ザ・グレート・展開予測ショー

GS信長 極楽天下布武!!【資格試験編】(11)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 3/13)

武田晴信(1521〜1573)
 甲斐国の国主で,法名は信玄。
 優秀だが横暴な父・信虎を追放し,国政と人心を掌握,民政や領国開発に力を入れ,甲州法度を定める。
 精強を以て鳴る武田騎馬軍団を率いて近傍諸侯を略し,上杉謙信とは,川中島で五回に渡って戦った。
 上洛を志し,織田信長と雌雄を決しようと進軍,三方ヶ原の戦いで徳川家康を破るも,三河野田城攻囲中に伊那駒場で陣没。

惟住長秀(1535〜1585)
 織田信長の有力武将。
 通称・丹羽五郎左衛門と言い,信長の身辺警護や洛中洛外の庶務等,目立たない細やかな仕事を一手に引き受けた。
 それ故に“米五郎左”と呼ばれ,織田家累代の家臣の中では,最も早く最も長く,最も忠実に仕えたと言える人物。
 本能寺の変の折りは,共に在った信長の三男・神戸信孝と共に山崎の戦いに参戦し,その後,羽柴秀吉に協力した。

今川義元(1519〜1560)
 駿河国の守護大名で,氏親の子。
 兄・氏輝の後を受け家督を相続,三河・遠江をも版図に納め,又た父の定めた今川仮名目録に増補を加える等,民政にも力を入れた。
 武田信玄,北条氏康と共に関東の三大勢力を形成するに至り,“街道一の弓取り”と近隣諸国に恐れられた。
 満を持して京都への進軍を試みるが,桶狭間の戦いで織田信長にまさかの敗退,死闘の末,壮絶な討ち死にを遂げる。















「豊臣さん……じゃなかった。羽柴さん,勝ち抜きおめでとうございますっ!」
「凄いや,にー……ねーちゃん!あんなのに,二連勝もしちゃうなんて!」
「はは……如何も」
益汰長盛を下し,準々決勝進出を決めた羽柴秀美こと藤吉郎。コートを降りた彼を出迎えたのは,浅野ねねと雨姫蛇秀家の笑顔だった。
「二人は,残念だったね」
自分の部下であり,門下である二人に,藤吉郎も笑い掛ける。
「ええ……。今度は,負けないよう,ご指導の程,宜しくお願いします!」
「う,うん……」
この娘って,案外,好戦的なんだよな……。竹千代様は,一体どんな育て方したんだろう。て,竹千代様が育てた訳じゃないか。
「まーねー。ヒナタねーちゃんも案外,強いや」
「まあ……そうだよな。ヒカゲもいるし」
逆に秀家は,負けた事自体はそんなに気にしてないらしい。
まあ,彼は暫く独立するつもりはないらしいから,トーナメントの成績云々は余り気にしていないのかも知れない。彼が独立する頃には,彼は織田除霊事務所のメンバーとして,華々しい実績を上げている事だろう。
「次の試合迄,少し時間有るよね。秀美ねーちゃんは如何するの?」
「んー,如何しよっか」
「あ,あのっ!良かったら,一緒に食事でも……」
「って,ねねねーちゃん。狡いよー,それ。て言うか,僕の存在,スッパリ忘れてたでしょ,今」
「い,いや,そんな事は」
「じゃないなら,余計質が悪いよ……」
「……」
「はは……」
強かな娘だこと……。
その光景を見て,藤吉郎は苦笑するしかなかった。
しかし,この娘の好意が自分に向けられたものでない以上,それに応える事は出来ない。
彼女が如何こうと言う話ではなく,彼女の見ているのが自分ではなく“豊臣秀吉”である以上,藤吉郎は彼女を恋愛感情の対象としては見れなかった。
何れ時を重ねれば,その“豊臣秀吉”が自分へとすり替わっていくのだろうが,あれから未だ一ヶ月。その時ではない。

「猿!」
「あ,殿!」
聞き慣れた声に振り向くと,主君の織田信長――今は変装して吉法師と名乗り,自分と同じくGS資格試験に紛れ込んでいる彼の姿が見えた。傍らには除霊事務所(本部)の女性メンバーが顔を揃えていた。
「先生!勝ち抜き,おめでとうございます!」
竹中重治が,早速飛び付いてくる。
二人程眉を顰めたが,これは彼女だけに許された特権である。彼女はこれを得る代わりに色んなものを犠牲にしているのだから(本人に自覚は無く,思うままに行動しているだけなのだろうが),大目に見る他無い。下手に騒ぎ立てて,自分の持っている“特権”を無くしても詰まらない。
「だから,先生って言うのは拙いんじゃないの?」
相変わらず呆れた様な顔で,黒田考高がクールに言い放った。九つの房に纏めた,金色の髪が揺れる。
「まあ,今更じゃない?この状況で,さ」
ヒナタは既に,何かを諦めた様に達観している。
前の世界では全くいなかったライバルが,この世界では盛り沢山である。しかも強力な連中ばかりだ。
……もう,焦っても仕方無いだろう。藤吉郎も,誰かとくっつく気は取り敢えず無い様だし。
決して楽観は出来ないが,焦る事態でもない。
「あれ,義堅ねーちゃん。光佐ねーちゃんと一緒じゃないの?」
「秀家君。あの私ね,此処で雇ってもらえる事になったのよ〜」
「ええ,ホント?」
「ホント,ホント」
そう言って微笑む袈裟懸けの少女は,勒鶴義堅である。
此処に居る女性陣の中で,藤吉郎――“豊臣秀吉”に恋愛感情を(取り敢えず)抱いていないのは,彼女だけである。
「ふぅむ,どんどん所属メンバーが増えていくな」
「丸で,太閤はんの人垂らしの術を見ている様やわ。こればかりは,信長様やわいにも真似出来ひん」
何時の間にか,天回と家康も姿を見せている。
「猿,お前等も飯,食いに行こうぜ」
それを横目に見つつ,信長がさっさと用件を告げる。此奴等の痴話喧嘩に付き合っていたら,日が暮れてしまう。
「あ,はい!お供します,殿っ」
何故か焦ってしまい,必要以上にハイになる藤吉郎(秀美)。
此方を瞥する信長に,心臓が高鳴り,頭がぽーっとしてしまう。
「……何で,顔,紅くしてんのよ」
鋭く,ヒナタが突っ込む。
「違……ッ!違うんだ,ヒナタ!俺はそんな……」
「どんな?」
「いや……」
応えるのも馬鹿らしい。
取り敢えず,“この人に付いていこう”と言う強烈な,信仰心とも言い換えられる様な憧れが,主君と異性になった事で恋愛感情へとスライドしていった事は,間違いない様だ。藤吉郎は,自らをそう分析していた。
恋愛も友情も忠誠も,他人に“惚れる”と言うその一点において,突き詰めれば全くの同義なのだから。
「あ。でも,そうだ,殿」
「何だ?」
「その前に,医務室寄っても構いませんか?小竹が居る筈ですので……」
「応,構わないぜ。お前の倒したあの二人から,話も訊きたいしな」
もう,かなり如何でも良くなっている感の有る勝竜姫の依頼だが,根は案外に真面目な信長は,忘れたりしてはいなかった。
「んじゃ,行くぞ,者共」
「ははッ!」
信長の呼び掛けに返事をしたのは,藤吉郎だけだった。



「あれ?」
と言う訳で,医務室に向かった信長達だったが,医務室の前の廊下を曲がった時,疑問符を出した。
「何だろ?医務室の前に人集りが……」
「何かあったのかしらね」
医務室の前に,大勢の人間が屯していたのだ。その中には,今回,医務室を与っている筈の,小笠原帰蝶の姿も在った。
「おう,お濃。如何したんだよ?」
「信長……。いや,何かね。色黒の女の子に追い出されちゃって」
「はあ?」
色黒の女の子……。
藤吉郎には,覚えが有った。
「もしかして,ユミちゃんですか?」
「いや,知らないけど」
「小竹は!?」
「小竹?」
「あー……いや,秀長です」
「ああ,貴方の弟の……。だから,その女の子は,彼を治療するからとか言って,私達を閉め出したのよ」
「え……?」
「いや,何か良く分からないけど,凄い剣幕でね。びびって,思わず言われるままにしちゃったワケ」
「そうすか……」

ゴトッ!

「……」
「……」
「……」
「……」
「……あの。何か今,医務室の中から妙な音が聞こえませんでしたか?」
「ああ,聞こえたな」
「聞こえたわね」
「聞こえました」
「ばっちり聞こえた」
「……」
「……」
「……」
「……」

バキィ!

