ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌが奏でるラブソング その2 後半


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 3/ 2)




「今日は講師として、私の娘である六道冥子〜〜〜〜〜」

「こんにちわ〜〜」

六道理事長の紹介に、相変わらずのんびりと答える冥子は、式神がすでにフルセットで準備が整った状態だ。

「ならびに相変わらずGS長者番付1番の美神令子さん〜〜〜〜〜〜」

令子は理事長の紹介に片手だけを上げて答えた。
途端に1年から黄色い声援が飛んでくる。

「おね〜さま〜素敵〜」「きゃ〜」「もう好きにしてくださ〜い」

「静かにして〜引き続き、現在美神除霊事務所に在籍している犬塚シロさんとタマモさんです〜〜〜〜」

「よろしくでござる〜」

シロが元気に飛び上がりながら手を振るが、タマモはさすがにおとなしめに手を上げるぐらいにしている。

「えっと、今回は残念ながら講師として呼んだ横島た・だ・・・あれ」

理事長は紹介しながらシロとタマモの横を見るが、そこには誰も居ない。

ジャン、ジャ〜ン

いきなりオーケストラの音が聞こえだす。
アップテンポのリズムから始まって、そのままリズム良く盛り上げ始める。

「え、どっから聞こえるの?」「あっちよあっち」「うわ〜すご〜い」

生徒達があたりを見回すと、校庭の一角にオーケストラの一団がいつの間にか現れてる。
そして横島はオーケストラを背にタキシードを着込み、真っ赤なバラを片手に持ち白馬に乗って現れた。

「やあ、特別講師として、みんなにいろいろと指導をする横し・・ぐわぁ〜」

「前回と似たような事して目立つな〜〜」

美神の一撃によって白馬から叩き落される横島だが、
今回はいつもと気合の入れ方が違うので一撃では沈まない。

「前回よりパワーアップしたじゃないですか〜成長した俺を見てもらおうとがんばったの・・ぐぇ〜」

「余計な事で成長なんぞ見せないで良い〜」

再び神通根の一撃によって今度こそ横島は地面に沈む。

「まったく、くだらない事に文殊を使わないで。」

気絶した横島を引きずりながら、一旦オーケストラの後ろに回ると
置いてあるスピーカーセットの電源を切った。
するとオーケストラの一団が楽器を弾いてるのに、音が出ていない状態になった。
どうせ、ほっといてもしばらくしたら消えるので、白馬とオーケストラはそのままにして置く。
美神は最初の位置に戻ると理事長に続きを促す。

「うちの馬鹿がお騒がせしました。どうぞ続きを。」

「え、ええ、そうね。以上で紹介はお終いね。この後はまず2つに分かれてもらい前半後半でそれぞれ、
美神令子さんからはアイテムの使い方や戦闘での上手な戦い方を、
六道冥子さんからは式神の使い方や今までの体験談などを話してもらいます。
その後は現役GSの人たちから実際に模擬戦での指導をしてもらいます。
最後に横島忠夫さんから大変珍しい文殊について講義があります。
まあ、今実際見ましたね。
以上です。」

理事長の話が終わると、各組の担任たちがそれぞれ指示を出して生徒達を分ける。
おキヌたちは最初、美神の講義のようだった。

「なあ、横島ってやつは相変わらずだな。」

魔理がおキヌに話しかけてくる。

「は、は、は」

さすがのおキヌも苦笑いしか出てこない、どうがんばっても横島の援護が思いつかなかった・・・

「まったく、お姉さまがなんであんな男を手伝いに使ってるのか分かりませんわ。
どうせたいした事も出来ないんでしょうが。」

「あ、いえ、横島さん結構強いんですよ。美神さんもちゃんと認めてるんですから。」

弓の発言に、さすがにちょっとむっとして横島援護をする。
けっして悪気のあって言っているのでは無いのだが、弓は思った事をすぐ口に出してしまうので、
ついつい口が悪くなってしまう。

「そこ、私語は慎め」

「あ、すみません」

列の整理をしている先生から注意を受けてしまった。
すでにおキヌたちのグループは、美神の講義を受けるために集合がすんでおり、
後は講師の美神が来るだけとなっていた。

