ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と 第6話』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 3/ 5)



(「お・・・おい。一体、あれのどこら辺が楽しいんだ?」)

(「・・いいの。可愛いんだから。何をしてるかは問題じゃないわ。」)

(「・・・お前・・スズノのことになると性格変わるよな・・。」)


・・・なんて会話。

事務所の玄関で・・・
横島とタマモは少し離れたところからスズノの様子を見守っている。

・・スズノはというと・・

「・・・・・・・・。」

なにやら、外から迷い込んだらしいダンゴムシをつついて遊んでいたりして・・・
なにが面白いのか、丸くなったムシをしげしげと眺め・・時折、感心したようにうなづいている。

・・やがて、

「・・うん・・・ここは危ないからもう近づいてはいけない・・・。」

そう言いながら、ダンゴムシを安全な場所まで護送して・・・

・・・・。

キューーーーーン!!(胸がときめく音)

(「ああ・・もう・・わが妹ながら可愛すぎるわ・・」)

(「・・・・だからキャラが違うって・・。ってか抱きつきたいのはよく分かったから、手をワキワキさせないでくれ・・」)

他のメンバーにはクールな態度を崩そうとしないというのに・・本当にスズノにだけは甘々なのだから笑ってしまう。
おそらく、これは油揚げより優先順位が上になっている。

・・・もともとは掃除に来ただけなのだが・・かなりの時間をくってしまった。
ため息をつきながら、横島はほうきを片付ける。

このままでは何十分つき合わされるか分かったものではない。さっさと自分はリビングに引き上げて・・・


・・・・・と。
そこにおキヌが困惑した様子で近づいてくる。

「?どうしたの?おキヌちゃん・・血相変えて・・・」

「それが・・・横島さん、ちょっと窓を見てください。」

「・・窓?」
不思議そうに、しかし言われたとおり、横島は窓の外へと目を移し・・・

・・・・・。

・・・・・・・。

視線の先。
そこには、何故か大鎧を着込み、日本刀を差した茶色い肌の・・(ついでに右手に菓子折りを持参している)
さらに付け加えるなら、ニワトリの顔をした魔族がつっ立っていていて・・・

・・・・・。

「・・・何だアレ?」

横島はあっけにとられて、つぶやいたのだった。



〜 『キツネと姉妹と約束と その6』 〜



「・・まずは、突然の訪問をお詫びせねばなりますまい。」

「・・は・・はぁ・・。」

椅子をすすめられても座ろうとしない・・あくまで床に正座。応接室で・・ニワトリは神妙そうに美神令子を見つめている。

(な・・なに?何なの?私がいくら所長だからって・・どうしてこんな意味不明な魔族の応対をしなきゃなんないのよ・・)

そのたたずまいはどこぞの戦国武士を思わせるように威風堂々としていて・・

「・・それがしの名はコカトリス。貴殿らの敵方に与する者。」

・・・いや、和風なのか洋風なのかはっきりしろ、という話もあるが・・
そんなことより・・・この魔族が今、口にしたことは・・・・

「・・敵?」

美神も、そばに控えていた横島も咄嗟にその言葉に反応する。
あまりにもアレな格好だったので失念していたが・・そういえばそんな可能性もあったのだ。

「・・ハッ。それがしは一週間前、スズノ殿を襲った魔物の・・上司なのです。」

!!

直後。

美神と横島は、ほぼ同時に臨戦態勢へと気配を移す。
虚を突かれたとはいえ、この対応の早さ・・・流石に手練れたGSだけのことは・・・

「やられたわ・・っていうか私たちが悪いような気もするけど・・。と・・とにかく意表をついたことしてくれるじゃない。」

「くそ、油断した・・のもなんとなく無理ないように思うけど・・えっと、とりあえずこの部屋からは一歩も出さない・・方がいいのか?」

・・・まあ、思いっきり取り乱してはいるが・・

「あいや、待たれい!!それがし、今日は戦をしに参ったのではありませぬ!!奇襲など仕掛けるは武士の名折れ!!
 なにとぞ・・・なにとぞ!!スズノ殿に一言、謝罪させてくだされ!!!!」

