ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネと姉妹と約束と 第4話』 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 2/27)



朝。

部屋へと差し込む木漏れ日と、遠く聞こえる鳥のさえずりに・・・

「・・・・・ん・・?・・」

タマモは静かに目を覚ました。
彼女の朝は事務所のメンバー中もっとも早く・・そして寝起きもすこぶる良い。
覚醒の瞬間から、ほぼ通常と変わらない思考を働かせることも可能。

・・我ながら、便利な特技を持ったものだと、タマモ自身気に入っていたのだが・・・今日に限ってはそれが完全に裏目に出た。

寝苦しさからゴロンと寝返りを打つと、タマモの顔のど真ん中を・・『何か』がさえぎって・・・


「・・・・・・?」


ど真ん中もど真ん中・・・もう、あと数ミリもあれば触れてしまいそうな程すぐ近くに・・

「・・・・よこ・・・しま?」

思いっきり横島の寝顔があったりする。

よく見れば、自分と横島はぴったりと・・・密着もいいところな体勢で寝ころがっていたりして・・

・・・・。

「・・・・・っ!!!」

・・うろたえるように、急激に身を離したのも悪かった。
軽い衝撃とその反動で、横島までもが目を覚まし・・・・・

「・・あ〜?・・もう朝かよ。・・だりぃ・・今、何時だぁ・・・?」

なんてことを口にしながら、『顔を上げず、左手のみ』によって目覚まし時計を探し始める。

(そういえば、昨日はタマモとスズノもここに泊まったんだっけ・・。
 ま、いいけど。あの2人に手ぇ出したら流石に犯罪だし・・・・)

のんきにそう考えながら、ゴソゴソと腕を動かす。・・・と、横島の左手があるものをつかむ。


「・・・?なんか掌の中にフニャッとしたもんが・・・」
いぶかしんだ横島はそこでようやく顔を上げ・・、そして瞬時に状況を理解する。


「・・・・・・・。」

横島が触れている(というより思いっきり掴んでいる)ものは・・・

「・・・・・・・・・・・・。」

どう見てもタマモの胸だったりするわけで・・・

・・・・。


「・・・〜〜〜・・・。」

・・で、いつも気丈なタマモがこの時ばかりは顔を真っ赤にし、目に涙までためてこちらを睨みつけていたりして・・


「え・・えっと・・79ってとこか・・。意外に着やせするタイプだな、タマモ。」

・・・・・。

「・・・・・っ・・このっ!!」

言わずもがな、タマモの周囲に無数の・・・しかも超がつくほど高密度の火球が出現する。


「変っ態バンダナ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


ちゅどーーーーーーーん!!!!