「みんな、こんにちは」

「よろしくでござる。」

美神がシロと一緒に現れると、周りが騒ぎだすが美神の指示ですぐ静かになる。

「はいはい、静かにしなさい。これから前半2時間、みんなにアイテムの効率の良い使い方と
戦闘でのアドバイスを教えたいと思います。」

美神の講義が始まった。
結果だけを言えば、美神の教え方はなかなかのもので、
戦闘の実演ではシロを使って迫力のある教え方をしていた。

前半が終わると、普段より早いが昼休みとなる。
実技講習自体が一日掛けての授業なので、特別な時間割になるのだ。

「やはりおね〜さまは、とってもすばらしかったですわ。」

「おう、やっぱりプロは違うな。シロちゃんだっけ、あの子と一緒に組み手してた時の迫力、凄かったな〜」

今は3人でお弁当を食べているのだが、弓と魔理はずっと美神の講義の話で盛り上がっていた。
おキヌにしても、美神が褒められるのをまるで自分の事の様に喜ぶ。

「ええ、美神さんてとっても強くてかっこいいんですよ。シロちゃんも超感覚って言うのがあるらしくて
人には分からないような事も分かるんです。」

「へ〜さすがは美神除霊事務所のメンバーだな。」

魔理は感心したようにおキヌの話を聞いている。

「そういえば、後半は理事長の娘さんの六道冥子さんでしたわね。どのような内容なのかしら?」

「え〜と、式神の事と今までのお仕事の体験談とか言ってましたよ。」

弓の質問におキヌが答える。

「そうですの、それは楽しみですわね」

まだ夏の日差しが抜けきれない9月の平和な昼の一時であった。


12時から後半の講義が始まる。
おキヌたちのグループが集合をすませ待機していると、インダラ乗った冥子がみんなの前に登場する。

「みなさん、こんにちわ〜 後半の講義を担当する六道冥子です。よろしくね〜〜」

ニコニコしながら現れるのだが、なぜか後ろにちょっとボロボロの横島とタマモがついて来る。
それでも横島は登場と同時に生徒の目の前に現れナンパを始める。

「綺麗なお嬢さん。俺がGSについて手取り足取り教えてあげましょうか。」

「きゃ〜」

当然いきなり目の前に出てこられた生徒は悲鳴を上げる。

「横島クン〜 生徒に手を出しちゃ駄目よ〜 」

「うぎゃ〜」

サンチラに巻きつかれて生徒から引き剥がされた横島は、そのまま電撃を食らって気絶する。
それを邪魔にならないようにとタマモが回収して、端に用意しているバケツから水を掛ける。

「うわ、つめて」

水を掛けられた横島は一発で目が覚めて起き上がる。

「横島、勝手に気絶して逃げるんじゃないわ。」

おキヌたち生徒は唖然としてその光景を見ているしかなかった。

「相変わらず、ろくでもない男ですわね。」

弓の一言に一瞬反応するおキヌだったが、なんにも反論できないので下を向いてしまう。

「あ〜 面白いやつだよな。は、は、は」

落ち込んでいるおキヌを励まそうとする魔理の気遣いも、今のおキヌには悲しいだけだった。

「でわ〜、これから式神の事と私の仕事での体験談について教えますね〜〜」

冥子の講義が始まった。
結果だけいえば・・・・・すごかった。
事あるごとにナンパしようとする横島を、冥子の式神たちが攻撃して気絶させるのだが、
タマモのバケツ水によって毎回復活を繰り返すし、
冥子も冥子で、答えられない質問があるたびに式神を暴走させるので、
生徒を巻き込まないように横島とタマモがなんとかそれを押さえつける。
最後には誰も質問なんて危険な真似をする生徒は一人も居なくなった。
けが人が出なかったのが不思議なくらいである。
後ろで生徒を守ってる鬼道先生だけは、横島とタマモの苦労が分かるのか、
可哀そうにと悲しい目をしている。

