ザ・グレート・展開予測ショー

長編・GS信長 極楽天下布武!!(14)完


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 2/27)

鳴かぬなら
殺してしまえ
不如帰

鳴かぬなら
鳴かせてみよう
不如帰

鳴かぬなら
鳴く迄待とう
不如帰















ドスドスドス……
近付いてくる足音で,葭嚊義昭(あしかが・よしあき)は顔を上げた。
全く,誰なんだ。
何用だ?私がこの平安京を魔都とする為の“儀式”を執り行っていると言うに。
この術は,酷く精神力を消耗するのだぞ。“儀式”の最中は静かにしておれと申したであろうに。
全く,我が配下とは言え,無知蒙昧の輩よの。誰だか知らぬが,これは魔都建設後の序列を考えねばならぬな。
この“儀式”が終われば,私はこの魔都の皇として君臨する。そして,何れは天下を……。
おっと。
“儀式”の最中に雑念は禁物だ。
兎も角,早く終わらそう。それが,我が夢の実現の第一歩……。
ドスドスドス……
……本当に五月蠅いな。
何を走り回ってるんだ。何を探してるんだよ。
全く,私が此処にいる事位分かっているだろう。私に用ではないのか?
まあ,何でも良いか。
今は,この“儀式”に集中するのみ。
ドスドスドス……
五月蠅い……
あー,もう。静かにしろと言っているだろうが!
ドスドスドス……
……。
もう,勝手にしろ。
ドスドスドス……

義昭は,これが正に自分を破滅へと導く死神の足音である事を,未だ知る由も無かった。



ドスドスドス……
信長は走っている。
ドスドスドス……
敵の本拠地だと言うのに,京都御所の中には人っ子一人いなかった。
ドスドスドス……
それでも,『魔流連』のリーダーを探し,斯うして走っている。
ガラッ!
信長は,最後の部屋の襖を開けた。
「……此処にいやがったか」
信長の目に,小太りの男が蹲っているのが映った。
「何の用だ」
「!」
男が,蹲ったまま声を掛けてきた。
「“儀式”の最中は,静かにしろと言ってあるだろう?」
「ああ?」
男は何やら頓珍漢な事を言いだした。
察するに,信長を自分の仲間と勘違いしているのだろう。
「……あのな。俺はあんたの仲間とかじゃねーぜ?」
「何?じゃあ,何で此処に来たんだ」
「……。あんた等の悪巧みを潰す為に決まってんだろ?仕事だ,仕事」
此奴,アホか?
いや,間違いなくアホだ。
「て言うか,こっち向きやがれ!」
「馬鹿を言うな。“儀式”の最中ぞ。早く出て行け」
「……いや,だからな?俺はあんたの首を刎ねに来たんだっつってんだろ?」
こんなに疲れる敵は初めてだ……。
「何を言って……」
「えーい,良いから面見せやがれ!」
男の肩を掴み,強引に此方を向かせる。
「あ?お前ー,貧乏公方じゃねえか!」
……のそっくりさんだろうけどな。
「き,貴様は織田信長!?己,何故こんな所に……」
「いや,だからお前ーを斬りに来たんだよ。……てか,何だ?俺の事,知ってんのか?」
「貴様……!俺は貴様の父との政争に敗れ,業界から追放された葭嚊義晴の子,義昭だ!知らんとは言わせんぞ!」
「すまん。俺,記憶喪失になっててな。知らねーよ」
「何ぃぃぃ〜〜〜〜〜!?」
「悪ぃな」
葭嚊家はオカルト業界では名門の部類に入る家だったが,義昭の父に当たる先々々代当主・義晴が信長の父・信秀とのGS協会内での政争に敗れた事により,凋落の一途を辿っていた。
義昭は,葭嚊家の当主として得た力により,京都を魔都とする為の“儀式”――即ち,空間を歪め真理を揺るがすと言う門外不出,滅多な事では使っては行けないと言う“禁呪”を使う事にしたのだ。
そして,魔都建設に必須なこの術の執行者である事が,この誇大妄想癖の有る間抜けな男を『魔流連』のリーダーたらしめた理由である。
勿論,彼の願いは葭嚊家が往年の……いや,それ以上の栄華を取り戻す事だ。
「……ま,兎も角そう言う訳で」
チャキ……
信長は,信行から奪った霊刀を抜いた。
「志半ばで気の毒だが,此処で死んでもらうぜ」
「な……」
義昭の顔が蒼白に染まった。
「ま,待て!何を言っているんだ。冗談だろう!?」
自分に突きつけられた刃を見て,義昭は哀願の眼で信長を見上げる。
「今更何言ってやがんだ。お前,この騒動の首謀者なんだろ?こんな大仕掛けをして,人だって死んだんだ。んな事した張本人が,手前ーが殺される覚悟も出来てなかったとは言わせねーぞ」
「いや……私は……」
「辞世の句でも詠む間位なら待ってやるぜ?」
「ひ,ひいいぃぃ〜〜〜〜〜〜!」
義昭は,情けない声を上げ四つん這いでその場から逃げ出した。
「ちっ!見苦しいぜ,アホ将軍!」
「だっ,誰か助け……」
「死のうは一定。観念しやがれ!」
ドスゥ!
「……が……」
信長の突き立てた霊刀は,義昭の背中から寸分違わず心臓を貫き,義昭は大量の鮮血を流し絶命した。
「ふん……」
斬!
信長は,返す刀で義昭の首を刎ねた。
「……」
そして,それを拾うと扇子を取り出して,『敦盛』を舞った。