「!?」
藤吉郎は一瞬飛び上がり,恐る恐る視界を医務室の扉の方に向けた。
今の妙な音は,間違いなく医務室の中から聞こえてきたものだ。

ザシュッ!
「グェェェェ!」

「ちょっ……今の何の声!?」
小竹の声ではなさそうだ。


ドカ!
バキィ!
メキメキ……ッ!
「ウンタラカンタラウンタラカンタラ……」
ズバシュ!
「ケケケケケ!」
「ボェェエエエ〜」
ドドドドド!
「ウッホウッホウッホ」
ズガガガガ!
「うふふふふ……」
チュドーン!
バババババ!
「ホッホッホッホ!」
ドギャーン!


「小竹ぅ〜〜〜〜〜っ!?」
思わず,藤吉郎はドアに張り付き,叩き始めた。
「……どんな儀式してんのかしらね?」
「儀式なのか?」


「ドンドドドンキーコング2,今度はドンキー攫われた」
ボカァ!
「スーパードンキーコング2,助けに行かなきゃディディーとディクシー」
チャラチャラッチャチャラチャラ〜……


「……どんな儀式してんのかしらね?」
「儀式なのか?」
ガチャガチャガチャ!
「あ,あれ!?開かない!」
「内側から鍵掛けたみたいね」
「小竹〜〜〜!」
弟の身を案じ,藤吉郎が叫んでいると,突然,内側からドアが開いた。
ガチャ……
「ふーっ,終わったぁー!」
爽やかな笑顔で医務室から出てきたのは,半裸のユミであった。
「ゆ,ユミちゃん!?」
「え……何方?」
「あー,いや。俺,秀吉だけど」
「お義兄様?女装趣味だったんですか!?」
「いや,そう言う訳じゃ……」
「じゃあ何か,宗教上の理由ですか?日本の伝統芸能では,男性が女性の役を演ると言いますものね。う〜む,恐るべし“ワビサビ”」
「いや,それは侘寂とは関係ないけど……」
「そうなんですか?」
「そんな事より小竹は!?」
「ああ。秀長なら,ばっちり私が治しときましたよ!愛の儀式で」
「……何か,君,返り血浴びてない?」
「我が部族に伝わる秘法を使いましたから!」
「ええ〜……!?一寸,大丈夫なの?」
「ばっちりです!」
「……ホントに?」
「ホントですよ。今,一寸,反動で秀長は眠ってますけどね?」
「一寸,ホントに……うっ!?」
訝しみながら藤吉郎が医務室を覗くと……






                    其処は,筆舌に尽くし難い,“地獄”と化していた。
「ちょっ……こ,小竹!?大丈夫か!?」
本能がこの場から逃げだそうとするのを必死に押さえ,藤吉郎はベッドに寝かされている秀長に駆け寄った。
「おい!小竹!しっかりしろっ!」
「……」
「小竹!」
「……う……兄者……?」
「小竹っ」
「兄者……俺……兄者の弟に生まれてきて……幸せだった……よ……」
「小竹ーーーーーーーっ!?」
藤吉郎の絶叫と共に,秀長は再び気絶した。
「あ,死んでないの?」
「殺しませんよ!治療で殺して如何するんですか!」
藤吉郎の後ろから,ユミの声が飛んできた。
「……精神的にはかなり参ってるみたいだけど……」
「酷い怪我でしたからねー」
「……ホントにそれだけの理由?」
「え?」
「いや……」
思わず目を逸らした藤吉郎の眼に,“何か”が映った。
「……あの肉塊は?」
「え?ああ,あれですか。何か其処に置いてあったんで,儀式に使っちゃったんですけど……,何か拙かったですか?」
「使っちゃった……て……これ……」
「え?」
「これ,三回戦で俺と戦った……確か……舞拿何とか……」
「お知り合いだったんですか?」
「て言うか……いや……もう,良いや」
カルチャーギャップと言う奴だろうか。ベッドに寝かされていた怪我人も,ユミには儀式に使う“材料”としか見えなかった様だ。それとも,儀式――秀長の傷を治す事に気が行っていて,“それ”が人間だとは気付かなかったとでも言うのだろうか。
何れにせよ,違う文化圏に属する彼女を,此方の倫理観では裁けないだろう。郷に入れば郷に従えと言う言葉は有るが,今は国際化の時代。如何にお国柄を出すかが,成功する秘訣なのだから。
それが悪いとは言わないが,余所の国にお邪魔するのなら,その国の文化を弁える事位は必要だろう。
「……ま,何にしても……」
「?」
可愛く首を傾げるユミに,思わず溜息が出る。
「愛されてるな,小竹……」
虫の息の舞拿玄以を見て,藤吉郎は思わずそう呟いた。


