ザ・グレート・展開予測ショー

GS信長 極楽天下布武!!【資格試験編】(1)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 2/29)

織田信長(1534〜1582)
 尾張国の有力者,織田信秀の嫡男。
 次第に力を伸ばし室町幕府を滅亡,全国の半分を領有する。
 数々の革新的な法案,戦略を用いて“天下布武”を押し進めるが,家臣の惟任光秀に攻め滅ぼされる。
 日本史上希有な,独裁者と言える人物。

豊臣秀吉(1537〜1598)
 織田信長の有力武将。
 幼名は日吉丸と伝えられ,後に木下藤吉郎,羽柴筑前守と名乗る。
 信長の死後,勢力を拡張し史上初の天下統一を成す。
 百姓の子でありながら関白太政大臣に迄昇り詰め,朝鮮にも出兵する。

徳川家康(1542〜1616)
 徳川幕府の初代将軍。
 今川義元配下の三河の土豪,松平広忠の嫡男。
 織田信長と結び,後には豊臣政権五大老の筆頭として力を振るう。
 豊臣秀吉の死後,征夷大将軍に任ぜられ,江戸に幕府を開いた。















『魔流連の乱』から,一ヶ月。
要するに,信長達がタイムジャンプ(?)して来てから一ヶ月と五日。
彼等もこの新しい環境に少しずつ慣れ始め,現実を受け止め緩やかな日常を送っていた……。



妙神山修行場。
「老師!又た地上に降りておられたのですか!」
勝竜姫の声が,居間に響いた。
「又たムラマサの所に行ってたでちゅか?タツリオには下に降りちゃいけないとか言っといて,自分だけ狡いでちゅ!」
タツリオがぶーたれた顔で抗議する。
「お主と儂とでは立場が違う。口惜しいなら,出世して好きに俗界に降りれる職業に就けば良かろう」
そして,それをしれっと受け流すハヌマン豊国大明神こと太閤・豊臣秀吉公。
「それ迄,ムラマサが生きてると思うでちゅか……?」
「しかし,妙神山の総責任者ともあろう者が,そうそう頻繁に地上に降りられては……」
「その為に管理人のお主がおるのじゃろうが,勝竜姫」
「いえ,ですが……」
「心配はいらぬ。問題にならぬ様,きちんと手は打っておるわ」
腐っても彼の天下人,豊臣秀吉だ。神として祀られた今も,その頭脳と話術の冴えは衰えてはいない。
「あのですね……」
「ふぉっふぉっふぉ。斯うした真似は,お主には逆立ちしても出来ぬからのう。口惜しいか,勝竜姫」
「……いえ,その……」
「ふ。口惜しければ,お主も少しは大人になるのじゃな」
「……」
「タツリオはー?」
「お主もな」
「ぶー」
秀吉はこの一ヶ月,毎週地上に降りていた。
目的は,藤吉郎と酒宴の籍を設ける為である。
二人はすっかり意気投合し,秀吉も藤吉郎の事を実の弟の様に思っていた。
「ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ」
妙神山に,秀吉の高笑いが響いた。



「五行相剋・土剋水!」
ザァッ!
猛吏輝元の陰陽術によって,足下の砂が敵の使う大波を封じる。
「今だ!」
砂浜を蹴って,セイレーンに向け三つの影が飛び出す。織田除霊事務所・第二オフィスの面々だ。
「フェザーブレッド!」
ドドドドド!
波を封じられ無防備となったセイレーンに,ピジョンウイングを纏った浅野ねねが上空から攻撃を仕掛ける。
「くたばれ!」
ザン!
怯んだセイレーンを,植椙景勝の『兼続』が切り裂く。
「来たね……」
ガッ!
その攻撃により,気を失い力無く放り出されるセイレーンを,雨姫蛇秀家が猫又となって捕まえる。
「ほれへ,ほはっはへ(これで,終わったね)」
セイレーンを銜えた秀家がそう言った。


