ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌの奏でるラブソング 最終回 後編


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 3/ 5)

「よ、横島さん・・」

横島が必死になりながら戦っている姿を見て、おキヌは涙が出そうなほどうれしかった。
自分が言った我が儘を、自分の一方的な約束を、あんなに一生懸命に守ろうとしてくれる。

「たしかにつえ〜な、最初を入れないにしても、これで18人抜きか。
弓と同点首位まで18人目に倒されちゃ、だれも横島の実力疑うやつなんていないだろ。」

「同感ですわね。」

二人の反応に、おキヌはうれしくてしかたがなかった。
横島さんの好さは、ちゃんと付き合わないと分かってもらえないのは知っているが、
今は横島さんが悪く言われないように、少しでも見直してもらえるように、ただそれだけを願っている。

「さて、じゃ行くか。」

魔理が観客席から立ち上がり、歩き出そうとする。

「どこにですか?」

どこに行くのか分からないおキヌは、思わず間抜けな質問をしてしまう。

「なにって、次の試合はうちのクラスだぞ。」

「え?」

「えって、次に彼と対戦するのは私たちですよ氷室さん。忘れていたんですか?」

弓の一言に、おキヌは自分の状況を思い出すと突然立ち上がる。

「そ、そんな私できません。どうしよう、わ、わざと負けちゃいましょうか。」

「氷室さん、あなた彼を努力を無駄にしたいの!」

おキヌの戦うのを拒否した発言に、弓は声を荒げて怒りだす。
その姿に、おキヌも唖然としてしまう。

「彼は、貴方のために戦う事を決めたのよ。学年全部に自分の実力を見せるために、それなのに
氷室さんがわざと負けたりしたら、またみんなは彼を馬鹿にするわ! 
女に助けられるような男だってね、それでも良いの? 
それに見なさい、彼はそんな事なんてけっして望んでいないわ。」

おキヌはGSチームの控え席を見る、そこにはジッとこちらを見つめる横島が見えた。
強い意志を持った目で、こちらを見つめる横島は、おキヌに何かを伝えるように感じられる。

「ごめんなさい、弓さん。
そうですよね、手を抜くなんて失礼ですよね、私全力でがんばります。」

弓もおキヌのその言葉に満足すると、立ち上がって自分たちの控え席に向かう。
横島が負けないように、自分たちだって負けたくないのだから。



一方そのころ横島の心の中では激しい感情が吹き荒れていた。

もうあかん限界や、いい加減メッキが剥がれる。
何で俺はこんなに大変な目にあわなければいけないんだ。
俺は女子高でうはうはしたかっただけなのに、なぜ死にそうになっているんだ。
しかも何でこんなに戦いにくいんだ、みんなそれぞれ自分の特技で攻めてくるからやりにくいぞ〜
こんななら、まだアシュタロスの時の、バトルシュミレーションの方が力で押してくる分楽やったぞ。
次で最後だか、次っておキヌちゃんのクラスじゃね〜か。
なぜおキヌちゃんのために戦ってるのに、おキヌちゃんと争わねばならないんだ。
くっそ、わざと負けてくれるように頼めないかな。

そこで一度横島はおキヌのクラスを見る。
丁度おキヌもこちらを見たので自然と見詰め合う形になった。
横島は負けてくれと念をこめるが、おキヌは大きく頷いて強い意志を見せる。

あかん、あれは誰かに負けるなんて俺を馬鹿にしてるとか吹き込まれて、本気で戦う決意をした目だ。
も〜だめだ、も〜どうでも良い、次負けてしまえ。
も〜しらんぞ〜〜〜〜〜

