ザ・グレート・展開予測ショー

GS信長 極楽天下布武!!【資格試験編】(14)完


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 3/15)

三条局(生没年不詳)
 豊臣秀吉の側室。
 蒲生賢秀の娘で,名は虎。
 柴田勝家を滅ぼした秀吉は,凱旋途上,近江日野城に蒲生氏郷を訪ね,妹の虎を側室に貰い受けたと言う。
 京都屋敷に住み,三条局と呼ばれた。

加賀殿(1572〜1605)
 前田利家と正室・芳春院の三女で,名は摩阿。
 柴田勝家の家臣・佐久間十蔵と婚約していたが,勝家が羽柴秀吉に滅ぼされた際,十蔵は戦死,秀吉の元に身を寄せる事となる。
 後に秀吉の側室となるが,病を理由に側室を辞し,秀吉の死後,万里小路充房と再婚,利定を生む。
 病苦等を理由に充房とも間も無く離婚,息子を連れて金沢の実家に戻るが,数年後,病気の為,三十四歳でその人生を閉じた。

松の丸殿(?〜1634)
 京極高吉の娘で,名は竜子。
 若狭守護職の武田元明に嫁ぎ二人の息子を生んだが,元明は山崎の戦いで明智方に付いて戦死,弟の高次も明智方に付いていた。
 実家の安泰の為,自ら進んで羽柴秀吉の側室となり,伏見城の松の丸に住み,松の丸殿と呼ばれた。
 秀吉の寵愛を誇る従妹の淀殿と権勢を競い合う気の強さの持ち主であったと伝えられ,淀殿と杯争いをした事は有名。















   吉法師━┓
       ┃━┓
  勒鶴義堅─┘ ┃━┓
  浅井長政━┓ | ┃
       ┃━┛ ┃
  佐々成政─┘   ┃━┓
  那柄正家━┓   | │
       ┃━┓ │ │
  豊臣秀長─┘ ┃━┛ │
マエダー利家━┓ |   │
       ┃━┛   │
   織田 淀─┘     │──
 時読ヒカリ━┓     │
       ┃━┓   │
 雨姫蛇秀家─┘ │   │
  雫手政宗─┐ ┃━┓ │
       ┃━┛ │ │
  善楕三成━┛   │ │
  浅野長政━┓   ┃━┛
       ┃━┓ ┃
  浅野ねね─┘ │ ┃
  益汰長盛─┐ ┃━┛
       ┃━┛
  羽柴秀美━┛




『さあ!本年度のGS資格試験もいよいよ大詰め!二次試験決勝トーナメントの,遂に決勝戦が行われます!』
「へっ」
「あー……」
『栄えある主席合格の座を争うは,吉法師,羽柴秀美の両選手!例年に無い激戦を勝ち抜いてきた二人の,果たしてどちらの頭上に,栄冠は輝くのでしょうか!』
『両者の戦い方は全く正反対ダ。予想出来ないナ』
『さあ!時間満了です!』

「試合開始!」
『今!審判が試合の開始を宣言しました!』
「ギブアップ」
『……え?』
「き,君,今,何と?」
「だから,ギブアップ。降参です」
『な,何と羽柴選手,ギブアップ!?』
『こ,此処迄来テ……!?』
「ま,待ちたまえ!それが如何言う事か分かっているのか?」
「え?」
「折角取った資格が,無効になってしまうんだぞ?」
『この意外な展開に,審判も動揺しています』
「ええ〜。分かってますよ」
「良いのか?」
「はい」
「何故?」
「だって……もう,持ってますから。GS資格」
「えっ?」
「斯ういう事です」
ヒィィィィ……
『おっと,羽柴選手,掌に霊力を集中させ,何かを生成しております!』
『あれは……文珠!?』
『そして,それを飲み下しました!』

