ザ・グレート・展開予測ショー

#挿絵企画SS『あなたから聞きたいわたしへの言葉』


投稿者名:G-A-JUN
投稿日時:(04/ 2/29)



「横島先生! サンポに付き合って欲しいでござる!!」

最近は一緒に付き合って欲しいとお願いすると、自分の日課でもあるように、あっさりと付き合ってくれる。
そういう風になったきっかけは多分、あの場所を見つけてからだと思う。
あの場所には―――いつも限られた時間以内に着いて風景を楽しむには、走らなければ見ることができないと思っていた―――豊かな自然がある。
もし見つけることができなかったら、今頃はもう横島先生は付き合ってくれなくなっていたと思う。
本当は二人で行きたいのに、ずっと拙者一人だけで行くことになっているなんて考えたくもない。
だから見つけることができたときは本当にうれしかった。
いつもゆっくりと横島先生とお喋りをしながらのサンポができるようになったから。

―――ここに来てからどれぐらいの月日が経っただろう?

二人っきりのサンポを楽しんでいる時にふと思ったことだった。
毎朝一緒に行っているサンポ・・・
横島先生と二人っきりになれるのは、この時だけだった。
もっと一緒にいたいのだけど、無理なのはわかっている。
でも・・・

「………もっと一緒に居たいでござるよ………」
「ん? 何か言ったか?」
「あっ! な、何も言ってないでござるよ。・・・その、気のせいでござるよ!」

こんな反応をしたら、普通すぐに気づかれてしまうのに、それにも気づかず顔を紅潮させながら首を横に振る。
少し前までなら平気で横島先生の前で言っていたけど、今は言葉の意味がわかる。
だから聞かれたらすごく恥ずかしい。

「そうか・・・」

本当は微かに聞こえていた。
そして聞き間違いという可能性は絶対に無いと確信していた。
それでも、これ以上は聞けない。

シロが自分の意志で、また言ってくれることを信じているから・・・

―――俺からシロに言うことはできないだろうか?

何度となく考えたことだった。
それでも自分からは―――今もできない。
互いに惹かれ合っているのは、他人の目から見てもわかるだろう。
前までは、コイツは子供だと、無理やり心の中の本心を否定し続けていたが、今はその必要はない。
逆に、今まで否定し続けてきたくせに、いきなり考えを変えるのが勝手なことだと思う。
シロなら、どう思うだろう?
ようやく自分を認めてくれたと喜んでくれるだろうか?

―――いや、それこそ俺の勝手な考えだろう。

―――でも、俺はそれを望みたい。

―――俺がシロを喜ばせてやりたい・・・そして、その笑顔を俺に向けて欲しい。

ここで横島の考えが止まれば、すぐに横島は自分の気持ちを伝えることができただろう。
それでも、思考はもう1つ先に進んでしまう。
自分とシロとの出会い方・・・それはほとんど関係ないと思う。
シロも自分の意志で考えることができるから。
わかってはいても、過剰に考えてしまう。
この事が最もシロに影響を与えてしまったと考えてしまうから。
少なくともシロは今、必死に悩んでいるのだと思う。
だから今、自分から話しかけてしまえば、シロは簡単に自分の方に傾いてしまうだろう。
それが、自分の本当の気持ちなのかを確認することができないまま・・・そして、いつか戸惑うことがあるかもしれない。
自分がシロを幸せにしてやりたいと心から思っているために、それだけは避けたかった。
時折、戸惑うシロを見るたびに、本当にこれで良かったのか、わからなくなってしまうと思うから。
でも結局は全てをシロに任せているだけにすぎない。
どうしたらいいのかがわからないから、ただ待つしかない―――そう思い込んでいる。


―――やっぱりズルイだけだよな・・・


気がつくと、目的地はすぐ目の前にあった。
途中までシロと、いつもの様に会話を楽しんでいたがはずだが、内容をほとんど覚えていない。
腕を組み並んで、ぶらついている。ただそれだけでサンポの時間は過ぎていく。

横島の様子にシロも気になり始めたが、なんとなく自分が関係している気がした。
それでも何も言わずに、ただ寄り添うだけだった。

「横島先生!」

シロが突然口を開いた。

「どうしたんだ?」
「夕方も散歩に付き合ってほしいでござるよ・・・話したいことがあるでござる」
「今じゃ、ダメなことなのか?」
「今はまだ・・・でも、また会ってくれるなら、その時までにはっきりさせて伝えるでござる!」
「・・・悩んでいるんだったら、じっくり考えてからの方がいいんじゃないか?」
「それだと選びたくない答えしかでないんでござる・・・本当は少しの時間も掛けたくないんでござるよ」
「そうか・・・でも、お前はちゃんと自分の意志で選んだ答えを見つけるんだぞ」
「うん! ありがとうござる!!」