「いやいやいや,有り難う御座いました。では,報酬の方は至急指定の口座に振り込んでおきますので」
「はい。毎度有り難う御座いました!」
藤吉郎は,そう言ってクライアントを見送った。
今日の依頼は海岸を荒らすセイレーンの退治。序でに捕縛。何に使うのかは分からないが,そんな事は藤吉郎の知った事ではない。
「終わった?秀吉にーちゃん」
秀家が駆け寄って来て,腕に掴まりながら藤吉郎に問う。
その後ろで,子供って得だなあと見つめている三人の女性。と言うか,それ以前に彼は一応男の子なのだが。
「うん。今日の仕事はこれで終わりだよ。お疲れ様」
「うん!」
何がそんなに嬉しいのか,満面の笑みで応える秀家。彼にとっては,藤吉郎といられるこの時が嬉しいのだ。
「みんなもお疲れ様」
そう言って,藤吉郎は三人の女性陣に笑顔を向ける。
別に特別整っていると言う訳ではないが,藤吉郎に惚れきっている三人には充分な威力だった。
三人ともそれなりに壮絶な人生を歩んできた為,好いた惚れたの話となると,凄まじいばかりの執念と独占欲を見せる。幸薄い自分の人生で漸く向けられた愛情を,離すものかと言う訳である。
「でも,チームワークも板に付いてきて,何とか経営も軌道に乗ってきたって感じだね」
「まあ,我々三人は元々仲間だったからな。一応」
と,輝元。
「豊臣さんの教え方がお上手だからですよ」
と言うのは,省にされて一寸口惜しいねね。霊能力に目覚めたばかりの彼女は,藤吉郎を師として目下修行中だった。
「……」
と,これは普段は無口な植椙景勝。

「……仲ええのに,ギスギスしとる様に見えるのは何でやろな……?」
それを見て,ねねの守護神である東照大権現こと徳川家康公が,ぼそっと呟いた。



そう言う訳で,仕事を終え事務所に戻って来た藤吉郎達。
「ん?」
「如何したんですか,豊臣さん」
「いや……事務所の前に誰か……」
その人影は,藤吉郎の姿を認めると此方に駆け寄って来た。
「兄者!」
「え?」
「久しぶりだな,兄者」
「え,えっと……?」
それは少年だった。藤吉郎――“豊臣秀吉”と同じ位である。
「?如何した,兄者。呆けた顔をして」
「あ,いや,御免。俺,記憶喪失になってて」
「あ……そうか,すまないな。俺の事も忘れてしまったのか?」
「うん。御免」
「……まあ,仕方無いよ」
「で……君は?」
「ああ!俺は豊臣秀長。あんたの,種違いの弟だよ」
「え……。俺の弟?」
「うん」
そう言われてみれば,何処と無く藤吉郎に似ている気がしないでもない。
そう言えば小竹に似てるかも,と藤吉郎は思った。
秀吉(猿神)の話に依れば,小竹は後に秀吉の片腕となって彼をサポートしていたらしいが。
「両親や姉妹達と一緒にナルニアに住んでたんだが,俺にも霊能力が有ると分かって,ゴーストスイーパーの免許取得試験を受ける為に帰国したんだ」
「へえ……」
如何やら,他の家族のそっくりさんも居るらしい。母のなかも,姉の智子も,異父妹の朝日も,……あの飲んだくれの糞義父の筑阿弥も。
「で,その間兄者の所に泊めてもらおうと思って」
「お,応。全然構わないぜ」
「本当?良かった。ホントは事前に連絡入れときゃ良かったんだけど,急に決まったからさ。国際電話だって安くないし」
そう言って笑う秀長を見て,藤吉郎は自分とは違い真面目で素直だった異父弟の顔を思い出し,目頭を熱くした。
「そう言えば,今年のスイーパ−試験はもうすぐだったか」
話を聞いていた輝元が言った。
「そうなの!?俺,出るよ!絶対,資格取るからね,にーちゃん!」
と,秀家。
「ねねは?お前の才能なら多分,いけると思うが」
「や,やります!」
輝元に水を向けられたねねが叫ぶ。
それを見て,秀長が藤吉郎に問うた。
「その人達が,事務所のメンバー?」
「あ,ああ」
「僕,師匠は死んだ父さんなんだけど……にーちゃんが師匠って事で良い?そしたら此処で研修受けられるし」
「あ!じゃあ,私も!」
「……て,私もも何も,ねねねーちゃんの師匠は秀吉にーちゃんじゃん」
「あ,そっか」
如何やら,話は決まりそうだ。
「じゃあ,兄者。俺の師匠も兄者って事にしといてくれよ。俺も如何せなら,兄者の所で働きたいし」
「応。別に構わないぜ?」
「随分と大所帯になって来たな……」
と,家康が呟く。偶に手伝いに来るマエダー利家を入れたら,これでもう七人だ。寧ろ,本オフィスより人数多い。
「所で,その試験てどんなのなんだ?」
藤吉郎が誰とはなしに訊いてみる。
「どんなのなんだって……にーちゃん,試験に受かったからこうしてスイーパーやってんでしょうが」
「いや。俺,記憶喪失だから」
「あ,そっか」
「GS資格試験は年に一度。毎年三十二名が合格枠だ」
「輝元」
「一日目午前中の第一審査。霊波のパワーを計る試験で百二十八人に絞られる」
「ふーん」
「二次審査は,受験生同士のストリートファイト。トーナメント形式で,二回戦迄勝ち抜けば目出度く資格取得だ」
「て,その後の試合は?」
「トーナメントの成績は,そのままキャリアになるからな。より多く勝ち抜いた方が,その後の仕事が有利になる」
「そうなんだ。で,今年の試験日は何時なの?」
「明日だ」
「早っ!」



