なんで・・」

沈痛に顔を歪める横島。それを目の当たりにして、スズノの声音から、感情の色が消えていく。

「生憎、あなたのことなんて知らないし・・語る言葉もないわ。始めましょう?勝負にすらならないと思うけど。」

                     
                         ◇


―――水晶の祭壇 地表付近


「結局、来てしまったな・・。」

「よかった・・まだ全員、かろうじて無事のようですね。」

限りなく澄みきった水晶の床を踏みしめながら、頂上へと向かう人影が2つ。

「・・しかし、姉上も無茶をする。上層部は静観を決め込むつもりなんでしょう?」

「お前が人のことを言えるか。先に飛び出したのはどっちだ。」

姉と呼ばれた女性は、多少バツが悪そうに視線をそらし・・・
ワルキューレとジークは対象へ向けて、一直線に駆けていた。

もっとも迷宮のように入り組んだ通路を走っているのだから・・到着はもう少し先になりそうだが・・・

「・・どうだ、ジーク。あの妖狐・・私たち2人で手に負えると思うか?」

「何度聞かれても無理なものは無理です・・。見てくださいこの記録・・ホラここ!!
 何ですかこの平均霊波出力19万マイトっていうのは・・・ほとんど悪い冗談ですよ。」

まるっきり、魔神クラスだ・・。数字を見て頭が痛くなったのかジークは書類を投げ捨てて・・・
(携帯している胃薬も飲もうとしたが、残念なことに水がかったりする。)

第一、横島たちが今、生きていること自体奇跡に近いのだ。
人間の霊力・・いや、自分たちでも敵の前ではそう大差ないが・・では、秒殺されても全くおかしくないレベルの相手。

「・・・だろうな。アシュタロスにけしかけようという案が本気で検討されたほどだ・・。半端ではない。」

今回のミッションの目的は・・殲滅ではなく救助。
横島と美神が霊波同調を行えば、あるいは勝ち目があるかもしれないが・・
スズノはおそらくそれに勘付いている。むざむざ両者を引き合わすようなマネはしないはずだ。

・・・。

「急ぐぞ・・。今が間に合うか、間に合わないかの・・・瀬戸際だ。」

「はい!」

言って、2人は踏み出す足に、さらに力を込めるのだった。


〜続きます〜


『あとがき』

19万マイト!!!?(笑
一応『アシュ様パワーの3分の1』という設定です。
原作を何度も読み返したのですが・・どうにも彼の霊力の特定は難しいですね
ヒャクメと7ケタは霊力が違う・・ということはもっと高いのかもしれません。

というわけで、微妙にアシュタロス編とリンクさせてみました。
もしもGメンの指揮を美智恵がとっていなかったら、
スズノとアシュタロスがバトルを展開して、おそらく南極大陸は消失していたのではないかと・・(汗
あ・・あと、仕掛けとしてスズノの言動に一つだけ不可解な箇所が用意してあったりします。

話は変わって・・また妹の登場です(笑
横島×タマモの絵って本当に少ない・・と自分が嘆いていたところ、なんと彼女が一枚描いてくれまして・・

なかなか、いい感じの出来なんですが・・鉛筆画で色もほとんど着色してないので・・迷っているのですが・・
もしかしたら煩悩の部屋に投稿するかもしれません。それにしても・・・本当にサンキューベリーマッチ!>妹

次回は・・恐怖の第12話・・通称『るろうに西条 〜平成剣客浪漫譚〜』をお送りします(激爆)
それでは〜

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