・・今時、安直な効果音もあったものだが、とりあえず横島宅は朝から崩壊の危機を迎えるのだった。



〜『キツネと姉妹と約束と その4』〜



「・・ど・・どうしたんですか?横島さん火傷・・というより黒コゲじゃないですか。」

「おお・・ピートか。今朝はもう天国と地獄をいっぺんに見た気がするよ・・。」

半眼でそうつぶやきながら、横島は今日も今日とて通学路をゆく。
澄み切ったすがすがしい空気も、彼がいるだけで焦げ臭い陰鬱な空気に一変するから不思議だ。

「・・そういえば、聞きましたよ?昨日は大変だったみたいですね?」

気遣わしげなピートの声が今回ばかりは本当に身にしみる。
『極楽ワールドの歩く良識』の異名はやはり伊達ではないようだ。

「・・・学校ではどこまでウワサになってる?」

「・・・・横島さんが実は幼女趣味で、昨日の女の子を家に連れ込んだと・・」

・・・・。
・・・ピートのことだ。これで大分、ソフトな表現に言いかえられているのだろう。
つまり実際は・・・もっと・・・もっととんでもないことに・・・


「だ・・大丈夫ですよ。除霊委員はみんな横島さんの味方ですから!」

「・・ハハッ。ひるがえすと除霊委員以外みんな敵ってことになったりして・・」

「・・・・・・・。」

「頼むからそこで黙りこまんでくれ。」

                    
                      ◇


―― 横島宅 ――

「ねーさま。あれは覚悟を決める場所だぞ?」

いまだに頭を抱える姉に向かい、妹がマイペースに声をかける。

「・・か・・覚悟って・・。そういえばスズノはさっきまでどこにいたの?」

「押入れ。2人の邪魔をしてはいけないと思って、影からひっそり見守っていた。」

「・・・・邪魔って・・。はぁ・・スズノ?子供はそんなこと気にしなくていいんだから。」

自分の年齢を忘れ、たしなめるようにタマモが言い・・・・
なんだかんだで姉としてのスタイルが完全に板についてしまった彼女である。


「ところでねーさま。今日はいったいどーする?事務所に顔を出さなくてもいいのか?」

布団を両手で抱えながらスズノが尋ね、それにタマモは・・

「それなんだけど・・どうしようかな・・。多分、事務所では私が行方不明ってことになってるの思うんだけど・・。」





『横島さ〜〜〜ん!大変なんです!昨日、帰ってきたらタマモちゃんがどこにもいなくて・・・・
 ・・・あ!その前にまず美神さんに謝ってください!昨日、横島さんが呼び出しをドタキャンしたってカンカンなんです!』

・・・・不意に、ドアの向こう側からこんな声が聞こえてくる。


「・・おキヌちゃんの声がしたような気がするんだけど・・空耳よね?スズノ。」

「ねーさま、現実逃避はよくない。
 これは事務所の仲間が、ねーさまを探すため横島に助力を求めてきた・・と考えるのが妥当では・・。」

淡々と述べるスズノへ、わかっているとばかりにタマモがうなづいて・・
・・どうでもいいが今回は会話の全体に占める比率が異常に多いため、密かに作者は頭を痛めていたりする(笑)

「でも大丈夫だ。居留守を使えばなんとか・・・」

「・・無理。横島の家だとその手は使えないの。」

最初に見つかったのがおキヌちゃんだったのが、まだ救いね・・とタマモはあきらめたように嘆息して・・


「横島さん、入りますよ?カギ・・・早く直してくださいね?」

ガチャリ・・と。
・・あっけないほど簡単に玄関のドアは開け放たれ・・・・

・・・。

そこでおキヌが目にしたのは、予想外の・・・しかも思いっきり開き直っている2人組み。

「・・・あれ?タマモ・・ちゃん?・・とその隣にいる子は・・・。」


「おはよう、おキヌちゃん。」「お前、おキヌとゆーのか?ねーさまがいつもお世話になっている。」

しばらくの間、場に沈黙が続いたのは言うまでもない。



―――・・・。


「・・もう・・。逃げる前に私たちに一言ぐらい相談があってもよかったでしょーが。」

「・・・悪かったわ。まさか3人がGメンの依頼を断ってるなんて思わなかったから。」

半刻後、舞台は毎度お馴染み、事務所の応接室へと移動する。

デスクで顔をしかめる美神令子とバツが悪そうに頬をかくタマモ。
スズノは・・というと・・・

「か・・かわいいでござる〜〜〜〜!!!お人形みたいでござる〜〜!!」

「・・むぅ。・・シロ、私は・・髪を結われるのは好きではないのだが・・」
・・もう、完全に・・シロにかまわれていたりする。

事務所に行こう、とおキヌに誘われたときには、またひと悶着あるのでは・・と身構えたものだが・・

「幼児誘拐?そんなの趣味じゃないから。」

・・なんてことをあっさりと美神が言い放って・・問題は一瞬で解決してしまった。

「・・美智恵には申し訳ないことをしたと思っている・・。
 Gメンに捕まっていたころ、話し相手になってくれたのはあの人だけだったのに・・。」

少し、神妙な様子でスズノがつぶやくと・・

「あ〜・・・いいのいいの!ママってそういうの気にするタチじゃないし・・。ま、心配はしてるだろうけど。」

豪快に笑いながら、美神が手を左右に振る。
(・・親とはいえ、ここまで言い切るとはなかなかすごいが・・・)



「でも・・どうします?スズノちゃんのこと。かくまうにしても真っ先に疑われるんじゃあ・・」

「Gメンだって証拠もなしに人様の家を検挙したりしないでしょ? 
 そんなことされたら私なんて何回、脱税で捕まってるか・・。」

何気に恐ろしいことを口にしてはいるが・・結局は優しかったりする雇用主。
それにタマモは驚くように顔を上げ・・

「!・・じゃあスズノは・・・」

「・・別に部屋は腐るほど余ってるしね・・。ただしタマモ?あんたがちゃんと責任持って面倒みるのよ?」

「・・・美神さん・・・。」

そばに控えていたおキヌも安堵で胸を撫で下ろし・・・・


・・・。


「・・ところでタマモ?昨日、横島くんの家に泊まったってのは本当なの・・・?」

・・・・・ギクゥッ!!!

