ザ・グレート・展開予測ショー

妙神山の休日 その2


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 3/15)






「もうちょっとで見えるぞ〜」

片側が底の見えない崖になっている細い道を、横島は気軽に歩きながら前方を指差す。
後ろから着いてきているのはシロただ一人だったが、二人はまったく気にしていない。
なぜならタマモは横島の頭の上で子狐に戻り、周り風景なんてまったく気にしないで、
一人でまったりしている。。
当然タマモの荷物は横島が持っているので、横島の荷物は相当な量になっているのだが、
横島はたいして気にしていない様子だ。

「ほら見えたぞ。」

ちょっとした岩場を過ぎると、目的地である妙神山修業場が見えてくる。
タマモは横島の頭の上から飛び降り、途中で人間に変身すると、よく見るために目を凝らす。

「へ〜思ったより・・・きれいなのね、
歴史のある修業場だって聞いてたから、もっとボロボロかと思ってた。」

「ん〜まあ、俺が知ってるだけでももう何度も建て替えてるからな、
最後に建て替えてから、まだ年数過ぎてないしきれいなのは当然だろうな。」

タマモの率直な意見に答えてやると、さっさと行くぞと歩き出した。
歩き始めた横島にシロは急いで追いつくと、来るまでずっと考えていた事を聞いてみる。

「拙者も修行をさせてほしいでござるよ、このような有名な修業場に来たのですから、
ぜひ学んでみたいでござるよ。」

「ん〜どうだろうな、ついたら小竜姫さまに聞いてみるか。
まあ、俺はかんべんだけどな。」

「そんな〜先生一緒にやろうでござるぅ〜」

そんな話をしている間に、三人は扉の前にたどり着く。

「よう、左の!右の!、元気してたか。」

横島は入り口の扉についている、馬鹿でかい顔に挨拶をする。
その横島の態度に、何も知らない二人は不思議に思うのだが、次の瞬間その理由が分かる。

「おぉ、久しぶりじゃな、はるばるよう来た。」

「まったくじゃ、今中に連絡を入れるので少々お待ちくだされ。」

扉の左右の顔が声を出したので、最初二人は驚いたがすぐ興味のほうが勝ち興味津々とばかりに近寄る。

「先生、この方達はどなたでござるか。」

「ああ、左の鬼門、右の鬼門って言ってな、妙神山修業場の門番らしいんだが・・・」

「だがなによ?」

横から会話に入ってきたタマモが、横島に話の続きを促す。

「だが、役に立ったのは見たこと無いな。」

「なんと、それはわれわれにたいする侮辱ですぞ。」

「まことに妙神山を守る我ら右の鬼門、左の鬼門と言えば、
資格無き者を何人たりとも入れたことが無いのが自慢ですぞ。」

横島の発言に、聞き捨てならんとばかりに声を荒げる。

「わかった、わかった。
なんでもいいからもう入っていいかな、さすがに疲れたぞ。」

「まてい、おぬしは良いが、そちらの二人は駄目じゃ。」

左の鬼門がシロとタマモを見ながら言ってくる。
これにはさすがの横島も不思議に思い、左の鬼門へと聞き返す。

「なんでシロとタマモは駄目なんだよ?」

「いくらおぬしの連れだからと言って、まず我らと勝負して勝たねば入れぬのが此処の掟じゃ。」

その言葉に、シロはうれしそうにタマモはげんなりとする。
横島も止めようとするのだが、シロが喜んで前に飛び出すので、止めるタイミングを見失ってしまった。

「おぉ〜、さすがは噂に聞こえし修業場でござるな、拙者燃えてきたでござるよ。」

「シロ任せたわよ。」

タマモはさっさと後ろに下がってしまう。
左の鬼門、右の鬼門の体が動き出す。

「「いざ、尋常に勝負!!」」

ドッゴ〜〜〜〜ン

二人の鬼門が叫ぶと同時に、閉じていた扉が内側から吹き飛んだ。
鬼門の顔をつけた扉は、大きく弧を描いて20メートルは吹き飛び、最後は顔の方から地面に落ちる。
そして鬼門たちを吹き飛ばした原因が、門の中からでてくる。

「ヨコシマ〜〜」

叫び声と一緒に飛び出してきたパピリオが、そのままの勢いで横島へ抱きついた。
扉が吹き飛んだ時点で予想していた横島だったが、さすがに勢いを殺しきれずに後ろに倒れてしまう。
だがパピリオは気にした様子も無く、そのまま横島の胸で甘えだす。

