ザ・グレート・展開予測ショー

マシンガン


投稿者名:SooMighty
投稿日時:(04/ 3/ 4)

こんな情けない俺でも、たまにはカッコイイところを
見せてやりたい。

このマシンガンをそこらじゅうにぶっ放して俺のの怖ろしさを
強さを皆にわからせてやる!


俺は本気だせば凄いんだ!!
どんな難関でも克服してみせる。





でも現実は・・・このマシンガンは弾がゼロなんです・・・














マシンガン








現実は本当に優しくない。







またしてもゴーストスイーパーの免許をとることができなかった。
これでもう3回目だ。
毎回試験があるごとにやる気を出して、必死に修行をして、挑んで
るが決まって一回戦落ち。

まわりの知り合い達もさすがに呆れてゴーストスイーパーはもう諦めた方が
いいというぐらいに追い詰められている現状・・・。

実家の母親もそういえば似たようなことを言ってたなー。
今度試験落ちたら帰省しなさいって。


本当に現実は優しくない。昔からそうだった。


幼少の頃から男には「ウドの大木」とバカにされ、女性からは
「ムッツリスケベ」と嘲笑の対象とされ、成長した今でもそんな状況は何も
変わっていない。
「セクハラの虎」なんていう大恥ものの名前をつけられ、よく影が薄い
なんて言われる。
脇役は脇役でも俺の場合はただの人数あわせのキャラってところか。



そんな状況を変えたくて、昔から勉強もスポーツも霊能も
人一倍努力してきた。
自分には才能なんか何も無いってのはわかっていた。
だからこそ必死に、人一倍に努力してきた。
子供の頃はそうすればおとぎ話のように、カメがウサギに
勝つように、弱者でも強者に勝てると信じていた。
実際では全然そんなことなく、結局秀才がいくら努力しても
天才には勝てないように、凡人がいくら努力しても秀才には
勝てないのだ。
それを悟った日に「ジャ」とか「ノー」の口癖は消えていた。
いつまでもこんなバカみたいなものを抱えてる余裕はないし、第一
自分が余計にピエロに思えてくるだけだ。それが無くなったのが今のところ
唯一の喜びだった。



俺はそんな嫌なことがあった時、大抵安酒をガブ飲みして、自分で
自分に幻覚を見せるようにしている。
その幻覚の内容は決まっている。
俺をバカにしたやつらを並べて、マシンガンで撃ちまくるのだ。
その時は酒のせいもあり、本当に気分がいい。

なんせこの世界では俺が圧倒的NO1だからな。
スケベの横島も、偽善者のピートも、くそムカツク上司も
男も女もじいさんもばあさんもみんな俺にナスすべ無く撃ち落される。

俺はお前らよりもずっと努力しているんだ。なのになぜそれが
わからない!なぜ誰も気づかない!?
こんな世間に俺はムカついている。
こんな現実なんか全部ぶっ壊してやる。


毎回そんな思いをマシンガンにこめて弾丸を撃ちつくす!




世間から見たら狂っていると思われるかもしれないが、別にただの
自己満足行為だ。
所詮は幻覚だから、なにも害はないのだ。
そうまさに「張子の虎」だ。
力が弱いという皮肉ゆえに成り立つ話なのだ。
嬉しいんだか悲しいんだか良くわからないが・・・




