ザ・グレート・展開予測ショー

続・風邪のひくまま(後編)


投稿者名:殿下
投稿日時:(04/ 2/27)

〜少し時間を遡った頃の事務所〜


「あふっ・・・中途半端な時間に起こされたから、あんまり眠れなかったわ」
タマモがまだ眠そうにあくびをしながら、一階に下りてきた。

「さてと、カップうどんでも食べようかな♪」
そう言って朝昼兼用の食事であるカップにポットのお湯を注ぐ。

コポコポコポコポ

「これで3分待てば出来上がり。人間ってホント便利な物考えたわね」

ピッ
出来あがるまでの間ボーッとしてても仕方ないのでテレビをつける。

テレビをつけると、町中の様々なカップルの特集をやっていた。
リポーターが次々とカップルに『恋人からされて一番嬉しかった事』をアンケートするというものらしい。
多くのカップルからは様々な答えが返ってきた。
『高級レストランを自分のために貸し切ってくれた事』『高級ブランドバッグを買ってくれた事』などなど

「ずるずるずる、やっぱり人間って下らない事が嬉しいのね」
出来上がったきつねうどんをすすりながらタマモが感想を述べる。

その内二組のカップルから『病気の時看病してくれた事』『落ち込んでた時に励まして元気づけてくれた事』という意見が出てきた。

「病気で苦しい時に一生懸命看病してくれたんです。すごく嬉しかったです」
「仕事や人間関係がうまくいってなくて落ち込んでた時にとても優しく励ましてくれて、とっても感動しました」
とテレビの中のカップルの女の子の方が答える。

「・・・・ふ〜ん、はむっ」
あぶらげを頬張りながら考える。

(そういえばヨコシマは私を看病してくれて、元気づけてくれたわよね・・・という事は何?私とヨコシマは恋人って事なの?というかヨコシマは私の事どう思ってるのかしら?キスまでするんだから私の事好きなのよね・・)

つい最近までただの事務所の同僚という関係だったため、いまいちヨコシマの気持ちがわからない。

(よく考えたら、昨日『好き』とか『愛してる』の様な言葉はお互いに一度も出てないじゃない。私は多分ヨコシマの事が好き・・・でもヨコシマは・・わからない。ヨコシマの気持ちが・・知りたい)

タマモは事務所を飛び出した。
(知りたい・・・ヨコシマが私の事をどう思ってるのかを)

たたたたたた
タマモが走り出す。ヨコシマの気持ちを確かめるために


〜横島の住むアパート〜


(あーあ、こんな所来たって肝心のヨコシマはまだ学校にいるんだから意味ないじゃない・・)
自分らしくないミスとすぐヨコシマに会いたいという願いが通じず落ち込むタマモ

「ん?」
傷心のタマモの鼻に今最も会いたい男の匂いを感知する。

(この匂いは・・間違いないわ。ヨコシマだ!帰ってきてたんだわ)

ヨコシマが部屋にいるとわかるとタマモはすぐにアパートの階段を駆け上がり部屋のドアをノックする。

コンコン


〜横島の部屋〜


コンコン

(助かった!誰かが来た!!)
俺は祈りが神に通じた事を喜び、救世主を出迎えようとする。

ドアを開けると立っていたのは、タマモだった。

「タ、タマモ」
(どうしたんだろ?見舞いに来るかもとか行ってたけど、電話の反応からして来ないと思ってたのに・・)

タマモはずっと下を向いている。
(どうしよう・・ヨコシマの顔、見られないよ)