と言う訳で,占拠されていた医務室だが,無事明け渡される事となった。
「ありゃ〜,こりゃ酷いわね。息も絶え絶えじゃないの」
殆ど死体と見まごうばかりの玄以を見て,帰蝶は鼻を抓んだ。
「拙いのか?」
「うーん,私じゃ一寸厳しいかもねー。半兵衛ちゃん,官兵衛ちゃん。手伝ってくれるかしら?」
「お任せ下され!」
「……こんな奴の傷口舐めるのは嫌だけど,まあ,仕方無いわね」
口々にそう言って,二匹は玄以のヒーリングを始めた。
「ち,これじゃあ,話聞くのは無理だな」
忌々しげに,信長が吐き捨てる。
「仕方無いでしょー。大体,此奴が魔族と繋がってると吐いたって,それだけじゃ如何しようもないでしょ」
「……まあな。オカルト犯罪は,ある意味,治外法権みたいなものだしな」
「現行犯か,何らかの確実な物的証拠が無いと検挙出来ない……んだっけ?」
「しかも,今回はオカGが捜査に出てる訳じゃねーしな」
「そんな適当な仕事,何で引き受けたのよ」
「ま,面白いしな」
「はいはい」
掛け合いを楽しむ二人は,非常に仲睦まじい。
しかし,信長は彼女に“濃姫”を重ね,帰蝶は彼に“信長”を重ねているのかと思うと,やり切れない藤吉郎だった。
「……」
それでも,それが出来ると言うのは,彼等が強いと言う事なのだが。
「――あれ?」
「如何したの,豊臣君」
「さっき俺と戦った,あの蜘蛛のお嬢ちゃんは如何したんすか?」
「ああ,あの……。彼女なら,医務室が占拠されているって言ったら,一刻を争うとか言って病院に連れてかれたわよ?」
気絶した秀長を膝枕しているユミを横目で見つつ,帰蝶は答えた。
「あ,そっすか」
「如何したの?」
「いや,別に。一寸気になっただけです」
「あのなあ,猿。敵の事をわざわざ気にしてて如何すんだよ」
「いや,でも今は平和な時代ですし,俺が必要以上に追い詰めたのも彼女がああなった原因すから……」
「追い詰めた……か」
「え?」
「何か,お前ぇ,益々猿二号に似てきたな」
「そ,そうですか……?」
「ああ。……まあ,良いけどよ」
「はあ……」
良いと言いつつも,信長は少し寂しそうな眼をしていた。
「……」
それを見て,藤吉郎は何か物凄い罪悪感に襲われた。
                         が,
「……っ!」
                           それは直後に来た劣情の波にあっさり流されてしまった。
「だーーーーーっ!違うっ!違うんだぁぁ〜〜〜〜!」
ガンガンガンガン!
叫び声を上げ,壁に頭を打ち付ける藤吉郎。
「せ,先生!?如何したでござるか!」
「……何,あれ?」
「発作」
「何の……」
「……答えたくない」
ヒナタは,心底嫌そうな顔で考高の問いを無視した。



「――ちっ。結局,ゆっくり飯食えなかったな」
「仕方無いすよ,殿。インターバル,短いんすから。それに,食った直後に動くと体に悪いですよ」
「ふん……」

『さあ!GS資格試験,二次試験決勝トーナメント。これより,準々決勝が行われます!』
『今年は激戦区だからナ。誰が勝つか分からんナ』
「では,これより第一試合を始めます」
『審判が,開戦を宣言します』
「第一試合,吉法師選手対浅井長政選手。両者,コートへ!」
『さあ!先ずは安土院の吉法師選手と,魔装術の使い手・浅井長政選手の試合です』
「……長政か」
「いっちょ,胸を借りるつもりで頑張ります!」
「へっ……!」
『さあ!準々決勝,第一試合……』

「試合開始!」
『今,スタートです!』

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