人間五十年
下天の内を比ぶれば
夢幻の如く也

一度生を得て
滅せぬ者有るべきか















こうして,『魔流連の乱』は幕を閉じた。
葭嚊義昭以下五名の死者を除いた『魔流連』のメンバーは京都市内に雪崩れ込んだオカルトGメンと警官隊によって全員捕縛。
しかし,白昼堂々リーダーを暴徒に殺された外務省と防衛庁,多くの『魔流連』メンバーを会員から出してしまったGS協会,隊長・織田信秀の実子が『魔流連』の幹部メンバーだったオカルトGメンと,各方面の面子を慮り……と言うかそれ等からの圧力が掛かり,『魔流連』メンバーへのお咎めは,殆ど無いものとなった。只,萌娘氏康,凡艫義鎮等,前科の有る者,若しくはそれに問われている者に関しては,刑務所行きが決まったりもしたが。
そして国民に不安を与えない為(と言う名目で),『魔流連の乱』は政府主導の元,歴史の闇へと葬り去られて行ったのだった。






そして,それから数日後。



妙神山修行場。
「おお。帰ったか,勝竜姫」
「老師!神界とのチャンネルは繋がったのですか?」
「うむ,今し方な」
「あ,そうだ。勝家は……?」
「私なら無事です。ご心配をおかけしました」
「良かった。無事だったのですね」
「ええ,何とか」
「所で勝竜姫よ」
「はい。何でしょうか,老師」
「偉くさっぱりとした顔をしているが,何かあったのか?」
「え」
「小僧に振られでもしたかの」
「んなっ……!何を」
「駄目でちゅよー!ムラマサはタツリオの物でちゅ。ルシトラちゃんを産むのはタツリオでちゅよ」
「これこれ。その様な事を言って,余り小僧を苛めるでないぞ」
「えー」
「あの,私にも何か喋らせて下さい」
「信盛……」
「ふぉっふぉっふぉ」
全く……江戸時代にでも生まれてくれば良かったものを。
難儀な時代に生まれたまのだな。
「ま……頑張れや」



「我々はーーッ,何だァアアッ!?」
「武田総合病院ですーーッ!」
「武田総合病院とは何だァーーッ!?」
「優秀優秀優秀優秀優秀ムムッ!!」
武田総合病院。
『魔流連』との戦いで負傷した民間GSメンバーは,傷の回復を待って京都の病院から此方へ送られた。
「……ったく,相変わらず此処は喧しいわね」
「そうですね,姫」
「おっ,女華。お見舞いご苦労」
「はい」
304号室で寝ているのは,梢甦霞邊元親との戦いで負傷した小笠原帰蝶。
「マエダーの奴は如何してる?手取りバイトの彼奴だから,仕事休みになると拙いんじゃないの?」
「はい,彼なら織田さんの所へ行ってます」
「オカG?」
「いえ,除霊事務所の方です」
「信長の所?如何して」
「ええ。織田さんの所はこの度経営を拡大する事になったらしくて,アルバイトをさせてもらってるらしいです」
「経営拡大?何で又た」
「さあ……?」
「ふーん……ま,何でも良いけどね」



ドクター・ヒラテの研究所(『蜂須賀堂』の地下)。
「む?フカン。儂,お前にそんなものを付けたかのお」
「ノー,ドクター・ヒラテ」
「?では何故お前の身体にグレネードランチャーが積まれているのじゃ」
「イエス,ドクターヒラテ。ミス・絹女が・付けました」
「ほう……」

その頃,店の前では……
「よーし!『ホンガンジMrk,・ プロトタイプ参式』の性能テストを始めるわよっ!あんた達,良っく見て勉強すんのよっ!」
「何よ!そんながらくたより,私の『ヒツアン・改』の方が全然上ね!」
「い,言ったわね!?この腐れ外人!」
「何ですってぇ!?この眼鏡猿が!」
「めっ,眼鏡猿!?この……っ!よーし,分かったわ!こうなったら,どっちが上か白黒付けましょう!」
「望む所よ!」
「よっちゃん,審判お願いね!」
「はいはい……」
第五次スーパーロボット大戦が勃発していた。



『魔法料理・万千代』。
カウンターで溜息をつく客が一人。
「はあ〜」
「如何したんですか?西条先輩」
「いや……私,全っ然!出番無かったと思ってさあ……」
オカルトGメン捜査官の西条鍋子とこの店の主人の万千代めぐみとは,イギリス留学時代からの付き合いだ。
「三話でお爺ちゃんにやられて,意識不明とか言われてそれっきりだよ?思いっ切り噛ませ犬って言うか,良い所無しだよね」
「ま,まあ,それは仕方無いですよ,先輩。そう言う役割も,誰かに割り振られなければならないのですから」
「万千代は良いわよねぇ〜。四話からずっと出っぱでさー」
「いや……私も出番の割に活躍した訳じゃないですけどね……」
「嘘つきなさい。少なくとも私よりはマシでしょ」
「……ま,それはそうですけど。それは,あれですよ。ほら,西条先輩がよく言ってる,“貴族の義務”って奴です」
「何か違う気が……」
「気の所為です」
めぐみは,きっぱりと言い切った。