・・・・。

「「・・・・・・。」」

・・・・・。

なんなんだろう、この人は?(鳥だが)

「え・・えっと・・じゃあ、とりあえず今は闘う気はない・・と。」

「・・・・ハッ。後日改めて、スズノ殿をもらい受けに参ります。
 貴殿の気がすまないというなら・・どうかこの刀でそれがしを斬り捨てていただきたい!!」

・・・いや、あんた・・それじゃ後日来れなくなっちゃうでしょう、というつっこみもあるが・・

「え・・い・・いや、そう言われてもなぁ。」
確かに・・この場で退治してしまえば、後々楽になるような気もするが・・

「ちょ・・ちょっとねぇ・・」
しかし・・このニワトリを見ていると・・何か調子が狂う。

(・・・こいつ・・、絶対シロと気が合う。間違いない・・・絶対気が合う・・)
横島は半眼になりながら、そんなことを思って・・・

・・そういえばシロはどうしたのだろう?まだ散歩から戻ってきてはいないのか・・・

・・・・。


「横島。その者は私に用があるのか?」

不意に・・声が聞こえて・・・
その場にいた全員が背後を振り向いた。
見れば、ドアの前にはスズノが一人でたたずんでいて・・・

「スズノ・・・お前・・どうして?」

「・・ごめん、横島。止めたんだけど、この子どうしても聞かなくて・・」

続いて、息を切らしながら・・タマモが部屋へと足を踏み入れる。


「・・・・・。」


それに・・・

コカトリスは深々と頭を下げた。

「先日は無礼を・・。そして、いずれ我々がするであろうことも・・この場を借りて謝罪いたします。」

低い声で述べられる言葉。真剣な声音。
謝罪はタマモにも向けられていた。再会した妹との仲を引き裂かれる・・姉への謝罪。

スズノとタマモは、そんな魔物の様子に・・ただただ言葉を失って・・

・・・・。
―――・・・・。

・・結局。

本当にコカトリスはスズノに対して手を出そうとはしなかった。
玄関の前で一礼すると、彼は踵を返して去っていく。

「・・・どう思う?アイツ」
複雑な面持ちで美神がたずねると・・・

「ん〜・・悪い奴じゃ・・ないと思いますよ?なんか闘うの気が重いな・・。」
やはり複雑な面持ちで返す横島。

・・・・。

「・・・・?」

・・と、窓から下を見下ろす彼は、事務所の前に止められた高級車に目を留める。

それは・・・先日乗せられたばかりの・・西条の車だった。



〜appendix.4 『雨の中の二人』〜

キーを抜き取った西条は、そのまま庭へと踏み入った。

・・そして・・そこで、見知った顔に目を見開く。

「・・・・・西条殿か・・。」

昨日から降り始めた雨は・・魔族の声を掻き消すほどに鳴り響き・・

「・・・やあ。」
少しだけ肩をすくめると、彼はそのままコカトリスの横を通り過ぎようとする。

・・・・・。



「・・・それがしは・・・・」




「・・・・許さぬよ。貴殿だけは・・」



呼び止めた剣士の瞳に映るのは憤怒。
西条はそらすでもなく、その視線を受け止めて・・・

「・・・恨まれたものだね。」

そして、自嘲気味にひとつ笑みをもらす。

「貴殿とそれがしが出会ってから、すでに3年。・・もう幾度も貴殿とは斬り合ってきた・・。」

場を静寂が支配する。
・・・・降り続ける雨。止まない雨。

濡れるのも構わず、コカトリスは前へと踏み出して・・・


「次は・・・決着をつけよう・・・。」

「構わないさ。こちらとしてもスズノちゃんを奪られるわけにはいかない。」

短く答えた後、西条はチラリと相手を一瞥する。
そこには・・・すでに何も無い・・

ただ殺風景な中庭だけが広がっていて・・・・

「・・・・・・。」

彼は、無言のまま事務所の門をくぐるのだった。



〜 『おまけ 5.75話』 (やっぱり横タマは最高です(爆))〜


―――・・さかのぼること数時間前。

・・・・。

「お前ってさ、意外と子供好きだったりするか?」

リビングのソファー。
食事を終え、タマモとスズノ・・・そして横島はその上に仲良く腰掛けていた。

雨も上がらず、部屋にはアンニュイな空気が立ち込めている。