織田除霊事務所・本オフィス。
「ってな訳なんですよ,殿」
「ほ〜ぉ」
藤吉郎は,今日の仕事の報告に本オフィスに寄り,その事も話してみた。
「スイーパー試験か。猿弟のそっくりさんも居たってか」
「ええ。で,もし小竹が受かったら,ウチに入れても良いっすか?」
「構わねーぜ。と言うか,彼処はお前に任せたんだから,勝手にすりゃ良いさ」
「と……殿……っ!其処迄俺の事を認めてくれてるんすねっ!有り難き幸せに御座いまするぅっ」
「何,俺は実力重視だからな」
「一生付いていきます!」
「おいおい。……と,そうだ。その試験な,巫女も出る事になってるぜ」
「え,ヒナタとヒカゲも?」
「そうよ。頑張って役立たずの汚名を今度こそ返上するわよ!」
何か,やけに燃えている。
「う,うん。頑張ってね」
「織田殿〜〜〜〜!拙者も受けたいでござるぅ〜〜〜〜」
「て,お前は人間じゃ無いだろ」
「でも,コレトー殿も妖怪でござるよ!?」
「金柑頭は半分人間なんだよ」
「狡いでござるぅ〜〜〜〜!」
「あー,喧しい。猿!慰めてやれっ」
「何とかなんないんすか,殿?」
「まー,受付で訊いてみはするが,それで駄目なら諦めろだな。此処に住んでんのも,お前といたいだけだったらしいし」
「ふーん……」
それは,“俺”ではないですけどね。
「んじゃ,明日,朝の八時位に此処来ますから」
「応」
「お休みなさいませ,殿」
「んじゃな」
そう言って,藤吉郎は事務所を出た。



その頃,小笠原GSオフィス。
「良い?マエダー君!今年こそ,絶対合格するのよ!?」
「分かってますジャー,帰蝶サン!絶対に受かって見せますケン」
小笠原GSオフィスのメンバー・マエダー利家は,前年度の試験で惜しくも二回戦敗退を喫した。今年はリターンマッチと言う訳だ。
「ま,とは言え一回や二回浪人するのなんて珍しくない。気を抜きすぎても仕方無いが,余り気負うなよ」
氷室女華が,フォローを入れてくれる。
「有り難う御座いますジャー,女華サン」
「駄目よ!これ以上,私の顔に泥を塗る事は許さないわ」
だが,所長の小笠原帰蝶は厳しい。
「き,帰蝶サン……」
「並のスイーパーなら兎も角,あんたはこの小笠原帰蝶の弟子なのよ?今年も落ちたら,承知しないんだから」
「はい……」
そう言いつつも,帰蝶が自分を認めてくれている事が嬉しい利家。
そんな利家の肩に手を置く少女。
「もし,試合であんたと当たっても,手加減しないぜ?」
そう言ってウインクする彼女は,利家の恋人の篠原まつだ。
「そうよ,マエダー。知り合いと当たったとしても,手加減なんかしちゃ駄目。それが例え,女子供でもね」
帰蝶が補足する。
「が,頑張りますジャー」
「それとまつちゃん」
「はい?」
「手加減しないのは当たり前でしょ?ウチのマエダーと貴女じゃ,どっちが勝ってるか分かるでしょ?」
「あ,はい。すいません……」
「良い?ハイになるのは結構な事だけど,調子に乗って油断しちゃ駄目。何だかんだ言って,狭き門なんだから」
「はい……」
「でも,まつサン」
「何だよ,マエダー」
「六女(六道女学院)では,GS試験を受けさせてもらえるのは三年生だけだったんじゃ……」
まつやヒナタは二年生である。
「ああ,それか。今年から二年生も受けられる様になったんだよ。ま,対抗試合で上位入賞したクラスの代表者だけだけどな」
「はー。まつサン,凄いですノー」
「そう?えへへ……」
「はいはい,其処迄っ!」
パンパンと帰蝶が手を鳴らした。
「イチャつくのは試験が終わってからよ。明日に備えて,二人とも今日はもう寝なさい」
「はい。じゃあ,失礼しますケン。帰蝶サン,女華サン」
「ええ」
「明日,遅れるんじゃないですよ」
「はい」
「じゃ,私も家に帰ります」
「気を付けてね」



