父と娘と。
投稿者名:NGK
投稿日時:(04/ 3/ 4)
「アンタは・・・アンタは悲しくないの?仮にもあなたの妻でしょう!?涙ぐらい・・・!!」
そう咆えながら涙を流す彼女は、鉄の仮面を身につけた僕を睨みつける。
―――冷たい視線で。
「ママは・・・母はアンタのことを何時聞いても”愛している”としか言わなかったわ。・・・それなのに、アンタのその冷たさは何っ!?何なのよ!?」
おそらく、本人も何を言っているのか分かってないのだろうが、意味不明なことをわめき続ける。
「・・・君の言っている事は良く分からないが・・・もしかして、僕にも君みたいに泣け、と、そう言いたいのか?」
辛うじて、僕が理解したことを言葉に出して言うが、逆に僕の言葉が彼女の逆鱗に触れたらしい。
「―――アンタは・・・っ!!何とも思わないの!?自分の妻でしょう!?もっと―――悲しみなさいよっ!!」
「確かに僕は君の母の夫であり、君の父親ではあるが、君にそこまで言われなければならない理由は何だ?・・・君に何が分かる?」
鉄仮面を通して彼女の思念が僕に洩れ伝わってくるが、彼女の言動以上に良く分からなかった。
「・・・私はアンタのことは父親だと思っていないわ!それに・・・とにかく、これから私はアンタのこと、父親だと思わないから!!」
「そうか・・・ところで、僕は、この葬儀が終わってから南米に行くが・・・君も一緒に来ないか?」
僕の言葉がそんなに衝撃を与えたのか、彼女は僕をしばらく呆けた表情で見つめた。
「な、なんでなのよ・・・?」
「研究でジャングルに行く用事があるからだ・・・君ももう時期、中学を卒業するのだろう。一緒に住むのは親の―――僕がするべき事だと思うがな」
彼女はしばらく、黙っていたが、唐突に口を開く。
「ふん、残念だけど私を義務とかで養う必要はないわよ。進学先も決まっているし、これから私はゴーストスイーパーの修行を積むんだから」
彼女はジロリと私をにらみつけると、
「母の知り合いの唐巣神父のもとで修行を積むの・・・アンタの世話になんかならないから!」
そう怒鳴りつけると彼女は僕の元を去って行く。
―――結局、葬儀が終わるまで彼女は僕に一言も口を利かなかった―――
「ふぅ・・・どうも僕は父親に向いていないようだな・・・嫌われてしまったか」
南米行きの機内のシートにもたれかかった僕はそう独り言を呟く。
「まぁ、唐巣神父なら彼女を任せられる。そうだろう?」
僕の独り言に、隣に座っていた真深い帽子にコートを着込んだ人物―――辛うじて女性と分かる―――が反応を見せ、小声で呟く。
「あなた本当にゴメンなさい・・・損な役割をさせてしまって―――」
「構わない・・・君が抱えている案件はGS協会の最高機密なのだろう?」
「・・・私はあなたをただ、利用しているだけかもしれないわね・・・」
その言葉に僕は首を横に振った。
「そんな事は考えなくても良い。僕は君が頼ってくれた事が嬉しい―――それだけ、僕を信頼してくれていると言う事だからな」
「うん―――確かにあなたの事は信じているもの・・・それより、令子に嫌われるか、って事は心配しなくてもいいわよ」
僕は頭の中に疑問符を浮かべたが、彼女は口元に笑みを浮かる。
「だって、私とあなたの娘ですもの―――あなたの愛情が伝わらないわけがないもの。近い内に分かってくれるわ」
―――もっとも美智恵の予言とは裏腹に五年という月日が必要だった事は―――別の話である。
―――了―――
今までの
コメント:
- みなさま、初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。
約五ヶ月ぶりに投稿というとてもお久しぶりなNGKと申しますm(_ _)m
久しぶりの投稿でちょっと緊張してますが(笑)みなさまに楽しんでもらえれば幸いです。 (NGK)
- 始めまして、ヒロというものです〜以後お見知りおきを〜