『解』

カッ!
「――!」
「これで,分かりました?」
『な,何とぉーーーーっ!羽柴選手が,男になった!?』
『秀吉!?』
『蜂さん,秀吉と言うと!?』
『あア。織田信長の所の小僧ダ。霊力量は兎も角,技術だけなら師の信長をも越えてると言われてるナ』
『何と!』
『文珠は,彼奴にしか作り出せないもんだしナ』
「そう言う事です」
『な,何と!羽柴選手の正体は,あのゴーストスイーパー・豊臣秀吉だったぁあ!』
「――ちっ!何だよ,此処で種明かしなのか?」
『おっと,吉法師選手,この試合で初めて笠を取ります。そして……っと,付け髭!?も取りました!』
『彼奴は……信長じゃねえカ!』
『えええ!?』
「つまんねえな」
『な,何と,吉法師選手の正体は織田信長!こっ,これは……!』
『……決勝戦は如何なるんダ?』
『そ,そうです!二人の正体がこの師弟と言う事は……!?』
「き,君達!これは如何言う事かね!?」
「ああ?仕事だよ,仕事」
「仕事,だと?」
「妙神山からの依頼でよ」
「妙神山から……?」
「けど,結局武行会の連中の尻尾は掴めなかったな」
「まあ,仕方無いですよ,殿。物的証拠も無いし」
「ちっ」
「そ,それで潜り込んでいたの言うのかね」
「そう言うこった。まさか,それが悪いとは言わねえよな?」
「む……」
「何なら,二回戦で俺等に負けた奴に資格やりゃ良いじゃねえか」
「う,うむ……」
『審判,何やら丸め込まれました』
『迫力と勢いに飲まれたカ……』
『良いのでしょうか』
『筋は通らねえが,それが一番の良策なんじゃねえカ?』
「にしてもよお,猿」
「は」
「つまんねえ事すんなよな。ばっくれて試合しても良かったじゃねえか」
「いや,そんな。殿に刃を向けるなんて出来ませんよ」
「けっ!可愛い事言ってんじゃねえよ」
「はは……」