斎藤利政の教会。
「そうか……あの女性は死んでしまったか……」
「ああ……壮絶な死に様だったぜ」
「……」
長政の話を聞き,沈痛な面持ちの師に,ミツヒデは訊いた。
「その彼女と……何か有ったんですか?」
「いや……仕事の途中で見掛けただけだがな。……若いのに,とても悲しい眼をした女性だった」
「……」
「神の御心は,信じぬ者は救ってくれぬのでしょうか……」
「……それは……」
「青春よね〜」
「……え?」



ザッパーン!
波飛沫が上がる。
「助かるわ〜〜〜〜,政宗君〜〜〜〜」
「……。なあ,鬼頭先生?」
「何?」
「就職させてくれたのは良いけど……」
「うん」
「それがプールの清掃員てのは如何かな……」
そう。
此処は,六道女学院のプール。
乱収束の後,雫手政宗は六道吉乃と鬼頭加江の口添えによって,その能力を生かしてプールの清掃員として迎え入れられていた。
「プールの掃除も大変で〜〜〜〜,困ってたのよ〜〜〜〜」
「……」
「まあ……スイーパー免許を取る迄の辛抱だから。ね?」
「あれが長政の言ってた雫手家の御曹司ですか」
「流石に凄い霊圧だな〜」
金網の向こうから,二人の生徒が覗いていた。
「……見せ物じゃねーぞ」
「こら,貴方達!勝手に入って来ちゃ駄目ですよ!」



織田除霊事務所。
「信長様〜〜〜〜〜〜」
「織田殿〜〜〜〜〜〜」
ヒナタと重治が,氷の様な眼で信長を睨んでいる。
「……何だよ?」
仮にも女性とあって,信長も余り強くは出れない。
「……」
考高は,それを無言で興味深げに眺めている。
「な・ん・で!日吉を独立なんかさせたんですか!」
「……独立させた訳じゃねーだろ。優秀な部下に暖簾分けするのは当然だろ?」
「うう〜〜〜〜……先生〜〜〜〜〜……」
「あのな。人数も増えてきたし,こうした方が効率も良いんだよ」
「でぇぇもほぉぉ〜〜〜〜」
「……。分かった。じゃ,一つ良い事を教えてやる」
「え?」
「何でござるか?」
「良く覚えとけよ?」

「――人は殺せる。絶対だ」



そして,その織田除霊事務所・第二オフィス。
乱の後,織田除霊事務所には主に藤吉郎を慕って元『魔流連』のメンバーが数名入社した。
其処で事務所も流石に手狭になってきたので,信長は藤吉郎に別の場所に事務所の第二オフィスを作らせ,其処の責任者とする事に決めたのだ。

「お早う御座います,豊臣サン」
その織田除霊事務所・第二オフィスに,短期のアルバイトとして雇われたマエダー利家が出社してきた。
「……あれ?」
返事が無い。
妙な雰囲気に,利家は足を止めた。
「おう,マエダーはん」
「貧乏神サン?如何したんですタイ」
「……あれ,見てみぃ」
其処にふわふわとやって来た東照大権現徳川家康に促され,その指差す方向を見ると……
「!?」
其処には,異空間が発生していた。

デスクに座る藤吉郎と,それを囲む三人の女性。
それを中心として,どす黒く禍々しいオーラがゴゴゴと言う擬音と共に発せられていた。
「はいっ!豊臣さん。お茶が入りましたっ」
満面の笑みで藤吉郎にお茶を差し出すのは,浅野ねね。
だが,その笑顔からは何とも言えないプレッシャーが吹き出していた。
「そんな事より!今日の仕事だ。まずは……」
それを全く視界に入れず,書類越しに藤吉郎を見つめる猛吏輝元。
書類の字面と藤吉郎以外はアウト・オブ・眼中だ。
「……」
そして,無言で藤吉郎の袖を引っ張る植椙景勝。
亡き養父の跡を継いで植椙家の当主となった景勝だが,専らこのオフィスに入り浸っている。
「フニャ〜ァ……」
そんな修羅場をものともせずに藤吉郎の膝の上で欠伸をする,雨姫蛇秀家(子猫モード)。
そんな,常人には近寄り難い空間がこの平和な街中に生まれていた。

「恐……」
「やろ?」
「……で,ワッシは何をすれば良いんですタイ?」
「取り敢えず,落ち着く迄茶ぁでもしばいとこ」
「はい……」
ズズー……
緑茶を啜りながら,家康は思った。
何か,見た様なメンバーやな……。


「ああ……そうか。五大老や」



そして,斯くも平和な日常。

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