「どうした?」

「あのねヨコシマ、今日は話があって来たの・・」

「話?」

「・・うん。あのね・・実は私ヨコシマの事が」
ちゃんとヨコシマの顔を見て言おうと思い、顔を上げると・・・ヨコシマの部屋に3人の女性がいるのが見えた。

「・・・」

「どうした?俺がどうかしたのか?」
顔を上げて話し出したと思ったら、またうつむいてしまったタマモに俺が途中で止めた言葉の続きを聞く。

ギロッ

「えっ?何?」
(何だ?どうしたっていうんだ一体)
俺が何故睨まれているのかわからずあたふたしていると

「・・・・邪魔して悪かったわね」
そう言ってタマモが帰ろうとする。

「ちょ、ちょっと待ってよ」
俺はタマモの腕を掴んで止める。

「・・・・・何よ」
タマモがさらに眼光を鋭くして俺を睨み付ける。

「どうしたんだよ急に。見舞いに来てくれたんじゃなかったのか?」

「気が変わったの。だから帰るのよ」

「何でだ?俺、何かタマモの気を悪くするような事したのか?」

「・・・別に。見舞いならもう間に合ってるみたいだから帰ろうと思っただけよ」

「ん?ああ、魔鈴さん達の事か・・・さてはタマモ、やきもち妬いてるな?」

「な、何バカな事言ってるのよ!何で私がやきもちなんか妬かなくちゃいけないのよ」
タマモが少し頬を赤らめて反論する。

「じゃあ別にいいだろ?中に入れよ」

「・・・・わかったわよ。入ればいいんでしょ」
そう言ってタマモが渋々部屋の中に入る。

「横島君、その子は?」
愛子がタマモの事を聞いてくる。

「学校の帰りに話した妖弧のタマモ。魔鈴さんは知ってるよね?」

「ええ、何度か美神さん達と一緒に店に来てましたから」

「へえ〜、そうなんだ。この子が・・」

「妖弧って事は狐さんになれるんですか?」
小鳩はタマモに興味津々のようだ。

「うん。元は狐だからね」
そう言って俺は腰を下ろす。

「・・・・」
タマモは喋ろうとせず黙っている。

「私は妖怪の愛子。横島君クラスメイトよ。ヨロシク」
「花戸小鳩です。横島さんの隣に住んでます。ヨロシクねタマモちゃん」
愛子と小鳩ちゃんが自己紹介をする。

「・・・・ヨロシク」
タマモは一言言うと、狐の姿に戻り、俺の膝の上に乗って丸まっている。
俺は何も言わずそっとタマモの頭を撫でる。

(いいな〜。でも私が元の姿に戻っても机だから撫でようがないしな〜)
(私も横島さんに膝枕してもらって、撫でて欲しいな〜)
(気持ち良さそう。魔法で何かの動物になれなかったかしら・・帰ったら調べてみよ)
愛子、小鳩、魔鈴がそんな事を思ってた時、タマモは・・

気付かれないようにまず愛子を観察して
(私と同じ妖怪・・ヨコシマと同じ学校に通ってるから私の知らないヨコシマを知ってるのよね。ヨコシマってセーラー服とか好きなのかな・・)
次に魔鈴を見て
(何度か店に行って料理を食べたけど、かなりおいしかったわね。それにこの頃ヨコシマが魔鈴の店に出入りしてるって聞いたし・・ヨコシマは年上で料理の得意な女性が好きなのかな・・)
そして最後に小鳩を見る。
(それにしてもこの小鳩っていう子・・・一体何、この胸は!ミカミさん以上じゃない。しかもヨコシマと同じ学校に通ってて、隣の部屋に住んでるなんて・・これは要注意ね。やっぱりヨコシマは胸の大きい方が好きなのかな・・)なんて事を考えていた。