『何と,前代未聞の事ですが,本年度のGS資格試験は,主席合格者の該当者無しと言う事で,締め括らせて頂きます』




その夜。
『魔法料理・万千代』では。
「さて!ではGS資格取得者おめでとう,アーンド留年者残念会と言う事で……」
「かんぱーい!」
織田除霊事務所の面々や,その周辺の人々が集まって,祝宴が開かれた。
「今日は皆さんの祝勝に腕によりを掛けて料理しましたから,どんどん食べて下さいね!沢山有りますよ!」
このレストランの主・万千代めぐみが営業でないスマイルで高らかに叫ぶ。
「おめでとう御座います,ヒナタさん,ヒカゲさん!」
「すげーな,ヒナタちゃん!俺等なんか二回戦落ちだってのに,準々決勝迄いっちまうなんてよ!」
「いやー,偶然だよ」
「運も実力の内ですわ!特に,GSの世界じゃね」
「あはは。有り難う,小谷ちゃん,まつちゃん」
「応!俺等も,来年には絶対に資格取るからよ!」
「そうですね。現役合格は絶対ですわ!」
「頑張れ〜」
見事合格したヒナタを祝福する,二人の同級生。彼女等の祝勝会は,残念ながら来年迄お預けだ。
「うおーーーーーーーん!やったケンのーーーーーー!」
「叫ぶなよ,マエダー。今更だろ?」
「犬千代様は,お酒駄目な人なの?」
「虎だけにな」
「て言うか,二十歳未満の人は飲んじゃいけないんじゃ……」
「あ〜?硬ぇ事言ってんじゃねーよ,ミツヒデ」
「そうすよ,十兵衛様。目出度い席なんですからさ」
「はは……。まあ,何にしても,マエダーも長政も,合格おめでとう御座います」
「おお!」
「うおーーーーーーーん!」
「青春よねー」
此方では,除霊委員に混じって浅井長政が祝杯を挙げている。
「へーん!偉そうな事言って,自分だって三回戦で負けてるんじゃないの!こーの眼鏡猿が大口叩いちゃって!」
「何ですってえ!?」
「事実でしょ,こーちゃん……」
「ほ〜ら」
「ぬぅ……!」
「と,所でさ。ドクター・ヒラテは何処行ったの?」
「ああ。だから,今,警察署だってば」
「……引き取りに行かなくて良いの?このままじゃ,ヒラテさん,無実の罪で犯罪者になっちゃうよ?」
「したら,私が捕まっちゃうじゃない。そしたら研究とか出来なくなるし,やだよ」
「あのね……」
相変わらずのマッドサイエンティストぶりを見せる親友に,冷や汗を垂らす勒鶴義堅と,仲が良いんだか悪いんだか良く分からない,二人のメカオタク。
「ま〜〜〜〜。合格したのね〜〜〜〜。おめでと〜〜〜〜,政宗君〜〜〜〜」
「しかも四回戦迄行くとはね。信長さん達が潜り込んでたり,妙な連中がいる中で良く頑張ったわね」
「はは,有り難う御座います。つっても,正直もうちょいいけるかもと思ったんすけどね〜」
「まあ,勝負は時の運。必ずしも実力だけで決まるものじゃないわよ」
「すね……。矢っ張,霊力が高いだけじゃ駄目ですよね」
「そうねえ。私なんか,初めは全然格下だった豊臣君相手に何度負けてる事か……」
「何か〜〜〜〜嬉しそうね〜〜〜〜,加江ちゃん〜〜〜〜」
「あんたの所為だろが!」
「え〜〜〜〜ん!加江ちゃん,怒っちゃ嫌〜〜〜〜」
「……」
「所で〜〜〜〜,何で私の所為なの〜〜〜〜?」
「覚えてないの!?」
「え〜〜〜〜?」
「……ったく,無責任ね!」
「ま,まあまあ……」
「……は,良いんだけどさ,兄上」
「ん?何だよ,竺丸」
「何で俺迄此処に居るの?」
「何だよ,お前が落ち込んでるっぽいから,わざわざ誘ってやったんじゃねーか。気晴らしだよ,気晴らし!嫌な事は,こうやって忘れるのが一番!」
「忘れて如何すんの……。GS資格試験に留年したって言うのは,一生残るんだけど……。雫手家の当主が」
「あはは。まあ,良いじゃねーか。負かしたのは俺なんだし,大丈夫だよ!」
「でも,組み合わせもフジタのダイスで……」
「ま,まー!細かい事は気にすんな!今日はもう飲め!な!?」
「こらっ!未成年はお酒なんて飲んじゃ駄目よ」
「え〜?そんな硬い事……」
「本職は教師だからね」
雫手政宗の資格取得を祝う,六道吉乃と鬼道加江。そして,弟の竺丸。
「ちっ!結局,仕事の方は失敗だったな」
「まー,良いじゃないの,信長。好い加減な仕事だったんでしょ?」
「まあな。結局,勝三郎の奴も失敗したみたいだし,正に骨折り損のなんとならだな。ま,楽しめたから良いけどよ」
「そんなもんよ。妖怪に手心加えちゃうなんて良くある事だし,魔族と結託してるのなんて,お偉いさんじゃそうでないのを見つけるのが大変な位でしょ」
「好い加減な事ね,呪い屋さん?」
「ふん。どんだけ失敗しても金の入るあんたみたいな道楽公務員とは違うんでね。シビアな商売なのよ」
「あらあら。そんな仕事しか出来ない自分を哀れんでるの?可哀相にねえ〜」
「おい,お前等な……」
「はっ!地位も金で買えるあんたとは違うんでね」
「なっ!何ですって!?」
「あら。怒るって事は心当たりが有るのかしら?」
「下賤な裏稼業が生意気言ってんじゃないわよ!?」
「あ〜ら,残念。私は合法の歴としたGSですよ〜だ!お・ば・さ・ん!」
「あら,誰も貴方の事だなんて言ってないけどね,お子ちゃまっ」
「馬鹿言ってんじゃないわよ,ショタコンが!」
「馬鹿って言う方が馬鹿なのよっ!」
「ね〜〜〜〜。信長君〜〜〜〜。こっちで吉乃とお話しましょ〜〜〜〜」
「応」
「応,じゃないっっっっ!!」
周りの目も気にせず,大声で痴話喧嘩をやらかす,小笠原帰蝶と西条鍋子。……と,どちらも選ばずに,第三の選択肢に逃げようとする織田信長。
「ふしゅる〜」
あ,女華も居ます。
「いやー!淀はGS資格取得の最年少だそうですよ」
「って,そりゃ当然だロ」
「何と言う無茶をさせる人だ,君は」
「はっはっは」
溺愛する孫娘のGS資格最年少取得に大口を開けて笑う織田信秀と,それに呆れるやら何やらの蜂 須賀と斎藤利政。
「親父……。好い加減,淀,返してくれ……」
……と,信秀の長男・津田信広。
「正直口惜しかったでござるが,相手が先生なら致し方ないでござるな!来年こそは絶対に合格してみせるでござるよ!先生,宜しくご指導の程,お願いするでござる」
「お,応……。ま,暇な時にな」
「ま,半兵衛に威張られるのもなんだし,半兵衛が出るんなら,私も出てみようかしら」
そして,織田除霊事務所の面々。
今回は残念ながら二次試験落ちの竹中重治と黒田考高。
「僕とねねねーちゃんは合格したよ!これで僕等も,正式なメンバーだよね!」
「お給料とかも,上がるんでしょうか」
「そうだな。おめでとう,二人とも」
「………………おめでとう」
此方は合格組。雨姫蛇秀家と浅野ねね。二人を祝福するのは,同僚の猛吏輝元と植椙景勝。
「でねー?新居だけどー」
「……ユミもこっちに住むのか?」
「何よ。何か問題でも有るって言うの?」
「いや,そうじゃないけど……,でも,俺,兄者の所にお世話になってるから……」
「何を言ってんの。大の大人が,他人の世話になってて如何すんの!」
「俺,未だ子供なんだけど……。この国じゃ」
「そう言う問題じゃなーい!それに,お義兄様と同居じゃ困るでしょ?特に夜とか。い・ろ・い・ろ・と!」
「……そうだな」
そして,分かり易く尻に敷かれてる,豊臣秀長とその妻・ユミ。
まあ,兎に角。みんな,楽しんでいる。