横島もタマモもボロボロになるわけだなと、思うおキヌであった。

なんとか無事に後半の講義を終わらせ、朝最初に集まった実習場に集まると、
鬼道先生がこの後の模擬戦についての説明を始める。

「ほな、伝えるぞ、この後は各クラスの代表と現役GSとの模擬戦を行う。まあ実際に戦ってみて、
終わってから反省会でいろいろとアドバイスをもらう予定だから、みな本気で戦うやで。」

現役GSと模擬戦が出来ることに全体から歓声が上がる。

「おね〜さまと手合わせできるなんて幸せですわ。」

「うぉ〜〜、やってやるぜ!」

弓も魔理も大喜びであった、おキヌもまさか現役GSと模擬戦だとは思ってなかったので、
かなり驚いている。

「こらこら、おちつけ〜。別に勝負はどっちが勝ってもええんや、闘い方を見るのが目的やからGSチームも
勝ちを目的に来ない。でもまあ、せっかくだからな勝てるなら勝っとけ。
ほな解散して準備せ〜」

みんなが盛り上がるなか、模擬戦に参加しない生徒は観客席に上がり、
各クラスの代表は霊衣に着替えて準備を始めている。
ちなみにGSチームには霊衣なんてものは無いので、いつもの服と変わらない。

美神たちGSチームは、作戦会議なのか円陣を組んで話し合っている。
いつもは、あの輪の中にいるはずのおキヌだったが、今日ばかりは入る事は出来ない。
なにを話しているのか興味はあるのだが、さすがに近寄れないのでぐっと我慢する事にした。

組み合わせは、すでに鬼道先生によって発表されているのだが、
おキヌたち1年B組は一番最後になってしまった。
これには弓や魔理がかなりがっかりしていたが、いつも一緒に居る事務所のみんなと
戦うことになってしまったおキヌにとっては、ちょっとだけほっとする事だった。
まあなにが変わるって訳ではないのだが。

「第1試合の代表は結界に集まってくれ。」

いよいよ模擬戦の始まりだった、みんなは美神の戦いに期待を寄せている。
当然出てくるものだとばかり思っていたのだが、結界に集まるGSチームのメンバーを見て落胆の声が響く。

出てきたのは横島、シロ、タマモの3人だったのだ。
生徒達はかなり不満の声を上げているが、正直おキヌは妥当だろうと思う。
基本的にめんどくさがりの美神が進んで模擬戦で戦うとは思えない、
それよりも後ろで戦いをじっくり見ていた方が、全体の流れが分かるため
しっかりしたアドバイスが出来るはずだ。

「おね〜さまと戦えると思ったのに出て来ないなんて。」

「まったくだな。」

美神たちの考えが分からない二人は、あきらかにがっかりしている。

「横島さんたちだって十分強いんですよ。シロちゃんやタマモちゃんも免許とかは無いですけど、
実力的には免許を持ったGS並みの強さは持ってます。
横島さんだって美神さんと同じぐらい強いんです。」

「あれがか・・」

おキヌの一生懸命な援護も、結界の周りで投げキッスなどの愛想を振りまいてる横島を見ると、
真実味が全く無くなる。

「横島さ〜ん。」

泣きたくなるおキヌだった。

「始め!」

GSチーム先方は横島、相手は神通根を持った標準的なスタイルの生徒だった。
横島はとくに急いで攻めたりはせずに、相手の出方を見ている。

おキヌとしては横島を応援したいのだが、さすがにそれも出来ないので我慢して見ている事にする。

横島は相手が動かないと判断すると、いきなり接近してナンパを始めた。

「君可愛いね、どうこれ終わったらお茶でも。」

相手が怒って攻撃をしてくると2,3発食らって逃げるっといった事を繰り返す。
結界内の攻撃はすべて霊力を込めないと意味が無い、そのため横島を殴りまくった相手はすぐ疲れてしまい、
味方とタッチして選手が交代する。

そこでおキヌはふと妙だなと思う、横島の行動に美神たちがとくに怒らないのだ。
いつもなら真っ先に殴りに行く美神も、今は選手の控え席でジッと試合を見ていた。

今度出てきたのは長弓を持った生徒だ、名前はなんて言ったか忘れてしまったが、
霊力のこもった矢を一度に何本も撃てる。
入ってくるなりいきなり乱れ撃ちを始める、横島は騒ぎながら逃げるがそのうち一本が腕を掠める

