ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と 第10話』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 3/19)



・・・・光が唸る。

鋭い斬撃がいくつも繰られ・・・無数の鮮血が飛び散った。

「・・・・くっ!」

「ぬぅっ!!」

いかなる舞いよりも美しく・・この世のどんな動きよりも凶悪に・・・
2人の剣士が『死』を描く。

―――・・・。

「以前よりも太刀筋が冴えておるな・・西条殿。」

「・・どうしても負けたくない男がいてね・・。腹立ちまぎれに鍛錬していたら、いつの間にか腕が上がってしまった。」

霊力で張り合えないのなら・・もはや追いつく術はコレしか残されていないだろう。
少し嘆息した後、西条は剣を上段に掲げて・・・

「事務所にいたあの青年か。なかなかに見所のある若者だな・・。」

「・・・僕もまだまだ若者のつもりなんだがね。」

半眼で叩かれる軽口。コカトリスは・・それを薄く笑った。


銀の月。
突き刺すようなその輝きは、まるで血を求めるかのよう・・・

・・死闘は際限なく続いていく。



〜『キツネと姉妹と約束と その10』〜



それはまるで夢のような光景だった。そう、夢は夢でも悪夢のような・・・・・

・・・・。

「・・これは・・?」

あっけに取られてつぶやく横島の目の前で・・街がその輪郭をグネグネと曲げる・・・空間が闇に霞み始める。

突如としてそれは起こった。
ピートたちと分かれた直後に生じたのは・・
抽象画に描かれるような・・いや、そんな比喩が追いつかないほどの巨大な歪み。

「幻術ね、それも特大規模の・・」

そばに控えていたタマモが、息を飲みながら口にする。

「多分、スズノが・・・。もしかすると、さっき横島が言ってた・・・」

「・・暴走・・か・・。何でまた急に・・」

横島の全身に薄ら寒い感覚が走る。

まさかスズノは・・こうなることを予期して、自分たちの前から姿を消したとでもいうのだろうか?
・・・スズノが力に飲まれかけている?

・・・・。

(・・・・くそっ!)
このままでは・・・あの少女は・・



「横島・・。」

「・・そんな顔すんなって・・。あいつを連れ戻せるのはオレたちだけなんだからな・・。」

「・・・・・うん。」

気丈に一つ頷くと、タマモは闇へと足を踏み入れて・・
そして・・・横島は、わずかに顔をうつむけた。

前回の暴走のきっかけ・・・それは分かる。タマモの・・姉の命が危険にさらされたからだ。
だが・・・今回は・・・・
(・・どうしてスズノが暴走しなきゃならない?)

・・・一体・・何故・・・?

         
                       ◇


「令子!?」

「・・・ママ!?それに唐巣先生も・・!」

闇に包まれた街と・・見知った声。それに・・美神たちは弾かれたように足を止めた。

「あなたたち・・どうしてここに・・。」
Gメンの制服を着込んだままの美智恵は一瞬、信じられないといった風に眉を上げて・・・

「・・・そう。やっぱりスズノをかくまっていたのは、あなたたちだったの・・。」
しかし、合点したうようにうなづいた。

「ママ・・一体何が起こってるの?車は急に動かなくなるし・・それにこれって・・」
言って、美神は周りを見渡す。

目の前に広がる、陽炎のように揺れる世界。
それはどこか・・・人が本能的に嫌悪する狂気を孕んでいる。

「・・・18年前以上だね。これは・・・」
焦燥をあらわに唐巣がつぶやく。

「18年前?」

「引き受けた依頼でたまたま美智恵君と一緒になってね・・そのときもこんな風に・・。これは覚醒の前兆だよ・・・スズノくんの・・。」

スズノが本来の力を・・・本来の姿を取り戻すための儀式。強力すぎる少女の霊力に当てられ、変形した・・幻影の迷宮。

「・・・?難しいことはよく分からないでござるが・・その・・スズノはどうなってしまうでござる?」
心配そうに・・・すがるように・・・シロは美智恵の顔を見つめて・・

「・・・それは・・・」
言葉を濁す美智恵に、唐巣は少しだけ視線を投げかけた。

「美智恵君、もう隠し事をするのはよそう。事情を彼女たちにも話すべきだ。」

「・・・・・・。」

言われて・・・


美智恵は、なおも押し黙るが・・やがて3人の方へと向き直り・・

「・・そうね。あなたたちには、もう知る権利がある・・。」

意を決したように口を開いた。

「・・これはGメンの暗部に関わることだから、他言無用でお願い。
 それと私も神父も当時のGメンの内情についてはよく知らないから、多少、一方的な見解が入ると思うけど・・」

「・・かまいません・・・。どうか・・・お願いします。」

おキヌの言葉に頷くと、美智恵は一つまた一つと・・記憶を手繰り寄せていく。

それは今回の事件の発端。
・・・・昔話のはじまりだった。

                     ◇


〜appendx.9 『崩壊』



―――・・スズノちゃんは、この山に来る前・・・何をしてたの?

となりを走る少女が笑う。
息が切れてつらいはずなのに・・それでも気丈に微笑んで・・

―――私は、ねーさまを探してずっと歩きまわっていた。・・こうして逃げている間も・・目下、捜索中。

わざと冗談めかして言ってみる。
強がりでも・・・笑顔を見られるなら、それでよかった。

・・・・・。

辺りを包む真っ黒な闇。気がつけば、気配が感じられるのは私たち2人だけになっている。

・・・他のみんなはどうしたのだろう?


―――・・でも、いいな。私は・・家族の顔、覚えてないから・・やっぱり・・うらやましい。

―――?それなら、あいつらから逃げ切ったら一緒にねーさまを探そう。大丈夫。ねーさまは優しいから・・
   もう一人ぐらい妹が増えても・・・多分、問題ないぞ。


そんな言葉に・・少女はこれ以上ないほど目を輝かせて・・・

―――本当?じゃあ、スズノちゃんも家族になってくれるの?

・・・。

私は少し照れくさくなった。
意味もなく口ごもってしまい・・・だけど、それが嬉しくて・・・


・・・・だから、生き延びたいと思った。

生きて・・ここを出て・・
ねーさまとこの少女と一緒にいれたら・・・きっとそれは幸せなことで・・・


―――・・名前・・・。

―――?・・・え?

―――名前が無いって言ってたから。昨日、私が考えた。すごいぞ、力作だぞ。

言って、私は彼女の顔へと目を向けた。
そこにあったのは・・やはり笑顔。本当にうれしそうな・・・幸せそうな・・そんな顔。

・・・・。

・・だけど知らなかった。

それが自分の目にする・・・・・
彼女の最後の笑顔だということを・・・



次の瞬間。

空を引き裂くような音が鳴り響き・・・

「・・・・スズノ・・・・ちゃん・・・」

そして・・・

目の前に広がったのは―――――――




―――・・・・・。




あの日と・・同じだと思った。

暗い。

空には月が浮かんでいるが・・明かりの足しにもなりはしない・・・希薄な光を放っている。


「・・・ねー・・さま・・・。」

体に力が入らない。命を絶つことすら・・許されない。




―――― 憎いのだろう・・?奴らが・・お前を殺そうとしたあいつらが・・! 


「・・ちがう・・憎くなんて・・・友人がいるんだ・・!私は・・そんなこと・・・」


―――― あの少女が殺された時も・・・そう思っていたか?


「・・!・・あ・・・・う・・・」


―――― まさかお前は・・自分だけ幸せになろうとしていたのではあるまいな?血に塗れた貴様が!?
     クハハハハハハッ!!!!虫のいいことだ!この卑怯者めっ!!

「・・ちが・・・ちがう・・私は・・・っ・・わた・・・・」


かぶりを振りながら、スズノは悲痛な声を漏らし続ける。
心の中から響く何者かの声。それに涙を流しながら・・・・・・・

苦しい・・・抑えきれない・・・・・


・・・・誰か・・・・たすけて・・・・・


―――― さぁ、座興は終わりだ。憎しみを開放しろ。お前の力見せてみるがいい!!



「いや・・だ・・。いや・・・・・・いやああああああああああ!!!!」




・・・・世界が・・・共振する・・・。



                     ◇


上空からスズノを探していたマリアが・・『彼女』を見つけたのはしばらく後のこと。

・・・・。

それはまるで剣(つるぎ)のようだった。
月の光に身を包み・・・そして同様に闇を放つ・・・・。

銀の長髪に、青い切れ長の瞳を持つ・・おそらくは十代後半の少女。
氷のような美貌・・そして、虚ろな眼差し・・。


「あなたは?」

マリアがつぶやく。
その問いに・・少女は薄く・・ただ薄く笑って・・・・・


「私はスズノ。妖狐スズノ・・。あなたたちに破滅をもたらす・・・・死の化身。」


・・・・そう、名乗ったのだった。


〜続きます〜


『あとがき』

みなさん、いつもありがとうございます。
タマモのSS企画が開催されることを永遠に待とうと思うかぜあめです(爆)こんにちは〜

スズノが不良に!!(違
成長したのはともかくとして、口調まで変わってしまって・・・ストーリーの暗さにも拍車をかけてます(笑
ハッピーエンドまでの道のりはまだまだ遠い・・がんばれ横島!

あ・・あと、妹にログがまたがりすぎて、シリーズを通して読むのが大変だと指摘されまして・・
今まで書いた分を加筆修正して創作文集に掲載しようかなぁと考えております。
『姉妹』が終わったら『ウェディング』が向こうの方で始まるという感じになる・・のかな。

展開予測ショーでの連載が止まるわけではないので、ご安心ください〜(汗

さて・・次回もかなり大変なことになりそうですが・・引き続きお付き合い頂ければ幸いです。それでは〜

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