・・とにかくそんな昼下がり。
誰であろうと眠気を誘われてしまいそうな・・そんな時間。

ご多分に漏れず、いつの間にかスズノも、うとうとし始めて・・

・・・。

ペシャリ・・と。
タマモのひざに頭をのせ、そのまま睡眠モードへと突入してしまう。

横島が2行目のセリフを発したのは、そんな光景を目の当たりにしたからなのだが・・・

・・まぁ、スズノには恐ろしく甘いタマモのことだ。せがまれたひざ枕をそうそう拒絶するとも思えない。

ただ、横島としては・・タマモがもうちょっと慌てふためく姿を見たかったというか・・
要するに、平然としたままの彼女をつまらなく思い、なんとなく声をかけてしまったのだ。


「・・・・。」

「お〜い。タマモ、黙ってちゃ分からんって・・お前ってば、いつからそんな子守りに強く・・・」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・タマモ?」

全く返ってこないリアクション。それを不思議に思い、横島がタマモをのぞきこむと・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・なに?」

キツネの少女(姉)はかろうじて、しょぼしょぼとした目をこちらに向けてきて・・・

「・・・お前・・もしかして、すっげえ眠かったりするか?」

「・・・・・・別に・・・眠く・・・ない。」

・・いや、半分以上意識を失いかけながらそんなことを言われても・・って感じではあるが・・

・・・。

(・・ま、ここしばらくゴタゴタしてたからな・・。)
横島は苦笑を浮かべながら、ため息をついた。
彼女だって疲れているのは間違いない。
・・おそらく、スズノの前では寝ないように意地を張っている、といったところなのだろう。

「あ〜・・あれだ。スズノが起きる前には必ず起こしてやっから・・無理しないで寝てていいぞ?」

ぽんぽん、とタマモの頭をたたきながら、横島はそんなことを言って・・・
タマモは・・彼の顔を少しだけ見つめた後・・

「・・・・・・ん・・・・」

もう限界とばかりに、その場へ倒れこんでしまう。
程なくして、すーすー・・と、可愛らしい寝息が聞こえてきた。

「・・って、オレに寄りかかれとまで言ったつもりはないんだけどなぁ・・」
参ったとばかりに頭をかく。


・・・・そばには、穏やかに眠る少女が二人。

「やれやれ・・どうしたもんかね、この状況は・・」

言葉とは裏腹に、大して困ったそぶりも見せず・・・
横島は大きくあくびをするのだった。


〜続きます〜


『あとがき』

西条目立ちすぎ(笑)次回から彼が主役の平成剣客浪漫譚がはじまります!お楽しみに!!(大嘘

スズノには激甘のタマモ。今後、シロや美神には彼女が絶対言わないような発言が飛び出すかも・・
あ・・スズノといえば、
前回、竹さんがコメントに書かれていたマンガのぞいてみました(ヤンマガの『みなみけ』ですよね?絵柄が可愛いです)

で・・・問題の末妹・・話し方も似てますが、ルックスが・・作者の抱いているスズノのイメージにぴったりで(喜
皆様、これから小説の場面を想像するときは、あのキャラを参考にし(以下略)竹さん、ありがとうございます〜

あとは・・あ!コカトリスさん・・変な人ですいません(鳥ですが)
名前のチョイスも有名なものから取ったというだけなので、彼は別に石化能力とかは持っておりません(爆)

・・今回は書くことがたくさんありますね・・(汗

それと、ついに『姉妹』の執筆が完了しました〜。これで連載が止まることはないと思いますので安心してお読みください〜
しかし・・第14話の43kbっていうのは一体・・(笑)どこで切ればいいのかな・・。

さてさて、西条さんにはこれからがんばってもらいます。キツネシリーズ始まって以来の剣と剣によるバトル!!
やっぱり男は剣ですよね〜
といわけで、また次回、お会いしましょう。

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