美智恵さんが死んだと知らされたときの令子ちゃんの反応ですか〜どれだけ彼女にとっての自慢の母であったか、大切な人物であったか・・・そして生きていると知っている公彦さんのどこか達観している反応。
対比させられている様に、そしてどこか美智恵さんの言葉に悲しそうな公彦さんがよかったです。で、美智恵ママは五年間もパパと宜しくしていたんだったっけ・・・(汗)
であであ〜これからも頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- もう少し言い様・やり様が・・・・・・とも思われましたが、そこが公彦氏の不器用なキャラ性にマッチしていて、魅力と深みを与えていると思います。
よく読んでみると公彦氏、令子に一言も嘘を言っていない。人の嘘を強制的に看破し続ける人生を歩む公彦氏は、きっと娘に嘘を吐きたくはなかったのだと、勝手に思わせていただきました。
作家さんご自身に含蓄がないと、こういった話は書けないのでしょうね。 (サージアント)
- 初めまして,竹と申します。
良かったです。面白かったではなく,良かった。
捻りの無い話ですが,それをきちんと書き上げる事が出来るのは凄いと思います。
美智恵さんは,身内贔屓ですよね・・・。公彦さんは・・・う〜ん,難しいですね。
では。
序でに,僕の方も読んで下さると嬉しいです。是非,感想下さい。 (竹)
- えっと・・はじめまして・・だと思います。(違っていたらごめんなさい〜)
かぜあめと申します。よろしくお願いします〜
文章ひとつひとつに、思いが凝縮されてるって感じで素敵ですね。
公彦さんの胸中を思うと、なんとなく切なくなります。
この家族のつながりを書くのって難しいですよね〜
う〜む、いい感じです〜
投稿お疲れさまでした〜次回作もお待ちしています〜 (かぜあめ)
- この時の南米に行く時点の美智恵さんはアシュタロス戦から帰ってきた美智恵さんなんでしょうか?
それともアシュタロス戦に赴く前の美智恵さんなんでしょうか?
いや、前者だったとしたらのんびり5年も隠れてたんだから、もうひとりくらい弟か妹がいても……スミマセン。
ともかく、すれ違う親子の双方の心情が切なく感じられますね。 (林原悠)
- 何もかもが規格外な二人だったからこそ、娘の理解を得るまでに長い時間を要したのでしょうね。ただ、彼らの思いが
最後には伝わったのは喜ぶべき事だったと言えるでしょう。娘のナイーブな部分に陰を落とした面もありますが決して
家族として破綻してはいないと思います。・・・強く、思います。 (フル・サークル)
- 初めてコメントを書かせていただきますNGKさん。
親子の確執、それってきっと言葉じゃなくて何か想いによってできるんじゃないかなぁとか最近考え始めています。だからこそ彼女らは最終的に分かり合えたんだし。美智恵のさりげないフォローが素敵です。こういう風な話は結構ありきたりではありますが、それゆえに心に響くものが在ります。
偉そうですみません(つд`)投稿お疲れ様でした。 (浪速のペガサス)
- 口下手というか不器用というか、公彦さんのそういうとこが令子に遺伝したのかも知れないな〜、と思いつつ。さすがに口調が冷たすぎだろ、とも思っちまいました(笑
遅ればせながらコメントさせていただきます、ひさです!
>真深い帽子にコートを着込んだ人物
これを見てなぜかメーテルの格好をした美智恵さんを想像してしまいました。いえ、マジでどうでもいいことなんですけど(´ε`)ゞ
相変わらず仲が良いと言うか、しっかりした信頼関係を持った二人がなんかよかったです。理想の夫婦、てなカンジで。
では、SACの方でもこちらでもがんばってください!応援してます! (ひさ)
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