「……ふう」
「あれ?何処行くんや,日吉にーちゃん」
「竹千代様,天回」
「如何したのじゃ?」
「いや……。一寸酔いを醒ましに。外ぶらついてくるだけだから」
「ほうか」
「じゃあ,そう言っといてよ」
「分かった」



「ふう……」
めぐみの店を一人抜けだし,近くの公園迄やって来た藤吉郎は,再び溜息をついた。
夜の冷たい空気が心地良い。
「……」
取り敢えず,大変な一日は終わった。
ベンチに座り,今日有った事を,何となく回想してみる。
そして,浮かぶのは矢張り……
「ルシトラ……か」
ルシトラ。
何なのだ?この名前は。
頭が痛い。その名を思い浮かべるだけで,頭がガンガンする。
恐らくは,この肉体の前の持ち主――いや,それとも矢張り自分なのか?この記憶は,前世の記憶だとでも?
分からない。
分からない……。
「でも,このままって訳にもいかないよなあ……」
少なくとも,命を狙われるだけの責任が,俺には有るらしい。
……記憶喪失だからと言って,逃げる訳にはいかないだろう。何より,そんな事“俺”が認めない。
「……如何すれば……」
「よう」
「?」
不意に,声を掛けられた。
顔を上げる。
「やっと,一人になったな」
「あんたは……」
其処には,あの魔族――マスアが居た。
「!」
「そう身構えるなよ,ムラマサ。別にあんたを殺しにきた訳じゃないからさ」
「……本当に?」
「ああ」
そう言って,マスアは藤吉郎の隣に座った。
「なあ,ムラマサ……?」
「あ,はい。何でしょう。えっと……」
「マスアだよ。敬語も良い。……ホントに,記憶無くしちまったみたいだね」
「……御免」
「あたしに謝られたって仕方無いさ」
「そうだな……」
「……」
「あの……」
「ん?」
「ルシトラって……」
「……。ルシトラ,か」
「俺と,どんな関係だったんだ?其奴」
「……ルシトラは,あたしの姉だった」
「あんたの……?」
「ああ。……これ以上はあたしの口からは言えないよ」
「何で?」
「余りにもあんた達と――ルシトラと近かったからさ。あたしがルシトラとお前の事を話したんじゃ,主観が入りまくって如何しようもなくなる。だから……他の奴,誰か,端から見てた奴に訊きな。如何しても知りたかったらね」
「……」
「ま,思い出さないままの方が,あんたには幸せかも知れないけどね」
「……あのさ」
「何だい?」
「俺は……その,“俺”とは別人なんだよ。詰まり……何て言うか,“豊臣秀吉”じゃないんだ。記憶喪失のショックで,前世の人格が甦ったのかもとかって……」
「……あたしには,そう変わってる様には見てないけどねえ。前と」
「良く言われる」
「矢っ張り。だから,さ。あたしとしては,矢っ張り思い出して欲しい。彼奴の事を。それを,背負えと迄は言わないから……」
「……」
「だから,あんたが彼奴を忘れてたと知った時,頭の中が真っ白になっちまったんだ。……悪い事したね」
「いや……。こっちこそ」
「何であんたが謝るんだい。あんたには,身に覚えが無い事なんだろ?」
「でも……」
「はっ!変わってないねえ。変わってない。矢っ張そのままだよ,お前」
「そうか……」
「……悪ぃ。でも,一寸落ち着いたよ」
「え?」
「いや……ルシトラの事考えてたら,ちと煮詰まっちまってさ。元来,頭使うのって苦手だし。お前と会ったら,何か違うんじゃないかと思ってさ」
「……収穫は有ったか?」
「少し,軽くなったよ。有り難う,な」
「いや……」
「んじゃ……又た今度,ゆっくり会おう」
「ああ……」
ビュオッ
一陣の風を残し飛び去ったマスアの後ろ姿を眺めながら,藤吉郎は思う。
俺は,何だ?
矢張り,“ルシトラ”の事を思い出さなければならないのか。
そして,背負わなければならないのか。
何時か,記憶が戻る時が来るのだろうか。
そうしたら,今の『俺』の記憶は如何なるんだ。

……俺は,何だ?


答えの無い,問いを




同じ頃,妙神山修行場。
「……如何した,勝竜姫。何を沈んでおる」
「何か,任務に失敗した様でちゅよ」
「ふぉっふぉっふぉ。己の無能に愛想が尽きたか」
「……言わないで下さいよ,老師……」
「何を言う。口に出さずに問題が解決出来るものか」
「……」
「勝竜姫……。何も,儂はお主に狡賢くなれと言っておるのではないぞ?」
「と……言いますと?」
「お主はお主らしくで良いのだ。無理に他者の様になれとは言わん。されど,今少し成長せよと申しておるのじゃ」
「……如何すれば,良いのですか?」
「それはお主自身で見つける事じゃの。儂等に手助けなぞ出来ぬわ。だがしかし,協力する位の事はしてやっても良いかの。のう,タツリオ」
「勿論でちゅよ」
「……。お願いします……」





そして,数週間後。
織田除霊事務所・第二オフィス。
「ふ〜,終わったあ」
「お疲れ様です,お義兄様。はい,お茶」
「ありがと,ユミちゃん。けど,このナルニアブレンドは一寸口に合わないんだけど……」
「健康に良いんですよ?」
「……。まあ,良いや」
「良くないです」
「俺,一寸本社の方に報告に行ってくるから,他の人戻って来たらそう言っといて」
「はい。分かりました」
「じゃ,行って来るね」
「行ってらっしゃいませ」
結局居着いてしまったユミに見送られ,藤吉郎は事務所を出た。



第一オフィス。
「そう言えば,殿」
「んだ?猿」
「向かいのビル,何かGSの会社が入ってきてたみたいすけど」
「あー,あれな。ったく,俺様の事務所の前に良い度胸だぜ」
「っと,噂をすれば,来たみたいよ,其奴等が」
「ヒナタ」
振り向いた信長と藤吉郎の視線の先には,インターホンの受話器の口を押さえたヒナタが居た。


「この度向かいに越してきました,不暁GSオフィスと申します。以後,お見知り置きを」
「って,お前え等……!」
「ああっ!此奴等……!?」
「なっ……!?」
玄関に降りた三人を待っていたのは,“あの”那柄正家,石田三成,浅野長政の三人である。
「約二名,入院中で欠員です」
長政が付け加えた。
「って,何してんだよ,お前ぇ等!」
「いや,あたし達,武行会を破門されちゃってねー。でも食ってかなきゃ駄目だから,取り敢えず卒業証書だけは何とか貰って,自分達で会社立ち上げる事にしたの」
「……何でウチの前にくんだよ!」
「偶々物件が開いてたからよ」
「え?三成さんが此処が良いって……」
「いや……まあな?」
「?」
「巫山戯んな!とっとと出てけ!」
「あら。貴男にそんな事を決める権利がお有り?」
「るっせ!舐めんじゃねーぞ,こらぁ!」
「ま,まあまあ……。ほら,斯うしてお蕎麦も持って来た事だし……」
そう言って,長政が引っ越し蕎麦をさしだす。
「いるかぁーーーーーーーーっ!!」
ガバン!
「ああっ!」
「卓袱台返し!」
「何で玄関に卓袱台が有んの?」




平成。
相も変わらず,斯くも平和な日常。

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