しばらくみんな黙っていたが、愛子が
「それにしても安心したわ」

「何が?」

「だっていくら可愛くても自分より小さな子に手は出さないでしょ?」

「えっ、あ、ああ」
俺はぎこちなく返事をする。

(何言ってるのよ!キスしたじゃない!一緒の布団で寝たじゃない!だから風邪ひいたんでしょーが)
タマモは心の中に激怒し、そして人間の姿になり

「ヨコシマは風邪をひいてた私とキ、キスしたから風邪がうつったのよ!」
と言い放つ。

「「「!!!!」」」
タマモの爆弾発言に愛子・小鳩・魔鈴の3人は驚いて声が出ない。

一方の横島は
(という夢を見ましたとさ)
この話を夢オチで終わらせようとしていた。

当然夢オチで終わるはずもなく

「「「本当なの?」」」
3人がもの凄い迫力で追求してくる。

「あの、その、えっと・・」

「それじゃあヨコシマ、今この場でキスをして証拠を見せてあげましょ!」
タマモがとんでもない提案をして、俺の膝に乗ったまま俺と向かい合う。

「えっっと、タマモさん、それは・・」

「・・・ヨコシマ、私・・ヨコシマの事が好き」

「えっ?」
不意にタマモから愛の告白を受けた俺は動揺する。

「私はヨコシマが好き。ヨコシマは?私の事好き?」

「「「・・・・・」」」
3人とも黙ってこのやりとりを見ている。あまりにも不意をついた告白だったので邪魔をすることができなかったのである。

「もし、ヨコシマが私の事何とも思ってないなら、何もしないで。でもヨコシマが私の事が好きなら・・・キスして」
そう言ってタマモが目を閉じる。

(タマモが俺の事を好き・・俺は、俺はタマモの事が好きなんだろうか・・)
俺は考えながらもタマモの肩にそっと手をのせる。

その瞬間タマモの肩がぴくっと動いた。

(肩に手を置いた。という事はヨコシマも私の事が好き・・)

(昨日約束したんだよな。俺がタマモの事守るって・・あんな風に思ったのはルシオラの時以来かな。ルシオラ・・俺、ルシオラと同じくらいタマモの事が好きになっちまったみたいだ。許してくれるよな?ルシオラ)

意を決して俺はタマモいキスをしようとしたその時

バンッ

「先生!!!」
勢いよくドアを開けシロが部屋に入ってきた。

そのシロの目には愛しの先生の膝に座り、誘惑するタマモとそれを見ている3人の女性の姿が見えた。

「女狐!貴様、先生に何してるでござる!!」
シロがタマモに向かって声を荒げて叫ぶ。

「このバカ犬!ちょっとの間でいいから黙ってなさい!」

「何をわけのわからん事を!とにかく離れるでござる」

「だから離れちゃ意味がないのよ!待ってろって言ってるでしょ」

「とにかく離れるでござる!!!」
そう言ってシロが俺とタマモを布団ごとひっくり返す。

ドッス〜ン

布団ごとひっくり返された俺とタマモは思いっきり尻餅をつく。

「いたたた、ヨコシマ、大丈・・・!?」
ヨコシマの安否を確認しようとしたタマモの目にとんでもないものが映る。

「いって〜、俺は大丈夫だぞ。ん、どうした?タマモ」
急に動かなくなるタマモ、周りを見渡すと愛子・小鳩ちゃん・魔鈴さん・シロまで何かを見て固まっている。その視線の先には・・・

「うげ!!!!!」
布団の中に隠していたが、さっきシロが布団ごとひっくり返してしまったために散乱してしまった『横島’Sベストにノミネートされた本やビデオテープ』だった。

(こ、これだけは絶対死守するぞ!今すぐかき集めて逃げよう)
そう思いダッシュで本やビデオテープをかき集めようとした瞬間

ボッ ボッ ボッ

次々と本やビデオテープに火がついていく。
当然その犯人は狐火を操る妖弧タマモである。

「あっ!あっ!あ〜〜!タマモ、何て事を!」
俺は抗議の声をあげていると、何故か全員帰り支度をしている。

「それじゃあ、横島君さよなら」
「私も貧ちゃんにごはん作ってあげなくちゃいけないので失礼します」
「横島さん、お大事に」
「・・・ばーか」
みんなが帰っていった。いや、一人だけ残っていた。

「先生」
シロだ。

「おお、シロ!頼む火を消すのを手伝ってくれ」

「・・・拙者、先生が病気だと聞いて天狗に薬を貰ってきたでござるよ☆」
シロが笑顔で話す。

「ありがとう。持つべきものは弟子だよな」
俺が喜んでいると、

「でも、いらなかったみたいでござるな。先生元気そうだし・・」
そう言って持っていた天狗の薬を火の中へと投げ込む。

ボオオオオ

天狗の薬の中によく燃える成分でも入ってたのかさっきよりも勢いよく燃えだす。

「シ、シロ、何するんだ!」
俺の言葉などお構いなしにシロは何も言わず帰っていった。

「うわ〜、水!消化器!文殊〜!!」
俺は何とか一つだけでもと思い火を消す。


10分後、何とか鎮火する事に成功した。しかし、横島’Sベストは一つ残らず灰となってしまった。

「うあああああああああああああああ!!!!」
その日横島は枕だけでなく、布団まで涙で濡らした。


〜その夜〜


一人の少女が横島の部屋を訪ねた。
「何よ大事な用事って?今日の事なら謝らないわよ」
(ヨコシマの奴、目が真っ赤じゃない。そこまで大事なもんだったわけ)

