ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と 第5話 前編』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 3/ 2)



〜appendix.3『ゆめうつつ』


命が消えた。

目の前で・・小さな命が・・

どんなに強く願っても・・・どんなに必死に泣き叫ぼうと・・・
殺される。殺され続ける。

この場所ではもはや『死』はありふれたものだった。


―――スズノちゃん・・っていうんだよね?

―――・・・うらやましいな。私には無いから・・名前。

――― ・・友達になってくれる?

少女が微笑む。
それに自分も微笑み返す。

彼女が居れば、それでよかった。それだけで・・希望を捨てずにいることができた。

いつか、ねーさまが迎えに来てくれると・・
ねーさまと、彼女と・・・3人でここから踏み出せると・・

自分は不幸なんかじゃない・・・・そう、信じ続けるのには十分だった。

・・・・。
・・いつか・・・

ただ普通に泣いて、笑って・・外の世界を自由に出歩くことができて・・

・・そうして・・自分たちは、いつまでもいつまでも・・陽だまりの中に・・・

・・・・・。

それは少女が闇の中・・・・うたかたが見せた・・

一瞬の夢。

                        


〜 『キツネと姉妹と約束と その5』 〜





「まぁ、大体こんなところかな。このことは一応、他言無用にしてくれないか?」

宵闇。学校の保健室。
愛子が意識を取り戻した後、一通りを話し終え・・横島は3人の顔をうかがった。

噂の真相。
今、横島たちが置かれている状況。

・・・そして、スズノ。

すべてを打ち明けられ、ピート、愛子、カオスはそれぞれ神妙な顔でうなづいて・・

「・・それはかまわんが・・しかし、小僧。よりにもよって何故このメンツなんじゃ?他にいくらでも身近な奴はおるじゃろうに。」

いぶかしむカオスに、横島は少し言いにくそうに頭をかく。
ま、いいか・・、一人でそんなことをつぶやいた後、

「少し安直すぎるかなぁ、と思ったんだけど・・詳しそうだったから。ホレ、お前らって見た目の比率から考えるとかなり長生きだろ?」

「「「?」」」

横島の言葉に、その場にいた人間は一瞬キョトンとした顔をする。

たしかに・・
実は数十年も生きているのに未だ、女子高生の格好をしていり机妖怪と、不老不死といわれるヴァンパイアハーフの青年。
・・そして言うまでもなく、千年以上生き続けているヨーロッパの魔王様。

ぶっちゃけ、かなりの若作り集団だ。

「・・昨日、スズノに聞いたんだ。Gメンに捕まる前は一体、なにしてたんだ・・ってさ。」
言いながら、横島は肩をすくめた。・・窓からは紅い日差しが差し込んでいる。


―――・・?つかまる前?ねーさまを探してずっと歩き回っていたぞ?

(・・あの時、たしかにそう言ったよな・・?スズノ)

思い出すように、心の中で反すうしながら、横島は静かに立ち上がり・・・


「・・800年。」

「え?」

「タマモの前世があいつの本当の姉だとしたら・・
 2人が別れてから、再会するまでに少なくとも800年間の空白があるはずなんだ。」

史実によれば、九尾の狐が都に現れ、そして追放されたのはいずれも1100年代。
つまりスズノはその間、ずっと諸国を放浪していたことになる。

・・可能なのだろうか?

妖狐とはいえ、ただの一妖怪が・・転生もせずそんな歳月を生き抜くことが・・
仮に可能だとしても・・あの幼い容姿の説明がつかない。

・・。

出会ったときからずっと引っかかっていたこと。しかし、昨夜それがはっきりと疑問という形を持った。

「多分、オレ一人で調べるのには限界がある。それに今すぐ答えてくれってわけでもないんだ。」

・・別に暴き出す必要はないのかもしれない。
スズノがタマモを慕い、タマモがスズノを慕っているのは・・紛れもない事実なのだから。

・・・。

・・・だが・・・

何かが・・・気になる・・。胸騒ぎが・・・治まらない。

「・・横島くん・・。」

「・・頼む。力を貸してくれないか?」

この悪寒は・・・一体・・・・・。

                        ◇


――・・。

「・・スズノ?どうかしたの?空なんか見つめて・・」

ぼ〜っとした様子で窓の外を見続けるスズノに、タマモは荷物を運ぶ手を休める。
2人は・・新たにあてがわれた姉妹兼用部屋へと引越しをする、真っ最中だった。 

いつもぴったりと自分にくっついているはずのスズノが・・その時ばかりは遠くに座りこみ・・
それを不思議に思ったのか、タマモは彼女のそばまで歩みよる。


「・・ねーさま・・。」

気配に気づき、スズノは嬉しげに後ろを振り向いて・・・

「月を・・・見ていた。」

微笑みながら、ゆっくりと姉の顔を見上げてくる。


「へぇ・・月を見るのが好きなの?」
意外そうな顔をするタマモ。対してスズノは・・

「・・ううん。・・あれ自体は・・あまり好きではない。・・・ただ・・」
  寂しげに首を横に振り・・そして・・やはり視線を月に戻してしまう。

浮かんでいたのは三日月だった。銀の光を放つ・・・三日月・・。


「・・月を見てると・・約束を・・思い出せるから・・・。」

それはタマモへと向けた言葉だったのか・・
彼女は、誰に語りかけているとも知らない声音で・・誰にも理解されることのない言葉を紡ぐ。


「・・約束・・?」

たずねるタマモに・・スズノはそれきり押し黙り・・・・

そして・・・


「・・ねーさま・・?」 

「・・え?・・あ、うん・・なに?」

「・・私は・・今、・・とても幸せだ・・・・。」

・・・。
  
                         
〜『おまけ』〜

「・・ところで、ねーさま?私たちは何かを忘れていないだろうか?」

「あ・・スズノも?私もさっきからそんな気がするんだけど・・・」

「むぅ・・それほど大したことでもないような気がするのだが・・・・」


―― 横島宅 ――

「・・へ?あ・・あれ?タマモ?スズノ?なんで居な・・・・・
 も、もしかして今朝のことを怒って飛び出したとか?え・・偉いこっちゃああああ!!!!!!」

タマモとスズノが事務所に引越したことを横島が知るのは・・彼が徹夜で街中を駆けずり回った後だったりする。

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