「・・え・・?あ・・な・・なんのこと?私・・別に・・」

「・・まぁ・・そこんところは後でゆ〜っくり聞かせてもらうから・・」

美神どころか、おキヌやシロの瞳にまで妖しい炎がゆらめいていたりして・・


(・・こ・・これが修羅場とゆーものなのか・・)

部屋の中では、スズノ一人がその迫力に圧倒されるのだった。


                     ◇


(・・美神さんたちには悪いけど・・・こればっかりは譲れないんだから!)

事務所でバトル(バトルか?)が展開され始めたころ、ここにも野望に燃える少女が一人。
時間の流れは早いことに、陽はとっくに傾いていたりする。

『ここ』というのは学校であり、横島の教室だったりするのだが・・
また、『野望に燃える少女』とは机妖怪の愛子ちゃんだったりするのだが・・・・

(・・ああ・・!!放課後の教室に2人っきり・・夕陽に染まる男女・・・モロ青春って感じよね・・!)

・・いや、ただ週番で居残りくらってるだけだろ、というつっこみもあるが・・
たしかに今、教室には横島と愛子の2人だけ。(無理すれば)ロマンチックに見えなくもない光景である。


「よ・・横島くん。ちょっと・・その・・話が・・・」

「ん?お〜!奇遇だな。実はオレも話があってさ〜」

・・・・。
・・・・・。

(・・・え?)

てっきり『へ?何だ?金なら貸せないぞ?』とか『ふぁ・・眠みぃ・・。?ごめん聞き逃した。』
とかいう反応が返ってくると思っていたのに・・・

・・・。

・・・これは・・・

・・もしかすると、もしかして・・・もしかしちゃったりするのでは・・・・
(ちなみに『人が夢みる』と書いて『儚い(はかない)』と読む)

「は・・話って・・・その・・」

「ん〜・・もうちょい待てばあと2人くると思うから・・」
・・しかし、横島の口からは予想外の言葉が飛び出した。

「・・・ふた・・り?」
愛子は不思議そうに首をかしげ・・・


瞬間だった。

バターーーーン!!と勢いよく、遠慮なんかこれっぽっちも感じ取れないといった様子で・・いきなりドアが開け放たれ・・


「フハーッハッハッハッ!!!!何じゃあ小僧!!わしをこんな所まで呼び出して・・そんなにわしの力が必要かあ!!」

「か・・・カオスさん!!いくらなんでも・・その・・カオスさんが学生服ってのはまずいんじゃ・・」

「んん?何じゃピート・・?完璧な変装じゃろうが・・?」

現れたのは(特に片方が)最悪の顔ぶれ。
最悪すぎてもはや、スズメの涙もちょちょ切れるほどだ。


「・・・・はぅ・・・・」

クラクラ〜っと・・愛子が意識を失って・・

「あああ!?なんだ!?どうした愛子!?」

「よ・・横島さん・・!!ほ・・保健室!!とりあえず保健室に運びましょう!!」

「・・う〜む・・黒板の前に整然と並ぶチョークを見てると・・折りたくなるのはなんでじゃろうな・・?」

「余計なことはせんでいい!!!!」

・・・・。
・・あえて作者はノーコメントとさせていただく。


〜続きます〜


『あとがき』

そういえば、最近終わり方が全部こんな感じですね(汗)次はシリアスですのでご安心ください〜

それにしても・・また胸か・・(爆)原作でこの手のネタが多用されていたので一度やってみたかったんですが・・
大丈夫かな・・。ま・・まだセーフティーゾーンですよね?

ところでおキヌちゃん・・学校は・・・?う・・えっとタマモたちが心配で休んだってことにしていただけると(以下略)

このお話はかなり平和ですね〜コメディタッチのノリで・・会話が多いこと多いこと・・。

さてさて・・次回、少し事態が動きます。とうとう、前回ラストに出てきた魔神さんも動き出したりします。
それでは〜読んでくださってありがとうございました〜

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