大体の予想はついている。
本当なら、ここで自分の気持ちを伝えたかった。
でも、そうしたらシロが一生懸命、悩んでいる時に自分の意志が干渉してしまう。

待つと決めた以上、例えどんな答えでもいい!………って、言うわけでもないしなぁ・・・
シロならそう言ってくれるって自信があるからなんだけど・・・

―――俺自身も、自分の気持ちをしっかりと確かめておかないとな―――すでに決まってるけど

って言うか、勝手にそういう話だと決めつけちゃったけど、違うことだったらどうしよう?・・・
ま、それならそれでいいか。


サンポ帰りの時も、仕事の時も、何も知らなければシロはいつも同じ様に振舞っているように見えた。
それでも、必死に考えているのがわかる。
可能な限り早く仕事をこなし、少しでも考える時間を得ようとしていた。
ハイペースながらもミスは一度もしなかった。
絶対に周りに迷惑を掛けないようにと思っていたからだと思う。



そして、夕方―――限られた時間だったけど、それでも十分自分の気持ちはまとめることができたと思う―――

仕事が終わってから二人は約束どおりサンポに出掛けた。
場所はどこでもよかったと思う―――でも、やっぱりあの場所に行くことにした。
横島先生も、あそこは気分が落ち着くと言ってくれたから。


「―――で、今朝も聞いたが話したいことって言うのは、なんだ?」
「横島先生は…………好きでござるか?………その……拙者のことが………」

はっきりと話そうとがんばっているのに、顔が赤くなってきた。そして、声も少しずつ小さくなってくる。
それでも、横島先生はちゃんと聞いてくれている。
うれしいけど、すごく恥ずかしい。

「答えはすでに決めてある・・・ズルイけど・・・お前がどう思っているのかを聞いてから答える。」
「ク〜ン。本当にズルイでござるよぉ〜……でも、いいでござるよ。拙者も答えは決まっているでござるから、例え横島先生がそうじゃなくても拙者は横島先生が好きでござる!!」
「ようやくはっきり言ってくれたな! そう言ってくれるのをずっと待ってたんだぞ!!」

二人の距離はいつの間にか、どちらかが手を伸ばすだけで、相手に届くぐらいに縮まっていた。
横島が不意に動き、シロの視界は覆われた。

気づくと心地良い温かさに包まれて、横島先生をすごく近くに感じた。
あれ? 横島先生が抱きしめてくれた・・・?
でも、これだけだと横島先生の気持ちがはっきりとはわからない。
腕の中で、そっと横島先生の顔を見上げたら、すごく優しくて、うれしそうな顔をしてい自分のことを見てくれていた。

「横島先生はどう思ってるんでござるか? 約束通り、ちゃんと言ってほしいでござるよ!」
「いや、だいぶ前から何度も言おうとしてたんだけど、やっぱ恥ずかしいなぁ〜。って」
「ダメでござるよ♪ 拙者も恥ずかしいのをガマンしたんでござるから!」
「ここで俺が嫌いって言う事は絶対無いって思ってるだろ?」
「え!?」

今の一言でシロは一瞬で固まってしまった。
ヤバッ とっくに悟ってるだろうと思って、からかったつもりだったんだが・・・

「お、おい!! 冗談だ!! シロ! 頼むから真に受けないでくれ!!」
「ひどいでござるよぉ。拙者、いきなりあんなことを言われるなんて思わなかったでござる」

少しだけ目が潤んでいる。
あと、ほんの少し遅かったら泣き出されていたかもしれない。

「すまん、シロ。俺も好きだから、許してくれ。な?」
「・・・さり気なく、言うんでござるな。」
「お前みたいに直情的じゃないからな。」
「でも、うれしいでござる!!」

力いっぱい、抱きしめた。そうしたら、横島先生が頭を優しくなでてくれた。
涙目のままで、ずっとガマンしていた涙がいきなり溢れて流れ出した。
だから、自分の気持ちの全てを込めても足りないぐらい心を込めて、この一言を伝えた。

「横島先生!! 大好きでござるよ!!」

このまま、ずっと抱きしめていて欲しい。横島先生の体はとても温かいから。
どうしたら、このままでいられるかを考えた―――簡単だった。
だって、今こうして横島先生が抱きしめてくれている間、ずっとこうしていれば、いいだけなんだから。


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