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GS信長 極楽天下布武!!【資格試験編】(5)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 3/ 6)

斎藤利政(1494〜1556)
 土岐頼芸を追い,美濃国を領した戦国大名。
 様々に名を変えたが,晩年,入道して名乗った道三と言う号で呼ばれるのが一般的。
 裏切りを繰り返して成り上がったそのやり口から“蝮”と呼ばれ近隣諸侯から恐れられたが,子の義龍との戦いに敗れ敗死。
 その出生には松波基宗父親説と長井新左衛門父親説が有るが,この内『Mr,ジパング』では“基本的に”長井説を採っている。

惟任光秀(1528?〜1582)
 織田信長の有力武将。
 斎藤道三に追われた土岐氏の支流で,通称・明智十兵衛。
 信長に仕える事となった経緯は諸説有るが,信長が足利義昭を奉じて上洛すると都の庶政に参加,又た軍事方面でも功績を挙げ日向守を賜る。
 京都本能寺において主君信長を弑するも,山崎の戦いで羽柴秀吉に敗れ,敗走中に土民に刺殺。

荒木村重(?〜1586)
 織田信長の有力武将。
 初め池田氏や三好氏に従っていたが,明智光秀等の紹介で信長に仕え,摂津守を賜る。
 後に信長に背き,家族全員が磔に処されるが,本人は辛くも生き延び,中国地方の毛利家へ亡命する。
 信長の死後は剃髪し筆庵道薫を名乗り,利休七哲に数えられる程の茶の湯の腕を示し,豊臣秀吉の御伽衆としてカムバックした。















GS資格試験二次試験会場,医務室。
「ふぅっ……と,私にはこれが限界だわ」
救護班としてGS協会に収集された小笠原帰蝶は,そう言って額の汗を拭った。
「帰蝶サン,まつサンは大丈夫ですかノー」
「私は治療専門じゃないからね。一通りは手当てしたけど,矢っ張り病院に送った方が良いんじゃないかしら。一応女の子なんだから,火傷の痕でも残ったら拙いでしょ?」
「じゃあ,早く119番を……」
「いや,確か表に病院の車が何台か待ってる筈よ。女華,マエダーの手伝いしてきてくれる?」
「は」


「あれが,病院の車ですかのノー」
「……多分」
「いや……車には違いないケンド……」
「確かに……一寸有り得ないな」

「馬車なんて」

「お,怪我人か?」
「え,ええ」
「よーし,じゃあ馬車に乗せてくれ。超特急で病院迄運んでやる!」
「……この人,何でこんなに偉そうなんですジャ?」
「さあ……」
そう言いつつも,運転手の言葉に従い負傷したまつを馬車に乗せる利家と女華。
「ハイヨーッ!」
「ヒヒィィーン!」
運転手が鞭を打つと,馬車は猛スピードでアスファルトの道路を駆け抜けて行った。
「ははははは!矢張り,我等武田は馬が一番だ!」
運転手の高笑いは,間も無く風の中へと消えていった。

「……」
「……まつサン,大丈夫ジャろうか……」
「さあ……」



その頃,試験会場内では三回戦の組み合わせを決める抽選が行われていた。
『今,“フジタのダイス”が十六の対戦カードを決定致しました!』


『三回戦第一試合は,舞拿玄以(まえだ・げんい)選手対羽柴秀美選手です。両名は,十分後にスタジアムへ来て下さい』
選手控え室のスピーカーから,アナウンスが流れた。
この先はギブアップが認められない。手に入れた資格を正式なものとするには,勝っても負けても最後迄戦わなくてはならないのだ。試合如きで敵前逃亡する様な輩に,GS免許は与えられないと言う訳だ。
「猿」
「殿。な,何ですか?」
あー,もう。重傷だよ,俺。
殿の顔,まともに見れないや。
「あの舞拿って奴な,例の武行会のメンバーだぜ」
「ええっ!て事は……」
「蝮の奴から連絡が有った。連中が今回のターゲットで間違いないそうだ」
「……じゃあ」
「気ぃ抜くなよ。絶対勝つのは前提だ,そして出来れば何か情報を得て来い。もう,最悪芝居も必要ねえ」
“出来れば”と言うのは,詰まる所“やれ”と言う事だろう。信長はそう言う人間だ。
「承知仕りました」
「よし,行って来い」
「は!」
少し顔を紅くしたまま,藤吉郎はスタジアムへ向かった。