あれっとおキヌは思う。

横島は騒ぎながらそれでも近寄ると、再びナンパを始める。

「お嬢さんもとっても素敵だよ。そんな長弓なんて置いてさあ、俺と一緒に旅立ちましょう。」

怒って長弓で横島を殴りつける。
その拍子に弓を折ってしまったようで、泣きながら味方と交代する。

やはりあれっとおキヌは思う、さっきから横島は攻撃を食らい過ぎている気がする。
いつも仕事で一緒に居るが横島は、ものすごく避けるのがうまいそれこそ天才的にだ。
それなのに今回はすでに何発も攻撃をもらっているのが、おキヌには不思議に思えた。

最後の子が出てくると、横島はまた軽口を叩きながら相手をする。
そして相手が疲れ始める頃に、攻撃を食らって気絶してしまった。

いくらなんでもおキヌにも気がつく、横島はやられ役なのだ。
実際シロとタマモも、むすっとした顔のまま全然動こうとしないので、間違いは無いだろう。

多分本気でやれば事務所内ナンバー1かも知れない横島だ、シロやタマモよりもうまく負ける事が出来る。
実力というのは面白いもので、ただたんに負けるだけでも相手と実力差が無いとうまくいかない。
相手より弱すぎると実力を見るまでに負けてしまうし、
相手よりちょっと強いだけだと負けることにギクシャクしてしまい、あからさまになりすぎる。
だが、だがだ。

「ほんと弱いな横島ってやつは、ちょっと情けなさ過ぎないか」

「ち、違うんです。あれはわざと負けてるんです。」

上手すぎると当然こうなる。

「あれがですか? どう見ても実力で負けてましたよ。」

「多分美神さんの指示なんです。本当なんです。」

一生懸命におキヌは信じてもらおうとするが、さすがに二人の疑いの目ははれそうに無かった。
少しは横島を知っている二人がこうなのだから、当然他の生徒は完全に横島の実力と思い込む。

「ちょっとあれって美神おねーさまの手伝いなんでしょ。」「よっわ〜」
「女の子に声掛けまくってるし駄目男ね。間違いないわ。」

「うぅ」

おキヌは泣きそうだった。横島は罵声をあびるのに慣れたくは無いだろうが慣れている、
きっと今もあまり気にしないだろう。
美神も他人の声なんてあまり気にしない。だがおキヌは横島が悪く思われるのは嫌だった。
最近は昔より落ち着いてきた事もあり、横島の評価が上がってきている、その事を一番喜んだのはおキヌだ。

横島は女の子に攻撃したくないから、勝つのではなく負けるほうを選んだのも分かる。
これだってみんなの実力を見るためにやっている事だって分かる。
力を見せ付けて勝ったって大人気ないのも分かる。
みんなに自信をつけさせようと言うのも分かる。

でも勝ってほしかった。
横島は強くてかっこいいんだぞとみんなに言ってやりたかった。

そしておキヌは幽霊時代から思いつめた時の行動に、後先なんて考えた事は無かった。
だからつい言ってしまった、言った後で後悔すると分かっていても。

「横島さん、負けちゃ駄目〜〜〜〜〜〜〜〜 
今度一回でも負けたら、もうご飯作りに行ってあげないからぁ〜〜〜〜
お部屋のお掃除に行ってあげないからぁ〜〜〜〜〜
洗濯になんて行ってあげないんだからぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」

普段のおキヌなんて想像もつかないほどの大音量で実習場に響き渡る。

今のおキヌには周りの声なんて聞こえない。

選手控え席に居る横島をジッと見つめると、いつもよりずっと間抜け顔の横島が見える。

それでもおキヌがずっと想ってる人なのだ。


つづく



あとがき
ちょっと休日がはさんでしまったので書きあがるのが遅れてしまいました。
おキヌが奏でるラブソング、2回目はどうだったでしょうか?
前半、後半をかなり中途半端な場所で切らないといけなかったので、
その辺は勘弁してください

続きもまたよろしくお願いします。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa