ザ・グレート・展開予測ショー

ある少年の一日(前編)


投稿者名:みはいろびっち
投稿日時:(04/ 3/21)


「えと…、好きです。僕とつきあってください。」

彼女と出会って五年、少年はついに思いのたけを口にした。
五年、一口に五年といってもこの年頃の五年といえばとても大きな意味を持つだろう。
彼に関して言えば実に人生の三分の一にも当たる期間である。
そしてその五年間を彼女ととてもいい関係ですごしてきたという自負のある彼にはそれなりの自信があった。

「え…」

彼女は突然のことに少し驚いているようだ、普段はクールな彼女のこんな表情は珍しく新鮮だが今の彼には残念ながらこの表情を楽しむ余裕はないようだ。
彼女は少しうつむいている。

ここまでは予定道理だ。
これまでに彼の頭の中で行われてきた四桁に及ぶシュミレーションの結果、実に87%の確率でこの反応だった。

僕は落ち着いている。
彼は冷静に分析をする。
この後の彼女の反応は74%が成功、23%が「お友達でいましょう」、11%が失敗、残り2%は何者かの乱入(?)だった。
お友達でいましょうと失敗との間にはどのような違いがあるのかはなはだ疑問ではあるものの彼の中ではその二つの間には大きな違いがあるらしい。

大丈夫、決して分の悪い賭けではないはずだ。
もし、万が一、仮に、何かが間違って失敗だったとしたら,そのときは男らしく無言で去ろうと心に言い聞かせて彼は返事を待つ。

「…ごめん」
!!!!
「なんで???どうして???」

…あまり冷静ではなかったらしい。


「僕がただの人間だから?それともまだ高校生だから?」

「え」

「僕の家族が問題なの?大丈夫だよ、みんな動物好きだし、いざとなったら二人で駆け落ちもあるし!」

「いや、あのね、おーい」

「それともやっぱり車なの?男の価値はやっぱり車で決まるって言うのか〜〜〜」



ボウッ



「あつっ、か、髪が…。燃える〜」

服をばたつかせ必死にどこからともなく現れた火を消そうとする少年の隣で少女はにこりと微笑んでいる。

「落ち着いた?」

「は、はひ…」

「あのねぇ、私は別に人間だからどうとか、車がどうとかは気にしてないわよ。大体あんたまだ高校生でしょうに…。」

「へ?じゃ、じゃあ、なんで…」

「それは、えーと、その、まぁ…」

言いよどむ少女を前にして少年の頭の中ではこれまでの四桁に及ぶシュミレーションの中でも一度としてなかった結果が導かれつつあった。

「いわゆる、その好きな人ってやつ、というかちょっとだけ気になるというか、まぁそんなようなのがいるような気がしないでもないのよ。」

耳の先まで真っ赤に染めた彼女はこの上なくあいまいでありながら、誰が聞いても一目でわかる返事をくれたのだった。


燃え尽きる前の炎の最後のきらめきか、少年は最大の疑問を口にしたのだった。

「…やっぱり、キツネ?」

「違うわよっ。ニ・ン・ゲ・ン!ついでに言うなら車も持ってないわよ。」

そして彼は燃え尽きたのだった…。




真友康則15の春であった。





まるで仕事に疲れた中年サラリーマンのような哀愁をその背に漂わせつつ、川沿いの道をひとり歩く少年がいた。

「…まさか。…何が足りなかったんだろう…。こんなはずでは…。…やはり油揚げをもっていかなかったのがまちがいだったんだろうか…。」

怪しげにぶつぶつとつぶやきながら歩く少年の横では、親子連れのほほえましい会話が交わされていた。

「ママ、あの人なにか言ってるよ。」

「こら、指をさすんじゃありません。」

少年はよりいっそうの哀愁を漂わせるのであった。



すでに不審人物と化していた少年に一人の青年が話しかけてきた。

「あれ、君は確かタマモの友達じゃなかったっけ?何回かあったことあるよな。」

「え?」

「たしか、名前は…、そう、マリモ君!だったっけ?」

「ま、真友です…。」

「…。ま、まぁよくある間違いだよな。」

あさっての方向を向きつつさわやかに話す青年とは確かに何度か顔をあわせたことがあったらしい。

「えっと、横島さん、ですよね。GSの。」

「そそ、ちょうどさっき仕事が終わって帰ってるとこなんだけど…。」
そこまで話して横島は小首をかしげた。

「どうしました?」

「いや、君、なんかあったのか?顔に縦線が入ってるぞ。」

「え、いや、その…。」

言いよどむ少年の様子から横島はなにかを悟ったかのように大きくうなずく。

「あぁ、その年頃の青少年の悩みっていやぁきまってるよな。」

「えーと、まぁ、なんといいますか…。」

「いやいや、言わんでいい、言わんでいい、ここはこの人生の先輩に任せなさい。」

「へ?」

まるで相談を持ちかけられた教師のように優しい目をして肩をたたく横島に、そこはかとない不安を感じる少年であった。

「そうだなぁ。よし!飯でもおごってやるよ。オレの部屋に来ないか?そこで青春のすばらしさについて語り合おうじゃないか。」

「そんな、悪いですよ…。」

「若いもんが遠慮なんかするんじゃないよ。ちょうどオレ今日が給料日だったんだよ。心配すんなって。」

プロのGSといえば高給取りの代名詞といってもいい職種である、たしかに遠慮をする必要はないのだろうが、少年としては自分のふられ話などそれほど深い交友があったわけでもない相手にするような話でもなくなお躊躇っていた。

「ほんと遠慮すんなって、タマモなんかしょっちゅう人にたかるけどまったく気にしてないぞ。」

「え。」

「さ、いこいこ。」
まさに悩みのすべてを占める少女の名を聞き、少年が一瞬硬直したところを容赦なく連行していく横島だった。

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