一方,此方では武行会の胴衣を着た五人が集まっていた。
「けっ!三回戦にもなって相手が牝ガキとはな。ついてるぜ」
そう吐き捨てたのは,藤吉郎の対戦相手,舞拿玄以。
体中に傷の痕を持ち,爬虫類の様な眼光をした見るからに粗暴そうな男だ。
「……油断しない事ね」
この五人の中でリーダー格と思われるおかま風の男が,玄以を窘める。
「あ?如何言う意味だよ」
「あのコ,ただ者じゃ無いわ。何か隠してる。それでいて,ラッキーで勝ち進んだかの様に芝居してるのよ」
「ふん……」
おかま風の男の忠告に,玄以は苦笑を以て応えた。
「私も同感だ。油断するなよ,玄以」
眼鏡の女が,男の言葉に同調する。
「俺も,気を付けた方が良いと思います」
「女の子言うなら,私もそうネ。本気で行くヨロシ」
残りの二人――浅野長政とチャイナ娘もそれを肯定した。
「……!お前等の態度にゃ,もーうんざりだぜ……!何時も俺を見下しやがって!俺だって――」
「馬鹿!滅多な事を言うな!」
「っ!」
女の一喝に,玄以も流石に頭を冷やして口を塞ぐ。
「……」
「べ,別に馬鹿にしてるつもりは無いんですよ」
「そうそう。それ被害妄想アルよ」
慰めてるつもりなのか,逆に玄以の神経を逆撫でする様な事を言うチャイナ娘。
「あのな……」
「……兎に角,今日は“あの方”も見えられるらしいわ。呉々も油断しない様に……。玄以だけでなく,みんなよ」
取り敢えず,おかま風の男が収拾をつけた。
“あの方”とは,彼等に“力”を授けた魔族軍の将校である。
「て,玄以さん,そろそろ時間……」
「っと,いけね」
時計を確認し,玄以は慌ててスタジアムへと向かった。



「ではこれより,三回戦第一試合を行います!」
『さあー,遂に三回戦が始まります!対するは,舞拿選手と羽柴選手!』

「試合開始!」
「ずあっ!」
『舞拿選手,先制の霊波砲攻撃だ!』
「……っと!」
『おおっと。しかしこれは弾かれました!』
『霊波に因る攻撃を弾くのは,簡単な様でそれなりの技術を必要とすル。矢張りあの娘,運だけで勝ち残った訳ではないナ』

「玄以……,あの男,未だ敵を舐めているのか」
観戦席で,武行会の眼鏡の女が呟いた。
「仕方無いわ。所詮玄以は,あたし等程のセンスが無いから……」
おかま風の男が続ける。
「五人の中では最弱ネ」
「はっきり言うなよ……」
少女は相変わらず歯に衣を着せず,少年は心労で胃を痛めた。

「この野郎,舐めやがって……!」
「舐めてるのはお互い様と思うんですけどぉ……」
「洒落臭えーーっ!」
『舞拿選手の身体に付いた無数の傷跡から,十本以上の霊波が放出されます!』
「何!?」
『が!っと,これは……羽柴選手,結界を張り攻撃を防ぎました!』
「ふう……」
握った掌の中で発動させたから,文珠を使った事はばれてない筈だ。
彼奴がターゲットか如何か確かめるには,怒らせて本気にさせるしかない。これ以上,警戒される心配をする必要もないし……。
むしろ,適当に負けられてしまう方が困る。何としても奴に本気を出させて,尻尾を掴まないと。
「ぐふっ!?」
『ああっと!結界に弾かれた舞拿選手の霊波の一つが,舞拿選手本人に当たってしまいました』
でも,本気を出させたら何でターゲットだって分かるんだろ。奴等は魔族と契約して力を手に入れているだろうからって話だそうだけど……。
要するに人間業じゃない技を使ってきたら,それが当たりって事か。
どんな技なんだろ。
「貴様を舐めた事を詫びておくぜ!」
「え。いえ,気にしてませんよ」
『……何かずれてる会話ですねえ』
『相手のペースを如何に崩すかも,戦いには大事な事だからナ』
「もう貴様を舐めたりはせん……!冷静に……確実に仕留めてやるぜ!」
「ど,如何も……」
「この俺の……変蟲術でな!」
『変蟲術!?それは一体,如何言う術なのでしょうか?』
『文献で読んだ事は有るが……普通では使えない術の筈だゾ』
『と,言うと?』
『うむ。変蟲術と言うのは読んで字の如く……』
「蟲に変体すると言う訳さっ!」
「うわっ!?」
ガオォン!
『な,何と舞拿選手,素手でコンクリートの床を叩き割りましたっ!コートは真っ二つだー!』
「な,な,な……!?」
「けっ,怖じ気づいたか小娘。そう,俺は,最強の攻撃力と最硬の防御力を誇る鍬形の力を持ってるんだよ!」
「鍬形の力ぁ!?」
『変蟲術は,虫を原型とする妖怪と契約する事で,虫の特性を取り込む技なんダ。勿論,一歩間違えば自分が虫になってしまうリスクを負わなければならないがナ』
「喰らえっ!」
「ひーーっ!?」
ゴバアァッ!
「ちっ……!パワーが大き過ぎて,思う様に動けん。だが……」
「うわっ!掠っただけでダメージが!?」

「さて,如何なるかしらね」
「鍬形の能力は,シンプルだけど故に俺達の中では最強……。屹度勝てますよ!」
「実力不足を,それで補っていると言うのは否めんがな」
「……お手並み拝見アル」

「ちっ……!」
此奴は,余裕持ってられる相手じゃないな……。
此処は文珠で……

『炎』

ゴッ!
『羽柴選手,掌から炎を出しました!彼女はパイロキネシストだったのでしょうか!?』
「ふんっ!」
『舞拿選手,ものともしていません!』
『身体が変色していル……。鍬形虫に変体しているんダ。その堅固な甲冑で,炎を受け止めたんだナ』
『それは,元に戻れるのですか!?』
『程度と,術者の実力によるナ……』
「これで終わりか?なら,こっちから行くぜぇぇ!」
『舞拿選手の右腕が伸び,何やら牙の様なものが付いている!正に,鍬形虫の顎を彷彿とさせます!』
ドォン!
「ちっ!避けたか」
「女の子にいきなり抱き付くなんて,お行儀悪いですよ!」
「ざけんな!この期に及んで,未だ人をからかう余裕が有るとはな。お前の脳天気さには畏れ入るぜ」
「そりゃ,如何も」
此奴,破壊力は凄いけど攻撃自体は大振りだ。
なら……。
「もう一丁!」
ドォン!
『羽柴選手,今度もかわしたぁ!』
今だ!
『お,おっと!?羽柴選手,攻撃を外した体勢で無防備な舞拿選手に向かい,そのまま攻撃に写る!』
文珠で……!

『解』

「な,何ぃ!?」
『な……如何したのでしょう!舞拿選手の術が解けてしまった模様です!』
「ば,馬鹿な,何故……!?」
「疾っ!」
ドォン!
「ぐあぁ!」
『おっと,不慮の事態に呆然となった舞拿選手に,懐に入った羽柴選手の一撃が見事に決まったぁ!』
「が……くぁ……!」
「やった……!?」
まあ,文珠で攻撃したからな。『爆』の字で。
懐に入ったのは,周りから文珠を使う所を見せない様にする為だけど,あんな所で爆発が起こったらたまったもんじゃないだろ。
……。お……?

「舞拿選手,戦闘続行不能に因り,勝者,羽柴!」
『試合終了!ベスト16一番乗りは,羽柴秀美選手です!』
「ふう……」
ま,こんなもんで良いのかな……?



「これで彼奴等がクロって事で間違いなさそうだな。良くやったぞ,猿」
「はい,殿!有り難う御座います」
「へっ」
「……」
「?如何した,猿」
「あ,い,いえ何でも……っ!ちょっ,厠行って来ますねっ」
「お,応……?」


会場入り口のホール。試合が行われている今は,無人である。
俺(藤吉郎だ)は,胸の高鳴りを押さえる為,此処へ逃げてきた。
人の居ない,ひんやりとした空気が心地良い。
「はあ,はあ……」
胸を押さえて,荒い息を吐く。
「あー,もう。殿の顔見ただけで胸が苦しいよ……。これが,“こひするをとめ”って奴か?」
そう言えば,まともに恋愛なんてした事なかったな。ヒナタやヒカゲとのは,完全にあっち主導で悪く言えば引きずられてた感じだったし。俺は,彼奴に“友達”以上の感情を抱いた事があったろうか?
……まあ,あの乱世だもんな。俺みたいに,力も何も無い浮浪児が,そんな事に気を回してる余裕なんてなかったし,そもそも出会いがなかった。ヒナタと会ったのは,幸運だったかもな。
そのお陰でとんでも無い事に巻き込まれたけど,それが無ければ今の俺は無い。
辛い事も悲しい事も,全てが経験――人生のキャリアだ。
「ふう……。でもホント,このままじゃ如何にかなっちまう。文珠勿体ないけど,次の試合迄,男に戻ってよう」
俺は,文珠を作り出し,飲み込んだ。