斎藤利政の教会。
「ほ,ホントにそれを持っていくのかい,アラキ君……」
「勿論!道具は一つ迄なら持ち込み有りなんでしょう?」
「そ,それはそうだが,それは……」
「このイージス・スーツ,『ドウクン・改』の力試しには丁度良いわ」
「……」
そう言って妙な鎧を磨くのは,アラキ=ヘルシング・十五歳。彼女も,明日GS試験を受けるのだ。
「でも,アラキちゃん」
「何です?ミツヒデおにーさま」
「資格を取るなら,故郷のイタリアで取った方が良いんじゃないのかい?」
「EUでも勿論資格は取りますよ。でも,矢っ張りおにーさまの居る日本の免許を取らなくては」
そこに,利政がフォローを入れる。
「いや,GS教会の免許は全世界共通だよ。日本で取ったら,資格を剥奪されない限り海外で新たに取得する事は出来ない」
「なら,矢っ張り日本です」
「でも,外地での仕事は現地人よりもやりにくくなってしまうよ」
若い頃は世界を股に掛けて飛び回った,利政ならではの忠告だ。
「もう私,ヴァンパイアハンターは止めましたから」
「そう言う問題なのかね……」
「そう言う問題です。ねえ,おにーさま」
「え?う,う〜ん……そ,そうだ。長政は,良く今年受けられる事になったね?」
返事に窮したミツヒデは,無理矢理話題を変えた。
「あ?応。ま,ちょっとしたコネでな。例の事件とかの功績が認められたってのも有るしよ」
そう語る浅井長政は,前年度の試験,一度は合格していながら反則で失格となり資格を剥奪された過去を持つ。
それ以来,主に香港で潜りのGSとして黒社会で活躍していた。
「これで,漸く人様に胸を張って生きていけますわね!」
さっぱりした顔でそう言うのは,長政の恋人の市 小谷である。信長の異父妹で,ヒナタやまつとは同級生だ。
「胸を張って……なあ」
「まあ,貴方は前年度もそれなりに良い所迄行ったそうですから大丈夫でしょうけど,このわたくしも出るのですから,努ご油断なさらぬ様……」
「て何だよ,お前。俺に勝てるつもりかよ」
「さて,ね」
「ああ?」
名門育ちで気位の高い小谷だが,最近は意地を張り続けても仕方無いと気付き,長政を怒らせたら受け流す様な術も覚えてきた。
「因みに俺も出るからね,長政さん。言っとくけど,手加減しないからね?」
そう言うのは,雫手政宗。名門雫手家の元嫡子で,単純に霊力量だけならこの場に居る誰よりも高い。
「へっ!こっちこそ。お前相手じゃあ,手加減してたらこっちがやられちまうかんな」
「ふふふ」



呪的アイテム専門店『蜂須賀堂』地下,ドクター・ヒラテの研究室。
「あれー。フカンのグレネードランチャー,取っちゃったんですかー?」
「あんな物を積んどったら,又た銃刀法違反で失格じゃよ」
ドクター・ヒラテは,前年度の試験,“豊臣秀吉”との試合でアンドロイドのフカンに装填したマシンガンが銃刀法違反に引っ掛かって逮捕されてしまった。
「その経験を生かして,今度はフカンをGS試験用にカスタマイズしたんじゃ。フカン・霊的戦闘モードじゃ」
「おおっ!これは凄いです!流石はドクター・ヒラテ」
目を輝かせてフカンに見入る少女は,ヒラテに弟子入りした絹女光佐。彼女も,師と共に明日の試験に出る予定だ。
「ふっふっふ。ま,ざっとこんなもんじゃ。これなら二回位,楽に勝ち抜けるじゃろう」
「わー。ホントに凄いですよ,これ。ほらほら,よっちゃんもこっち来て!」
「……いや……,こーちゃん……。私,そう言う機械類は一寸良く分からないから……」
何か疲れた様な顔で壁にもたれ掛かっているのは,光佐の幼馴染みの宿曜師・勒鶴義堅。彼女も,明日に試験を受ける。
「ふう……」
光佐の屈託の無い笑顔を見ながら,此奴とは早い内に縁を切っといた方が良いのかも知れないと思いつつも,固く結ばれこんがらがった腐れ縁に,溜息をつくしかない義堅であった。



そして,とある道場。
「凄い……。この力なら,GS試験なんて楽に通れる」
「有り難い……」
「――私がその力を貴方々に与えたのは,GS試験に合格してもらう為です。そして合格した暁には……分かってますね?」
「ふ……相手する魔族に対して,必要に応じて手心を加えろって言うんでしょう?分かってますよ」
「……」

……まあ,でかいイベントだけに,良からぬ事を企む輩も出てくる訳で――。



何はともあれ。
明日が,今年度のゴーストスイーパー試験取得試験の一日目である。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa