ザ・グレート・展開予測ショー

妙神山の休日 その3 後編


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 3/18)










コンコん

パピリオの部屋をノックするとすぐに反応がある。

「はい、だれでちゅか?」

「おれだおれ、横島だよ。」

すぐ部屋の中から走ってくる音が聞こえ、次の瞬間にはドアが開いた。

「ヨコシマ遅いでちゅよ、待ちくたびれたでちゅ。」

「悪い悪い、少し話が長引いちゃってさ。」

パピリオは横島の手を取ると、部屋の中へと引っ張っていく。
部屋の中をざっと見渡してみると、思ったよりも片付いていた。
ぬいぐるみや脱ぎかけの服などがベッドに落ちているが、まあその辺は愛嬌と言うものだろう。

あれ?
よく見ると、落ちてる服ってシロとタマモが今日着てきた服が混じってるし・・・

目を床へと持っていくと、黒をベースとした服にやたらひらひらが付いた服を着せられた、
謎の物体が二つ転がっている。
よく見なくてもシロとタマモなのだが、二人とも精根尽き果てた感じでぐったりしていた。

「えっと、ピンクハウス系だっけか。」

「ちがうでちゅ、これはゴスロリ系と言うでちゅ。」

「ほ〜」

取り敢えずタマモの前にしゃがみこんだ横島は、
タマモの頭に付いているひらひらの付いた鉢巻みたいな物をつまんでみる。
これはなんと言ったっけか、ちょっと考えてみるが興味の無い横島にはさっぱり分からなかった。
取り敢えず見なかった事にした横島は、小竜姫が言っていた事をみんなに伝える。

「小竜姫さまが、ご飯前に自慢の銭湯に入ってきてと言っていたんだが、みんな入ろうぜ。」

「良いでちゅね、行くでちゅ。」

パピリオがすぐに賛同したので、横島は力尽きている二人を起こす事にした。

「お〜い、シロ、タマモ、おっきろ〜」

だが、横島の声に二人はまったく反応を見せない、
こりゃ駄目かなと思っているとパピリオが二人の前に立った。

「おきないと次の服着せまちゅよ。
次は今までの中で、一番露出度を上げたせくし〜な服でちゅ。」

「「はい、おき(ます)(るでござる)。」」

一瞬で立ち上がる二人、今までどんな服を着させられたんだろうと考えてしまう反応だ。

「もう、恥ずかしい服は嫌〜」

「ひらひらは邪魔でござる・・」

二人がこんなに嫌がる服を、横島はちょっとだけ見てみたいと思ってしまう。
しかし、部屋をノックする音で、それは駄目になってしまった。

コンコン

「はい、だれでちゅか?」

「ジークフリードです。
小竜姫さまに、みなさんを銭湯まで連れて行くよう言われました。」

「わかったでちゅ、ちょっとまってるでちゅ。」

パピリオは自分のお風呂セットを用意し始めた。
横島は自分たちの分はどうするのか考えていると、外からジークが話しかけてくる。

「横島さんたちのお風呂セットは、持ってきているので大丈夫ですよ。」

あいつはエスパーか・・・

やがて用意が終わったパピリオは、横島を引っ張って外に出ようとする。

「さ、行くでちゅ。」

「ちょっと、服ぐらい着替えさせてよ。」

「さすがにこの服で外を歩くのは嫌でござるよ。」

立ち上がった二人は、なんと言うかお人形さんみたいだった。
二人とも元は悪くないので、こう言う可愛い系の服を着ると普段を知っている横島は笑いそうになるが、
見栄え的には十分すぎるほどだ。

「シロもタマモも似合ってるじゃないか、可愛いぞ。」

横島の感想にシロとタマモは過剰に反応する。

「ば、馬鹿言わないでよ。」

二人とも顔を真っ赤にしてしまう。

「私が作った服に文句あるでちゅか、そのまま行くでちゅよ。」

結局文句を言う二人を、パピリオが強引に連れ出して外に出る。
外に居たジークは、二人を見てとくに驚いたふうでもなく、こちらですと案内を始めた。




ジークに案内されたのは、修行場の入り口だった。
見た目からして銭湯の入り口だったが、中は異空間になってたはずだ。

「ジーク、ここって修行場じゃないのか?」

「中の空間をつなげ直せば、大抵の場所はここから行けるんですよ。
今は銭湯につなげてますから、問題ありません。」

「なるほど。」

ジークは入り口まで案内すると、戻りますと言って帰ろうとする。

「お前も一緒に入らないのか?」

実は先ほどからずっと嫌な予感がしている横島は、なんとなくジークを誘ってみた
しかしジークは丁寧に横島の誘いを断ってくる。

「いえ、私は小竜姫さまの手伝いがありますから今回は遠慮しておきます。」

「手伝いって夕食のか?」

「はい、あまり手伝いすぎると怒られてしまうのですが、今日は量もありますからね。
少しぐらい手伝わないと、遅くなってしまいます。」

それだけ言うと、ジークはみんなに挨拶して去って行った。

「さ〜ヨコシマ入るでちゅよ。」

パピリオは横島の手を引っ張って、一緒に男と書かれた入り口に入ろうとする。

「お前はこっちでござる。」

そうはさせまいと、シロがパピリオの手を引っ張る。
油断していたパピリオは、あっという間にシロにつかまってしまった。

「なにするちゅか。」

放せともがきながらシロに抗議する。

「そっちは男湯でござる、先生と一緒に入るのは許さんでござるよ。」

「まあ、確かにそうだな。
パピリオ、二人と一緒に入って来い。」

「う〜、まあ良いでちゅ、さっさと中入るでちゅよ。」

横島が言うとやたら素直にパピリオは言う事を聞いた。
もっと我が儘を言うと思っていただけに、横島は拍子抜けしたぐらいだ。

横島は三人と別れて、中に入ると服を脱ぎだした。
天井のほうで少しだが女湯の脱衣所と繋がっているので、三人の話し声がよく聞こえる。

「お前ら、そろいもそろってあまり胸無いでちゅね。」

「あんたに言われたくないわよ。まったく無いじゃない!」

タマモが抗議の声を上げている。

「ふん、私にはまだ未来がありまちゅ、終わった胸と一緒にしないでほしいでちゅ。」

「なんですって〜」

とっても賑やかだった。
話し相手もいない横島は、さっさと着替える事にした。
そこでジークが用意してくれたお風呂セットの中に、見慣れないものがある事に気が付いた。

「これはなんでござるか?」

「それは湯浴み着と言うでちゅよ。」

「なによそれ?」

横島が手に取った物について、隣でも話しになっている。

「お風呂に入るときに着る服らしいけど、めんどくさいので着たことは無いでちゅ。」

「へ〜こんなの始めてみるわね。」

先ほどからの嫌な予感が、だんだんと現実になってきた気がする・・・
小竜姫さまなら喜んで間違いを犯すが、あの三人だと起こす気も起きないので、
早めに手をうつ。

「お〜い、三人とも〜」

横島が声を掛けると最初驚いたようだったが、すぐにシロが返事を返してくる。

「なんでござるか先生。」

「湯浴み着な、着たほうが良いと思うぞ。」

「なんでよ、横島。」

タマモがすぐ切り返してくるのだが、そう言われてしまうと横島も困ってしまう。

「いや、なんとなくだ、とくに理由は見当たらないが。」

横島だって確信があるわけでは無い、確かめる度胸も無い!
いまさら入らないわけにはいかないのだ、なら知りたくない事は出来るだけ後の伸ばす。

「あ〜はいはい、分かったわよ。」

なんとも投やりにタマモが返事をしてきた。
本当に分かってるのか謎だったが、これ以上言うのも無駄だろうと判断する。

取り敢えず自分はしっかり付けて、扉を開けた。

小竜姫は銭湯と言っていたが、横島が想像するような風景はどこにも無く、
下手な温泉地の露天風呂よりずっとすごかった。

まず外との柵など無い、山の上にある風呂の周りは、見渡す限り山々が続く場所だった。
空は夕暮れにセットしてあるらしく、オレンジ色に染まった空をバックに連なる山々が、
壮大な眺めを演出している。

風呂もかなりの広さがあって、横島一人入るにはちょっと大きすぎるぐらいだ。

ガラガラガラ

扉が開く音がして、横島はつい反射的に音のほうを向いてしまう。

そこには男湯と女湯を隔てる筈の壁は無く、扉を開けて出て来た三人は、
着ているはずの湯浴み着を着ていなかった。

当然三人ともタオルを片手にもっただけのお姿でした・・・・

「ヨコシマー」

パピリオが無邪気に横島へ駆けてくる。
シロがきょとんと、パピリオと一緒に横島に近づこうか迷っている。

「きゃ〜〜〜〜〜〜」

タマモがいつの間にか手にした桶を、横島に向かって投げつけた。

ぱこ〜〜ん

クリ〜ンヒット、薄れ行く意識の中で横島は思う。

俺か!俺が悪いのか!
思った通りの展開じゃね〜か、最初から嫌な予感したんだよ。
こんなお約束なんて嫌いだ〜、せめて小竜姫さまなら喜んだのに〜〜

最後に残った意識で、悔しいからタマモの裸でも目に焼き付けようとがんばってみる。
いや別になんに使うわけでも無いですけどね・・・・




続く


あとがき

妙神山の休日 3話めです。

今回登場人物が多いため、一人一人の話を書いてるとすごい量になる事が発覚・・
最初、ワルキューレとベスパも出そうかと思ったんですが、とても無理そうです。
小竜姫さまにがんばってもらう事にしました。

さて今回、皆様には面白いと思ってもらえれば光栄です。
ではまた4話目で会いましょう。



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