「寂しかったでちゅよ。」

「パピリオ・・」

横島はそっとパピリオの頭を撫でてやる。
だが、それを見て当然黙っていられないやきもち焼きが近くに居た。

「先生〜なんですかそいつは!!
おまえ、先生から離れるでござる。」

その声に、今まで周りを見ていなかったパピリオが、やっと二人に気づく。

「ヨコシマ、こいつらなんでちゅか?」

パピリオは横島を見上げるようにして訪ねる。
横島はそんなパピリオを抱えるようにして立ち上がった。

「ああ、お互い紹介しないとな、まずこいつはパピリオ、今は妙神山に居座ってる。
で、あっちの髪が白いのがシロ、むこうの髪を9個に分けているのがタマモ。
どっちも今美神さんのところで居候している仲間だよ。」

パピリオは横島の紹介を聞いた後で、二人をジッと見つめる。
その視線に、シロとタマモは上等とばかりに睨みをきかせる。

「こらこら、仲良くしないか。」

横島が軽く注意すると、パピリオはすぐ視線を外して横島ににっこり微笑む。

「まあ、いいでちゅ。みんなで中入って遊ぶでちゅよ。」

「そうだな、いい加減歩いてきて疲れたよ。
絶対此処もうちょっと交通の便良くしてもいいよな。」

「先生、それじゃ修業にならないでござるよ。」

「それもそうか。」

あははは、などと笑いながら横島たちは門を越えようとする。

「まあ待ってください。」

「ん、ジークじゃないか、久しぶりだな」

もう一歩踏み出せば中に入ると言う所で、前から現れたジークが横島を呼び止める。
そしてジークは、そのまま門の外を指差す。

「いい加減彼らを哀れだと思いませんか?」

ジークが指差す方向を見ると、顔が下を向いてるために前が見えずにいる、左の鬼門と右の鬼門が居た。
実は先ほどからずっと、まていとか助けてくだされとか言っていたのだが、
だれも相手をしなかったため、今はしくしく泣いている。

「おぉ、すっかり忘れていた。
お〜い、左の!右の!大丈夫か。」

慌てて鬼門コンビに近寄るが、どうも二人ともへそを曲げてしまったようで、
ぶつぶつと文句を言いながら横島へ返事をしない。

「あ、そう。
さ、みんな中入ろうか。」

「「まてまてまて〜い」」

再び中に戻ろうとする横島を、鬼門コンビが慌てて止める。

「すまん、悪かった助けてくれ。」

「顔を上にしてくれれば、後は勝手にやるから。」

二人の返事に満足した横島は、顔を上にするために扉を裏返した。
すると、二人の体が近寄ってきて自分の頭のついた扉を持ち上げる。
そしてそのまま門へと戻ると、手際よく門を直し始めた。