「いや、タマモを呼び出したのは・・」
俺は布団に横になりながらわけを話し出す。

「呼び出したのは?」
(もしかして今日の告白の返事?)
タマモは横島の次の言葉に期待を寄せる。

「俺の熱を測って欲しいんだ」

「はあ?」
タマモの期待を横島は大きく裏切った。

「あんたそんな下らない事のためにこんな時間に私を呼びだしたわけ!熱ぐらい自分で測りなさいよ」
タマモは少しキレ気味に叫ぶ。

「自分で測りたかったんだけど、今日ので体温計まで燃えちまってさ・・だからその燃やした張本人に測ってもらおうと思ってさ。な、良いだろ測ってくれよ」

「・・わかったわよ。測るってどうすればいいのよ?」

「簡単だよ。ただ俺のおでこにタマモのおでこをひっつけてればいいだけ」
さも簡単そうに俺はタマモに説明する。

「ひっつけるって、他に方法はないの?」

「うん、ない。だからほら早く」
俺はタマモの腕を引っ張り自分の方に引き寄せる。

「わ、わかったわよ。わかったから手離して」

「それじゃあ、ヨロシクお願いします」
そう言って、俺は額のバンダナをはずす。

「は、測るわよ」
少し緊張しながらタマモが熱を測る。

ピトッ

俺のおでことタマモのおでこがひっつく。

「どう?」

「どうって言われても・・だいぶ低くなったんじゃない」

「そっか、じゃあうつる心配もないかな」

「えっ?・・・・んっ・・んん!?」
不意に俺はタマモの頭をぐっと引き寄せタマモの唇にキスをした。

(え?何?どういう事?何で急に?)
突然の事にタマモはパニックに陥っている。

「告白の返事、まだだっただろ?今のがその返事」

「それじゃあ、ヨコシマも・・」

「ああ、俺もタマモの事が好きだ!」

「ホントに?嘘じゃないよね?」
タマモが嬉しそうに確認してくる。

「嘘なわけないだろ。それを証明するためにキスしたんだからさ」
俺は少し照れながら話す。

「でも夕方の事もあるし、ちょっと信用できないな」

「そんな・・じゃあどうすればいいんだよ」

「簡単よ。私がヨコシマの事を信用するまで『証明』してくれればいいのよ」
タマモは上目遣いで俺に『証明』を求める。

「おーし、わかった。信用してくれるまで『証明』してやるぞ」

「ん・・ちゅ・・・んんぅ」
そして俺はタマモに長く『証明』し続けた。

「信用してくれたか?」

「・・・・うん」
タマモの表情を見ると、瞳は潤み、上気した頬は赤く染まっていた。

余韻を楽しむ間もなく
「それじゃあ、そろそろ帰るわ」
と言い出す。

「もう帰るのか?」
(俺としてはもう少しイチャつきたいのだが)

「これ以上一緒にいたら泊まりたくなっちゃうしね☆」

「い、いいじゃないか・・・泊まれば」

「・・・ううん、やっぱり帰るわ」

「・・・・(涙)」

「そ・・そんなにがっかりしなくても・・。私はヨコシマの気持ちがわかっただけで十分だから。それに急がなくても私は逃げたりしないから、ね?」

「そ、そうか。それじゃあ気をつけて帰れよ」
(俺は十分じゃないっ・・!!なぜ女はこのせっぱつまった気持ちを理解せずにムダな時間を要求するのだろう!?)

「うん。じゃあね」

ガチャッ

「あ!その前に」
タマモが俺の方に振り返る。

「?」

「大好きだよ・・・ヨコシマ」

「・・・俺もだよ。タマモ」

今度は『証明』なんかではなく、恋人同士としての口づけを交わす。


〜帰り道〜


タンッ  タンッタンッ

次々と家の屋根に飛び移って急いで事務所に帰るタマモ

(今度は私に風邪うつっちゃうかな?でもそうなったらまたヨコシマに看病してもらえるのよね♪)

びゅうー

その時、突然一筋の風が吹いた。

「ま、いっか。風の吹くまま・・・この場合は『風邪のひくまま』・・かな」

          END

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