それでも、この瞬間だけは、この幻覚の中だけは俺が主役なのだ。
それに明日は魔理との約束もある。
嫌な事を引き摺って会うってのは失礼ってもんだ。









魔理との付き合いは長い。
もう2年にはなる。
こんな情けない男にここまで一緒にいてくれるなんて
本当にあいつはいい女だ。

あいつだけは俺を見捨てないでいてくれた。
今の俺がなんとかやっていけるのもあいつのおかげだ。
あいつだけはマシンガンで撃ったことは一度も無い。

ただ姉御肌?みたいなものがあり、よく慰められる。
「気にすんな」とか「がんばればなんとかなる」とか。

確かにありがたいことなんだが、男の俺が女に慰められるのはナントモ。




でもあいつはそんな情けない俺でも受け入れてくれる。
あいつなら俺の全てを見せられる。
本当の淋しさを。
本当の悲しみを。



「よお、タイガー」
不意に声がかけられた。
いつのまにか時が過ぎていたらしい。

「昨日は残念だったな。まあ、まだまだお前は若いんだからな。
 気にすんなよ。」

いきなり慰めから入られた・・・
しかも若いんだからとかいって、お前といっこしか変わらねぇよ
まあ予想はしてたけど。
こいつらしいといえばらしいが。

「ああ、もうその事はそんなに気にしてないよ。
 だから心配すんな。」

本当は結構気にしてるんだが、無理にでも笑って
おかないと先に進めない。

「そうか。じゃあ今日はどうする?」

「魔理の言ってたいきたい店あるじゃん?
 そこにでも行ってみるか?」

「そこって・・・クラブなんだけどな。
 タイガーはそういうの嫌いだろ?」

「ああ、そういうとこなのか。最近の若者の流行なんか
 わからねぇからな。確かに行きたくねぇわ。」

「だろ?まあ何もかも忘れて開放的になれるから
 今度一緒に行こうよ。」

「あー機会があったらな。」
機会というか金がないんだけどな。

「まああんたじゃあ浮くかもしれないけど、そんなん
 気にすんなよ。男は見てくれでも才能でもない『心』だ。」

「魔理さん。毎回君に会うたびにそれ言われてるんですけど・・・」

「え?そうだっけ? すまんねーなんせ頭が悪いもんで。」

「頼むぜホント。」

でも、俺はそういってくれる魔理がとても好きだった。
へこんだ時にこのセリフを聞いたときは本当に感動した。

「じゃあ、とりあえず飯でも食いながら話そうぜ。いつまでも
 立ち話しているのもなんだし。」

「そうだな。」

後はいつもどうり、最近の近況、周りの友人達の話等をして
別れた。



しかしあいつは最近綺麗になってきた。
考え方もどんどん変わってきている。



それはとても喜ばしいことだが、そこにどうも不安を覚える。


最近なんかあいつと話していると違和感をおぼえる。
相変わらず優しいのだが、昔ほどその優しさが自然じゃなくなっていた。

それにあんないい女、周りの男共は放っておかないだろう。
まして彼氏がこんな情けないんじゃあ、魔理もあっさり
俺を振ってしまうんではないか・・・


どうも俺の予感は悪い方にはしょっちゅう当たるんだよな。



今日も眠れそうも無いな・・・






















その予感はやっぱり当たっていた。




デートをした日から魔理からの音信が目に見えて減っていた。
こっちから連絡しても随分素っ気ない。





どうも俺の知らないところで確実に良くないことが起きてる。
どうしようもなく愚かな俺はよせばいいのに、原因を探ろうとしてしまった。









そして、決まって後悔するんだよ・・・。











魔理がよく行くクラブの付近を行ったらあっさり見つかった。



男の腕に自分の腕を絡ませてる魔理が。





これ以上・・・これ以上失ってたまるか!!








そんな怒りに近い感情にまかせ、
俺はなりふりかまわずその男と魔理に近寄った。





あっちも気配に気づいたのか、振り返った。
二人ともかなり面食らっていた。
男の方にしてみれば、こんな大男がいきなり近づいてきたら
そりゃあビックリするだろうし、魔理も元カレ(魔理はそう思っている
だろう)が突然連絡もなしにヨロシクやってるところを
見られたんだからたまったもんじゃないだろう。






たまったモンじゃない?  そりゃあ俺の方だっつーの!!







「魔理・・・こいつは誰だよ!?」
俺は怒りも隠さず、ほぼ怒鳴り声でまくし立てた。

「タイガー・・・ごめん。」

「ごめんじゃあわかんねーよ! 説明してくれよ!
 なんでこんなことになってんだよ!」

「・・・とりあえず人のいない所に行こう。ここじゃあ
 話しづらいから・・・」
困ったような顔でそう言った。

「わかった・・・」
俺もその声を聞いて、少しは感情を抑えることができた。
気を抜くと爆発しそうだが。

「たかゆき・・・ちょっと待ってて。
 すぐ戻るから。」

「あ・・・ああ、わかった。なんかよくわからないけど・・・」
たかゆきとか言う男は苦笑いを浮かべた。

直感的になんとなくこいつは悪いやつではないのだろう・・・
そんな気がした。
それでもぶん殴ってやりたい気持ちのほうが遥かに強いが。


とりあえず、俺と魔理は人目のつかない、路地裏に行くことにした。







「で、どうしてこんなことになったんだ?」

「ごめん。」

「だから、謝ってるだけじゃあわからねぇって!」
正直かなりイライラしている。
だがこの気持ちは心の奥底にある不安を紛らわす
ための思いに過ぎない。

「やっぱり・・・やっぱり私、相当無理してたよ。
 心が肝心つったけど、男と女が付き合っていくのには
 そんなものだけじゃあどうにもなんないよ・・・」

「なんでだよ! こんな俺でもいいつってくれたじゃないか!
 気持ちだけでも生きていけるつってくれたのはお前じゃないか!
 そんなお前が大好きだったのに・・・なんでこんなことになるんだよ!」

「しょうがないだろ! この現実を生きていくには・・・そんなもん
 じゃあ生きていけないんだよ! 私はもうそんなに純粋じゃあないんだ。
 心だけで生きてけるほど強い人間じゃないんだよ。」

「・・・くっ、それでも俺は・・・」
この先何を言えばいいのか正直わからなかった。

「よりできる人間に寄り添いたいのは当然の気持ちなんだ。
 あんたと私はもう無理なんだよ。こんな形で終わりにして
 悪かったとは思ってるけど、こうでもしないと私ら終われないだろ?」

「・・・」
正直魔理のいうことは半分ぐらいしかわからなかった。
いや、本当は全部わかっていたのかもしれないが、信じたくない
と思う気持ちが強かった。

「あんたにもいつかわかる日がくるよ。
 さよならタイガー。」
最後の言葉を残し、魔理は去っていた。

















なんだよ・・・コレ?
コレが失恋の痛みか?
思ってたのと全然違うぞ。


・・・そういえば失恋したのは初めてだな。




失恋の痛みは切なさや悲しさでできていると思っていた。
俺にもそうとうな痛みが例外なく襲ってきた。



よく親父に失恋は悲しいけど、それを糧に成長していける。
人間の成長に失恋は必要だ。

なんて言ってたっけ?



確かにそうかもしれない。
俺も初めて大切な痛みというものを今知った。




でも、所詮これらは飾った言葉なんだ。
いくらでも綺麗に作ることができるのだ。



俺の大きく切り裂かれた心に残されたのは痛みや切なさよりも


憎しみ


の方が遥かに強かった。









男と女が別れる。


そこには美しさも、ましてや綺麗さなんかない。







あるのは深い深い憎しみだ。












「ウガアアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーー!!!!」









俺は今までの人生で1番でかい声で吼えた。






















その夜、またいつものように俺は幻覚を自分に見せた。

しかし今回は酒は全く入っていない。

シラフで魔理をマシンガンで撃ちまくった。

鮮やかに撃ち落す!!















「さようなら愛せなかった魔理。さようなら愛した魔理。」










END


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