『解』

「……ふう」
顔の火照りも引いてきて,俺は溜息を吐いた。
「あー,一寸頭冷やしてるかな」
そう言って,俺が備え付けのソファーに腰を降ろした時,入り口の自動ドアが,音を立てて開いた。
「誰か来た」
道三様達かなとも思ったが,それは知らない顔だった。
鮮やかなブロンドの髪をした,グラマーな美人だ。
が……
「気の所為かな……?頭に触角が付いてる様に見えるんだけど……」
そんな事を考えながら何気なく彼女を見ていると,彼女が此方の姿を認め,歩み寄ってきた。
「ムラマサ……?何でこんな所にいるんだい」
「え?」
ムラマサ……。
自分……いや,“豊臣秀吉”の事だ。渾名か何かなのだろう,あのタツリオと言う魔族の少女が自分をそう呼んでいた。
「あの……貴方,俺の知り合いですか?」
「は!?」
彼女は心底驚いた様な,間の抜けた表情を作った。ああ,この人は酷く直情的な人なんだなと,本能で嗅ぎ取り,思う。如何も俺は,斯ういう方面に才能があるらしい。ゴーストスイーパーなんかより,ビジネスマンの方が合ってるかも知れない。
「な,何言ってんだい。あたしの顔を見忘れたってのか?こんな格好してるから,分からないのかい?」
「え,いえ……」
彼女と“俺”は,かなり親しいらしい。
「実は俺,記憶喪失になっちゃって。一月前より前の記憶がないんです」
「な……っ!」
彼女は,驚愕に眼を見開いた。
いや。
それだけじゃない。その瞬間,確かに彼女の瞳に浮かんだのは……

憎しみ?

「じゃあ……ルシトラの事も,覚えてないって言うのかい……?」
「……御免なさい」
「……」
「あの……?」
「殺すッ!」
ドォン!
突然,俯いていた彼女が俺に攻撃してきた。凄い出力だ,咄嗟に捌けたから良かったが,まともに喰らってたら,今頃俺は只の肉塊に成り果てていただろう。
「ちょっ……いきなり何を!」
「五月蠅いっ!あれから未だ一年も経ってないって言うのに……っ,お前はルシトラを忘れちまったと言うのかい!」
「いや,だから……」
「彼奴が誰の為に……どんな気持ちで死んでいったか……!それを,あんたが覚えてないで,如何するって言うんだ!」
彼女が,再び拳にエネルギーを込め,俺に向かって振り上げる。
やばい!
「止めなさい!」
「!?」
そんな時に掛けられた一喝に振り向くと,其処には勝三郎様と道三様が居た。
「マスア……!?何故此処に……。まさか,貴方がこの件の黒幕なのですか!?」
「勝竜姫か……。ちっ!」
「あっ,待ちなさい!」
彼女(マスアと言う名前らしい。矢っ張り魔族か?)は,勝三郎様の姿を認めると,身を翻して会場から逃げていった。
「く……」
「豊臣君,大丈夫かね」
「あ,はい,道三様。怪我も何もありません」
「そうか……それは何よりだ」
「はい……」
其処に,勝三郎様が戻ってきた。如何やらマスアに逃げられてしまったらしい。
「彼女がこの事件の黒幕……」
「ええ,間違いないでしょう」
「とは言え……彼女が個人でこんな事を起こすとは思えない……。矢張り,魔族軍の上層部が絡んでいるのでしょうね」
「……如何します?信長君に拠ると,武行会のメンバーは,五人とも合格してしまったらしいですが」
「そうですね……」
勝三郎様は,真面目一徹なだけに斯ういう事には頭が回らないのだろう。知り合って一月の俺でも分かる程に,堅物を絵に描いた様な人……あ,いや神様だ。
「兎に角,私は彼女を追います。斎藤さん,後は貴方達に任せます」
「……分かりました」
勝三郎様の浅知恵で場を掻き回されても困ると思ったのか,道三様はあっさりと承諾した。
「頼みます!」
そう言って,勝三郎様は会場から出ていった。
「さて……我々は会場へ行きますか,豊臣君。……大丈夫ですか?」
「え,ええ。平気ですよ,この通り,ぴんぴんしてます」
「そうですか,では……」
そうして,俺は会場へ戻った。


ルシトラ……。
何だろう,この名前。聞いた事がある……?
……頭が痛い。ガンガンする。
この名前を聞くと……。
「豊臣君?如何したのかね?」
「え。いえ,何でも……」
一つ,分かっているのは。

他人の人生を貰い受けると言う事は,向けられる期待も,憎しみさえも背負うと言う事……。

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