実際飛び道具を文殊に頼っていた横島は、代わりのサイキックソーサーを使いすぎて、
霊力が底をつく寸前だった。



「まずいわね。」

「どうしたの〜〜〜、令子ちゃん〜〜。」

横島を見ていた美神の発言に、冥子が不思議に思って聞く。

「横島君のあの目は、もうどうでもいいから次負けるぞって思ってる目よ。」

「あらあら〜〜〜」

「ここまで来て負けるなんて許さないわ。」

美神は立ち上がり横島へと近寄っていく、横島も美神が近寄ってくるのが分かるのだが、
すでに身動き一つ取るのがきついので、そのまま近づくのを待った。

「横島君、あなた次負けてしまえって思ってるでしょ?」

一瞬横島はびくっとするが、それ以外に変化はなかった。
横島からは返事が無かったが、それでも美神は話を進める。

「でもよく考えて、いまこの女子高の生徒たちは貴方を見直し始めている。
もし次も勝ってかっこよく決めれば、あなた1年の生徒からもてもてよ。」

横島の目に光が灯り美神を見つめる。

「も、もてもて」

「そうよ、1年全部の中から選び放題、どれでもお好きにって感じよ。」

霊力の陽炎が横島の体から漏れ出し始める、さっきまで完全に無くなっていたのにだ。

「選び放題、ど、どれでもお好きに・・・」

「どう、勝つ気になった?」

すくっと横島は立ち上がると、美神を見つめて宣言する。

「勝ちますよ、あたりまえじゃないですか! おっと、もてもてなんてどうでも良いんです。
おキヌちゃんのために絶対負けんぞ〜」

「せ、先生どうしたでござるか。」

「横島大丈夫?」

端でおとなしくしていた、シロとタマモも横島の態度に心配になって駆けつけて来る。

「あ〜、大丈夫よ。横島君は次の試合に向けて気合を入れてるだけだから。」

美神はにっこり微笑みながら、二人に心配するなとつげる。

「任せてください美神さん。」

元気一杯にシャドウボクシングを始める。

「わ、は、は、は、は」

高々に笑い続けるのだが、当然反対側の1年B組の控え席にもその光景が見える。

「すげ〜な横島って、まだまだ余裕そうだぞ。」

「霊力が見えるぐらいに濃いですわ。」

「あはははは。」

なんとなく予想がつくおキヌは、ちょっと苦笑いだ。
でもきっと横島さんは本気になったのだろうと確信する。

おキヌは横島と戦うのは今回が初めてだった、いつでも横で戦いを見続けてきたおキヌとしては、
横島がどれだけすごいか分かる、美神と共に最前線で戦い続けた横島に、自分の力がどれだけ通用するか
不安だったが、今は全力で戦ってみようと思う。
きっとそれでも勝てないだろうが、今よりもっと横島に近づける気がするから、
だからがんばってみようと思う。

「弓さん、今回は私が最初で良いですか。」

「良いの?」

弓はきっと覚悟は出来たのと聞いているのだろう。
だからおキヌは自信もって答える。

「ええ、私は1年B組の代表ですから。」

「負けんじゃね〜ぞ。女をなめるなって、言って来い。」

魔理の励ましがうれしくて、微笑を浮かべながらはいと答える。
第八試合の開始はもうすぐだった。



美神は自分の席に戻ると、まず冥子に話しかけられた。

「良いの〜〜〜?、横島クンにあんな事言って〜〜」

冥子め聞いていたかと美神は思ったが、隠すような事でも無いので答える。

「良いのよ、横島君のやる気を出すにはあれが一番良いんだから、
大体ね、私の目が黒いうちは横島君に勝手させるはず無いでしょ。
せいぜい夢見とけばいいわ。」

すると横の冥子がくすくすと笑い出した。
不思議に思った美神が、冥子に問いただす。

「なによ、なに笑ってるの。」

「いえ〜〜、よく分かってるなと思ってね〜〜。
ちょっと羨ましいから、私もパートナー作ろうかしら〜〜」

「ふん、あんなのパートナーじゃなくて丁稚で十分よ。」

真っ赤になってそっぽを向く美神の横で、試合が開始されるまで冥子は笑いを止めなかった。













そして試合が開始された。
GSチーム先鋒は横島、1年B組先鋒はおキヌだ。

おキヌは元々後方支援がメインだ、前衛の横島とは相性が悪い。
だから最初から自分の力を出し切らないと一瞬で負けてしまう、
力の出し惜しみなんて出来るはずも無かった。
ネクロマンサーの笛を鳴り響かせ、横島を支配しようと力をこめる。

ねむりなさい、地面に横になってねむりなさい、ほんの5秒で良いからねむりなさい。

力を込めて吹くのだが横島は抵抗して、なかなか倒れようとしない。

「ま、け、るかぁ〜」

横島は少しずつじりじりとおキヌに寄って行く、おキヌもじりじりと後ろにさがるのだが、
そんなに広くない結界なのですぐ壁にあたってしまう。
ますます強くおキヌは力をこめる。

もう良いから休みなさい、これ以上は戦う必要はないのよ、もう倒れなさい。

「い、や、じゃ〜、おキヌちゃんと約束したんだ。
一回も負けないって、もうちょっとなんや、諦めてたまるか〜」

おキヌの笛が一瞬止まる、息が切れてしまったのか横島の言葉に反応したのかは分からなかったが、
横島には一瞬止まれば十分だった。

おキヌから笛を取り上げる、そしておキヌには笛以外の戦い方はまだ知らなかった。

「まいりました。」

おキヌの一言で、横島はほっとした顔になる。

「俺の勝ちだね、おキヌちゃん。」

涙が出そうなぐらい嬉しかった、横島は自分のためにこんなにも一生懸命になってくれる。
おキヌは、今まで自分が横島にどう思われてるかずっと不安だった、
周りには横島を想っている人が多いから、勇気のもてない自分がその人たちに勝てるとは思えなかったから、
今回だって自分が勝手に騒ぎを大きくしてしまったのに、それなのに自分には文句一つ言わないでくれる。

ここまでしてくれるんだから、信じても良いですよね横島さん。
自分勝手と思っていても今回はそう思う事にした。

「次の人と代わりますね。」

そう言って弓たちの方へ戻ろうとしたが、横島の足に自分の足を引っ掛けてしまった。
そしてつい何かにしがみつこうとしたおキヌの手が、横島の肩をつかむ。

それは一瞬の出来事だった、おキヌの手が戦いが終わり油断していた横島を地面に叩きつけてしまい、
そのままおキヌが体重を掛けて乗っかってしまった。

「ぐぇ〜」

限界ぎりぎりで戦っていた横島には、その一撃で十分だった。

横島撃沈。

今回の模擬戦にまいったなど最初から無い、勝負は5秒ホールドと気絶によるK.Oのみだ。
だから当然和やかに会話していようが、今は試合の最中だった。

「K.O勝ち!! B組!!」

「え?」

横島を下敷きにすることで、怪我一つしなかったおキヌが間の抜けた声を出す。

会場はシーンとする。
そして次の瞬間に大歓声が響き渡った。

「やった〜〜」「おめでと〜〜」「現役GSに勝った〜」
「でも、愛しの彼女のために身をていして庇うなんて素敵ね。」
「でもさ自分で負けないでと言った相手に勝つなんて、氷室さんもなかなかやるわね。」
「きっと尻に敷いてるんだじゃない」



「なあ弓、喜んで良いのかな。」

「私に聞かないでください、一文字さん。」

弓と魔理が複雑な顔で、横島をつぶしているおキヌを見る。
勝ったのは嬉しいが、自分たちの出番が来なかったことに、
二人はちょっとだけ悲しい気持ちになるのだった。



GSチーム控え席は美神の怒りによって荒れていた。

「あんの馬鹿〜〜、よりにもよってなんて情けない負け方するのよ〜」

美神が地団駄を踏みながら悔しがる。

「でも〜〜、とっても横島クンらしい負け方よね〜〜〜
私、やっぱりこっちの横島クンの方が良いわ〜〜」

「ふう、・・まあね、変にかっこいい横島君なんてやっぱり想像できないわ。」

だいぶ落ち着きを取り戻した美神が、椅子に座りなおしながら冥子に答える。

「だったら、これでいいのよ〜〜 幸いにも、もう横島クンとおキヌちゃんの事で変な噂立てる人は、
居ないみたいだしね〜〜〜」

最初にあった、二人を馬鹿にした雰囲気はすでに無く、今は純粋に二人を楽しんでいるようだった。
かりにも18人抜きをした横島だ、実力はすでに証明されている。
さすがは美神除霊事務所のメンバーだと言う事で、生徒たちの意見は落ち着いた。

そして模擬戦の閉会式となる。

「みなさんお疲れ様〜〜〜〜
本当は、この後横島さんから講義があったのですが、すでに喋れる状態では無いので、
また日をあらためて行います〜〜。
せっかくですから、理事長からも横島さんの援護をしちゃいましょう。
皆さん今回横島さんと戦いましたが、横島さんは一回も文殊を使いませんでしたね。
彼の力はサイキックソーサー、ハンズ・オブ・グローリ、霊波刀と多才にありますが、
彼の本質は、世界で確認されているたった一人の文殊使いです。
使い方次第では、どんな高等魔族も倒す事の出来る文殊こそが、彼の力の本質なんです。
彼はそれを使わなかった、式神使いが式神を使わないで戦っているようなものです。
それをよく考えて見てください。
私からは以上よ〜〜〜」

「解散だ、後は各クラスHRだけやって帰れ〜」







「ん、ん〜」

横島が目を覚ますと、もう夕方になっていた。
どうやらどこかの教室に居るようで、窓から西日が射していて少しまぶしかった。
ふと、自分の頭が柔らかいものに乗っているのを感じる、
不思議に思って正面を見上げると、おキヌが自分の事を覗き込むようにジッと見つめていた。
どうやら、おキヌちゃんに膝枕の状態で覗き込まれている。

やば怒ってるかな、勝てなかったしな〜

取り敢えず素直に謝る事にした横島は口を開く事にする。

「ごめん、おキヌちゃん勝てなかったよ。
おキヌちゃんのご飯、いつも楽しみだったんだけどな。」

そこまで言うと、上から水滴が落ちてきているのに気がつく。

「おキヌちゃん、泣いてるの?」

「うそです、あんなのはうそです。
私が横島さんの世話をしないわけ無いじゃないですか。」

おキヌは横島の質問には答えないで、自分の意見だけを伝える。
そうしないと、最後まで喋れないかもしれないから・・・

「そっか、ありがとう。」

横島は安心したように目をつぶった。
それを見たおキヌは、今なら勇気が出せそうな気がする。
今日はいろいろあったけど、横島にいろいろ迷惑掛けたけど、そのお礼ぐらいしたかったから、
そっと横島の唇に自分の唇を重ねる。

ありがとうと心で呟いて・・・




FIN


あとがき
ども青い猫又です。
おキヌの奏でるラブソング最終回となりましたが、どうだったでしょうか。
内容のほうですが、名前の無いキャラを動かすのはきつかったです。
漫画だと絵で見分けがつくのですが、文だとね・・・
もしかして名前あるのかな〜

ではまたよろしくお願いします。

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