「あいつら手慣れてるな。」

「ええ、いつも直してますからね。」

横島の質問にジークがため息をつきながら答える。
そしてその原因を見ると、シロとタマモが気に入ったのか、ちょっかいを出し始めている。

「おまえら良く見ると面白いでちゅね
この尻尾はなんでちゅか?」

「やめるでござる、それは人狼族としての誇りでござる。」

パピリオがシロの尻尾に興味があるのか、つかまえようとしている。

「あ、お前の頭も面白いでちゅね。」

「頭の尻尾つかむのやめてよ。」

シロを捕まえながら、同時にタマモの頭にも興味を持ち始める。
シロとタマモも必死に抵抗するのだが、あっという間に押し倒されて好き勝手に弄り回される。

「なぜ、こんな子供に勝てないでござるか。」

「いや〜ぐちゃぐちゃにしないで〜」

パピリオは逃げ出そうとする二人を押さえつけながら、昆虫を捕まえた子供のように笑う。

「ふふふ、いくら力が弱くなったとは言え、まだまだお前らには負けないでちゅよ。」

「仲良いなお前ら。」

それを見ていた横島が、素直な意見を言ってくる。
横島を見つけた二人は、必死になって助けを求め始める。

「横島〜助けなさいよ。」

「先生〜拙者は此処に修業に来たでござる、こんなお子様と遊ぶためではござらん。」

横島は三人を暖かく見守ってやるために、とどめの一言を言うつもりでいたのだが、
ジークが横から喋り始めたために言いそこねてしまう。

「あ、もしかして修業に来た方ですか?」

「そうでござる、そうでござるよぉ〜!」

シロはパピリオから逃げるために必死だった。

だがしかし、運命とはいつだって無情な存在だ。
シロの願いはジークの出してきた看板ですべてが崩れ去る。

「すみません、こういう理由でそれは無理です。」

ジークは門の中から看板を取り出すと、鬼門コンビによって直された門に貼り付ける。
丁度、「この門をくぐる者、汝一切の望みを捨てよ。 管理人」の看板が有った場所だ。

「え〜となになに・・・」

臨時休業、
妙神山修業場は以下の三日間、
都合により休ませてもらいます。
次回のご来場、心よりお待ちしております。
10/XX〜10/XX  管理人

横島が読み上げると、シロは絶望的な顔をする。

「ざんねんでした、でもこれでずっと遊べるでちゅよ。
さあ、みんなで部屋にいくでちゅ。」

「せ、せんせ〜〜〜」

「頭はいや〜〜、引っ張らないでよ〜〜〜」

パピリオはそう言うと、シロとタマモを引きずって中へと入っていく。
タマモはまだ必死に逃げようとしているが、シロは燃え尽きたのかされるがままである。

「横島さん、ありがとうございます。
パピリオのあんなに楽しそうな顔は、久しぶりに見ました。」

ジークはパピリオの後姿を見ながら、うれしそうに笑う。

「シロとタマモには、大変だろうけどな。
パピリオが喜ぶかなと思ったが、ほんと連れて来て良かったよ。」

横島も三人が中に入るのを見届けた後、ジークに笑いながら答える。
そして再び鬼門コンビが直し終わった門に顔を向ける。

「しっかし、臨時休業とか始めて見たな。」

横島は看板を見ながら不思議そうに言う。

「始めて見たもなにも、実際妙神山修業場が出来てから初めてですよ。
こんな事が天界に知れたら、どうなってしまうやら。」

「不味いのか?」

横島はジークの言葉にちょっと不安になって聞いてみる。

「さあ、どうでしょう。
実際のところ、こんな事前例がありませんからね。」

「なんで臨時休業なんてしたんだよ?」

そんな危険なまねまでして臨時休業にする理由が思いつか無いので、ジークに聞いてみる事にした。

「横島さんのためですよ。
アシュタロス以来ここも有名になりましたからね、毎月何人も来るようになったんです。
ですが老師が居ない今、私と小竜姫さまだけしか居ないため、
一人修業者が来るだけで横島さんたちの相手が出来なくなってしまいます。
それではせっかく呼んだ横島さんに失礼だからと、小竜姫さまが臨時休業にしてしまったんですよ。」

「そうか、小竜姫さまに気を使わせちゃったな。」

自分のためにそこまでしなくて良いのにと横島は思ってしまうのだが、
そこでふと一つ疑問が出来たのでジークに確認する。

「そういえばジーク、小竜姫さまはどうしたんだよ。」

先ほどから姿を現さない小竜姫を不思議に思った。
するとジークはちょっとだけ困った顔をしながら横島に答える。

「すみません、小竜姫さまはもうちょっとでお仕事が終わるからと、今追い込みをかけてるんです。」

「追い込み?」

横島はジークが言った内容を理解できずに聞き返す。

「ええ、妙神山の仕事にも書類関係があるんです。
でも本当ならめったに無いですし量もさほどでは無いのですが・・・
いまだにアシュタロス事件の事後処理がまだ終わってないのが現状でして。」

「へ〜、管理人てのも大変なんだな。そんなに忙しくて小竜姫さまは大丈夫なのか?」

「無理はしないでくださいとは言っているのですが。」

ジークは少しばかり心配そうな顔するがすぐに元に戻ると、こちらですと横島を中へと案内をする。

「ヨコシマ〜〜〜〜早く来るでちゅ〜」

シロとタマモを引きずっているパピリオが、なかなか入ってこない横島たちを心配して玄関先から顔を出す。
その隙にタマモがパピリオから逃げ出そうとするのだが、
シロを引きずったパピリオに再び取り押さえられた。

「子供の相手はひのめだけで十分よ〜〜」

タマモが苦しまぎれに叫んでくるのだが、それを聞いたパピリオがタマモの頭を引っ張りながら抗議する。

「だれが子供ですか、立派なレディーでちゅよ。」

それを聞いた横島は、抑えきれない笑いを漏らしながら三人に答える。

「お〜今行くぞ〜」

叫んだ後に横島とジークは中へと歩き始めた。



そして全員が中へと入ると、妙神山修業場の入り口は再び静寂に包まれる。

「なあ、左の!」

「なんだ右の!」

「入られちゃいましたな。」

「言うな!・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「我々はこうなる運命なんですかね・・」

「言うな!・・・・」

左の鬼門が目から涙を流しているのと見て、右の鬼門は空を見上げてみる。
今日も妙神山は平和であった。



つづく


あとがき
あ〜小竜姫さまメインといっときながら、いまだに小竜姫さまが出てません。
次こそは、出ますのでよろしくお願いします。

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