ザ・グレート・展開予測ショー

続・風邪のひくまま(中編)


投稿者名:殿下
投稿日時:(04/ 2/27)

〜ゴミ捨て場〜


「全く横島君は本当にスケベなんだから!」
愛子は不満そうに言った。

「ホントに・・・凄くビックリしちゃいました」
男の必需品を初めて目にした小鳩はまだ顔が赤い。

「とにかく早いとこ戻りましょ。部屋の片付けも残ってるし、それにあの横島君の事だから、まだまだあるかもしれないわよ」

「そうですね。横島さんのためにも全部処分してあげなくちゃ!」
二人は横島の枕が涙でビショビショになるような会話をしながら横島のアパートへと戻っていった。


〜横島の部屋〜


「グスッ、ウッ、ウッ、あんまりや、わしが何したゆーねん」
俺はまだショックから立ち直れずにいた。

「はっ!・・・終わってしまったことは仕方ない。残りのやつを処分される前に隠さなくちゃ」
そう言って俺は病気で苦しい体を奮い立たせ、作業にとりかかる。

ガサゴソ、ガサゴソ

押し入れの奥の方から厳選された本やビデオたちが出てくる。

「お前らだけは絶対守ってやるからな」
そういって本・ビデオを抱きしめていた横島の耳に

カンカンカン

愛子と小鳩が階段を上がってくる音が聞こえてくる。

「まずい、もう戻ってきた。どうする、これだけは何としても死守せねばならん!どうせあの二人は徹底的に掃除するだろうし・・・・そうだ布団だ。灯台もと暗し、まさか俺が布団の中に隠し持ってるとは夢にも思うまい」

急いで布団の中に隠し、自分も布団の中に入る。

ガチャッ

「「ただいまー」」

「おかえり」
俺は出来るだけ自然に二人を出迎える。

「意外ね。横島君の事だから結構へこんでると思ったのに・・」

「いや、ちょーど処分しようと思ってたからさ」

「ふ〜ん」
愛子が俺に疑惑の目を向ける。

「はははははは、ゴホッゴホッ、それじゃあ俺は寝るわ」
愛子の視線に耐えきれず、俺は不自然に笑った後、その視線から逃げるように眠りに入る。

「まあ、いいわ。小鳩ちゃん、徹底的に掃除しましょ!」
「はい」

そして掃除が始まって1時間ほど経過した。

「ふー、こんなもんですね。愛子さん」

「う゛〜ん」
愛子は何か考えている。
「愛子さん?」

「おかしいわ、絶対おかしいわ」
愛子が叫ぶ。
「な、何がですか?」

「だって横島君よ。あれだけで終わりとは思えないわ」

「でも、部屋中掃除してけど、見つかりませんでしたよ」

「そうだぞ、愛子」

「あら、横島君起きてたの?」

「ああ、二人に掃除任せて寝ちまうのは悪いしな」
(寝てる間に布団がめくれて見つけられたらシャレにならんからな)

「横島さんは病人なんですから寝ててくれても良かったのに・・」

「ありがとう、小鳩ちゃん。でも少し横になったおかげでだいぶ楽になったよ」
そう言って小鳩に向けて微笑む。

「そ、そんな、私は別に何も・・・」
微笑みを向けられた小鳩は真っ赤になってうつむいてしまう。

「ちょっと!私だって掃除したんだからね」
小鳩にだけお礼を言う俺に向かって愛子が面白くなさそうに言い寄る。

「わかってる。感謝してるよ。ありがとう、愛子」
俺は小鳩ちゃんの時と同じように愛子に向かって微笑む。

「わ、わかればいいのよ。わかれば・・」
そう言って愛子も顔が赤くなる。

(何で二人とも顔が赤いんだろ?もしかして俺の風邪がうつっちゃたかな)
鈍感な横島はこんな事を考えていた。


「そうだ!横島さんお腹すいてませんか?」
唐突に小鳩が俺に聞いてくる。

「お腹?ああ、ここんとこまともに食べてないから、すいたかな」
(昨日は美神さんちで晩御飯食べさせてもらったけど、何故か俺だけカップ麺だったからな)

「それじゃあ、私が作ってあげますね♪」
そう言っていそいそ台所に向かう小鳩ちゃん。

その時

コンコン

「ん?誰だろ?」
俺が起きあがって出ようとすると、愛子が
「横島君は病人なんだから寝てなさい」
と言って俺の代わりにドアに向かう。

ガチャッ

「はい」

「あれ?あの〜、ここは確か横島さんの部屋ですよね?」
ドアから出てきたのが、机を背負った女子高生だったため、訪問客が不思議そうに訪ねる。

「はい、そうです。彼なら病気で横になってるんで、私が出たんです」
愛子が質問に答える。
(それにしても何で魔女の格好なんかしてるの、この人)

「あっ、そうですか。それじゃあ、ちょっとお邪魔します」
そう言って魔女の格好をした女性が部屋に入ってくる。

「魔鈴さん!!」
俺は思わぬ人の訪問に驚く。

「こんにちわ、横島さん。急いでどこかに出掛けるシロちゃんに声をかけたら、『先生が風邪をひいてしまったでござる。だから、天狗に薬をもらいに行って来るのでござる』って言ってたもんだからお見舞いに来たんです」

「あっそうだったんですか?何か悪いですね。わざわざ見舞いに来てもらって」

「何言ってるんですか?いつもお店に来てくれてるお礼ですよ」

そうなのだ。横島はこのところよく魔鈴の店にご飯を食べに行くのだ。なぜなら魔鈴の店は非常に良心的な値段でなおかつおいしい。おまけに魔鈴はただでご馳走してくれる事もあって、薄給の横島にとってはまさにオアシスのような店だったからである。一番の理由は店長が可愛いという所なのだが・・

魔鈴の方も横島がたびたび来てくれるのを嬉しく思っていた。横島は自分が作った料理を本当においしそうに食べてくれて、その顔を見ていると改めてお店を開いて良かったという思いでいっぱいになる。そうしてる内に横島の事がだんだんと好きになっていたのだった。

「そういえばお店はどうしたんですか?今は昼過ぎだから忙しいんじゃ・・」

「ああ、お店は今日は定休日なんです」
(横島さんが風邪をひいたって聞いて急遽店を休みにしたなんて言えないわよね)
「そうだったんですか」
(魔鈴さんのお店定休日なんかあったっけ?まあ魔鈴さんが言うんだから間違いないか)
「でも元気そうで良かったです」

「ご心配かけました。また元気になったらお店に寄らせてもらいますね。魔鈴さんの作った料理すごくおいしいから」

「そんな、こちらこそ。是非いらして下さい。いつでも待ってますんで」
魔鈴は本当に嬉しそうに話している。

「横島君!二人だけの世界に入ってるとこ申し訳ないんだけど、紹介してくれないかな?」
愛子が不機嫌そうに間に入ってくる。

「あ、ごめん。この人は魔鈴めぐみさんといって、料理の店を経営しているんだ」
俺は簡単に魔鈴さんを紹介する。

「どうも、魔鈴です。良かったら是非お店の方にいらして下さい」

「どうも、私は愛子。横島君のクラスメイトよ」
「どうも、小鳩といいます。横島さんちの隣の部屋に住んでいます。」

お互いの自己紹介が終えたところで魔鈴が

「あの、横島さん。お見舞いの品としてお料理作って持ってきたんですけど・・」

「えっ?ホントですか?ありがとうございます」

「食べてくれます?」
魔鈴が少し甘えた声で聞いてくる。

「もちろんですよ!」
(年上の魔鈴さんが甘えてくるっちゅうのは何か・・いいな)

「はい、どうぞ♪」

俺の前に高級レストランに出てくるような豪華料理が並ぶ。

「それじゃあ、いただきま「お待たせしました。横島さん」〜す?」

俺の声を遮って小鳩ちゃんが料理を俺の前に置く。

「あ、ありがとう。小鳩ちゃん」
(しまった。魔鈴さんの登場で小鳩ちゃんが料理作ってくれてる事すっかり忘れてた・・)

「いいえ、どういたしまして♪」

(怒ってる。絶対怒ってる。と、とりあえず小鳩ちゃんのから食べよう)

パクッ

「おいしい!すごくおいしいよ!小鳩ちゃん。これならお店だって開けるよ」
俺は素直に感想を言った。

「そんな、誉めすぎですよ。横島さん」
小鳩ちゃんが顔を真っ赤にして照れている。

「ホントだって!すごくおいし「横島さん」
今度は魔鈴さんが俺の言葉を遮ってきた。

「私の料理は食べてくれないんですか?」
魔鈴がこめかみをピクピクさせながら聞いてくる。

「いや、ははは、やだなあ今食べようと思ってたんですよ」

パクッ もぐもぐもぐ

「うまい!すげえうまいですよ!魔鈴さん」

「そうですか?」
さっきとはうってかわって、魔鈴が上機嫌になる。

「ほんと。出来たら毎日食べたいくらいですよ!」

「ほんとですか?」

「うん。ホントホント。魔鈴さんを嫁さんにもらう人は幸せだろうな」
俺がそう言った瞬間

ボッ

魔鈴さんの顔が一瞬にして真っ赤になる。

「そんな横島さん・・・横島さんさえよかったら・・・私、横島さんの「ホントだ!すごくおいしい!」
愛子が魔鈴さんの声を遮るようにして言った。

ジロッ

魔鈴さんはそんな愛子をにらみつける。

愛子はそんな視線はお構いなしに魔鈴の作った料理を食べ、
「ホントおいしいわね。こんな料理作れるし、しかも魔鈴さん美人だから彼氏とかいるんじゃないですか?」
と聞く。

「そういえば、魔鈴さんは西条と付き合ってるんですか?」
俺はこの機会に前から気になってた事を聞いてみる。

「へえ〜、彼氏の名前西条っていうですか?かっこいいの?」
愛子が嬉しそうに俺に聞いてくる。

「まあ、かっこいい方なんじゃないか。性格は最悪だけどな」

「もう、魔鈴さんの彼氏をそんな風に言っちゃダメでしょ☆」

「ああ、そうか。すいません魔鈴さん。悪気があって言ったんじゃないんです」
俺は慌てて魔鈴さんに謝る。

「・・・です」
魔鈴さんが何か喋ったみたいだけど小さくてよく聞こえなかった。

「えっ、何て言ったんですか?」

「違うんです!誤解なんです!私と西条先輩はそんなんじゃないんです。私は先輩として尊敬しているだけでそれ以外の感情はありません!!」
魔鈴さんが今にも泣きそうになって叫ぶ。

「は、はい、そうだったんですか・・・」
俺はその迫力に圧倒されていた。

(意外だな。てっきり魔鈴さんと西条の野郎は付き合ってると思ってたんだけど・・・そういえば二人っきりでいるとことか見た事ないし、初めて会った時笑顔で西条はいつも違う女の子と歩いてたなんて言ってたもんな。それにしても西条の奴、いい気味だぜ。力一杯否定されてるもんな)

「それに・・・それに私は横島さんの事が好「横島さん!早く食べないと料理冷めちゃいますよ」
そう言って小鳩ちゃんが料理を勧めてくる。

「そうだったね。せっかく小鳩ちゃんと魔鈴さんが作ってくれたんだから、冷めない内に食べないとね」

ジロッ

料理を食べようとする俺を魔鈴さんが睨み付けてくる。

「あの・・何か?」

「・・・別に・・どうぞ召し上がって下さい」
(ほんと鈍感なんだから)

「は、はあ」
(そんなに西条の彼女だと思われるのが嫌だったのかな?)
俺はそんな見当違いな事を考えながら料理を口に運ぶ。

「おいしいですか?」
小鳩ちゃんが嬉しそうに聞いてくる。

「うん、両方ともとってもおいしいよ」
(今度は片方だけ誉めるなんてことはしないぞ)
俺がそう言うと、

「それじゃあ、どっちの方がおいしい?」
愛子がとんでもない質問をしてくる。

「どどどどっちって、両方おいしいって言ってるだろ」
俺は慌てて返事をした。

「だーかーら、両方おいしいのはわかったけど、どっちの方がおいしいのか聞いてるの?」
さらに愛子が追求してくる。

「そんな・・・せっかく作ってくれた料理を比べる事なんかできるわけないだろーが!それに小鳩ちゃんは和食。魔鈴さんは洋食なんだから比べられっこないよ」

「ふ〜ん、うまく逃げたわね。でも二人は聞きたそうよ」

「えっ」
(そんなバカな・・二人はこんな事で張り合うような性格じゃないはずだ)

しかし俺のこの考えは脆くも崩れ去った。

「教えて下さい横島さん。どっちの方がおいしいですか?」
「そうです。どっちですか?」

「二人ともそんなに張り合わなくても・・・」
俺は二人を何とかなだめようとする。

「いいえ、料理の店を経営してる者として料理で一般の人に負けるわけにはいきません!」
「私だって料理には自信があるんです。例えプロの人相手でも負けたくないです!」
魔鈴さんと小鳩ちゃんがお互いに料理に対する思いを語る。

(どうしよ・・っていうか、何か俺今日悩みっぱなしじゃないか。病人だっていうのに何でこんなに頭を使わなくちゃいけないんだろう。ああ、せっかくマシになってたのにまた頭が痛くなってきた)

それでもお構いなしに二人の追求は続く。

「ハッキリ言っていいんですよ。プロの私の方がおいしいのは当たり前なんですから・・・」

「そんな事ありません。横島さんは私の料理がプロの魔鈴さんよりおいしかったから言いにくいんですよ」

「何ですって!」
「何ですか!」
二人の口論が始まる。

(はーっ、どうしたらいいんだろ)
俺が悩んでいると、いつの間にか愛子が俺の隣に座り、箸で料理を掴んで俺の目の前に運んでくる。そして

「はい、あ〜ん♪」

「えっ?」

「あ〜ん♪」

「あ、はい、あ〜ん」

パクッ

「おいしい?」

「うん、うまいな」

「ああ、何か凄い青春って感じがするわ」
愛子が感激していると

「「ちょっと、何をしてるんですか?愛子さん!」」
さっきまで口論していた二人が声を併せて聞いてくる。

「何って病人の横島君をほっといて口論している二人の代わりに横島君に料理を食べさせてあげてただけですけど・・・」

「「・・・」」

部屋中が険悪な空気に包まれる。

(ああ、神様。どうかお助け下さいませ)
俺は心の中で必死に神様に祈る。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa